【黒木渚】勝てるとは思わないけど一
撃加えないと気が済まない

ダメ男に振り回される「君が私をダメにする」で新境地を切り開いた黒木渚。“これまでの黒木渚をぶち壊す気持ちで作り上げた”というアルバムには、新たな輝きに満ちている。
取材:吉田可奈

ニューアルバム『自由律』は、まさにタイトル通り、自由度が高いというか、さまざまな挑戦に満ちた作品に仕上がりましたね。

ありがとうございます。“自由律”とは俳句用語で、5・7・5の定型や季題に縛られずに作る俳句のことなんですね。その言葉をタイトルにしたのは、今、改めて黒木渚が作り上げてきたルールをぶち壊すタイミングだと思ったからなんです。

その“ぶち壊す”ために挑戦したことは具体的にどんなことだったのですか?

まずは、ベタなことを怖れなくなりました。人と同じじゃ嫌とか、自己表現に目覚めているからこそ自分の個性を作り上げようとしていたんですが、年月を経て、いいものを作りたいと思った時に、ベタなものに対しての安心感を曲に取り入れることに恐れがなくなったんです。今の私なら、それも取り込んだ上で黒木渚になれると思っていて。

それはきっと、過去作でマニアックなものを作り切ったからこそできることですよね。

そうかもしれないですね。マニアックなものはたくさん作ってきたし、今でもストックの中にはプログレすぎて人に聴かせられないような曲はたくさんあるんですけど(苦笑)。それを経て、今は王道の素晴らしさを改めて感じているんです。そんな中、生まれたのが「命がけで欲しいものひとつ」で。この曲は通勤ソングとして書いたんですけど、イメージとしては「およげ!たいやきくん」なんですよ。いわゆる“社畜”と表現される方たちを励ましたくて作ったんです。

どうしてそれを思い付いたのですか?

電車の中で座っている人たちを見たら、顔色があまりにも土色すぎて…。日本の根本的な元気がかなり小さくなっているからこそ、ちゃんと元気付けられるような曲を作りたいと思ったんです。

そう思うと、曲作りのネタを拾ってくるところがずいぶんと広がりましたよね。

デビューからいきなりトップギアで走り出して、入れて出すの繰り返しだったので、一時はアイデアが枯渇するかもしれないと思って不安になることがあったんです。でも、隙間が空いたらググッとまた新しい何かが入ってくるんですよね。そういった新たな感覚を手に入れられたこの1年の制作活動は、自分の中の新たな希望や自信になりました。

意味深な《汚れた海から怪物がうまれる》という一節で始まる「大予言」は、衝撃的な内容の歌詞で驚きましたよ。

最近、声高に危ういことを言わない風潮ができてしまっていると思うんです。でも、自重することが蔓延すると、逆にその水面下でそれに対する興味が倍増している気がするんですよ。だからこそ、今、正直に思うことを声高らかに言っていいのかなって思ったんです。

特に《魂以外はくれてやる》というフレーズが最高でした。

ありがとうございます。これはもう一小市民のプライドですよ(笑)。まさに“窮鼠猫を噛む”ようなことで、勝てるとなんて思ってないけど、一撃加えないと気が済まないという心情を歌っているんです。きっと、ここには共感してくれる人がいると思うんですよね。かと言って、ガチガチな社会ソングにしてはいないので、物語としていろんな角度から聴いてもらえたら嬉しいですね。
『自由律』2015年10月07日発売Lastrum
    • 【限定盤A】
    • LACD-0263 4536円
    • ※CD+本(連作小説『壁の鹿』全6話)
    • 【限定盤B】
    • LACD-0264 3240円
    • ※CD+LIVE DVD
    • 【通常盤】
    • LACD-0265 2160円
黒木渚 プロフィール

クロキナギサ:2010年に自らの名前を掲げたバンド“黒木渚”を結成。12年に『あたしの心臓あげる』でデビュー。14年からバンドを解散し、ソロ活動へと移行。独特の世界観を持つ小説も発表するなどさまざまな才能を開花させている。黒木渚 オフィシャルHP
黒木渚 オフィシャルTwitter

OKMusic編集部

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