【木村カエラ】“いくぞ!”という今
の気持ちがそのまま入っている

今年メジャーデビュー10周年を迎えた木村カエラ。自身のプライベートレーベル『ELA』のオリジナルアルバム第一弾として『MIETA』をリリースした。“最強モード”という状態にいる彼女が生み出した今作は、前向きなパワーに包まれている。
文:桂泉晴名/ライヴ写真撮影:上飯坂 一

乗り越えて生まれたポジティブな言葉 
カエラが送る“頑張れ”のエール

木村カエラが12月17日に2年振りとなるアルバム『MIETA』を発表した。一曲一曲が明るいエネルギーを放っていて、スタートするごとにワクワクする気持ちが止まらない作品だ。その感覚を裏付けるように、彼女はオフィシャルインタビューでアルバムの方向性に関し、次のように語っている。
木村カエラ
「全部が前に進みたいっていうモードで書くのは初めてだったんですよね。今回は自分の内面に入り込んで、ひとりぼっちな感覚で歌詞を書くっていう作業をしなかった。それでも、すごくたくさん歌詞が降りてきたから、書くのも楽しかったし、作るのも楽しかったんです。変に頭で考えて作るというよりは、今の“いくぞ! “っていう気持ちがまんま入ってる」
しかし、ただポジティブなわけではない。前向きな言葉の中には、これまで彼女が乗り越えてきた葛藤や涙が滲み出ていて、だからこそ心の奥に響いてくるのだと感じた。
例えば、“悲しみを乗り越えて輝こう”と背中を押す1曲目の「one more」。この中に《僕に無くて 君にしかないものがあるだろ それが一番のプレゼントなんだよ》というフレーズがある。相手を力強く励ます言葉は、“自分の存在意義はなんだろう?”と悩みに悩み抜いて、答えを見つけた者でないと出てこないだろう。実際に彼女もこの曲に込めた思いについて下記のように解説している。
木村カエラ
「何かをやってのけることは大変だし、諦めるほうが簡単だし、何かをやり遂げようとする時には絶対に一度、自分を見失ってしまう。私と同じように悩んでる人に“頑張れ! これからだぞ!”って声をかけてあげられるような曲になるといいなと思ってます」
続く2曲目、音楽の素晴らしいところや、後戻りせずに新しい世界に行きたいという思いを書いた楽曲「sonic manic」には、《カラフルヒューマン 嫌なアイツも わはは!知らんぷり》という詞がある。どんなに心を尽くしても、世の中には自分と合わない人はいる。“気にしないで、好きなものを抱きしめればいい”というカエラのエールが、80年代の電子音楽の懐かしさが漂うサウンドに乗って伝わってくる。
そして、すでにシングルカットされている5曲目の「OLE!OH!」は、落ち込んでいる自分を励ます応援ソング。迷った自分を正直に吐き出し、昇華させているからこそ、明るいパワーがこのアルバムを彩っていると感じた。
では、なぜ彼女は“ひたすら前を向きたい”という心境に至ったのだろうか。そのキーワードになるのが、3曲目に収録されて、シングルカットもされている「TODAY IS A NEW DAY」であるという。
木村カエラ
「出来上がった時に、これは今までの曲の中で、一番自分が勇気付けられる曲だなって思ったの。もうこれでいいんだって。届く人/届かない人はいると思うけど、私は、この曲を聴いたら元気になる。だから、これはもう、私の歌。“絶対いいよ!”って言えるものが10周年の時にできてすごい嬉しかったっていうのもあるし、これからはポジティブに行けるっていう感じがあった」
確かに「TODAY IS A NEW DAY」を聴いていると、嵐のようなバンドサウンドの中、自由に泳ぎ回る木村カエラのヴォーカルが、“悩みを飛び越え、その先へ行こう”と誘っているようだ。《くじけるなよ グサッ刺さって傷ついても 誹謗中傷の暴威 NO!SAY NO! SAY NO!》と鼓舞するような歌詞を叫べば、嫌なことも吹き飛んでしまうだろう。
しかし、彼女はここに来るまで、10年かけたのだと語る。
木村カエラ
「私はデビュー当時から、音楽で人を元気にしたいし、幾つになっても夢を持っていてほしいなって思ってたけど、ようやく今、自分が人に向けて歌える状態になったというか。だから、このアルバムには、自分がポジティブになった感覚だったり、すごく開放的になった感覚だったり、悩みから抜け出していく途中経過や、そこから抜け出したとこ、それに、時が過ぎて分かったことが入ってて。音楽って、やっぱり聴いてて元気になるし、私の曲を人が聴いてくれた時にポジティブな気持ちになってもらいたいなって思って」
決して近道をせず、一歩一歩階段を上るように歩んできたカエラ。10年という長い年月の中で熟成された思いが、この作品でついに花開いた。
また、このアルバムのもうひとつの特徴は、ポップ、ロック、エレクトロと幅広いジャンルの楽曲がそろっていること。シングル「OLE!OH!」がポップサイド、「TODAY IS A NEW DAY」がロックサイドとして対になって発表されていたが、4曲目の「MAKE THIS DREAM REAL」は、“私にとって少し新しいジャンル”とカエラが説明するように、POP ETC(カリフォルニア バークレイ出身の3人組バンド)によるダンスミュージックの要素が入った楽曲。そして、アルバムタイトル曲でもあり、口ロロの三浦康嗣とタッグを組んだ8曲目の「MIETA」は“音で1年の流れを経過させる”という実験をしていて、セリフも入った異色の曲だ。さらに、10曲目の「Wake up」はイントロにエレクトロの要素が混ざったバラードである。
カエラは「いろんなジャンルのものを持ってきてるので、なんか新しすぎて、どう受け取ってくれるのかなっていう不安は、やっぱり正直あります(笑)。でも、いいの、個人的にはすごく好きな作品になってますね」と言っているが、演者である彼女自身がまったくブレていないので、安心してさまざまな音楽の世界を旅することができるようになっている。そして、そんな彼女の根底に流れているのはロックとポップだった。
木村カエラ
「ロックとポップをもっともっと突き詰めたいし、それが極端であればあるほど、面白いんだろうなって思ってますね。真ん中をいくのはやめようって思ってる。好きなことをやっていたほうが、いい意味で、一歩前に抜け出せるんじゃないかなとも思ってて。今まではね、できることの幅を増やそうとしてたんですよ。でも、もう、この10年でいろいろチャレンジしたから、幅を増やさずに、自分のできることを突き詰めていきたいって思ってて。新しいことへのチャレンジも、自分がやりたいことを自分の信じる範囲でやったほうがカッコ良いなと思ってますね」
アルバム『MIETA』では、英語詞で“あきらめるもんか”と意思表示する楽曲「c’mon」、ニューウェイヴ要素を入れた「Satisfaction」、ひたすら《RUN RUN RUN RUN…》と同じ言葉が続き、おもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかなサウンドの「RUN」などが収録されている。まさに彼女の好きなものを突き詰め、その結果、個性が光る楽曲としてそれぞれ仕上がっている。

OKMusic編集部

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