取材:榑林史章

雨という情景が描き出す、生と死を背負
った男のドラマ

「I stand free」は、大木さんが何気なく弾いたギターにふたりが合わせてできた曲だとおっしゃっていましたが、今回は?

大木
サビのメロディーだけできていて…1年以上前かな?スタジオで別の曲をやっている合間に何となく歌いながら作ってあったんですけど、テンポがもう少し遅いイメージだった。それを去年の年末くらいに形にしたいと思って、“テンポを速くしたらどんな感じになるんだろう?”って試しにやってみたらすごく良くなって。そのサビに向かって行く感じでAメロBメロができましたね。
佐藤
弾き語りで聴かせてもらったんだけど、前よりずっと良くなっていて。特にどメインのところのサビ前のキメの感じ、そこからサビに行く…ジャッジャッジャッジャッバーンってところが(笑)。大木が熱心に説明してくれて、それを聞きながら組み立てていったんです。
浦山
俺も最初の段階の元ネタを聴いて、これがどう形になっていくか楽しみでしたね。それが速くなって、さらにすごくカッコ良くなった。“カッケー!”って思いました。

静かなアルペジオのイントロから、淡々と、でも力強いAメロとBメロ、そしてアッパーなサビへの構成がすごいドラマチックですね。

大木
例えば、イントロは歌と一緒にジャーンって始まるのもアリなんだけど、切ない雰囲気を出したくて。悲しいことがあってそこから抜け出すんだけど、結局乗り越えられず感情があふれ出すという内容の曲だから。イントロは悲しげな部分の象徴ですね。
佐藤
大木の中には最初からその場面においての感情や雰囲気、風景がはっきりとあったんでしょうね。だから、その点でのすり合わせは、曲全体を通して緻密にやりました。
浦山
ほんの少しでもその風景と違うとすごい言われるんですよ。“そこはそうじゃない”って。今回だと間奏のアレンジのアイデアを考えて持っていった時に、“それは、ただやってるだけだよね”って。“そこにちゃんと意味がないとダメだ”って言われました。
大木
意味っていうか…“間奏を作らなきゃ”と思って作った間奏って絶対良くないんですよ。だったら無理に間奏なんか作らなくてもいいわけで。良いアイデアって理屈じゃないし、“なぜかやったらカッコ良い”とか“理由もなくカッコ良い”ってことなんです。ヘタに頭で考えたものは嘘くさいし、わざとらしく聴こえちゃうから。

悲しみを乗り越えて前に進んで行くという楽曲の内容から、ラブソングという聴き方もできたのですが。

大木
PVの監督さんにも“失恋したの?”なんて聞かれたけど(笑)、全然そんなんじゃなくて。でも、大きな意味ではラブソングと言えなくもないし、だったらラブソングという捉え方も、それはそれで良いかなと思ってます。

主人公が雨に打たれながら叫んでいるような絵が浮かびましたが、大木さんはどういう絵を思い描いたのですか?

大木
雨に打たれながら、むしろ呆然と立ちつくしている感じかな。でも、心の中はめちゃくちゃで。曲の冒頭では、丘の上で世界の終わりを見つめながら、雨に打たれていた時の自分の姿を思い出し涙を流す。そして、“さあ、行こう!”って歩き出すんです。

大木さんにとって、“雨”はどういうイメージですか?

大木
俺が“雨”って言葉を使う時は、必ず“死”のイメージがあって。シングル「スロウレイン」の時も、死の向こう側の美しい世界、死後の世界の雨みたいなイメージがありましたし。今回は最初から雨が降っている絵が浮かんでいたから、タイトルにも“Rain”って絶対に使いたいなと。それで、悲しみという感情とリンクして、今回の雨は“空から生命の源である水が降ってくる”という感じですね。生と死は、常に俺の中で歌詞のテーマにはなっているんで。

こういうメッセージソングで、一番言いたいことを込めるサビを英語にしているのが印象的でした。

大木
理想は日本語ですよね。でも、こういう曲って日本語にすると、言葉が耳に付きすぎて疾走感が失われてしまう場合があって。今回も歌入れのギリギリまで悩んで、日本語の詞も書いていたんですけど、どうしてもゴツゴツした感じになってしまって、気持ち良くならなくて英語になりました。

ライヴではどのように表現したいですか?

