【インタビュー】J、11thアルバム『
Limitless』完成「だから誰にも止め
られないんです」

Jが7月24日、約4年ぶりソロ通算11枚目となるオリジナルフルアルバム『Limitless』をリリースする。同アルバムには、2018年発表のライブ会場限定シングル「Now And Forever」を含む全11曲を収録。これに先駆けて7月6日の岡山IMAGE公演を皮切りに8月12日のマイナビBLITZ赤坂まで、岡山、福岡、金沢、仙台、札幌、大阪、名古屋、東京をまわる9公演の全国ツアー<J LIVE TOUR 2019 -THE BEGINNING->がスタートしている。
限度無しなのか、限界を知らないという意味なのか。約4年ぶりとなるJの新作アルバムは、『Limitless』と銘打たれてる。そしてこの作品が実証しているのは、これが彼にとって新たな物語の始まりであると同時に、これまでの経過すべての存在なしには、この瞬間は到来し得なかった、ということでもある。この作品が生まれた背景にあるもの、そしてこの全11曲に込められた彼自身の想いを探るべく、7月も半ばに差し掛かりつつあったある日、じっくりと話を聞いた。

   ◆   ◆   ◆

■限界って、物理的に存在しない限りは
■想像のなかでのものでしかないはず

──『Limitless』の発売日は7月24日。なんと、デビュー記念日じゃないですか!

J:そうなんですよ。僕もスタッフから聞いて知ったんですけど、偶然ってすごいものですね。というか、これ、偶然なのかな(笑)? 自分では意識してなかったんだけど。今回のアルバムは11枚目。10枚という節目を超えたうえでの新しいスタートに当たるものなんで、そういった意味では何かに招かれたというか、引き寄せられたというか。そういうところもあったのかな、という感じはしますね。

──第10作の『eternal flames』(2015年)、ソロ活動20周年記念となるベストアルバム『W.U.M.F.』(2017年)を経たうえで新しいところに向かうもの。そうした意識で作られたもの、ということになるんでしょうか?

J:ホントにここ数年は、僕自身ソロの20周年もあれば、今年はLUNA SEAの30周年でもあり、節目続きのような状況だったので。いろんなことを自分に問いただす機会、見つめ直す機会でもあった。そういうなかで作り始めたアルバムだったので、やはり単純に新しいものというだけじゃなく、今まで積み重ねてきたもののさらに先にある新しいスタートという部分について意識してたかな、と思います。

──とはいえ、ここで音楽性を方向転換するとか、そういうことではないはずですよね。新たなスタート地点と呼ぶに相応しいものにするにはどんな作品にすればいいのか。そこはなかなか難しいところではないかと思えます。

J:ホントにね。まさしくそういう自分に対する禅問答みたいなものが、実際にアルバム作りに向かう前にはありましたね。“10枚作ってきて、そこから先にまだおまえを震えさせるようなものはあるのかい? ドキドキさせられるようなものはあるのかい?”というようなことを自分に確かめているようなこの4年間だったような気がするんですよ。実際、1枚目の頃よりはいろんなものを作ってきてるわけですから(笑)、自分が絵を描くためのキャンバスがあるとすれば、まだ色を塗れる場所がどんどん狭まっていくのは当然のことなんですよね。だけど、“その絵は本当に完成したのか?”と考えた時に、自分の持ってる画角がもっと大きなものだったことにふと気付かされた、というか。そんな感覚でしたね。自分自身としては当然今までと同じように、みんなに伝えたい想い、熱い想いのなかで音楽を作ってきたんだけど、そのストーリーはまだ終わってないんだ、ということを改めて実感させられて。そこからアルバム作りに向かっていけた感じがするんですよね。

──つまり新たなキャンバスを手に入れて他の何かを描き始めようとするのではなく、まだまだ同じ面の上に描き続けることができる。それはまさに、この“限度無し”というタイトルに重なっているところじゃないかと思えます。

J:まさにそうなんです。最初に自分が描いてた絵というのは、まだその外側に描き足さなければいけない場所があって、しかもすでに何かを描いてあるところについてもミクロの次元まで細かく突き詰めて見直してみると、そこにもまだ塗るべきものがあって。なんかすごく立体的になってきてるんですよね。それを感じた時に、限界なんかないんだな、と。自分自身が放とうとしてるもの、表現しようとしてるものは、まさにそうであるべきだという想い──それも込めてこのタイトルを付けましたね。
──つまり、このタイトルはわりと初期段階のうちから存在していたんですか?

