L→R 北川悠仁(リーダー)、岩沢厚治(サブリーダー)

L→R 北川悠仁(リーダー)、岩沢厚治(サブリーダー)

【ゆず】J-POPの中で本当のオリジナ
リティーを追求していく

ゆずの1年4カ月振りのニューアルバム『2-NI-』は、シンプルでいながら壮大なサウンドに彩られた初のコンセプトアルバム。“大切なものはすぐ側にある”というメッセージが深く胸を打つ、魂が込められた大作だ。
取材:宮本英夫

『WONDERFUL WORLD』は遠くではなく目
の前に答えがあった

コンセプトのしっかりした、聴き応えのあるアルバムになりましたね。

北川
前々作の『WONDERFUL WORLD』を作った時にひとつの投げかけをして、それに対して前作『FURUSATO』を経てこの『2-NI-』で答えが出せたかなという感じがしてます。『FURUSATO』のツアーの終わりのほうで、「桜会」を作っている頃だったんですけど、個人的なラブソングがいろんな人につながっていくことに気付いて、もしかしてこれが“ワンダフルワールドって何だろう?”という問いに対する答えじゃないかと。次は“2”をテーマに作品を作ろうということは、その頃からありました。ただ“2”といってもすごく抽象的な概念だから、まず曲で説明しようと思って、「ハモ」と「Hey和」を一番最初に作って持って行ったんですよ。“こういう方向性で作っていきたい”という柱をバン!と建てて、そこからふたりで残りのピースを埋めていきました。
岩沢
やりかたはお互いに違えど、『2-NI-』というゴールに向かって行くのは同じなので、目標はしっかりしてましたね。曲を作っている時も、例えば“アルバムの6曲目を作ってる”とか、そういう意識だったので。もちろん曲を単体としてブラッシュアップしていくんですけど、『2-NI-』に入れるための曲を作っているという感覚ですね。

“2”というテーマをさらに掘り下げたいんですけど、北川くんはどんなところに“2”を感じていたのですか?

北川
たくさんあるんですけど、まずこのふたりの関係性の中に、よく見るとすごい真理があると思ったんですよ。声も全然違うタイプだし、ライフスタイルも全然違うんだけど、ゆずになってふたつの声が合わさった時に僕らにしかできないものが生まれていく感覚があって。それを大きなことで置き換えれば、太陽と月があってこの世界が動いているとか、光と影があって全てのものが成り立っているとか、男性と女性とか、親と子とか、仲間同士とか、僕らと僕らの音楽を聴いてくれる人とか、全部とつながるんですよ。裏テーマとして“ミクロとマクロ”というのもあって、そういう一見ふたりだけの関係性とか、自分たちにしか分からないようなことでも実は宇宙につながっているとか、そういう感覚ですね。言葉にすると大げさに聞こえるかもしれないですけど、真理は身近にあると思ったんです。僕らは“ワンダフルワールド”を遠くに探していたんですけど、目の前に答えがあったと思うし、それがすごくうれしかった。“大切なものはすぐそばにある”なんて昔からみんな言ってるし、ある種ありふれた価値観なんだけど、それをものすごく実感することはそんなにない気がしていて。だけど、特に昨年は『FUTATABI』というふたりだけのコンサートをやって、改めて自分たちの持つ強さを実感して、全然タイプの違うものが重なり合う素晴しさを肌で感じた経験をしたので、一巡してやっと気付いたというか、“やっぱりここだったな”という感覚ですね。そういうプロセスを踏まないと気付けないものはたくさんあると思うし、それが『WONDERFUL WORLD』のひとつの答えだったということがうれしいです。

