取材:榑林史章

押尾さんのギターが僕の歌を引き出して
くれた(広沢)

おふたりのお付き合いはいつくらいから?

押尾
DJのヒロ寺平さんが企画したイベントに出させてもらった時が最初かな? 2002年だったと思うけど。
広沢
出会ったのはもっと前じゃないですか? ヒートビートっていう大阪のライヴハウスでの1999年のイベント。まだ僕はデビュー前で、その時はちょこっと挨拶をさせてもらっただけ。ただ押尾さんのギターに驚愕したっていう。あんなプレイを観たのは初めてでしたからね。
押尾
それでお互いデビューが決まって、レコード会社が同じになった。それもすごく縁があるなと思ったよね。
広沢
一緒にやったのは2003年の僕のアルバム『FRIENDS UNPLUGGED』の中の「悲しみのぬけがら」という曲に参加してもらったのが最初で。
押尾
原曲が結構ハードな演奏で、僕はアコギだから“こいつケンカ売ってんのか?”って(笑)。だからこそやり甲斐もあった。
広沢
押尾さんのファンキーなノリと自分の歌はきっと合うだろうなって。実際にやってもらったらまさに! 僕が望んだ以上のことをやってくれて、歌いながら鳥肌が立ちましたね。

今回の再コラボレーションは広沢さんから?

広沢
そうです。曲としては2年くらい前に書いたものです。ライヴでは何度も歌っていてバンドでイメージが固まっていたから、それを壊したいと思って。“この曲にはもっと違う可能性があるんじゃないか?”って。「悲しみのぬけがら」とは違うタイプのミディアムバラードの曲なんで、押尾さんの繊細な部分も聴きたいと思ったし。
押尾
今回は広沢くんの歌と僕のギターという構成で、前回とは違うもっと寄り添った感じになったよね。
広沢
すごく緊張感のある良いテイクが録れましたよね。押尾さんだからこその表現っていうか…リズムもそうだし、音符の編み上げ方が独特なんですよ、押尾さんは。一音一音が緊張感があるというか、糸を引くようなというか…それがすごく良いんですよね。
押尾
粘っこい(笑)。僕のギターはジャズ寄りとよく言われるけど、実は長渕 剛さんとかフォークを聴いて育ってて、すごく日本語の歌が好きなんで。そういうのが出てるんじゃないかな。

「Baby,it's time」はすごく切ない曲ですね。

広沢
これは失恋というか、別れの曲。寂しく悲しい終わりの瞬間を歌っていて。そういう終わりの瞬間を意識することって、心は痛いけど、たまには必要かなって思うんです。出会いがあれば別れもあるし、季節も終わりがあるものだし、もっと言えば死ということにもつながっていく。そういうことを意識することで、別れまでの時間を大事にするし、人に優しくなれると思って。希望に満ちたような曲ではないけど、歌う意味があるんじゃないかと思ったんです。

じわじわと別れが近づいて来る感じが切ないですよね。

広沢
本当は別れたくない。でも、もうお別れの時間が来ましたよって。未練とか男の情けなさも同時に描いてますね。
押尾
多分、男にはすごく分かる感情だと思う。やっぱり歌詞が良いよね。“こういうシチュエーション重いなぁ~”って思いながら弾くのも楽しかったし。高校生の頃の甘酸っぱい気持ちも思い出したね。

どの世代にもグッとくる曲ですよね。

広沢
そうですね。きっと、別れの辛さは世代が違っても変わらないんじゃないかな。人の背中を押してあげたり、頑張れるように励ましてあげる応援歌も良いけど、しんどいことや悲しいことをちゃんと認めないと前に進めないこともあるわけで、何の根拠もなく頑張ろうとか言うよりも“悲しいね”って一緒に言ってあげることで前に進めることもある。だから、この曲もひとつの応援歌なのかなって。
押尾
大人になると免疫ができて、なるべく自分が傷付かない別れ方を身に付けたりするけど、まだ経験の少ない十代なんか、別れの気持ちってきっと整理がつかないと思うし。それを少しでも和らげてあげられるパワーがこの曲にはあるって思う。別れっていくつになっても辛いし、そういう時にこういう歌が必要だなって。

「Baby,it's time」はおふたりの魅力が凝縮されてますね。

押尾
僕は広沢くんの声も好きだし。理屈よりもサウンドにスッと入っていけて、それであとから歌詞も良いっていう感じで。いつもバンドのグルーヴと歌のグルーヴがすごく良いんだよね。
広沢
アレンジとか構成は曲ができると同時に頭に浮かんでるんで、だから本能でやってる感じなんですけどね。今回はその本能が押尾コータローだと言ったんですよ(笑)。逆に押尾さんは、やっぱり歌心ですよね。あと、あんなふうにギターを弾いてみたいっていう憧れもあって。コラボレーションという部分では、僕の歌をよりソウルフルに引き出してくれたのが押尾さんのギターなんです。

お互いに自分が持っていないものを持っていて、そこに対する敬意と憧れがすごくあると。

押尾
そうそう。最初の時は緊張していて、それも良かったんだけど。今回は友情とか愛情とか、すごく楽で心地の良い空気感でしたよね。広沢くんは僕のギターを褒めてくれるけど、それは全部広沢くんが引き出してくれるものなんです。そういう器の広さっていうかね。わりときっちりやることを決めちゃうアーティストもいるんだけど、それだと譜面通り、それ以下にならない代わりにそれ以上にはならない。でも、広沢くんはそういうのがないので、ミュージシャンとしてはより上を目指してチャレンジさせてもらえる。そういう人っていそうでなかなかいないんですよ。
広沢
いやいや(照)。すごい光栄です。また一緒にやれる曲ができた時はぜひお願いします。
押尾
じゃあ、次回はロンドン五輪の頃にでもまた(笑)。
広沢タダシ プロフィール

01年、マキシ・シングル「手のなるほうへ」でメジャー・デビューを飾った大阪出身のシンガー・ソングライター。レニー・クラヴィッツやブライアン・アダムス、シェリル・クロウあたりをフェイヴァリットに挙げていることからも分かるとおり、メインストリームよりの洋楽ロックと近い雰囲気の音を鳴らす。カチッと作りこまれた骨太サウンドをバックに放たれる力強いメロディ/言葉。奇抜さや実験性には欠けるが、ストロング・スタイルな魅力をもった音世界を構築している。広沢タダシ Official Website

押尾コータロー プロフィール

68年生まれ、大阪出身のアコースティック・ギタリスト。彼の演奏を耳にした者は、例外なく驚くに違いない。1本のギターから、彼ひとりの指先から、いくつもの音色とリズムとメロディが同時に放たれるのだ。その信じ難い現象を可能にしているのはもちろん、秀でた演奏技術。基本的なフィンガー・テクニックに加え、変則チューニングやタッピング奏法など発展的で高難度な技を積極的に取り入れて、彼はギター・プレイを惜しみなく“魅せて”くれる。さらに、どの楽曲もことごとく耳に馴染みやすいという点も、その魅力を語るうえでまた重要。才気溢れる巧みなアレンジで、既存の曲にも次々と新たな息を吹き込んでいく。オリジナルから童謡、映画音楽、アニメ主題歌までとレパートリーは実に多彩だ。
02年7月、アルバム『STARTING POINT』でメジャー・デビューを果たし、同年10月には全米デビューも実現。映画、CM、TV番組の音楽を手掛ける作曲家としても活躍中だが、活動の中心はいつもステージだ。ライヴ会場には従来のギター・ファンのみならず、幅広い層の人々が彼の演奏を求めて集まる。公式サイト(アーティスト)
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