J:そうですね。ただ、この4年間のどこを初期と言うのか、というのはありますけど(笑)。いろんなタイミングで曲を書いてきて、ちゃんと完成形に至った曲もあれば、ごみ箱に捨てたものもたくさんある。そうした過程のなかで、ここ2年間ぐらいはアルバム作りに向けてより集中して作業してたわけなんですけど、その途中だったと思います。

──さまざまな節目を超え、禅問答のようなことを繰り返しながら、思い浮かんだキーワードが“限度無し”だった。この言葉は無限大の広がりを感じさせる一方、どこまで行っても終わりがない、抜け出せない、という諦めめいた意味合いも感じさせますが。

J:確かに(笑)。実際そうなのかもしれませんね。ただ、僕自身が思っていたのは、限界って、物理的に存在しない限りは、想像のなかでのものでしかないはずだってことで。

──なるほど。確かに、実際に壁に塞がれていたりするわけではない。

J:そうです。これまでいろいろと見て、いろいろと感じながらやってきたなかでの、自分なりの感覚で線を引く場所というのがあるじゃないですか。だけど、それが果たして本当に存在するものなのか、というのも改めて自分に問い掛けてみたわけです。だけど結局、僕はそれをこの目で見てもいないわけだし、それは想像でしかない。だったらその想像をポジティヴに変えることも可能だよね、ということなんです。逆に言えば、もうホントにキリがないってことではあるんですよ。ただ、そのキリがないことに対して自分がどれだけ熱くなれるのか、という想いもある。そういった想いも含んだ言葉だと思います。

──たとえば『PYROMANIA』を作った当時も、Jさんは“限界なんかねえんだよ!”と考えていたかもしれません。ただ、それから22年後、いろいろな局面を経てきたうえで、今なお『Limitless』という言葉を掲げられることに意味があるように思えます。

J:実際、そう思ってるんです。まだまだ何も見ていないまっさらな状態で感じることと、いろんな景色を見てきたうえで感じられることというのがあるはずだし、当然そこでの答えというのは違ってきますよね。なんか、そういう意味でもよりリアリティをもって、同じことであってもより強く伝えられるかな、なんて思ったんです。

──実際、これまでいくつかの限界について考えさせられてきたはずですよね。たとえばソロで活動するうえでの限界、日本で活動するうえでの制約。そうしたものを知っている人が口にする“限界無し”というのには、その人なりの根拠がある。

J:まさに。たとえば昔、喧嘩とかしても、“最終的に勝ったやつが勝ち”みたいな気持ちがあった。わかります? “今日は負けてるけど明日は勝ってるかもしんねえぞ”みたいな(笑)。元々そういう育ちなんで(笑)、何事に対しても、なんかそういう部分があるんです。結局、思い描いた場所に辿り着く速度の問題もあるし、そういった意味で言うとまだまだ僕は旅の途中にいるわけで、わかったようなことを言ってもしょうがないし。もっと言うと、そういうことについて自分自身に問い掛けた時に、まだ自分が熱くなれるような、まだ自分が燃え上がれるようなものが今も存在してくれてたわけですよね。つまり、ロックミュージックというものが。それはすごく嬉しいことだし、それに気付けたことというのは、ものすごい力に変わっていったし。そこでギアが一段、ドーンと上がるような……。そういう感覚でアルバム作りに向かえましたね。
■こういう時代だからこそなのか
■楽器の可能性をすごく感じてるんです

──今回、情報としてまず届けられたのが、このタイトルとアートワークでした。ジャケット写真を最初に目にした時は、“NOW PRINTING”の文字が抜けているのかと思いましたけど。

J:ははははは!

──ただ、この白いジャケットはただの真っ白ではなくて、ムラのある白ですよね。

J:うん。アートワークについてどうするか。それを考えるのはいつもアルバム作りの途中段階でのことなんですけど、自分が絶対的な絵を持っている時は、最初からその絵を目掛けて向かっていくんだけども、それよりもむしろ、アルバムを作りながら見えてきた景色みたいなものをジャケットに落とし込んでいってるようなことが多いんです。ただ、今回に限って言うと、真っ白なジャケットがいちばん最初に浮かんできた。何故なんだろうと感じながらも、自分でその想いを手繰り寄せてみると、やはり11枚目、新しいスタートということと重なるものがあるのかな、という考えに至って。まったくもってゼロの状態というわけではなく、今までの積み重ねの上にある真新しさというか。そういった感覚で、このアルバムを捉えてたからこそ、この発想が出てきたのかもしれないですね。