テーマは一貫してますけど、曲調は今まで以上に多彩でポップに仕上がってますね。

岩沢
今回すごく大事にしたのは“シンプルな中に壮大感を出せないか?”ということで、少ない音数でいかに大きく聴かせられるかがテーマだったと思います。たくさんストリングスが入ってる曲もありますけど、基本はシンプルですね。例えば「背中」という曲は、アレンジャーの蔦谷(好位置)くんが“木管楽器にしようか? チェロにしようか?”とか、“どの音が「背中」の世界観を表現するのに合ってるかな?”ってずっと考えて、最終的に辿り着いたのがピアノの音だったんですよ。今回は本当にその曲に合った楽器を選んで入れられたと思うし、ゆずの持っている素材をふんだんに生かしたアレンジになってると思います。
北川
それと“対極にあるものをぶつける”というのもありましたね。これは僕自身が凝っていたこともあって、大陸的な雰囲気やケルト的な音色をたくさん入れてるんですけど、だからって大陸的なことを歌ってるわけではなく、「代官山リフレイン」みたいにすごく身近なことを歌ったものにケルトっぽい楽器をぶつけるとか。「桜会」もそうで、ラブソングなんだけどちょっと民族音楽っぽい感じがするとか、「第九のベンさん」だったらクラシックにパンクをぶつけるとか、そういう“2”もあるなと思っていて。

その「第九のベンさん」はアルバムの中でひときわ目立ってますよね。

北川
クラシックにパンクをぶつけるというテーマで、早い段階からアルバムのこの辺にそういう曲が欲しいなと思っていて、架空のバンドを作ってやろうということを決めてました。こういうのはノリでやる曲なんですけど、クオリティーや歌詞のメッセージはちゃんとしたものをこっそり忍ばせておきたいという気持ちもあって、最後にブラッシュアップする作業は丁寧にやりましたね。演奏は一発録りで、TRICERATOPSと一緒にやってます。

ちょっと意外な組み合わせな気がしたんですけど、ばっちり息が合ってますね。

北川
音楽のタイプは違いますけど、同じ世代で音楽が好きでずっとやってきてるし、一緒に悪ふざけをやりたかったんですよね。イベントで一緒になってよく話すことも多かったし。
岩沢
彼らもTRICERATOPSとして誰かのレコーディングに参加することはなかったらしいので、お互い新鮮な気持ちで、お互いのレコーディング風景を覗き合うみたいな感じでしたね。10年以上やってきた同年代ならではの悪ふざけが、いい感じで出たかなと思います。

こういう楽しい曲も『2-NI-』の世界には必要だったと。

北川
そうですね。全体の設計図を書いた中で、欠かせないパートでしたね。

ポップスに昇華させるということは“人
とつながれる”ということ

そして、アルバムの最後を締めるのは、シングルにもなった「Hey和」。この曲については、初回限定盤付属のDVDに詳細なドキュメントが収録されているので、リスナーの方はぜひそれを見て確かめてほしいんですけど、1曲にほぼ1年近くを費やして作り上げた大作になりましたね。

北川
今までにも「逢いたい」とか、作るのに苦労した曲はたくさんあるんですけど、「Hey和」の場合は何を言いたいのかが分からなくて苦労したんじゃなくて、言いたいことが明確にあったんですよ。彫刻に近いというか、石があってなんとなく完成形も見えていて、それに辿り着くために一生懸命削っていく作業でした。“平和”にはいろんな概念があって、例えば“世界の平和”と言われても遠くにある存在じゃないですか? そうじゃなくて、身近に感じる平和を描きたかったんですよ。ドキュメントの中で戦争体験者の方たちに取材させてもらってるんですけど、曲を聴く人はその方たちと会っていないから分からないだろうし、それを押し付けるつもりもないんですよ。だけどそんなことを知らなかったとしても、曲を聴いた時に自分の今の日常のことと重なったり、平和な気持ちになれたり、そういうことを目指しました。

今振り返ると、この曲にここまでの時間と労力を費やしたのは、何が北川くんをそうさせたと思いますか?

北川
一行目で“神は僕らの心の中にある”と歌ってるんですけど、やっぱり“神”とか“平和”という言葉を使うのは覚悟がいるし、それぞれによって概念が違うから誤解を生むこともあるじゃないですか。だから、より丁寧に責任を持って作ろうと思ったんですね。僕だけの思いならそのまま出せばいいんですけど、これはゆずの作品なので、ゆずとして出す以上はポップスである必要があると思っていて、そこに“神”や“平和”という概念が入っているから、それをポップスにどう昇華させるかということですね。ポップスに昇華させるということは“人とつながれる”ということで、一方通行じゃなくてその人の心の中で生きていく曲を届けるということなんですよ。ポップスは5分ぐらいのもので言葉が限られてるから、言葉ひとつ、譜割ひとつ変わるだけでもずいぶん印象が変わるので、“俺がこれを言いたい”というよりは、“どうやったらこれが届いて、その人の中で生きてもらえるだろう?”という、その一心ですね。そこですね、時間がかかったのは。いっぱい言葉は選べたし、いろんな言葉があったんだけど、“これしかない”という言葉を、シンプルで明確に出したかったんですよね。

