【インタビュー】きいやま商店、結成
10周年「今年こそ“シャレオツ”で行
きます」

きいやま商店が12月15日、ヒューリックホール東京にて<10th Anniversary きいやま商店 シャレオツLIVE>を開催する。タイトル通り、結成10周年を記念して行われる同ライブは、自身最大規模の東京ワンマンとなるものだ。
沖縄・石垣島出身のリョーサ (Vo / 三線)、マスト(Vo / G)兄弟と、従兄にしてリョーサの同級生だいちゃん (Vo / G)の3人組によるステージは、あまりにも個性的で愉快痛快。先ごろ開催されたMONGOL800主催フェス<What a Wonderful World!! 18>にて約1万人が集結した場内を、沖縄方言や身内ネタを巧みに用いた歌詞とバラエティーに富んだサウンド、そして爆笑必至の掛け合いMCで抱腹絶倒のダンスフロアに変えてしまった。

BARKS初インタビューでは、10周年を記念してユニット結成の経緯からターニングポイント、そして、“目指すはドリフターズ” “夢は紅白歌合戦出場”など、きいやま商店を語るに欠かせないキーワードについてじっくりと話を訊いた。1時間強の取材は終始笑いの途切れないマシンガントークの応酬。“楽しむこと/楽しませること”を片時も忘れない3人の仲むつまじきグルーヴと、気取らない言葉の数々に石垣島の雄大な自然さえ感じられるものとなった。身内から全国へ。その輪をますます広げ続ける彼らの10周年記念ロングインタビューは、まず<What a Wonderful World!! 18>の感想から。

   ◆   ◆   ◆

■石垣島のおじいさんたちも
■「3人でやったらおもしろいのにな」って

──まずは、モンパチフェス<WWW!! 18>の感想からうかがいますが、ハーモニーもMCもゴキゲンなステージでした。

だいちゃん:“最も出演したいフェス”のひとつだったので、初めて出させてもらってとても嬉しかったし、お客さんの盛り上がりがありがたかったですね。

リョーサ:オレらの前のかりゆし58(Beach STAGE)が終わったら、お客さんがみんな別のステージに移動しちゃったんですよ。音出しリハーサルのときには客席に200人もいなくて、“ヤバい、ヤバい”って3人で震えてたから。ところが、本番始まったらお客さんがいっぱいでメッチャ嬉しかったです。
▲MONGOL800主催フェス<What a Wonderful World!! 18>11月3日+4日@沖縄・美らSUNビーチ

だいちゃん:初めて僕らを観るお客さんもたくさんいたと思うんですよ。タイムスケジュールでは、僕らの前がハブSTAGEのThe Birthdayで、後がマングースSTAGEのPUFFYというすごいアーティストさんに挟まれていたので、ホントにヤバいなーと思ってたんです。でも、オレらのステージが終わった後にTwitterを見てみたら、“ヤバい!きいやまがおもしろくて、PUFFYに行けない”っていう書き込みがあって、この反響は嬉しかったですね。

マスト:ステージ上からは、「PUFFYが始まりますよ!」って教えてあげたんですけどね。

リョーサ:そのMCが一番ウケました(笑)。

──トーク術も見事でしたが、かりゆし58とホーンセクションを迎えたバックバンドも豪華で。

だいちゃん:贅沢でしたよね。かりゆし58とは以前から仲良しなんです。今年7月に豊崎美らSUNビーチで開催された夏祭り『とみぐすく祭り2018』で共演したときに「<WWW!! 18>でも一緒にできたらいいね」なんて軽いノリで話してはいたんです。

──息もピッタリなステージでしたね。「オレらが紅白歌合戦に出たいと思っている曲をやろう」というリョーサさんのMCに続いて、かりゆし58が自身の代表曲「オワリはじまり」を歌い始めるとか、コント仕立てもあり(笑)。

マスト:ははははは! あれはステージの5分くらい前に、かりゆし58と楽屋で打合せして決めました(笑)。それに付き合ってくれるのが彼らのいいところ(笑)。
▲MONGOL800主催フェス<What a Wonderful World!! 18>11月3日+4日@沖縄・美らSUNビーチ

──砂浜の客席側から海を背景にしたBeach STAGEは“これぞ沖縄!”なシチュエーションで、きいやま商店との相性もバツグンでした。

マスト:ステージ上からの景色も最高でしたよ。遠くのほうでお客さんが手を挙げてくれているのが見えたり、ステージ下手から続く海岸線では、海に足をつからせながら盛り上がってくれているお客さんがいたり。そういうシチュエーションに、こちらのテンションもアゲられましたね。

リョーサ:だから、モンパチに“ありがとう!”ですよ。

──そもそも、モンパチとの繫がりはどれくらい前に遡るんですか?