──最初は何か意味があるんじゃないかと勘繰りました。光に透かして見ると何かの画像が見えてくるとか(笑)。ただ、さきほどキャンバスに色を塗るという表現がありましたけど、油絵を描く時って、一度描かれたものを白い絵の具で塗りつぶして、その上に描いたりするじゃないですか。だから一見まっ白なようでありながら、うっすらと前の絵が残っている。なんか、それにも似ている気がしたんですよ。

J:素晴らしいですね、それ。そういうことにしましょう(笑)。でも実際、“白”ではあるけど“無”ではない、というのは(デザイナーにも)言ってあったんですよね。二次元ではない、と伝えてた。それは自分でも憶えてますね。

──まっ白に見えるジャケットの向こうに、これまでのすべてが隠れている。

J:そう。それと同時に、聴いてくれた人がどういう色付けをしてくれるのか──そこに委ねてる部分もありますし。そういうことを全部重ねていくと、ああ、今回はまっ白で行きたいな、と。そういうことだったと思います。
▲『Limitless』SPECIAL盤

──今回、アルバム全体を一聴して思ったのは、本当にシンプルかつストレートで、“まだそぎ落とせるものがあったのか!”というくらい研ぎ澄まされている、ということ。

J:ははは! ホントですよね。

──ただ、“骨と皮”みたいな音ではない。

J:そうなんです。僕が理想としてるバンドサウンドにより近付けたと思ってます。もちろん前作を作り終えた後に、ヒントみたいなもの、次はこうすればまた違った形の何かが生まれてくるかもしれない、みたいなものを感じながらここに向かってきたところはあるわけです。そういったなかで、バンドとしての挑戦もあったし、僕自身がモノづくりをするうえで次のステージに進みたいという想いもあった。そういう意味で、実はいろんなことにトライした4年間だったわけなんです。

──そのなかで足し算をしたり、引き算をしたり。その繰り返しだった、と?

J:そうですね。より各楽器の音色と、より自分たちの想いみたいなものを……寄り添わせたかった、というか。これはマインド的なものなのかもしれないですけど、ここ最近、こういう時代だからこそなのか、なんか楽器の可能性をすごく感じてるんですよね。

──新しい楽器ということではなく、元々ある楽器の可能性、ということですね?

J:そうそう。逆説的な考え方なのかもしれないけれど、そっちのほうが刺激的だな、と感じていて。もしかしたら一周廻ってまたそこに来たのかもしれないんだけど、こっちのほうがパワフルに聴こえるよね、よりエモーショナルだよね、みたいな感覚がすごく生の楽器にあるんですよ。

──デスクトップで作られた音楽が主流となっている昨今にあっては、昔ながらの楽器の音によるバンドサウンドというのは、むしろ希少なものになっていますよね。正直、スポティファイなどで流行の曲をまとめて聴いていると、どれも音像が似たり寄ったりで歌だけ挿げ替えられているかのように感じられたりもします。

J:如実ですよね、その傾向が。

──ええ。ただ、そこにときどきTHE BLACK KEYSの新譜とかが混ざってくると、すごく浮き上がって聴こえたりするわけです。

J:まさにそういうことですよね。今回のTHE BLACK KEYSの新作は、彼らのベストアルバムになるんじゃないですかね? そう思えるぐらい、なんか時代への異物感も含めて確信的に鳴らしてる感じがすごくする。敢えて狙ってますよね、そのいなたさを、みたいな(笑)。でもそれが今すごくカッコ良く感じられるんですよ。そういうロックサウンドのための場所が、やっとできつつあるようにも思うんです。流行りのフォーマットに寄り添おうとしてる人たちも多いなかで、“俺たちはこうだぜ!”と主張し続けてきた人たちのための場所が。なんかすごく、そういう気がしていて。
▲『Limitless』通常盤

──そうして楽器の可能性について実感しているなか、今作ではJさん自身がかなりの割合でギターも弾いていますよね?

J:そうですね。エンジニアには、下手なギタリストよりよっぽど上手い、とお墨付きをいただいてます(笑)。まあ実際、自分の曲は自分のニュアンスで弾いたほうがちゃんとした絵が描けるかな、なんていう部分もあるし。そこについては何の抵抗もなく向かっていきましたね。結果、ベーシックについてはほとんど僕が弾いているんで。

──Jさん自身、ご自分をどんなギタリストだと思っていますか?

