【吉澤嘉代子】美しいだけじゃなく、
悲しいことも辛いことも、その人にと
ってこの上ない景色が“絶景”

ライヴで歌い続けてきた名曲「東京絶景」をついに収録した2ndフルアルバム『東京絶景』。妄想の世界を飛び出し、社会に触れた少女はいかにして大人になっていくのか? 等身大の姿を、極上のポップスでくるんだ傑作の誕生だ。
取材:宮本英夫

今回のアルバムのテーマは“日常の絶景”ということで。

はい。前作のアルバム『箒星図鑑』は妄想の物語や少女時代をテーマにしているんですけど、日常をテーマにすることもずっとやりたくて、どういう順番で出していこうかな?と思ってました。どっちももともと自分の中にあるものなので。なので、最初に妄想の物語を出して、その次に『東京絶景』を出せば、等身大ということも、また違った見方で見てもらえるかな?と。

なるほど。

“日常の絶景”というのは日常を描いているんですけど、主人公の目を通して、その場所がドラマチックに変わる瞬間がある、という感じです。それは美しいだけじゃなく、悲しかったり、辛かったり。その人にとってこの上ない景色というものを“絶景”として、アルバムに収めたかったんです。

タイトル曲「東京絶景」に出てくる“額縁を嵌めてみる”という表現が、グッとくるんですよね。日常のひとコマを切り取って絶景にする。その“額縁”がここに入ってる一曲一曲の視点だと思うんですよ。

そうですね。切り取ったものが。

1曲目を「movie」にした理由は?

前作の『箒星図鑑』と橋渡しになってる曲なのかなと思ったので。“movie”というのは、死ぬ前に見る走馬燈の意味です。私は子供の頃から魔女修行をしていたんですが、飼っていた犬に話しかけても、うんともすんとも言わないんですね。ウィンディっていう名前なんですけど。やがて私も大人になって、魔女修行のお供をしてくれていたウィンディが病気になった時に…私の中の何かが死んでしまうと思ったので、どうしても生き延びてほしかったんです。そしたら、余命1カ月と言われたのが10カ月くらい生きて。“もしかして、私が引き留めてるのでは?”という気持ちで罪悪感があったんですよ。

ああ…。

ペットの犬の話というと、そういう歌だと思われるので、お話しするのも迷うんですけど。私は学校に行っていないので、友達はウィンディしかいなかったんです。それである日、ウィンディが家に来てからのことを丁寧に話して…その数時間後に死んじゃったんです。“ウィンディ、もう私、大丈夫だよ”って言った、その数時間後に。その時に、ずっと何も起きなかった魔女修行の成果が、最後に出たんじゃないかと思って…これは曲にしたくなかったんですけど、どうしても書かざるを得なくて。とても個人的な歌です。だから、今も迷ってます。

話を聞いてなおさら、とてもとても大事な曲だと思います。

『東京絶景』になくてはならない曲だと思います。エレクトロっぽい、クールなサウンドもとても素敵だし。GREAT3の白根賢一さんのドラムがとにかくカッコ良くて。ドラムの音だけで泣いちゃうくらい、素敵でした。

あと、気になるのが「ひょうひょう」。曲調は明るいのに、すごく深いものを感じる曲でした。

“ひょうひょう”は自分とはすごく遠いもので、憧れがあるんですよね。歌詞にも出てきますけど、映画に出てくる脇役の方とか。人の目を気にしないで、ちゃっかりと生き延びる人とか。私が映画に出たら、すぐ殺されちゃう役だと思うんですよ(笑)。ホラー映画で、“うわー!”とか言って。

あはは。分かるような分からないような。

ひょうひょうとしたいんですけど、できない時は逃げてもいいんじゃないの?というのが結論です。私は今まで集団のコミュニケーションからずっと逃げてきた人生だったんですけど、逃げた先で物語を書いたり、詞を書いたりしたところから、今の仕事に結び付いているので。だから、逃げることを肯定している曲でもあります。ひょうひょうとできなくても、いいんだよって。

あぁ、そうか!

今の事務所に入った時に初めてディレクターさんと喧嘩をしたんです。“おたんこなす!”みたいな言葉をメールして、泣きながら電源を落として、わーわー泣いてる時に自然と作り始めたのが、この曲なんですよね。

背負ってますね、表現という業を。

ディレクターへの当て付けに書いた曲だったんですけど(笑)。今思うと、ラブレターだったのかなと思います。

うーん、いい話だ。

今もずっと一緒にやってるんで。この曲は入れたかったですね。

そして、タイトル曲の「東京絶景」。ライヴではずっと歌ってきた曲ですよね。“やっと出るか!”と思いましたけど。

この曲は幼馴染みのユキカちゃんが東京でひとり暮らしを始めた時に遊びに行って、その時に見たワンルームの白い壁や、下着が干されてる感じや、ひとり暮らしならではのものを感じて、それを切り取って書いた曲です。ワンマンライヴでは毎回歌ってきたので、満を持してみたいな感じかもしれないです。

『箒星図鑑』の頃からあったのに、入れなかった?

「東京絶景」は妄想の世界から飛び出たというか、社会に触れる曲なので、“まだかな”と思ってました。「ひょうひょう」とかは、社会に触れたあとの曲なんですね。

社会に触れた曲。それ、今回のキーワードじゃないですか!

そうですね。少女時代があって、その次の転機として社会に触れた19~20歳の頃があって、今があるので。ずっと入れたいと思っていた曲がたくさん入れられて、自分としてもすごく気に入ってるアルバムになりました。
『東京絶景』2016年02月17日発売e-stretch RECORDS/CROWN RECORDS
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • CRCP-40446 3500円
    • 【通常盤】
    • CRCP-40447 3000円
吉澤嘉代子 プロフィール

ヨシザワカヨコ:1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場育ち。14年メジャーデビュー。バカリズム作ドラマ『架空OL日記』の主題歌として「月曜日戦争」を書き下ろす。17年10月に発表した2ndシングル「残ってる」がロングヒットする中、18年11月7日に4thアルバム『女優姉妹』をリリースする。吉澤嘉代子 オフィシャル HP

OKMusic編集部

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