マスト:僕のもうひとつのバンド“ノーズウォーターズ”がモンパチと同じHigh Wave (レーベル)に所属していて、一緒にツアーを廻ったりしていたんですよ。だから、もう20年来の付き合いですね。きいやま商店としては8年くらい前、ミュージシャンだけの新年会でキヨサク(上江洌清作 / Vo&B)とかとセッションしたり。モンパチと初めて一緒のイベントに出たのが福岡の<22nd Sunset Live 2014 -Love&Unity->。そのときにサッシー(高里悟 / Dr)とか崇(儀間崇 / G)が「衝撃を受けた」って言ってくれて。以降、沖縄のデパート広場で演るような小さなイベントにも家族で観に来てくれるようになったんです。

──プライベートでも親交が深いんですね。

リョーサ:そうですね。それから、モンパチ主催<800だョ全員集合!!>(2015年)とか、昨年末のカウントダウンライブ(<MONGOL800 ga COUNTDOWN “Happy 20th ANNIVERSARY”)に呼んでもらったり。そのカウントダウンのときに「<WWW!! 18>に出たい!」って言ったら本当に出してくれたという。

──それほど「出たい!」と思っていたモンパチ主催<WWW!!>は、沖縄のアーティストにとってどんなイベントなのでしょうか?

だいちゃん:たとえば、今年で言うと僕らが昔から好きだったユニコーンとかスピッツとか、すごいミュージシャンたちが沖縄に集まるわけじゃないですか。“もしかしたら、日本一すごいアーティストが揃うフェスなんじゃないか!?”って思うくらい。まず、それ自体が嬉しいですよね。沖縄のお客さんも夢見心地だったんじゃないですかね。

マスト:それに、雨も晴れもあったという意味では、本土から来てくれたお客さんにいろんな沖縄を観てもらうことができましたし。フェス前夜に僕ら、「きいやま商店のステージは絶対太陽が出る」って宣言してたんですけど、ライブが始まったら雨も上がって見事に晴れましたから、沖縄の自然も味方してくれました。
▲MONGOL800主催フェス<What a Wonderful World!! 18>11月3日+4日@沖縄・美らSUNビーチ

──まさに、パフォーマンスもサウンドも晴れ空が似合うきいやま商店ですが、結成は2008年だそうで。

リョーサ:だからちょうど10年前のことなんですよね。

──それまでは3人とも別バンドで活動していたとのことですが、それぞれの音楽性は全然違ったそうですね。

リョーサ:僕は八重山モンキーというバンドで、沖縄民謡をベースにしたワールドミュージックみたいな音楽をやっていたんです。“チャンプルーロック”を掲げていたので、パンクとかアイリッシュとか、いろんなジャンルを混ぜていこうみたいな。

だいちゃん:僕はBEE!BANG!BOO!っていうバンドをやってまして。ロックンロールを中心に、ウッドベースだったりブラスセクションが入ってたりするので、ジャズやBE-BOP、JIVEとかジャンルはいろいろですね。

マスト:さっき言ったノーズウォーターズは島(石垣島)の同級生で組んだバンドで。音楽的にはメロディーにキャッチーさがあるロックみたいな感じです。

だいちゃん:ノーズウォーターズとBEE!BANG!BOO!は東京で活動してたから、お互いのライブに行き来してたんですけど、リョーサは福岡にいたから、3バンドでの対バンっていうのもあまりなかったんです。一度、BEE!BANG!BOO!主催イベントにノーズウォーターズと八重山モンキーに出てもらったことがあったくらいかな。

マスト:そのときくらいから、3人で一緒にやりたいというのはあったんじゃない? 島のおじいさんたちも「お前ら、3人でやったらおもしろいのにな」みたいなことを言ってくれていたので。

だいちゃん:ただ、「3人ともボーカリストだから、なかなかねー」と(笑)。
■ステージが楽しくてお客さんも笑ってる
■それってオレらにしかできないこと

──音楽性や活動拠点が違うことに加え、全員がボーカリストの3人が一緒にやることになったのが、2008年の「最初で最後のライブ」だったんですよね。

リョーサ:そうです。僕は長男なので、崎枝家の仏壇を守るために音楽を辞めて島に戻る決意をして。その前に、日本最北端の稚内を目指して列車の旅をしたんです、32歳ながら“青春18きっぷ”で(笑)。旅の過程で東京を通るじゃないですか。だいちゃんとマストに「最後に一緒にやらん?」と連絡して、稚内へ向かう途中の東京で、1曲だけ「さよならの夏」を3人で作ったんですよ。で、稚内からの帰りに、東京の鷺宮の居酒屋で「最初で最後のライブ」をやったんです。

──初ライブは大成功だったとか?

