【奥華子】みんなのお墨付きをいただ
いている

2015年7月27日にメジャーデビュー10周年を迎える奥華子が、インディーズ時代から歌い続けてきた「楔 ‐くさび‐」をアニバーサリーシングルとしてリリース!
取材:石田博嗣

デビュー10周年となるのですが、デビュー当時と今とで歌に対する意識とかに変化はありますか?

いろいろ変わっている部分もあるし、全然変わってないところもありますね。かたくなまでに “自分が思い描く曲を作りたい”という気持ちは変わってないです。で、変わったところは、その“自分が思い描く曲”を具現化してくれるミュージシャンだったり、アレンジャーさんが周りにいるってことですね。そこがこの10年間で一番変わったところかも。最初の頃は“もっとこうしたいのに、どうして分かってもらえないんだろう?”って気持ちがあって…それはうまく説明できなかったのもあるけど、そういうことがすごく多かったんですよ。でも、今は“この人に頼めば大丈夫!”って思える人がいるし、“この人がそう言うんだったら、それもありかも”って思えるようにもなったし。それって信頼関係があるからだと思うんですけど、そういうふうに思える人が増えたってことは大きいですね。

デビュー当時に比べると、奥華子の楽曲を聴いてくれる人の数が圧倒的に増えているのですが、そういう部分では?

たくさんの人に知ってもらいたい、ヒット曲を作りたい、けれどもうまくない…その繰り返しだったんで、そこで自分の可能性が信じられなかったり、それに負けそうになったりしたんですけど、最終的には目の前にファンの人がいてくれたから、今までやってこれたんだと思いますね。

タイアップやCMとかもあって、より広がったでしょうし、そこでの反響も大きいのでは?

ん〜…やっぱりライヴが一番実感できる場所ですね。“自分の歌を聴いてくれる人がこんなにいるんだ!”とか“こういう人が私の曲で感動してくれるんだ!”って思えるというか。だから、もしライヴをまったくやっていなかったら、そういうところでの実感がないと思うし、曲をまた作ろうと思えないだろうし、頑張れない。そう考えると、ライヴをたくさんやってこれたことが作品につながっていったのかなって思いますね。うん、基本はライヴです。

そういう意味では、曲を作る時にファンだったり、聴いてくれる人のことを考えるようになったりしました?

あ〜、それはありますね。歌い始めた高校生の頃なんて、誰かのためとかじゃなくて、自分の日記を書くみたいな感じで曲を作っていたし、それがいいと思ってましたからね。でも、今は“みんなはどういう曲を求めてくれているんだろう?”とか…だから、“奥華子にしか書けない曲じゃないと意味がないな。だったら、奥華子らしさって何だろう?”ってことをすごく考えるようになりましたね。そうやって突き詰めることで自分を追い込んでしまって辛くなるんだけど、ライヴで救われる…この10年は、その繰り返しでした(笑)。

そんなデビュー10周年のアニバーサリーシングルとして、インディーズの頃からずっと歌っている「楔 -くさび-」がリリースされるわけですが、なぜこの曲を?

ずっとライヴで歌っているから人気がある曲でもあるんですけど、この曲はインディーズのCDにしか入っていないにもかかわらず、ネット上でもすごく人気があって…それがすごく嬉しいんですよね。

動画サイトの再生回数は累計1500万回以上だし、中国語の歌詞が付けられたものまであったりしますよね。

そうなんですよ。宣伝とか関係なくて、曲が持つ力っていうか、そういうものがあるのかなって。私自身もすごく気に入っている曲でもあるので、いつかメジャーで出したいと思っていたんです。ベストアルバムにも入れられなかったし、なかなかタイミングがなかったんですけど、今回はデビュー10周年なので、ここを逃すともう出す時がないかも!ってことで出すことにしました。そういう意味では、みんなに保証されたもの? お墨付きをいただいているっていうか(笑)。そういう自信を持って出せるっていう気持ちが強いですね。だから、この曲でより多くの人に奥華子を知っていただきたいです。

奥さん自身のこの曲への思い入れは?

