取材:石田博嗣

自分の根底にある想いが表現できた

ロック村を出たと語ってくれた「出せない手紙」から1年、「ハロー ワーク」は今までのヒリヒリとしたものではなく、メロディーが強い楽曲に仕上がりましたね。

でも、俺の中では、今までのソリッドなバンドだと言われていた時代の作品が言っていることよりも、ヒリヒリしていると思うんですよ。なぜそう思うのかって言うと、以前は思想家みたいな感じになってたんですよね。人間の内面をえぐるようなことをしたかったんですけど…例えば、お茶碗を洗った時のカチンという音だったり、スリッパを履いた時のパタパタと鳴る音、そういう音とか空気感からどんどん遠ざかっている気がするんです。そういうものよりも、暮らしに根ざしたものの方が鋭利なのかなって。というのも、俺、去年の春夏ぐらいに豆腐をリアカーに乗せて売り歩くっていう仕事をしてたんですよ。その仕事を通していろいろ思うことがあったんで、それを歌いたいなって。だから、極めて実体験なんです。“ハロー ワーク”っていうタイトルなんですけど、“やぁ、労働!”っていう意味合いであって、失業の歌ではないんで(笑)

実体験の中で感じたことなので、以前の思想家みたいに頭の中だけで考えていた頃とは、思うことも違うでしょうね。リアリティーがあるというか。

“事件は会議室で起こっているんじゃない!”っていうのと一緒で、現場感みたいなものがあるんですよね。バンドだけをやっていた頃とは、出てくるものが全然違いましたね。

その歌詞ですが、“いいことばかりでもないけど まんざらじゃない”と現実を前向きに捉えているところが印象的でした。

“毎日楽しくて、人生最高だぜ!”って俺は思えないし、そういうふうに思える人ってそんなにいないと思うんですよ。でも…例えば、俺が豆腐屋の仕事をしてた時、朝の9時から夕方の6時まで1日9時間ぐらい歩くし、あまり売れないとボスみたいな人に怒られるんですけど、仕事が終わった後の缶ビールが100倍ぐらいうまかったり、夕飯も死ぬほどおいしかったり、常連のお婆ちゃんがカルピスを用意してくれてたりして、そういうことがあったから明日も頑張れたっていう。だから、“まんざらじゃないな”って思えるんですよね。

カップリングの「キミ、死ニ給ウコト勿レ」の“僕たちのココロの中にある 闇を捨てないで~”という部分が心に響いたのですが、そういう意味では同じことを言ってますよね。

『ハロー ワーク』も根底には、この曲のそこの部分があると思いますね。自分の中の汚い部分だったり、黒い部分というのは目を背けがち…特に正直な人や心が真っすぐな人というのは、そういうところにすごく潔癖だと思うんですよ。もしかしたら、それが原因で自分で命を絶つかもしれない。俺はそういうことには反対派で、人間は生きることで美しくなる…“生きること=汚れること”かもしれないですけど、汚れることでどんどん美しくなる気がしてて。今までの曲の中にも、こういう気持ちが根底にあったんですけど、それがうまくアウトプットできた気がして、書き上がった時はちょっと感動しましたね(笑)

実生活に密着したシングルになりましたね。

朝起きて、出かけて、昼にちょっと休憩して、また夜まで頑張って、家に帰って酒飲んで寝る、っていうレベルの空気感で自分の根底にある想いが表現できましたね。足下で鳴っている音…靴の裏あたりで鳴っている音ができたかなって。それがいろんな人の足下から忍び寄ってくれればいいなって思いますね。
アンダー ザ カウンター プロフィール

アンダー ザ カウンター:2002年結成。鋭利なサウンドと独特な歌詞で注目を浴び、05年にタワーレコード運営のNMNLレコーズより作品を発表。同年11月にメジャーデビューを果たした。アンダー ザ カウンター Official Website

OKMusic編集部

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