リョーサ:おもしろかったんですよ。なにも考えず、カッコつけず、遊ぶ感覚でやったら、“なんじゃこれ!?”っていうくらい。学園祭ノリみたいな感じで。

だいちゃん:曲は「さよならの夏」しかないから、BEE!BANG!BOO!の曲をほかの2人が歌ったり、2人のバンドの曲を僕が歌ったり。5曲しかなかったのに、3時間やりましたからね。何したんでしょうね(笑)?
▲だいちゃん (Vo / G)

──1曲3〜4分として、5曲なら20〜30分のステージが普通でしょ(笑)。

マスト:そうなんですよ! しかもアンコールがきましたから。「あの話、もう一回して」っていう(笑)。

──トークも魅力の、きいやま商店の原型が初ライブですでに出来上がっていたという。ちなみにきいやま商店というユニット名もそのときからすでにあったものですか?

リョーサ:一度きりだし、お客さんは40〜50人くらいで身内しかいないから、ばあちゃんの店の名前にしようって。ただ、「最初で最後のライブ」のつもりだったんですけど、一旦福岡に戻って同じ年に、友達の結婚式のために島で2度目にして凱旋初ライブをやったり。その翌年には僕がオーストラリアに行くために東京を経由したので、3人で「あの頃」と「きいやま商店のテーマ」を作って。鷺宮の同じところで3回目のライブをやったんだよね。

だいちゃん:しかし、なかなか島に戻らんなー(笑)。

──ははは。音楽活動を辞めるどころか、新たに始める勢いで曲作りしてるし(笑)。

リョーサ:ははは。しかも、そのライブが話題になって、“やっぱり音楽、おもしろいなー”と(笑)。その翌月、従兄弟の結婚式のために3人が石垣島に戻ったのでライブをやったんですけど、すでにウワサがウワサを呼んでいて、チケットが即完売したという。

だいちゃん:そこから、「沖縄本島でもやってよ!」とか「大阪に来てくれない?」とか、いろいろなところに呼ばれるようになって、いつの間にかCMソング(学校法人大庭学園CMソングに「あの頃」起用)が決まるまでになりましたね。

リョーサ:そのCMソングのために東京でレコーディングするんですけど、僕はまだ福岡に住んでいたから東京に通いつつ、歌とか三線を入れて。それに、1曲だけレコーディングするのももったいないので、「新曲を作ろう!」と出来たのが6曲入りの1stミニアルバム『さよならの夏』(2010年11月発表)なんです。
▲リョーサ (Vo / 三線)

──そこから、きいやま商店の活動が本格的になっていくわけですか?

リョーサ:いや、そうでもないんですよー。

マスト:記念にアルバムを、ぐらいの気持ちだったから。

だいちゃん:だけど、CDは売らないといけないから、全国を廻ったりして。

──CDリリースとか、CMソング起用とか、全国ツアーとか、ミュージシャンにとっては大きなトピックだと思うんですけど、きいやま商店の場合は肩肘張らないというか。それは、ユニットの始まり方や世間の火の点き方がナチュラルだからっていうところも大きいんですかね。

だいちゃん:おっしゃる通り、ふざけて始めたんで(笑)。

リョーサ:肩肘張るとか、まったくないですね。売れる気ナシでした。逆にそれがよかったのかもしれないですね。

マスト:音楽性は3人ともバラバラなので、曲の作り方ひとつ取っても、誰かが「こんなのやってみよう」って言えば「いいねいいね」、「あんなのはどうだろう」って言えば「やってみよう」っていう感じで、当初からずっとこだわりがないんです。その感じがいいのかもしれないな。

だいちゃん:僕自身は、それまで三線が入っているような沖縄民謡はやったことがなかったし、出てくるアイディアに対してはフラットにおもしろがってましたから。

──だから、きいやま商店の楽曲はバラエティーに富んでいるし、自然体ゆえにあざとさも感じないんでしょうね。

だいちゃん:そうだったらいいですね、嬉しいです。今も、その部分は変わってないですから。

──通算7作目となる最新アルバム『オーシャンOKINAWA』(2018年7月発表)も楽曲制作の方法論は変わらず?