J:やっぱりベースをずっと弾いてきてるので、リズムに関しては、ギタリストのそれとはちょっと違うと思うんです。リズムの置き場というか。そういう意味では、自分で録るというのも理に適ってるのかな、と。うちは編成的にギターが2人いて、ベースとそのギターを繋ぐギターというか、そういうものを自分はプレイできるんじゃないかな、と思っていて。ユニゾンのフレーズなんてのは、やっぱり同じ人間が弾いてるだけあってタイミングも合いやすいですよね。そういう部分を自覚的に利用してたりとか。そこでむしろ、ちょっとずらしたい時なんかは、masa(masasucks)やごっちん(Kazunori Mizoguchi)にそういうふうに弾いてもらったりとか。細かいことなんですけど、なんかそういうコントロールみたいなことも自分のなかで自然にできるようになってきてるのかな。

──いわば、自分自身の使い分けも含めたキャスティングができているわけですよね?

J:そうですね。やっぱり、同じギターを弾いたとしてもプレイヤーが違えば音色も違うわけですから。そういった意味では、その場でいちばん必要な音色をはじき出せるプレイヤーを使えればいいかな、なんて思ってますし。

──しかも自分で弾くことにより、曲が生まれた時といちばんイメージの近い状態で鳴らせるわけですもんね。それにJさんの場合、ギターソロとかを弾いているわけではない。そこでJさんの音楽の骨格がどの部分なのか、というのも改めてよくわかるというか。

J:そう言ってもらえると有難いですね。自分自身から出てくる音というのは、自分自身のスタイルとしてそこに残るわけですから。そういう意味でも今回のアルバムでは、“あ、Jのサウンドってこういうものなんだ”というのを、より感じでもらえるはずだと思う。しかも、無意識でそこに向かえてたのは良かったなと思う。
■ロックバンド、ベーシスト、すべてにおいて
■テーゼに対してアンチだったわけなんです

──しかし思うんですよ。ここまでそぎ落とされた音を聴くと、作っている段階で“何かを足し忘れてないか?”と疑いを持つこともあるんじゃないか、と。具体的に言えば「Ghost」とか、ものすごく空間が多いじゃないですか。普通はここに何かを足したくなりがちだと思うんです。

J:確かにね。でも……たとえば今回、ヒントになっていたもののひとつにTHE WHITE STRIPESとかがあって。あとは最近、開演前のBGMとかにも良く使ってるSLEIGH BELLSとか。あの音、ドラムなんかは打ち込みなんでしょうけど、音数は少ないのに全然ペラペラには聴こえないじゃないですか。全然アリだよな、と思ったんです。THE RACONTEURSまで行っちゃうと、やっぱり普通にバンド編成でいろんなメンバーがいるから肉厚な感じにもなるんだけど、THE WHITE STRIPESなんかだと“このままの状態でいいの?”と思えるような音作りなのに、聴いていて胸が躍りますよね。熱くなれるというか。

──同じジャック・ホワイトが絡んでいるとはいえ、THE RACONTEURSとTHE WHITE STRIPESとではだいぶ違いますよね。さきほど話に出たTHE BLACK KEYSとか、ROYAL BLOODにしてもそうですけど、生々しいバンドサウンドの良さと、デスクトップで作る面白さをうまく掛け合わせている人たちがいます。ただ、Jさんの音楽はそうした方法論を借用したものではなく、そういうものを作る人たちがそもそも好きだったものに近いように思うんです。

J:嬉しいですね、その言葉は。実際、ROYAL BLOODとかも聴いていて“ああ、これでいいんだよね?”と思わされる部分があるし、もっと言うと、そんなふうに思わせないぐらい自然に聴こえるじゃないですか。本来は何かが足りないくらいであるはずなんだけど、音の構築の仕方、世界観の見せ方ひとつで、まだまだやれることがある。ああいった人たちの音を聴いていると、すごくそう思わされるんですよね。
──ROYAL BLOODはギタリスト不在で、THE BLACK KEYSはベーシスト不在。ただ、そこで変則的な編成を前面に押し出しているわけじゃない。Jさんの場合も、べつにいびつな音を目指しているわけではないはずで。

