【竹友あつき】“優等劣等生”シンガ
ーソングライター

同世代だけで築かれる特殊社会、学校。“普通”という現役高校生が紡ぐリアルな日常は、ルールなき普通さで問いかけ、居場所という果てなきテーマに向かう自分探しへの序章。
取材:石岡未央

さて、現役高校生でのメジャーデビューとなりますが、この“優等劣等生”というキャッチフレーズは?

これは僕が自分で考えました。

作品全体的にだけど、居場所を求めているような感覚がベーシックにあるのかな?

そうですね。優等生になるには相当な努力が必要で、かといって劣等生と言われるぐらい、何もやらない潔さみたいなものもない。だからこそ、“普通だよね”と言われることに対して違和感や居場所のなさを感じたりしてたんです。でも、優等生と劣等生が端と端だとしたら、僕自身がそうでもあるその間の人たちにスポットライトを当てて歌っていくシンガーソングライターになりたいと思って、その言葉を考えました。

その感覚でできた代表曲が「17歳」ってこと?

もともと曲作りを特別視…選ばれた人だけができる行為とか思ってなくて、純粋に曲作りをすることが好きだったので、自分の芯を持たずにどんな曲でも作ってみたいっていう好奇心だけが強かったんです。で、たまたま学校生活でのことを赤裸々に真っ直ぐ書きたいって思ってできたのが「17歳」なんですが、自分的にも気持ちが晴れたり、共感してくれる人がいるかもしれないなって。

憤りというか、大人っていうものに何か思ってたりするの?

大人というより…先生が苦手なんです。

はいはい(笑)。

でも、“ふざけんなよっ!”って言ったら成績下げられるかもしれない、それは怖い、じゃあ媚びます、みたいな生き方だったんです。そういう憤りですかね。でも、先生って自分の立場を守ってくれる存在でもあるので、そこは理解しつつで…。

《先生は公務員 いつの日も 「常識」や「道徳」を板書する》というフレーズは?

ちょっと離れた視点から、常識や道徳しか書けない人たちだよね…くらいのニュアンスですかね。あなたは何がしたいの?くらいのトーンなんです。“先生クソヤロー”でも“バカヤロー”でもなくて、《先生は公務員》という歌詞は、自分の感情をうまく表現してくれる言葉なので絶対に変えたくなかった。でも、可哀想なところでもあって、やっぱり生徒の怒りの矛先って先生に向いてるなぁって…。

作品になると、思ってもない解釈をされるだろうってことは?

全然大丈夫ですね。不思議なことに、留めていた自分の気持ちを曲にして歌うとなった時に進化するというか。聴いた人の共鳴の仕方というのは、それぞれだと思うので、曲がひとり歩きして、いろんな解釈をされるのは、むしろ楽しみです。

根底のイメージは自分の中にしかないと思うんだけど、客観視されたアレンジメイクで、“えっ!?”とか思ったものは?

「16歳」ですね。バンドアレンジのイメージがあったんですけど、ギターとピアノでって言われた瞬間“いいかもしれない”って思って。レコーディングの時もいろいろとアイデアが出てきて、この曲はアレンジを呼んでたなって、すごい驚きで。

ちょっと、もやもや感のあるアレンジだよね。でも、全体はシンプルにすっきり仕上がっていて。

使ってるコードとか歌詞も、もやもや感のあるものなので、すごい絶妙なところだなって感激しましたね。あとは「ペンケース」。ポップを意識して作った曲で、明るいほうに突き抜けた。切なさや陰みたいなものもありつつ光が滲む感じを表現したかったので、そういう仕上がりになりましたね。

このサビの入口、疾走感というか心地良いよね。

何回も自分で聴いてます。

この曲だけ、ちょっと声の質感が違うように思ってるんだけど。すごく少年っぽい声で、艶やかで。

“こういう歌い方をしてみたら”って言われて、やってみたらすごいハマった。例えば、Aメロみたいな、ああいう元気でハキハキした明るい子、子供っぽく聴こえるような歌い方はしたことがなかったので。

歌い方のアドバイスがあったということなんだ。

はい。あと、サビにコーラスを何重にも重ねて録ってたりしてて、それもあって他の曲とは聴こえ方が違うんだと思います。

「オムライス」は、新婚さん?みたいな雰囲気だけど。

妄想タイアップというか、シチューのCMならこういうメロディーかなって作り始めたんです(笑)。そのメロディーが小学生時代の通学路の記憶や気持ちを呼び起こした感じですね。住宅街で夕食の支度を始める時間に帰ってたので、いろんな匂いがしてきて、“あぁ、この家はカレーなんだ”とか。

スムーズに景色が流れていって、ほんわか。

まさにそこですね。ほんわかです。どんなに悩んでても、辛くても、ちょっとふわっと、ほんわかな気持ちになれる場所だったり、救われる場面があるということを、この中でも表現するべきだなって思って、弾き語り曲として入れました。

そして、「感情報化社会」…こういう造語的なの上手いね。

普段、歌詞を携帯で書くことが多いんですよね。“書く”と言っても書いてないわけですよ。指で打ってる、でも、“書く”と言う。そこに違和感を感じたんですよね。“これ、おかしくないか?”と。言葉を紡ぐのに携帯を使っている自分が。

その感覚って、社会的に何か嘆いてたりとか?