リョーサ:必ず3人揃って一緒に曲を作ることは変わらないですね。今回は特に3人でドライブしながら作ったりしました。

マスト:曲作りはいつも、“沖縄の方言”をひとつ挙げて「この曲を作ろう」って、始めることが多いんです。たとえば、「ドゥマンギテ」(2012年8月発表3rdアルバムタイトル曲)は島の方言で“驚いて”という意味なんですけど、この言葉から物語りを作っていったり。「じんがねーらん」っていう曲は“お金がない”っていう意味なんですけど、“こんな方言を歌にするか!?ってばあちゃんたちにウケるだろう”みたいな。身内とか友達を笑わそうとして作ってたりするんですね。3人が笑えたり、楽しめたらOK。だから曲を作ってるときは、3人が爆笑していることが多いですね。

だいちゃん:「頑張れ!スミオおじぃ」もそう。“スミオおじぃ”は僕らのおじいさんなんですけど、選挙に出て落選しちゃったんですよ。で、みんなが落ち込んじゃってたから、盛り上げるために作った歌が「頑張れ!スミオおじぃ」(笑)。
▲マスト(Vo / G)

──きいやま商店の楽曲に陽のパワーが溢れているのは、そういう作り方だからこそなんでしょうね。くったくのないストレートな力が、身内から全国へ、ジワジワと伝わっていくという健全な広がり方もある。

マスト:実は、何曲か売れることとかを狙って作った歌もあるんですけど、やっぱりライブでやらなくなりますね。

リョーサ:僕ら自身がおもしろくないって感じちゃうから(笑)。

──とはいえ、お笑いを目指しているわけではないでしょ?

リョーサ:違います、違います(笑)。

マスト:スタイリッシュな曲とかクールな曲は、他の誰かがやってるじゃないですか。それは僕らの役割じゃないなと。僕らのやれることを突き詰めていったほうがいいんじゃないかなということです。

リョーサ:“目指すは、ザ・ドリフターズ”って掲げてるんです。曲はカッコいいけど、笑いがあっておもしろい。ザ・ドリフターズの音楽ってリズムとかバックの音がカッコよくて、最高じゃないですか。ライブで盛り上がるし。

マスト:ノーズウォーターズではずっとツアーばかりやってて、それも楽しかったんです。一方で、きいやま商店を始めたときに、あまりにも楽しくて、“これだな!音楽は!!”と思ったんです。本当に音を楽しんでいる感じ。ステージが楽しくて、お客さんも笑っている……それって、たぶん他にない、オレらにしかできないことだなと。始動当初はテキトウだったし、3人が集まっても、またそれぞれの活動に戻るカタチだったんですけど、“これ、もしかしたら『紅白歌合戦』にも出られるんじゃないかな?”と思ったというか、可能性を感じたんです。それで、2人に電話して、「ちゃんとやってみない?」って。メンバーもおもしろさを共有しているから、「オレもやったほうがいいと思うよ」って言ってくれて。
■「余興的なことをやれ」って言われて
■そういうことが原点なんですよね

──それが、初ライブから2年後くらいのことですか?

だいちゃん:東日本大震災後だから、2011年。初ライブから3年後のことですね。その電話のとき、僕はもう島に戻っていて、ちょうど帰った日が東日本大震災だったんです。那覇空港に降りて、はじめて震災があったことを知ったという。

マスト:その前日に東京で、きいやま商店とノーズウォーターズのツーマン<だいちゃん、さよなら会>をやって。ニイニイ(リョーサ)はまだ福岡に住んでたから、福岡から来たんだよね。

──震災は、それぞれの活動にも影響しましたか?

マスト:それがきっかけで2人に電話したところもあるんですよ。僕はノーズウォーターズでツアー中だったんですけど、世間の音楽活動に対する自粛ムードもあって、島に戻ったんですね。でも、きいやま商店だったらいいんじゃないかなと。アコースティックだし、前向きな歌だし、逆に今、きいやま商店が必要なんじゃないかなって。

だいちゃん:島に戻ってた僕は、BARを開く準備をしていたんですよ。内装も決定して、開店寸前でしたね。

リョーサ:不思議なことに、ちょうどそのときに僕が住んでいた福岡の団地が取り壊しになったんですよ。立ち退きですよね。それぞれバラバラのことをやっていたんですけど、全員のタイミングが合った。
▲だいちゃん (Vo / G)

──リョーサさん、ここでやっと島に戻るわけですね。

マスト:ただ、自分の意志で帰ってきたわけではない(笑)。

──ははは。運命の歯車が動き始めたってことですよね。そこから本格的にきいやま商店が始動するわけですが、手始めにどんな活動を?