J:そうですね。そういう、今の時代の際(きわ)の部分にいるようなバンドたちと、たとえばシンプルさという意味ではAC/DCや、ZZ TOPや……そうしたバンドたちとが自分のなかでは繋がるんですよ。一緒に聴こえるというか、同列に並べられるんです、違和感なく。そこから感じられるのは、いい意味での変わらない強さというか、軸がある強さというか。実はみんな、1950年代、1960年代に作られたエレクトリックギターやベースを相変わらず使ってたりするわけじゃないですか。そのフォーマットって、まるで変わってないわけですよね。だけど刺激的なものはどんどん生まれてきてるという現実がある。それって面白くないですか? 車だって電化製品だってどんどん変わり続けてきたなかで、楽器は何も変わってないんですよ。なのに新しくて刺激的な音楽を鳴らしているわけで。

──ええ。変な話、発展の度合いからすれば、今頃はギターやベースが弦の張られていないものになっていてもおかしくないはずですよね。

J:全然おかしくない。もっと長いのやもっと短いのがあってもいいはずだし。だけど現実にはそのフォーマットは何も変わらないままで、なおかつロックミュージックというものの熱はどんどん熱くなっていってる。もしかしたら、そのフォーマットというのはそもそも変わらないものなのかもしれないけども、そこからまだまだ次々と新しい面白い熱が生まれ続けてる。それってすごいよな、と思うことがあって。そういう意味でも、そうした音の本質みたいなものを、自分自身は掴みたいと思うわけです。

──音の本質を見極めて突き詰めていく。フェンダー社と新たに契約を交わしたことも、そうしたことと無関係ではないんじゃないですか?

J:そうかもしれないですね。今回、今までずーっと一緒にベースを作ってきたブランド“ESP”を卒業して、フェンダーと契約したわけですけど、自分自身、ESPでずーっと自分のスタイルを追求してきて、いろんな記録も刻んできたし、彼らと一緒に熱い想いのなかで作り上げてきたサウンドというものがあるわけですよね。ただ、ちょうど20周年の時にマリア像の柄のベースを作った時にふと感じたんです。“俺、ここでやれることがもうないな”って。ネガティヴな意味ではなく、むしろ“出来上がったんだな”と自覚させられたんです。その時点でもう、変えるべき要素がなかったというか。

──Jさんなりのスタンダードがその時点で完成されていた、ということですね?

J:うん。自分自身でもそれを求めて、僕のスタイルってどういうものなんだろうと探し続けてたわけです。音もそうだし、楽器の形もそう。いろんな意味で、Jというベーシストの世界を作ろうとしてたわけです。で、長い時間をかけてそれがひとつ出来上がったんだな、ということを実感できた。その時に、その音はもうこうしてここに存在してるんだから、次に行かなきゃ、と思ったんです。そうやって、ESPと作り上げたサウンドを永遠のものにしていくのも僕の役目なんだろうな、と。で、そこから先へ、と思った時に、世の中にいくつものカッコいい音が存在するなかで、自分の身体のなかに引っかかってるものがひとつだけあった。それは、自分が聴いてきた音楽のなかにいつも存在していたフェンダーの楽器の音色だったんですよね。そこで、今までやってきたことを全部自分のなかに引き連れて、フェンダーというブランドの伝統の中に入っていけたなら、自分なりにその伝統的なサウンドを乗りこなしていくことができるんじゃないかな、と考えたんです。つまり僕にとってそれは、乗りこなしたいサウンドのひとつだった、というか。
──いつか行きたい場所ではあったはずだと思うんです。だけどもこれまで追求し続けてきたことをやり切ったという感覚になれるまでは、そこに行くべきじゃないというような気持ちもどこかにあったんじゃないですか?

J:というよりも、もしかしたら僕って、いちばん遠回りをしてきたんじゃないかとも思うんですよ。絶対的なもの、というのに対して。ロックバンド、ベーシスト、すべてにおいてテーゼに対してアンチだったわけなんです、多分僕は(笑)。だからこそLUNA SEAが生まれたし、そこでの活動があったわけだし、自分なりのベーススタイルというものも出来上がっていった。どんどんどんどん遠回りをしながら活動をしてきたなかで見えたもの、感じてることがあるからこそ、その絶対的なものと向き合う時に、自分の感覚をもって挑んでいける。そう思える今があるわけなんです。

──伝統的に正しいとされている道をそのまま歩むことなく遠回りを重ねてきたそのプロセスこそが、自分を作ってきた。そういうことですよね?