これまで失恋ソングをたくさん作ってきたんですけど、もしかしたらそれの一番原点となる曲かもしれませんね。“失って初めて分かる大切さ”っていうのが、どの失恋ソングにもテーマとしてあって、この「楔 -くさび-」は当時22歳ぐらいの時にした失恋の実体験を曲にしているんですけど、絶対だと思っていたことが実はそうじゃないってことを知った…“約束ってなんのためにするんだろう?”“なんで人って誓い合うんだろう?”“感情だけでは不安だから、言葉にしたり、書類にしたりするのかな?”とかいろんなことを考えて、そういう曲を作ろうと思ったんです。“つなぎ止めるもの”を表したいと思って、“楔”っていうタイトルにしたことを覚えてますね。

《どうして人はすぐに 守れない約束をするのだろう》と言っておいて、最後は《貴方を呼ばないと約束するから》で終わる、そこの切なさが奥華子らしいなと思いました。

そうなんですよね。人の矛盾みたいなものを自分自身が感じたというか。やり切れなさや切なさが詰まっている…それをうまく作品として作れた曲だったんで、すごく気に入ってます。“この曲を作れて良かった”って思いますね。

今回リリースするにあたって、ストリングスが入っているわけですが、そのアレンジを佐藤準さんがされているという。何かリクエストはしました?

インディーズの頃のものを聴いてもらって、“すごく大切な曲なんです”って伝えて、“準さんの思うがままにやってもらいたいです”ってお願いしました。最初はちょっと暗い感じだったので、少しやり直してもらったのがこのアレンジで…準さんも一緒に奏でてくれているというか、歌詞に寄り添ってくれている感じがありますね。この10周年記念シングルは準さんアレンジで出したいっていう想いがあったんですよ。「ガーネット」のアレンジもしてもらったし…もともと小谷美紗子さんが大好きだったんで、インディーズの頃から“いつか佐藤準さんにアレンジしてもらいたい!”って思ってて、1stアルバムの『やさしい花の咲く場所』で初めてアレンジをしてもらったんです。その後も肝となる曲のアレンジは全部お願いしていてたんで、「楔 -くさび-」は準さんしかいないって。

ストリングスが入って奥行きや深みはもちろん、広がりが出て、よりドラマチックになった印象があります。

うんうん。もとの弾き語りの世界観はそれはそれとして、新しい「楔 -くさび-」ができたと思ってます。

3曲目に「楔 -くさび-」のライヴバージョンが入っているので、弾き語りの世界観はそこで味わえますね。

インディーズのアレンジとちょっと違うんですけどね。イントロとか。でも、弾き語りならではの自由さがあるというか…ライヴ音源がいいなって思ったんですよ。今回の「楔 -くさび-」で初めて奥華子を知ってくれた人に、“あっ、ライヴだとこんな感じなんだ”ってのを知ってもらいたいと思って。「楔 -くさび-」「花火」がインディーズの曲なので、もう1曲は新曲でってことも考えたりしたんですけど、やっぱり他の要素を入れたくなかったから、「楔 -くさび-」の弾き語り音源だといいかなと思ったんですよね。

でも、結果的に10周年記念シングルらしくなりましたよね。

そうですね。良かったです(笑)。

カップリングの「花火」もインディーズ時代の曲なのですが、この選曲というのは?

インディーズで初めてシングルとして出した曲で、お店の人がポニーキャニオンの人に“こんなすごい子が千葉で路上ライヴをやってるよ”って「花火」のCDを渡してくれたんですよ。そのCDが当時のディレクターの手に渡って、“この子、いいね”ってなってメジャーデビューさせてもらったんです。だから、この「花火」がなければ、ポニーキャニオンにいないかもしれないし、ずっと路上でやってたかもしれないし、もしかしたら今は歌ってないかもしれない。そういう意味では、確実に私の人生を変えた曲だと。っていうことで、10年前のデビューのきっかけとなる「花火」を今回入れようと…まぁ、完全に私の自己満足なんですけどね(笑)。

そんな「花火」にもストリングスが入っていて、そのアレンジを伊藤彩さんがされているわけですが。

ストリングス以外はスタジオミュージシャンの方とやってるんですけど、伊藤彩ちゃんには弦のアレンジをお願いして。ライヴとかレコーディングでずっと一緒にやってくれているから、すごく信頼もしてるので、もうお任せでやってもらいました。そしたらものすごく素敵なアレンジで…弦を録音している時に泣いちゃいました。

ちなみに、この曲が生まれた背景というのは?

