【NIKIIE】自分の暗い部分をパワーに
して歌っている

“物質を分離し、検察し、精製する技法”を指すタイトル通り、自分の本質の部分を吐露し、それと向き合い、そして肯定して前に進む…そんな楽曲が詰まったミニアルバム『CHROMATOGRAPHY』。一見、暗く重く感じそうだが、それは音像も含め、聴き手に寄り添うものだった。
取材:土内 昇

前ミニアルバム『hachimitsu e.p.』はNIKIIEさんのサニーサイドを見せたのに対し、今作はディープな部分が前面に出ていますが、最初から対極のものを作ろうと?

『hachimitsu e.p.』の選曲をしている時に今作の選曲も一緒にやっていて、『hachimitsu e.p.』を出す時点ではサニーサイド…今までになくポップでキャッチーで明るいものを欲していたんですけど、その後に本質の自分も見てもらいたいと思うようになったんです。『hachimitsu e.p.』が円だとすると、『CHROMATOGRAPHY』はその芯みたいな感じにできたらいいなと思って、こういう両極端な作品になりました。

本質の部分というか、内面のディープな部分を晒した曲は1stアルバム『*(NOTES)』などにもありましたが、そういう曲だけで一枚の作品にするとかなり濃いものになってしまうと思うのですが、それは理解した上で?

そうですよね。でも、去年というのはデビューして過ごす初めての一年だったわけですけど、環境がガラッと変わったことで、自分の影の部分と向き合った時に影のかたちが変わってきたというか…『*(NOTES)』までの影の部分というのは、光があることは信じているのに心を完全に閉ざして歌っていたんですけど、ちゃんと出口のある影になってきてるなって。

そうなんですよね。『*(NOTES)』までの影は暗闇の中で膝を抱えている感じでしたけど、今作では暗闇の中にいながらも自分なりの光を目指して前に進んでいる感じがありました。

孤独や絶望だったりの自分の暗い部分をパワーにして歌っている…“この状況のままでも進んでいくんだ!”という強さが自分の中に生まれたから、こういう作品になったんだと思います。

そこに希望があるから身近に感じれたというか…一緒に笑い合った友達よりも、一緒に泣き合った友達のほうが絆が深いじゃないですか。そういう身近さを感じました。

うんうん。音像とかも聴き手に寄り添っているところがあって…それは無意識にそれを求めていたんで、なるべく寄り添った状態で歌いたかったんだなって。『hachimitsu e.p.』は天井を突き抜けていくような音の使い方をしていたんですけど、今回は音単体で聴くとすごく素朴で、それが重なってより近くに感じられるような音になっていると思いますね。

そんな作品の1曲目がアニメ『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』のエンディングテーマ曲でもあった、アダルティーなムードたっぷりの「Duty Friend」で。

実はアダルティーって言われてから“あっ、そうなんだ!”って(笑)。タイアップのお話をいただいた時に自分から“この曲はどうですか?”と提示させてもらって、そこからアレンジをしていったんですけど、この曲を書いた時点でリズムのグルーブ感とかは頭の中で鳴っていたんで…とはいえ、アニメの時代背景も汲み取って、アレンジャーの中島ノブユキさんと相談しながら作っていったんですけど。自分の可能性を広げてくれたというか、“こんなのは自分には合わないんじゃないかな”と思っていたけど、窓口を広げてくれたんで、この曲のレコーディングはすごく成長させてくれましたね。あと、この曲で良かったと思ったのは、『hachimitsu e.p.』と『CHROMATOGRAPHY』で陽の部分と陰の部分をはっきりと描こうと思った時に、そうなると歌詞の響き方がどうなるんだろうって考えていたんですけど、この曲の歌詞がちょうど中間にあるというか。

歌詞はクールなのですが、弱い自分が出ていますよね。

全曲そうなんですけど、自分の弱さを否定していないんですよね。出発点は暗いところだったりするんですけど、そこが違うところなのかなって。ちゃんと暗さを肯定しているから、その強さが一曲一曲に出ているような気がしていて…そういう共通点が、この5曲にはあるなって。

「Running Bird」は飛べない自分を受け入れているし、「Everytime」では《誰かと比べ見失うのは もう止めた》と歌ってますしね。

そこは共通してますね。自分の人生なのに誰かの人生になっている瞬間があって…そんな必要はないんだけど、どうしても横と見て比べてしまって、自分に制限をかけてしまうっていうか。でも、そうしないで自分は自分として生きると決心した時に、やっと次が見えてくると私は思ってるんですよ。

あと、《我慢しないで負けたら良い》と歌う最後の「harmonic harmonist」はアコースティックということもあって、すごく聴き手に寄り添っていると思ったのですが。

ピアノとアコギの違いをいつも思うんですけど、ピアノは自分と向き合っている楽器で、ギターは抱えて人と向き合っている楽器だと思うんですね。だから、ダイレクトな感じがするというか…アコギって構造上、音を響かせるためにボディに穴が空いているんですけど、そこから自分の気持ちがドーンって出ている感じがするんですよ(笑)。なので、この曲はピアノじゃないなって。

なるほど(笑)。今作ではサウンド的にもいろいろなチャレンジも多そうですね。

多かったです。…けど、出来上がってみて、ちゃんと自分の一部になった感じがすごく強いですね。

だから、歌詞はディープかもしれないけど、聴いた感じでは重く感じないんでしょうね。

そうですね。全体的に通して聴いてもらって“うわ~、暗かった”というよりも、全部が吐露している歌詞なんですけど、それを受け止められるサウンド感になっていると思いますね。

そんな本作を引っ提げたツアーが、オールスタンディングで小さいライヴハウスを回るというのも頷けます。互いを近くに感じ合うという感じで。

そうですね。まだどんなライヴにするかは考えてないんですけど、ベースも入っての初のフルバンドになるので、より表現の幅が広がっていくと思うし、いろいろチャレンジしつつ、出会う人と想いを共有したいと思います。
CHROMATOGRAPHY日本コロムビア
    • 初回限定盤(DVD付)
    • COZP-709~10 2100円
    • 通常盤
    • 1680円
NIKIIE プロフィール

ニキー:茨城県出身。4歳でピアノ教室に通い、16歳の夏に作詞作曲を始め音楽活動を開始し、高校卒業後に上京。2010年12月にシングル「春夏秋冬」でデビューすると、同曲はパワープレイ歴代女性アーティスト獲得記録を更新した。そして、翌年7月には1stフルアルバム『*(NOTES)』を発表し、初の全国ツアーも成功させた。オフィシャルHP
公式サイト(アーティスト)

OKMusic編集部

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