マスト:きいやま商店は東京で結成したユニットだったので、沖縄本島でライブをしたことがなかったんです。でも、沖縄とか石垣島から発信したいと。そのためには沖縄本島で地盤を固めたかったので、「本島で3ヵ月間合宿やらんか?」って提案したんです。で、いろいろなレーベルや事務所に合宿が出来ないか問い合わせたところ、Flying High(レーベル)が「いいよ」って言ってくれて。いろいろな仕事の依頼の電話も合宿所に来るようになったから、そのままFlying Highに所属したという(笑)。

──3ヵ月間の合宿は、きいやま商店にとって実りあるものに?

マスト:めちゃくちゃありましたね。40歳前のおっさん3人が、六畳一間に川の字で寝るなんてことないじゃないですか(笑)。それ自体がおもしろかったし、もう毎日曲作りやライブをしていたんですよ。居酒屋とか老人ホームを廻ったり、デパートの催しや祭り、もう何でもどこでも行こうって。

マスト:その3ヵ月の集大成を披露する場所として、ミュージックタウン音市場(沖縄市のライブホール)を押さえて。「絶対、満席にするぞ!」を目標に3ヵ月間頑張ったんです。合宿を初めてすぐにテレビとかにも出られたんだよな。

──どうして、そんなに速攻で話題に?

マスト:なんででしょうね(笑)。沖縄方言で歌っているからっていうのもあったかもしれないし。

リョーサ:震災でどんよりしていたときに、オレたちのバカっぽい感じが良かったのかのしれないし。

──先ほどマストさんがおっしゃった「きいやま商店が必要」ということですよね。では、目標だった音市場のライブは?

マスト:もちろん友達とか知り合いとかの協力のおかげなんですけど、満席でした。お客さんが増えると仕事もどんどん増えていって、そうすると島にはなかなか帰れないんですよ、沖縄本島に居たほうがいいなと。それが2011年のことなので、すでに6〜7年経ってますけど、僕らはいまだに合宿中状態なんです。合宿を終えて、島に腰を落ち着けることができてない(笑)。

リョーサ:出稼ぎ中です(笑)。

──嬉しい悲鳴ですね。

リョーサ:本当に。この合宿で人生がガラッと変わりましたから。

マスト:僕ら自身がきいやま商店に助けられたところもありますし。
▲リョーサ (Vo / 三線)

──では、ここからはきいやま商店の音楽性やキャラクターについてのお話をうかがいたいのですが。まず、音楽性について。先ほど「“沖縄の方言”をひとつ挙げて曲を作る」という話や、「それぞれ音楽的な好みが違うから、逆になんでも受け入れることができる」という話がありましたが、実際にきいやま商店のサウンドって、ソカやラテン、アフロやアイリッシュ、カントリーなど様々な要素が入っていますよね。

マスト:好みの違う3人がアイディアを出し合うから、そこで初めて知る音楽ジャンルもあるんです。

──たとえばバンドの曲作りなら、元ネタとしてのギターリフを曲に展開していくとか、サビのメロディをみんなで膨らませるとか、メンバー全員のセッションで作り上げる方法があると思うんですが、3人揃ったところで曲作りをするきいやま商店の場合はどのように?

だいちゃん:僕らはYouTubeです、「この曲、いいんちゃう?」とか(笑)。

──はははははは!

マスト:“国”で検索します、“キューバ”とか。で「ブエナビスタみたいなのやりたいな」とか。

リョーサ:そういう音楽を聴きまくるんです。そこから、方言で作った歌詞とメロディーにイメージを合わせていく。

マスト:あとは、やっぱりワールドミュージックっぽい曲はリョーサが作ってきたり。ミディアム調の曲はだいちゃんが得意だし、バラードっぽい曲は僕が持ってくることが多いかもしれないですね。ただ、それを3人で広げていかないと、きいやま商店の曲にはならないんです。だから、1人が1曲通して作ってくるっていうことはしないですね。

リョーサ:一度、それぞれが1曲を通して作ってきたことがあるんですけど、それぞれのバンドの曲っぽくなっちゃったんですよ。
▲マスト(Vo / G)

──逆に言うと、きいやま商店らしさっていうものが確立されているということで。それってご自身ではどう分析されてます?

