KUDAN Projectの名作『くだんの件』
が11年ぶりに帰ってくる!



KUDAN Project『くだんの件』チラシ

『くだんの件』はもともと、《KUDAN Project》の前身である《キコリの会》が1995年に東京・名古屋で初演。天野が初の二人芝居として、小熊とジャイアント茶所のために書き下ろした作品だ。その後、1998年に出演者が寺十に代わったのだが、脚本は初演からほぼ変わっていない。それについて天野は、「茶所と寺十君は、場を作るなんとも言えない気配のようなものが似ていて、違和感は全くなかった」と。

そして小熊&寺十コンビでの初演は、アジア小劇場ネットワークの招聘により、いきなり海外公演(台北と香港)という運びに。しかも字幕ではなく、2人が天野手書きの漢字フリップボードを要所要所で出しながら……という複雑な演技に挑み、両地で大喝采を浴びた。ちなみに、渡航時のカンパニー名は《Eternal Kids》、タイトルは『劇終 くだんの件~OSHIMAI~』であった。

帰国後すぐに名古屋・東京でも上演して好評を博し、これを機に《KUDAN Project》が発足。以降、『真夜中の弥次さん喜多さん』『百人芝居◎真夜中の弥次さん喜多さん』(原作/しりあがり寿、脚本・演出/天野天街)、『美藝公』(原作/筒井康隆、脚本・演出/天野天街)の公演を行っている。

稽古風景より

さて、“ヒトウシ”と書く〈件(くだん)〉はその名の通り、半人半牛の生き物のことを指す。身体が牛、頭が人で、出生直後に戦争や飢餓に関する予言を残して間もなく死ぬと言われ、江戸時代以降、日本各地での目撃談が伝承されている。この〈件〉を題材に天野が本作を書き下ろしたのは、父の言葉が大きなきっかけになったという。

「小学6年生頃に小松左京の「くだんのはは」という小説を読んでいたので、件のことは知っていたんですけど、20代前半の頃に父から突然、「件というのを知っているか?」と言われて。終戦直前に岡山出身の戦友から〈件〉について聞いたというんです。今となってはその戦友が実際に見たのか、単なる噂話だったのかわからないけど、それを聞いていつか〈件〉を題材に書きたいなと。そのあと1990年頃に「新耳袋」(現代の怪談や怪異譚を百物語形式で収載した本)の編集を担当していた丹治史彦さんや、漫画家のとり・みきさんから「件って知ってる?」と、何の脈絡もなく同時期に聞かれたのも驚いた。とり・みきから、「実家(熊本県人吉市)の3軒隣の薬局に、顔が人間で身体が牛のマークが付いた〈この薬は間違いない、よって件の如し〉という看板があった」と聞いたのも印象的でした」と、天野。

また、その頃知り合った同世代の劇作家、はせひろいち(劇団ジャブジャブサーキット主宰)や佃典彦(劇団B級遊撃隊主宰)の作品を観て、「俺にも普通の芝居が書ける」と意気込んで書き上げた作品でもあったという。
「いつでもないどこでもない場所に、障子があって机があって、その向こうに宇宙がある…」そんな発想のもと、描かれた物語はこうだ。

記憶の奥に取り残されたような、夏の日のある店。カウンターの奥に座る男(ヒトシ)のもとに、一人の男(タロウ)が訪ねてくる。タロウは昔、集団疎開をしていた頃、このあたりの二階の片隅で半人半牛の怪物〈クダン〉を飼っており、それを探しに来たのだという。謎めいた二人の過去をめぐり会話は捻れ、過去と現在を行きつ戻りつしながら世界は迷走し、蝉時雨を背景に分裂と増殖を繰り返す…。

初演以来、国内やアジア各国で再演が繰り返されてきた『くだんの件』だが、最後の上演となったのは2005年の横浜公演だ。それから11年の時を経て、久々の再演となる今回、どのような心境で役に取り組んでいるのか、稽古場の小熊と寺十を訪ねた。

稽古風景より

── 11年ぶりの再演ですが、稽古の調子はいかがですか?

寺十◆以前の上演DVDを観たら、こんなに動けないなと。2人とも五十肩で腕が上がらない(笑)。

小熊◆ごまかしながらなんとかやるしかないですね(笑)。

── 動きにくいフリなども変えずに、そのままやる方向で?