1曲に何カ月もかけるというのは、今の時代にはまずあり得ないことなので。そう考えても、この曲の存在価値はとても高いと思います。

北川
なぜか分からないけど、“とにかくいいものを作ろう”という気持ちがあるんですよ。一心不乱に。僕らはJ-POPというところにいて、その中で本当のオリジナリティー、本当の作品性を追求したいというか…今は1曲だけでもダウンロードできるし、現れては消えていってしまうものもあるけれど、僕らはアルバムというものにこだわっていて、アルバムで聴いた時の感動や作品性を、こういう時代だからこそそこを追及したいなという思いがあったんですよね。別にアンチテーゼではなく、何を大事にするかというと、僕らはポップでありながらオリジナリティーや作品性を大事にしていくべきだと思ったので。周りのみんなもその気持ちを分かってくれて、一緒に必死になってやってくれたし、自分にとっても特別な曲です。今だけのことじゃなくて、50年、100年先に残るような曲を書きたいと思ったし、商業音楽の中にいるけど、作品として誰かの中でずっと生きていくような曲になればいいと思ったので、大切に作りました。
岩沢
この手の曲はいくらでも長くできると思うんですけど、言いたいことがありすぎて“長いよこれ”って言われてしまうのは良くないなと思っていて。でも、これは5分45秒ですから、それがすごいんじゃないですかね。これが3番も4番もある長い曲だったら、もっと言いたいことが言えたのかもしれないけど、それは文章にするべきで歌詞にするべきじゃないと思うから、そこの工夫にとても苦労してましたよね、北川さんは。僕は一緒に歌ってますけど、制作の時はいちリスナーの耳も持たなきゃいけないので、そういう感想もちゃんと言うようにしてました。

リスナーに届いてこそポップスだと。

北川
そうです。この『2-NI-』ができただけでは未完成で、これが聴いてくれる人に届いて、何かを感じてくれたことで初めて作品として完成する気がするんですよね。

伝えるための大事な場所として全国ツアーも発表されました。3月から6月にかけて大きなアリーナを回りますが、どんなツアーにしたいですか?

岩沢
『2-NI-』を引っ提げてのツアーなので、もちろんアルバムの曲をやるんですけど、かっちりとコンセプトを決めて作ったわりには自由度の高いレコーディングができたなと思っているので、それをそのままステージで表現できればいいなと思ってます。アリーナツアーは何度もやらせてもらってるんですけど、アリーナだからこそできる挑戦というか、もっとできることはあるんじゃないかというところを追求して、今まで観たことのないステージを観せたいなと思ってます。
北川
去年『FUTATABI』というふたりだけのツアーをやって、それがすごく自由度が高くて音楽を楽しめたので。今回はアリーナですけど、アリーナでは僕らはずっとエンタテインメントをやり続けてきたので、エンタテインメント性もありつつ、僕ら自身が音楽を自由に楽しめて、そのことでお客さんも自由に楽しんでもらえるようなものにしたいなと思ってます。アルバムを聴き込んで、ぜひ一緒に…「第九のベンさん」を盛り上がってほしいなと思います(笑)。
岩沢
それかい!(笑)
2-NI-
    • 2-NI-
    • 通常盤
    • SNCC-86922
    • 2011.02.16
    • 2940円
ゆず プロフィール

ゆず:1996年3月に結成。横浜、伊勢佐木町を中心に路上ライヴを行なう中、98年6月にリリースした1stシングル「夏色」で脚光を浴び、その後も「栄光の架橋」「虹」とヒット曲を世に送り出す。等身大の視点から投げ掛けられるリアルな歌詞、センチメンタルで清涼感のあるメロディー、それらを包み込む素朴で温もりを帯びた音色で多くのファンを魅了し続けている。ゆず オフィシャルHP
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