これはですね…2004年に路上ライヴを始める前、今の事務所の社長に出会って“こんなんじゃダメだ!”って言われて、1年間ぐらいとにかく曲を作るっていう時期があったんですけど、その頃に作った曲ですね。分かりやすくてメジャー感のある曲…そういう課題を自分に与えながら作った曲です。「楔 -くさび-」は恋愛小説みたいな感じがするけど、「花火」は絵本っぽいというか、映像が浮かぶ曲ですね。実体験を曲にしたというよりも、夏の終わりの切なさや儚さと恋愛を重ねて作ったという感じです。

内気な男の子の切ない気持ちを歌っているせいか、すごく曲に入りやすかったです。切なさが伝わるというか。

やっぱりね、主人公を“僕”にすると切なくなるんですよ。

男のほうが女々しいですからね(笑)。

ですよね(笑)。男性のほうが純粋なんですよ。女は現実的なところがあるので。だから、本当に切ない曲を書きたい時は“僕”を主人公にすることが多いですね。

今回の「楔 -くさび-」も「花火」もライヴでずっと歌っている曲だけに、歌入れはすんなりといきました?

どちらの曲も歌い慣れているスタジオで録ったんですけど、何回も録り直しましたね。昔の曲をもう一回歌うのって実は大変なんですよ。昔に録ったものが全てだって、自分の中で思っちゃっているから。ライヴでやるのはいいんですけど、録音ってなるとまた違うんですよね。変にこなれちゃってて、伝わらないんですよ。“よし、これでいこう!”ってなっても、もう1回聴くと“いや、違うな”ってなって、何回も録り直しましたね。特に「楔 -くさび-」は。

1回完成させたものを、また違うかたちで完成させないといけないから大変なんですね。

うんうん。初めて聴く人は昔の音源を知らないし、それこそ奥華子を知らないっていう状況で、どう伝わるかってことだと思うので、そこは客観的に意識しましたね。ノリで歌うんじゃなくて、“ここはこういうふうに歌いたい”って一行一行、確かめる感じで。

そして、今年もまた長い弾き語りツアーが始まるわけですが、“10th Anniversary”と掲げているだけに、これまでの10年を紐解くようなライヴになる感じですか?

そうですね。アルバムのツアーではないので、自由に選曲していきたいと思ってます。“この県ではこういうことがあったな”とか“ここではこの曲が人気あるな”とか…県ごとにいろんな思い出もあるので、そういうのを振り返りつつ感謝を伝えるツアーにしたいですね。このツアーをどう終えるかによって、また自分自身が変わるような気がするので、すごく大事だと思ってます。

ファイナルの東京はスペシャルライヴなんですね。

バンドとカルテットになります。去年の年末にカルテットでのライヴを初めてやったんですけど、それが結構好評だったんで、7月に大阪でもやろうってことになって、東京でのファイナルは全部一緒にやって、お祭りみたいにしちゃおうって。…まだまだ先だと思ってたんですけど、結構すぐに来そうだなぁ(笑)。
「楔 ‐くさび‐」
    • 「楔 ‐くさび‐」
    • PCCA.70441
    • 2015.07.22
    • 1080円
奥華子 プロフィール

オクハナコ:シンガーソングライター。キーボード弾き語りによる路上ライブをはじめ1年間で2万枚のCDを手売りし驚異的な集客力が話題となり2005年メジャーデビュー。劇場版アニメーション『時をかける少女』の主題歌「ガーネット」で注目を集める。聴く人の心にまっすぐ届く唯一無二の歌声は年齢問わず幅広く支持されている。また数々のCMソングや楽曲提供を手掛けるなど活躍の場を広げている。奥華子 オフィシャルHP

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