だいちゃん:兄弟とか親戚とか同級生同士なので、子供の頃から変わらないノリっていうものがあるんですよね。

マスト:くったくなし、変わりなしなところとか。

──そのノリが感じられない曲は、きいやま商店ではないと。

マスト:そうですね。誰かに何かを伝えたいとかはなくて。だって、沖縄の方言とか沖縄の人以外には伝わらないじゃないですか(笑)。それでもいいんです。唄いたい歌、おもしろい歌を唄いたいというところが大きいですね。

だいちゃん:まず、僕ら3人が楽しむことなんですよね。お盆やお正月になると親戚や隣近所の人たちが、僕らの実家に集まってくるんですよ。そのときに必ず、「余興的なことをやれ」って言われて、子供だった僕ら3人が歌を唄ったり、お笑いをしたり。そういうことが原点なんですよね。

マスト:今、だいちゃんがいいことを言いました。きいやま商店らしさとは“余興”です。余興のノリが出てないとダメです。

──それこそ、エンターテイメントの原点ですもんね。納得です。

だいちゃん:今、そこに居る人を楽しませる。どこへ行っても楽しませる自信があるんです。
■ガットギターを始めたのはきいやまから
■弾きすぎて、穴が空いちゃったんです

──しかも、3人の仲の良さが伝わるステージですから。兄弟や親戚という血のつながりも大きいですか? 「頑張れ!スミオおじぃ」とか「離れてても家族」とか、身内のストーリーが歌詞になってるから、3人の共感ポイントだらけでしょうし。

だいちゃん:子供の頃から観るもの聴くもの、全部同じだったので。おもしろいとか、いいと思えるポイントも一緒なんでしょうね。リョーサとは同じ歳だし、マストはひとつ年下だから同世代ですし。それぞれの友達も共通だから飲み会に行けば3人がいる(笑)。
──共感を求めるようなメッセージソングでもないというところも、きいやま商店のおもしろいところで。

マスト:曲を聴いて「カッコいい!」と言ってくれたりするんですけど、歌詞の内容は“犬に追いかけられてる歌”だったり(笑)。

──それこそ、三線をマシンガンのように抱えて客席を煽る奏者なんて見たことないですからね、リョーサさん(笑)。

リョーサ:はははははは!

マスト:しかもあの三線、ヘッドの部分にレーザービームが点いてるんですよ。<WWW!! 18>のときは昼間だったからわからなかったかもしれないけど、夜はスモークを焚くと光線が見える(笑)。

リョーサ:三線を投げたりして、壊したことも何度かありますからね。ホント、三線の先生に怒られます(笑)。

──そんなパフォーマンスは琉球民謡の巨匠、知名定男(<WWW!! 18>出演)さんには絶対見せられない(笑)。

リョーサ:はははははは!

マスト:いや、定男さんは逆に喜ぶかもしれない(笑)。
▲MONGOL800主催フェス<What a Wonderful World!! 18>11月3日+4日@沖縄・美らSUNビーチ

──ははは、確かに(笑)。それと、マストさんのガットギターですよ。あれ、ボディートップに穴が空いてるように見えるんですが?

マスト:ガットギターを始めたのはきいやま商店からなんですけど、弾きすぎて、穴が空いちゃったんです。

──表面板を叩くことで、その打撃音がリズムに活かされるフラメンコギターならではの奏法ですよね。

マスト:そうです、そうです。きいやま商店の初期は僕もリョーサもアコースティックギターだったんですけど、BOOMの宮沢(和史)さんが、「弾いてみて」ってプレゼントしてくれたんですよ。

リョーサ:えっ、そうだったの!?

──メンバーも知らない逸話(笑)。宮沢さんとのお付き合いも深いんですね。

マスト:宮沢さんが作ったユニットのサポートギタリストとしてツアーを廻ったこともあったので。そのとき、ちょうどガットギターに興味を持ち始めていた頃だったから、宮沢さんに「難しいですか?」とか訊いてたら、それを覚えててくれて、わざわざ楽器店で買ってきてくれたんです。で、きいやま商店で使ってみようと。

リョーサ:はっ!? 使わなくなったお古じゃなくて、新品を買ってくれたんか(羨)?

マスト:そうそう(笑)。しかも、ガットギターってネックの幅が広いじゃないですか。だから“アコースティックギターからガットギターに移行しやすいように”って細いネックのガットギターを買ってくれたんです。そこから練習をして、慣れてきたところで自分で買ったスペインのモデルが今のガットギターです。

──かなり練習を重ねないと、あそこまでの穴は空きませんよね?