小熊◆変えないですよ。面白いんですよね、改めて。稽古しながら台本を見て「あぁ、こうこう」とやってると、次から次にすごく短いスパンでいろんなイメージが飛び出してきて、そのイメージがいろんな連鎖反応を起こして、それこそ増殖していって…。シーンが0から4まであって、1日1シーンみたいな感じで稽古を進めていくんだけど、その日の終わりに通すと体感時間がすごく短い。段取りやセリフの思い出しとか、そういったことに結構な時間を使ってるんだけど、実際に通すと「あぁ、もう終わった」っていう感じ。だからそれだけ濃密にいろんな情報が詰まっているっていうことを改めて思った。やっぱり面白い芝居なんだなと思いますね。

稽古風景より

── 茶所さんから寺十さんに変わった時、台本はそのまま変えずにやっていますが、天野さんはすごく自然に移行できたと仰ったんですね。小熊さんは当時、どんな印象でしたか?

小熊◆特に困ったとか、支障みたいなものは全く感じた記憶がないです。もちろん茶所と寺十君とはタイプが違うところがあると思うんですけど、最初からストレスなく、しかも海外初演で(笑)やれましたね。天野君とここまで濃密な感じで一緒に取り組んだのは『くだんの件』が初めてだと思うんですが、’95年の初演の時はアップアップですよ、正直なところ(笑)。よくわからないし、構成自体もどうなってるのか把握しきれないまま東京と名古屋を終えたんです。もちろんそれなりの達成感や充実感はあって、面白くはやったんだろうけども、作品自体をもうちょっと把握した上で演じたのは、たぶん寺十君と最初にやった時からかな、っていう気はする。

── 寺十さんが『くだんの件』という作品を把握できたのはいつですか?

寺十◆ハハハハハ。いや、把握は今でも難しいですね。

小熊◆いろんな発見がやっぱり出てくるので。手触り感であったり。

寺十◆把握してやった方が面白いものと、把握しないままやった方が面白いものがあって、役者って身体を道具にするから、わかっちゃった途端、急に収まっちゃったりすることもあるし、いいなりに動いてるだけの方が良いかもしれない、っていうことも混ざってるので、あまりわかろうとしたくないというか。わかることもあるけど、他の芝居でやってるようなアプローチでわかろうとすることは敢えてしない方が良いかなって。

『くだんの件』は明かされてないことがすごく多くて、それまでは天野さんの手書き台本をPCで打ち直したものを読んでたんだけど、この間、僕らがやった最初の手書き台本を読んだんです。それを見ると、途中まであっちに行きかけるんだけど、それをやめてこっちにしますとか、打ち直したホンには載ってないこととか、これはここまで書かなくていいとか、そういう葛藤の痕跡があって。その頃はもっと収拾がついてなかっただろうから、そぎ落とされたところに何かそういった二重三重のものがあったのかなと。

稽古風景より

── プロデューサーとしては、なぜ今のタイミングで再演しようと思ったのでしょうか。

小熊◆いずれまた上演したいとずっと思ってはいたんですけど、なかなか良いタイミングがなくて。『弥次喜多』もあったし新作で『美藝公』も創ったし。でも、『弥次喜多』を再演することになって名古屋、三重、東京、静岡で上演して、とても良い感じに出来たと思うし評判も良くて、なんか《KUDAN Project》自体がうまい波に乗ってるのかなっていう感覚があった。「『くだんの件』をやらないの?」っていう声も偶然なのか前よりも増して聞き始めたから、今かなと思って。

寺十◆『くだんの件』を改めてやるっていう時に、先に進んでいたものをもう1回頭に戻すっていうのはどうなんだろうって、ちょっと二の足を踏んでいたんだけども、じゃあこれを他に誰がやるの?って言った時に、(てんぷくプロの)矢野健太郎さんと入馬券さんがやったら、またすごいものになるなと。もっと年齢が上だし、それにも関わらずこのワクワクする感じはなんだろう?って思ったら、それが悔しくて「やっぱりもう1回やります」って。あの2人なら何か起きそうだなと思って、それを目撃するのもシャクだなと(笑)。

