【吉澤嘉代子】『幻倶楽部』はそれぞ
れの曲の主人公たちが集まる秘密倶楽

“ラブリーポップス一直線”で大きな注目を集めたデビューミニアルバム『変身少女』から5カ月。1曲ごとに濃厚なキャラが揃い、妖しさの裏にリアルを秘めた2ndミニアルバム『幻倶楽部』がついに完成。吉澤嘉代子が誘う秘密倶楽部へようこそ!
取材:宮本英夫

前回のインタビューの最後に“次はまた違う部屋を用意してます”と言っていて、まさにそういうアルバムだなと。

前作をリリースする前から構想はありましたね。どれをどういう順番でやっていこうかな?と思っていたんですけど。

前作『変身少女』が吉澤さんの素に近いものだとすると、今回は一曲一曲の物語性がさらに濃くなったのかな?と。

いえ、自分に近いというと『変身少女』が一番遠いと思うんですよね。『変身少女』というのは、女の子の妄想や滑稽さを物語として書いたつもりだったんですけど、やっぱり自分にはそういうイメージが付くんだなぁと。だからこそ、今回はもっとガラリと変えたいという気持ちはありましたね。

あ、そうか、ごめんなさい。確かによく考えたら“変身少女”という時点で自分じゃないものに変身しているわけですよね。

私は自分の等身大を出すのがすごく苦手なので、なるべくそうじゃないもの、生々しくないもの、物語として曲を作りたいという気持ちがすごく強いんです。主人公に成り切って、自分じゃない誰かに変身するというような。

そういう意味で、今回はすごくキャラの強い役が多い。

濃い役が多いので、やり応えがあります(笑)。

アルバムをまとめるコンセプトは最初にあったのですか?

今回は“おどろおどろしさ”というイメージがあったんですけど、全部バラバラなのでひとつには括れなくて。それぞれの曲の主人公たちが集まる秘密倶楽部みたいなイメージで“幻倶楽部”というタイトルを付けたんです。物語性のある曲が、より分かりやすく出てるのかなと思います。

例えば、「シーラカンス通り」には妖しいキャラのストリッパーが出てきますが。

三島由紀夫さんの『黒蜥蜴』を読んで、“なんて素敵なんだろう”と思って、装飾された華美な文体を使って書いた曲です。同人誌を作る人はこういう気持ちになるのかなと思うんですけど、好きすぎてサイドストーリーを作っちゃうという感じです。

「うそつき」は?

自分の中で大きい嘘をついたことがあるんですよ、周りの大事な人たちに。それがすごく辛くて、その時期に書いた曲です。恋愛の歌になりましたけど、もともとは全然違うものでした。で、その時に思ったのが、嘘というものは本当のことを隠すためにつくものだから、嘘の真ん中にはいつも本当のことがあるんだな、と。

「恋愛倶楽部」は中学生女子とかが本当にこんなことをやっていそうな可愛らしいテーマの曲ですけども。

確かに。でも、中学生の時ってかたちとしてなくても恋愛倶楽部状態じゃないかな?と思うんですよね。“○○くんは今日はこんなことしてた”とか、そういう情報がしょっちゅう入ってきたりとか。《男はエクレア》というのも、迷信みたいな情報を本気で信じる思春期の、可愛い、カッコ悪い、ダサい感じを出したくて。それが主人公にとっては正義なんですよね。そういう滑稽さを書きたかったんです。

それとはまったく逆に、「ちょっとちょうだい」みたいな化け猫系の曲は、どこから思い付くのかな?と。

“ちょっとちょうだい”という言葉がふと気になって、考えたら怖くなってきたんですよね。“ちょっと”が“もっと”になって“全部”になったら?と思って、化け猫の曲になりました。何でも“ちょっとちょうだい”という人はもしかして…って。これは歌うのがすごく楽しかったです。設定が自分から遠いので、主人公に成り切れて、私が子供だったらこれを聴いたらすごい怖いだろうなってワクワクしました。

いつの間にか全曲解説になってますが(笑)。「がらんどう」は?

角田光代さんの本に“がらんどう”という言葉が出てきて、いい言葉だなと思って、そこから恋愛の歌ができました。恋に溺れすぎて心がいっぱいになっちゃったから、その人がいなくなると心ががらんどうになってしまう。また違う人で満たそうとするけれど、結局自分自身を満たせるのは自分しかいないということに気付いてほしいという歌です。女の子の成長の歌ですね。この曲の中で恋は実ってないけれど、この主人公は自立できて良かったなという感じです。

この子、弱そうに見えて実は強いんじゃないですか?

自分で手放す強さを持ってほしいということですね。

僕は男ですけど、女性にいっぱい届いてほしいと思いますよ。こういう繊細で強い子はいいなぁと思うので。

今回は女の子に向けたというか、男性を排除した曲が多かったですね、考えてみたら(笑)。「ケケケ」もそうだし。

「ケケケ」はすごい曲ですよ。歌詞だけさらっと読むと特に思想的ではないんだけれども(笑)。

「ケケケ」はみんなが当たり前に思っていることに対して疑問を持つことがブームになっていた時期に書いた曲で、たまたまムダ毛というところに焦点が当たったんですけども。疑問を持つこと、自分の物差しを持つのは、すごく大事なことだと思うので。毛に関してもそうですよね。男性は腕毛を剃らないのが普通ですよね、アイドルの方は別にして。

まぁ、そうですね(笑)。

でも、女の子が剃らないとギョッとされる。その差は何だ?というところから作った曲なので、一番思想があると言えばあるんですよ、「ケケケ」は。

こういう話でみんな盛り上がってほしいんですよね、吉澤嘉代子をサカナにして。

“あなたは剃る?”って(笑)。

すごく楽しいと思う(笑)。これから、まだまだいろんな引き出しがあるんでしょうね。すごく楽しみ。

いろんな角度を付けてやっていきたいと思ってますね。ここまで物語性にこだわってやってきたので、それを裏切りたいなというふうには思ってます。
『幻倶楽部』
    • 『幻倶楽部』
    • CRCP-40386
    • 2014.10.22
    • 1800円
吉澤嘉代子 プロフィール

ヨシザワカヨコ:1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場育ち。14年メジャーデビュー。バカリズム作ドラマ『架空OL日記』の主題歌として「月曜日戦争」を書き下ろす。17年10月に発表した2ndシングル「残ってる」がロングヒットする中、18年11月7日に4thアルバム『女優姉妹』をリリースする。吉澤嘉代子 オフィシャル HP

OKMusic編集部

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