マスト:ロドリーゴ・イ・ガブリエーラっていうメッチャすごい男女ギターデュオがいるじゃないですか。YouTubeを観て、“すごい!”と思って毎晩公園に行って練習してました。あんなにギターを練習したのは久しぶりでしたね、そうしたら穴が空いたという(笑)。あれ以上、広がったらヤバいらしいので、今はその穴の上に透明のプラスティックを貼ってます。実は二代目のガットもあるんですけど、それにも穴が空いてて調子を崩しているので、今は初代をまた使ってる感じです。
▲MONGOL800主催フェス<What a Wonderful World!! 18>11月3日+4日@沖縄・美らSUNビーチ

──ガットにしても三線にしても、だいちゃんを中心にしたハーモニーにしても、サウンド&プレイ的な側面から、きいやま商店を語るべきポイントはたくさんあると思うんですが、あえてそっち方向でのアピールはしないですよね。どうしても笑いがフィーチャーされる(笑)。

だいちゃん:ははははは! 出しどころがわからないんですよ、苦手ですね(笑)。

リョーサ:カッコウの付け方がわからない(笑)。

だいちゃん:それよりも、ここをこうしたらお客さんがワッと盛り上がるだろうなとか、そういうことをイメージしていたほうが楽しいんですし。

リョーサ:どうパフォーマンスするかとかね。

──ダンスパフォーマンスもきいやま商店には欠かせないもののひとつですが。

マスト:そうですね。オープニングのダンスがまさにそうで。どうやったらお客さんをつかめるか。最初に“おもしろそう!”って思わせないといけないので。
──そのあたりは、場所を選ばずにライブ活動を重ねてきた経験の強さがありますし。フェスに映えるユニットだと<WWW!! 18>を観て思いました。ツカミがいろんなところにある(笑)。黒ハット、白の半袖シャツ、黒ネクタイ、黒ハーフパンツ、島ぞうりというお揃いの衣装は?

リョーサ:最初はアロハを着て、麦わら帽子をかぶってやっていたんですよ。レッグウォーマーをバンダナ代わりに巻いてみたり。

マスト:極めつけは上がアロハで、下がタイパンツだったな。

だいちゃん:ヒドかったな、なんだったんだろうな、あれ(笑)。

マスト:で、2度目のライブの時に、だいちゃんの母方の祖母が亡くなったんだよな。

だいちゃん:そう。葬式があったので、ライブを行うかどうか迷ったんですけど、ばあちゃんはずっと音楽が好きだったので、「レクイエムとしてライブをやったほうがいいんじゃないかな」って。喪に服すという意味も込めて、この衣装が始まったんです。

──だから黒ネクタイなんですね。

リョーサ:そうです。そのライブは、ジーパンと普通の靴だったんですけど、後に短パンと島ぞうりになり。

だいちゃん:僕ら『ブルースブラザース』が好きだったこともあって、黒い帽子を被ったり、少しずつ進化していった感じですね。
■今回は長ズボンになります!
■島ぞうりでもありません!

──衣装もパフォーマンスも楽曲も、すべては“楽しむ/楽しませる”というポリシーが大元にあるわけですけど、“楽曲は3分間”というのもコンセプトだとか? たしかに、ポップの名曲は3分台が多いですし、M1グランプリも決勝のネタ見せは3分台だったり。

マスト:3分以上は長いなと感じちゃうんですよ、他の人のライブを観ても。短いほうがおもしろい。そのほうが伝わるんじゃないかな。飽きない時間なんですよね、3分って。

リョーサ:そうそう。僕らの曲に、ギターソロとか三線ソロとかもあまりないんです。

だいちゃん:ソロを入れたら2番のAメロがなくなるな(笑)。ソロがAメロ代わり。

マスト:それって、余計なものを省いていく作業にもなるんですよ。
──あぁ、たとえば、<WWW!! 18>のステージのようにかりゆし58とホーンセクションを率いた豪華な演奏アレンジもきいやま商店の魅力のひとつだけど、同じ曲をギター1本だけで披露するステージもあるじゃないですか。アレンジをシンプルにすることが許されるメロディー本来の良さや完成度の高さがある。そういう楽曲もコンセプトのひとつなんでしょうね。

きいやま商店:………………。

──あれ、違いました?

だいちゃん:………………これは、嬉しいぞ。

マスト:いや、褒められると静かになるんです、僕ら(笑)。嬉し恥ずかし(笑)。

──ははははは!