── 体力的な問題もありますけど、この先もずっと続けていくということですね。

寺十◆年齢的なことはそこまでは考えてないし、矢野さんと入馬券さんみたいに違うニュアンスも出てくるだろうし。この間の稽古で天野さんと会った限りでは、動ける動けないっていうことも、実はさほど重要ではないのかもしれないなと思って。まだ明かされてないことがいっぱいあるのと同じように…例えば今日の稽古でも七夕の話をしてるシーンで、ヒトシくんに「お父さん、いつ帰ってくるの?」って、あれは子どものノリで喋ってるようなんだけど、この子たちは今どういう流れで、ここで2人でいるのかな?と。各々の家族が違う中でいて、タロウの父が「ロボットの設計技師」と言えば、ヒトシの父は「ロケットの運転手」って返ってくるし、どっちが嘘でどっちが本当かわからないんだけど、集団疎開で出会った2人の経緯みたいなものも、なんかもっと隠れてるような気がするから。だから動ける動けないっていうことだけじゃない深みがあるような気はする。

俺やっぱりね、今回東京でも上演したかったなと思って。このプロジェクト自体がもっと知られてもいいのに、どうしてもなんかもうひとつ突き破れない、広まらないっていうことにはなんとなく、続けていく上で歯がゆさは感じてますね。

── 『くだんの件』をもっと知ってもらうのはもちろん、次の新作を、という声も上がっていますよね。

小熊◆ありますね。今回の『くだんの件』の上演を通じて、すぐかどうかはわからないけど、新作につながる何かの糧になれば言うことはないな、と思ってます。やっぱり新しい作品は創りたいと思っているので。

稽古風景より

稽古初日の感想を天野に尋ねると、「初演の頃から台本は読み直していなくて、役者の身体を通してしか見ていないけど、ちょっとずつ変わっていって書いたものとは違うものになっています。前回の上演を全部覚えてるわけじゃないのでとても新鮮だし、2人の立ち稽古を見たら、ちゃんと出来ているのがとても嬉しかった。最初の2時間でシステムが出来たのでうまくいく確証が持てました。2人の身体の変化も面白いし、知らないうちにスライドして面白いことになっていくと思いますよ」と。

多くの要素や未だ明かせぬ謎を秘め、ヒトシとタロウの魅力的なキャラクターもあいまって、新たな発見と変容を重ねながら私たち観客を魅了し続ける普遍の名作『くだんの件』。三重では初、関西での上演も実に17年ぶりとなるだけに、初めて存在を知ったという人も多いはず。そして過去の上演を見逃した人も、当時はまだ子どもだった若い世代も、プロデューサーの言葉どおり、今後の《KUDAN Project》の新たな起点ともなり得る今回の上演をお見逃しなく!


公演情報KUDAN Project『くだんの件』

■作・演出:天野天街
■出演:小熊ヒデジ、寺十吾

<三重公演>
■日時:2016年11月5日(土)14:00・19:00、6日(日)14:00
■会場:三重県文化会館 小ホール(三重県津市一身田上津部田1234
■料金:一般 前売3,000円、当日3,500円 U25 前売2,000円、当日2,500円 高校生以下1,500円(前売・当日共) ※U25、高校生以下は当日、年齢が確認できる証明書、学生証を提示。未就学児入場不可
■アクセス:近鉄名古屋線・JR紀勢本線・伊勢鉄道「津」駅西口から徒歩約25分または三重交通バスで約5分

<兵庫公演>
■日時:2016年11月11日(金)19:30、12日(土)14:00・19:00、13日(日)14:00
■会場:AI・HALL 伊丹市立演劇ホール
■料金:一般 前売3,000円、当日3,500円 U25 前売2,500円、当日3,000円 ※U25は当日、年齢が確認できる証明書、学生証を提示。未就学児入場不可
■アクセス:JR「伊丹」駅からすぐ。阪急「伊丹」駅から東に徒歩7分

■問い合わせ:
三重県文化会館 059-233-1122(10:00~19:00/月曜休館、祝日の場合は翌平日)
AI・HALL 072-782-2000
KUDAN Project 090-9929-8459
■公式サイト:http://www.officek.jp/kudan/

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