J:そうかもしれないな、と。ただ、そこについては無意識だったんですよ。自分の目に見える景気について、ああだったらいいのに、こうだったらいいのに、実はこうじゃないんだけど、みたいに感じながらトライしてきたことがすべて血となり肉となってきた人間なので。やはりそこに行き着いた意味合いというのが、ちょっと違うと思うんですよね。だからこそ、ここから先に求めるものというのも当然のように存在していて。なにしろ、とんでもない猛者たちが名を連ねているわけじゃないですか、フェンダーといえば。まさにレジェンドと呼ぶべきベーシストたちが。そのなかに自分自身がエントリーされるなんて、やっぱり光栄なことだし。その領域に自分自身のまま入っていき、タッグを組んで楽器を作れる、音を作れるなんてことがあるなら、それはすごく最高なことだなと思う。ただ、そんなことが起こり得るのは、今までがあったからこそなんですよ。

──ええ。それが結果的に遠回りなのか近道だったのかはよくわかりません。ただ、たとえば憧れた誰かと同じ楽器を手に入れ、同じ環境で演奏すれば、確かにその人に近付こうとするうえで話は早いかもしれないけども、そこで自分自身というものがないと、さきほどの言葉にもあったように、その楽器や音を乗りこなすことができないわけですよね。

J:うん。それに実際、いちばんそういうことを避けてたんですよね、僕は。正直、プレシジョンベースの音がいちばん嫌いだった(笑)。
■まだその先があるんだよ
■ということを伝えたかった

──すごい発言ですね(笑)。ただ、それは本心からの“嫌い”ではなかったはずで。

J:なんかね、あまりにも存在が近過ぎて。退屈とまで言うと意味合いが違ってしまうんだけど、他に何か自分だけのためのものが絶対あるはず、と思ってしまうほど絶対的な存在だったわけです。ただ、でも、これは専門的な話になりますけど、フェンダーの楽器を手にするうえで、自分なりにすごく研究もしてきたわけですよ。自分自身が好きな音というのが当然あって、それを鳴らしてくれる楽器の木材のマッチングというのを発見したりとか。いろいろ試していくなかで、こういうベースの音は嫌だな、というのもあるわけです。ただ、そういったことをしているなかで、本来のプレシジョンベースの音はそういうものじゃなかったんです。自分がかつて聴いていたプレべの音というのは違ってた。いや、実は違うわけじゃないんだろうけど、本当はこういう音がするんだ、というのを突き付けられたというか。今、手元に来てるモデルがまさにそうなんです。なんかもう、自分の概念というか、自分自身にとってすごく重要な何かを塗り替えられたかのような気分で。まさにそういう感覚でしたよ。

──おそらくJさんはプレシジョンベースを嫌っていたのではなく、自分を確立したいがために遠ざけていたんでしょうね。そしてその本当の良さを知ったからこそ、衝撃が大きかった。

J:うん。届いたベースの音は自分が毛嫌いしていた音じゃなく、自分が求めていた音だったんですよ。いきなりハードパンチをくらわされた感じだった(笑)。だから伝えなきゃ、と思ったんですよ。そうじゃなかったんだ、ということを。
──面白いものですね。そういう意味では、ベースの音というものについてもリミットの無さというものを実感してきたわけで。

J:ホントにそうですね。そういえば増田さんもLUNA SEAの武道館公演のタイミングで会っているはずですけど、スティーヴ(・リリーホワイト)との創作活動も、このタイミングで水面下で進んでたわけじゃないですか。いろんなことが、この局面で僕のまわりで起きてるわけです。自分自身を見つめ直す機会というのが次々と訪れてきてる。

──実際、彼とは話をしましたよ。LUNA SEAの最新シングルでもコラボレイトしている彼は、そのままこの先に控えているニューアルバムでもプロデューサーを務めている。JさんにとってはU2の『WAR』(1983年)を手掛けた人物、という印象が強かったはずですよね?