大木
まだ分からないけど、盛り上がったらいいですね。サビがガラッと変わって激しくなるんで、そこの展開を上手く演奏できれば、いい盛り上がりになるんじゃないかな。

新曲を初めてライヴでやる時はどういう心境ですか?

大木
楽しみや期待が半分、不安が半分かな。
佐藤
ライヴはいろんな感情が入ってくるから、ノッて速くなる時もあったり。でも、やっぱり最初はちゃんと表現したい気持ちが大きくて、そこに対する緊張感がありますよね。変な感じで盛り上がって“違うんだよ、この曲はもっとこうなんだよ”って悔やむのが一番嫌だから。で、何回かやっていくうちに、曲のここでこういう盛り上げ方ができるとか、だんだん分かっていくんじゃないかな。
浦山
やって行けば行くほど完成度が高くなるんだけど、やっぱり最初はドキドキする。その曲をちゃんと伝えたいからヘタなことはできないし、緊張感はすごいありますね。

6月からは、『LOW IQ & THE BEAT BREAKER×ACIDMAN』という、贅沢なツアーも始まりますね。

大木
飲み屋の席でLOW IQ 01さんが“そろそろやろう”って言ってくれたんですよ。心底尊敬する大先輩と一緒なので楽しみですね。いろいろ良いところを盗んで、お互いの相乗効果で、いいツアーにしたいです。
ACIDMAN プロフィール

埼玉県私立西武文理高校時代に出会い結成された3ピース・ロック・バンドACIDMAN。当時は4人組で結成され、受験休業を経て、大学進学後、下北沢を中心に97年ライヴ活動を開始。 99年のヴォーカル脱退、現在のメンバーである大木伸夫(vo&g)、佐藤雅俊(b)、浦山一悟(dr)の3ピース編成となる。

02年、「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」のシングル3枚連続リリースでメジャー・デビュー。同年10月には1stアルバム『創』を発表、スマッシュ・ヒットを飛ばす。パワーポップ/ガレージ/パンクのテイストを独自に昇華させたハイブリッドなロックンロールから、哀愁漂うメロディックなスロウ・ナンバーまで、いずれの楽曲にも美しい旋律が貫かれ、エモーショナルなヴォーカルも聴く者の魂を震わせる。
03年8月に発表した2ndアルバム『Loop』ではより深遠な音世界を構築し、04年9月には“あらゆる色の生命をイコールで繋ぐ”という、かつて無い壮大なテーマとその独創性が表現された3rdアルバム『equal』を発表。輪廻転生をコンセプトに作られた約14分にも及ぶ大作「彩‐SAI‐(前編)/廻る、巡る、その核へ」は、映像クリエイターである西郡勲がビデオ・クリップを手掛け、第8回文化庁メディア芸術祭では優秀賞を獲得した。
05年12月にリリースした4thアルバム『and world』を引っさげ、全国ライヴ・ツアー『and world』を敢行。06年7月、このツアー・ファイナルの模様を収録した自身初となるライヴDVDをリリース。音楽と映像のコラボレーションという新しい形でのライヴを行い、多くのロック・ファンを虜にした。そして07年2月に5thアルバム『green chord』を完成させ、5月にはACIDMAN史上初となる日本武道館にてオール・スタンディング形式のライヴを開催。ストイック過ぎるほどストイックで真摯なバンド姿勢ゆえ、一時は解散の危機にぶつかった彼らだが、08年4月に6thアルバム『LIFE』を、09年7月に7thアルバム『A beautiful greed』を発表するなど、現在は年1度のペースでアルバム・リリースを重ねている。

「音の力。詩の力。」「深淵・迷走・創造・騒々」——展開著しく、時に裏切り、時に平たん。静と動。スリーピースの可能性へ常に邁進している彼らは、成功を手中にしてもなお、ストイックなまでに己のバンド・サウンドの純度に磨きをかけ続けている。ACIDMAN Official Website
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