もうちょっと個人的な“携帯に支配されてるな…自分”くらいの気持ち。でも、最後のサビ《あぁ 目指した未来は 今 五感を鈍らせているよ》と書いた時に、“きっと自分だけじゃないよね”と社会的に開けたというか。“あなたはどう?”みたいな問いかけの気持ちになって、相手が出てきたというか…。

でも、相変わらずスマホは使ってるわけだよね?

この曲を作ってから苦しめられてますね。戒めみたいな(笑)。携帯使いづらくなっちゃったりとか…。実際、1日携帯をどこかに忘れたことがあって、その時に“なんて不便で暇なんだ!”と思ったんです。会話に詰まったりとかという時に自ずと携帯をひとりひとり出し始める場面ってよくあると思うんですけど、そういう時に何もできない自分…置いてけぼりみたいな気持ちになったり。あと、電車で音楽聴けないとか。1日ないだけで“スマホ、スマホ”って思ってて…。こんなにも支配されてたんだと思ったんですけど、やっぱりそれ自体は大好きなんですよね、そんな歌を歌っておきながら(笑)。そこがある意味、リアリティーだなぁと。

(笑)。全体の曲順っていうのは?

スタッフみんなと相談して、今の自分の気持ちとしてストレートに出せる、そういう学校の曲を出していきたい、という話になって。僕自身、出したいわけですよ、今の気持ち。20歳になって「17歳」を歌っても、自分でも違和感ありますし、20歳になって教科書に落書きしてるというのも自分に素直な気持ちじゃないなと思ったので。そこの共通認識として引き寄せられた曲たち。で、曲順は僕が考えました。

「ズルいよ」が1曲目。《ずるいよ ずるいよ 勉強出来て スポーツ出来るやつ》…分かる。でも、“あれ? 一番ズルいじゃん”って思ったのね。現役高校生でデビューしちゃうわけだよね。

でも、スター性がないんですよ(笑)。

(笑)。どういうこと?

こんなに周りが騒がないヤツはいないと思います。“あの子がデビューするの?”って見にきたり、まったくない。テレビカメラが入ったのに誰からもその話をされない!(笑)。

微妙だね(笑)。

なので、デビューっていう看板を突き破って壊してしまうほどに、僕は“普通”なんだと思いますね。

逆に言うと普通じゃないよね(笑)。そして、EPの最後を締めたのが「identity」。

宿題がいっぱい出た時とか、書き写して出しても点数は一緒じゃないですか。でも自分がやった事実は存在しない。そこに心の弱さ、情けなさみたいな負い目を感じる自分がいて。じゃあ、俺なんなんだよ!って。何のために学校行ってるのか?と考えた時に、これはアイデンティティーのことかもしれないって。で、そこを明確にしたくて最後の《コピーしか出来ない 僕は誰なんだろう?》っていう歌詞を付け足したんですよね。ある意味“優等劣等生”という言葉を一番象徴する曲でもあるし、自分の中でも現状の自信作というか、純粋に最後を飾るのに相応しいなって思ったので。

ものすごく考えられているね。

ものすごく考えちゃうんですよね(笑)。

「ズルいよ」と最後の《僕は誰なんだろう?》(「identity」)がすごいリンクして、シンガーソングライターなんだなって一体感を感じるね。

でも、よく考えているようで基本的に全曲、曲も詞も2時間以内とかで書いている。その間に考えまくって、集中力で作ってるので瞬発力みたいなのは込められていますね。

今の居心地はとても良いということですかね?

とても良いですね(笑)。

周りの大人がたくさん動いてると思うんだけど。

すごいありがたいことに、メジャーデビューってなったら“ここの曲のこの歌詞変えろよ”とか“こういうタイアップきたから”…なんて、いかにもそういう曲を書けとか言われると思ったら案外そうでもなく…。

まだ、分かんないよ(笑)。

(笑)。まぁ、一部は書き換えたところもありますけど。それは、瞬発力で書いたので、客観的に見て変えたいなと思ってた部分だけなんで。さっき言ってた《先生は公務員》みたいな言葉とか、もっと柔らかい言葉に直せとか誰も言わなかった。そういう意味では本当に、自分の出てきたものそのままです。

人格を認めてもらってる感じだよね。

そこを否定されると、僕…やっぱり“曲=自分”みたいな部分もあるので。客観視する時もありますけど、自分から出てきたものなので、そこを否定されると自分も否定された気分になっちゃう。でも、そういうことを言う人はひとりもいないので、今のところは、居心地が良い…(笑)。やりやすい環境ですね。

劣等生ではないよね(笑)。しかも、自分で作り上げた居場所があるようだしね。

自分が作り上げたというよりは、本当いろんな人に支えられて、いろんな縁や運が重なってここにいられるのは、すごい嬉しいことですね。

そういえば、もう3年生なんだもんね。大学に進学しようとかは考えてるの?

進学する予定ですね。するっていうのが条件で契約になったので(笑)。作品を作っていくのには、いわゆる日常が大切というか。

確かにね。では、受験も頑張ってください(笑)。

『17歳』
    • 『17歳』
    • TYCT-60034
    • 2014.04.16
    • 1800円
竹友あつき プロフィール

タケトモアツキ:1996年6月25日生まれ、神奈川県出身。神奈川の高校に通う、現役高校生シンガーソングライター。幼少の頃から歌うことが好きで、音楽が好きで、気が付けば音楽に夢中だったという。Twitterを通じて出会った音楽プロデューサー浅田信一にその才能を見い出され14年4月、EP『17歳』でメジャーデビューを飾る。竹友あつき オフィシャルHP

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