J:うん。僕をこのロックミュージックのシーンに引きずり込んだ作品なんだ、ということを彼にも伝えたんです。あなたが作ったアルバムがなかったら僕は今ここにいない、あなたが僕の人生を変えたんだ、と。「そんな人と今、同じ音楽を作ってるという不思議さがわかる?」って尋ねましたよ(笑)。そんな不思議なことも実際に起きてたわけですし、しかも同じタイミングでこうしていろいろ起きてるということには、きっと何かしらの意味なり理由があるはずで。

──やはりそれはこれまでの年月があるからこそ、ですよね。昨日や今日からの縁では、そこまでいろいろなことが繋がってはこないはずだと思うんです。

J:確かに。あと、それがなかったら、今、こうして起きてることの意味が理解できてないと思う。今、このタイミングで……変な話ですけど、こうして打ち震えるようなものに出会えているんだ、ということ。それはもう、幸せなことですよね。しかもそうした出来事のひとつひとつが、何かものすごいメッセージを自分に投げ掛けてきてるんじゃないか、という気がしてくるんですよ。まだまだこの先に行け、と言われているように思えてくる。だから今、なんだか違う扉がバンバン開いてる感じがすごくするんです。

──違う扉が開いた。壁は、あるようでなかった。そしてリミットは、あるかもしれないと思っていたけど実は存在しないことがわかった。

J:いや、まさにそういうことなんです。
■J 11thフルアルバム『Limitless』

2019年7月24日(水) リリース

▲通常盤


【CD+スマプラミュージック】CTCR-14969 ¥3,000 (税別)
【CD+DVD / Blu-ray+スマプラミュージック&ムービー】
DVD:CTCR-14967/B Blu-ray:CTCR-14968/B ¥8,000 (税別)
※DVD/Blu-rayには「Now And Forever」と「新曲」のMUSIC VIDEOに加え、<F.C.Pyro.NIGHT vol.16 新宿BLAZE公演>の模様を収録
※初回生産分は限定スリーヴ仕様

▲SPECIAL盤


【SPECIAL SET (CD+DVD/Blu-ray+スマプラ, PHOTO BOOK)】
DVD:CTCR-14965/B Blu-ray:CTCR-14966/B ¥10,000(税別)
※上記CD+DVD/Blu-ray+スマプラミュージック&ムービー仕様に加え、<J LIVE TOUR 2019 -Voyage 2019->初日のEX THEATER ROPPONGI公演ライヴショットを中心とした全80ページの写真集を付属した豪華スペシャルパッケージ
※初回生産限定
※三方背ケース仕様

【F.C.Pyro.限定 SPECIAL SET】
DVD:CTC1-14970/B Blu-ray:CTC1-14971/B ¥10,800(税込)
※上記SPECIAL SETのパッケージにシリアルナンバープレートが装着されたJオフィシャルファンクラブ“F.C.Pyro.”限定バージョン
※初回生産限定

▼CD
01. the Beginning
02. Now And Forever
03. at Midnight
04. Don’t Let Me Down
05. Ghost
06. Love Song
07. Falling Star
08. Come Alive
09. Can’t Get Enough
10. Fever
11. Fly Again

▼DVD / Blu-ray
<LIVE:F.C.Pyro.NIGHT vol.16 -at SHINJUKU BLAZE 2019.05.05->
01. Now And Forever
02. Go Charge
03. PYROMANIA
04. alone
05. CHAMPAGNE GOLD SUPER MARKET
06. ACROSS THE NIGHT
07. RECKLESS
08. break
09. BUT YOU SAID I'M USELESS
10. Feel Your Blaze
11. TONIGHT
12. BURN OUT
<BONUS MOVIE>
MAKING OF F.C.Pyro.NIGHT vol.16 - at SHINJUKU BLAZE 2019.05.05-
<MUSIC VIDEO>
・Now And Forever
・Love Song


■インストアイベント [トーク&握手会]

7月26日(金) 19:00~ タワーレコード 梅田NU茶屋町店 イベントスペース
8月04日(日) 12:00~ タワーレコード 新宿店 7F イベントスペース
※詳細は店舗ホームページ参照


■夏の全国ツアー<J LIVE TOUR 2019 -THE BEGINNING->

7月06日(土) 岡山IMAGE
7月07日(日) 福岡DRUM Be-1
7月13日(土) 金沢AZ
7月15日(月祝) 仙台darwin
7月21日(日) 札幌cube garden
7月27日(土) 大阪BIGCAT
7月28日(日) 名古屋CLUB QUATTRO
8月11日(日祝) マイナビBLITZ赤坂
8月12日(月祝) マイナビBLITZ赤坂 ※ファンクラブ会員限定
▼チケット
¥5,300(税込 / ドリンク代別)
一般発売:5月24日(土)~

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