だいちゃん:やっぱりメロディーはめちゃくちゃ大切にしてます。

マスト:それと、3人もハモリも大切だよね。3人とも歌が上手くてボーカリストになったというよりも、キャラクターの強さだったので。それぞれの単音は味になったりするんですけど、ハーモニーは外すと気持ち悪いし、お客さんに失礼かなと。楽器のチューニングがずれてるみたいなものなので。だからすごく練習してますね。
▲だいちゃん (Vo / G)

──人を楽しませるステージの裏側で、実は楽器も歌も練習を欠かさない努力家だという。そして、きいやま商店10周年の集大成となるワンマンライブ<シャレオツLIVE at ヒューリックホール東京>が12月15日に開催されますが、どんなライブになりそうですか?

だいちゃん:まず、これは<シャレオツLIVE>っていうタイトルで去年から始めた東京ワンマンなんです。

マスト:去年は、“<シャレオツLIVE>だから、さぞシャレオツな格好で登場するんだろうな”とお客さんが期待しててくれてたんです。ところが(笑)。

だいちゃん:チョッキを着て短パンで、幼稚園の入園式みたいな格好だったんですよ(笑)。

リョーサ:おそろしいくらい“シャレオツ”ではない(笑)。そのときのオープニングは、ステージ前に紗幕が張ってあって、そこにバックライトに照らされて3人のシルエットが映し出されるという演出で。ウワーッ!と盛り上がったんですけど、紗幕がストーンと落ちたとたんに客席から笑い声が起きました(笑)。
▲リョーサ (Vo / 三線)

だいちゃん:で、今年ですよ。そもそもこのライブは、“1年に一回はカッコいいきいやま商店をみせよう”っていうテーマなので、今年こそ“シャレオツ”で行きますからね。

マスト:もちろん“シャレオツ”な衣装も決まってます。あっという間に去年を超えます。ネタを少し明かすと、今回は長ズボンになります!

リョーサ:島ぞうりでもありません!

──“シャレオツ”で“10周年のアニバーサリー”となると、これまでにないきいやま商店が観られるわけですね。

マスト:はい。楽しさに加えて、クールな感じも出しちゃいます。セットリストもベストな選曲で、全部のアルバムから楽曲をセレクトしたんじゃないかな。

──しかも、今回も会場が“シャレオツ”。

リョーサ:そうそう。去年の会場はEX THEATER ROPPONGIで、六本木という場所のイメージから“シャレオツ”っていうタイトルにしたんですけど、今回も“シャレオツ”な有楽町。

マスト:バックバンドも豪華なんですよ。ドラムとギターは石垣島の後輩で、内地でも活躍している2人です。いろいろなサポートをしていてテクニックもすごい。ベースは元THE BOOMの山川浩正さん。鍵盤のミトカツユキはソウルシンガーでもあって、ジャミロクワイが出演した『日清カップヌードル』のCMで日本語部分を歌ったことでも話題となった方です。それにホーンセクションも入るから、演奏も楽しめる内容になります。
▲マスト(Vo / G)

──では、最後に<シャレオツLIVE>に掛ける意気込みをひと言ずつお願いします。

リョーサ:去年は“出オチ”みたいな衣装でしたが、今回は衣装の反応が楽しみです。

だいちゃん:今年最後の大きなステージですし、10周年ということもあるので、たくさんのお客さんに観に来てほしいですね。

──という意味では、このライブから11年目のきいやま商店も見えてくるようなものになりそうですね。

だいちゃん:そうなんです。とにかく大成功させたい。

マスト:ゴージャズで大迫力のバンドサウンドだから、僕ら自身も楽しみで。それをバックに歌を届けることで、相当いいグルーヴが生まれるはず。それは絶対お客さんにも伝わると思うので、一緒に躍ってくれたら嬉しいです。

だいちゃん:ただ、ホールが苦手なんですよね、きいやま商店は。大きいところだと萎縮するんです(笑)。映像カメラなんて入ったらもう……(笑)。

取材・文◎梶原靖夫 (BARKS)
撮影◎今井壱克/(c)WWW18 OFFICIAL

■<10th Anniversary きいやま商店 シャレオツLIVE>

2018年12月15日(土) ヒューリックホール東京
OPEN 17:30 / START 18:00
▼チケット
・指定席 一般 ¥6,000 (税込)+1drink
※10th Anniversaryメモリアルブック特典付
・指定席 小学生(12歳)以下 ¥2,000 (税込)+1drink 特典なし
※4歳以上チケット必要 / 3歳以下膝上鑑賞無料 / 申込み1件につき4名様まで
SOLD OUT!!

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