フジファブリックが
若者の光と影を描いた
『TEENAGER』は
ゼロ年代邦楽の大傑作

先達へのオマージュを隠さず

「TEENAGER」の歌詞も含めて、志村の見解は見事なものだと思う。ある意味で正鵠を射た発言だと思えるし、“10代”のポジティブな面をとらえている様子がスパッと潔い。実際、アルバム『TEENAGER』は奔放な作品だと言える。フジファブリックの全作品をちゃんと聴いたことがない筆者のような、完全な半可通でもそれはよく分かる。特にサウンド面。いい意味で躊躇していない。
最もそれが分かるのはM8「ロマネ」だろう。1、2拍目はベードラ、3拍目がスネアで、4拍目は休符というリズム──♪ドンドンパ、ドンドンパ♪は、同曲の歌詞の《世界は僕を待ってる/「WE WILL ROCK YOU」もきっとね 歌える》を待つことなく、多くの人がQueenのオマージュであることは分かると思う。それでも歌詞をこうしてしまう辺り、まったく迷いがない印象だ。“開き直ってる”という言い方が適切かどうか分からないが、無鉄砲な感じに思えるところがいい。

The Beatles(M5「Chocolate Panic」の他、サイケな音作りは随所で聴ける)やThe Doors(M6「Strawberry Shortcakes」とM7「Surfer King」のキーボード)など、オマージュはいろいろと感じられるところであるが、そうした海外のロックレジェンドだけでなく、志村がミュージシャンを目指すきっかけとなったという奥田民生、ユニコーンからの影響もありありと分かる。M3「B.O.I.P.」はメロディーも含めてももろにユニコーンっぽい。これはユニコーンのプロデューサーとして知られている河合誠一マイケル氏がアルバム『TEENAGER』を手掛けていることに関係しているのは間違いないが、そもそも河合氏を招いておいてユニコーンっぽいことをやるというのは、肝が据わっているというか、童心を隠していない証拠であろう。M1「ペダル」は仮タイトルが“自転車泥棒”だったというから、その辺は確信犯的だったのだと思われる(「自転車泥棒」は名曲の誉れ高い、ユニコーンの4thアルバム『ケダモノの嵐』(1990年)収録曲)。

個人的には、M2「記念写真」はメロディーのポップさと“写真”というキーワードがFlipper's Guitarを感じたところだし、M9「パッション・フルーツ」のデジタルをフィーチャーしたディスコティックさは、電気グルーヴ「Shangri-La」を彷彿させられた(「パッション・フルーツ」は歌い方も電気っぽい感じ)。実際のところ、彼らがどの辺まで意識的だったのか分からないけれども、それまで以上にさまざまな音楽要素をバンドへと取り込んでいったことは確実であろう。

しかも、それを眉間に皺を寄せながら…ではなく、キャッキャッ言いながら、楽しく臨んだ結果であったことは想像するに難くない。先ほども引用したアルバム『TEENAGER』リリース後のインタビューで、山内総一郎(Vo&Gu)は本作のレコーディングを以下のように振り返っている。

“やれることはやったという感じはあります。レコーディングマジックが起きてプレイを変えたり、そういうことが結構あったんです。「B.O.I.P」や「Chocolate Panic」のエンディング、「ペダル」のアタマとか、要所要所ありますね。みんなが曲に対して、歌に対して、向き合ってレコーディングができたんじゃないかな。今後のレコーディングの楽しみが増えたと思います。(中略)デモを作っているところから、今までとは違うので。これまではセッションで土台を作ってましたから。ただ、制限も出てくるんです。デモを出した時点である程度完成しているじゃないですか。それを超えるというのは難しいんですけど、まったく別物と考えてやるようにしました。その曲のあるべき姿を突き詰められたと思います”
(2008年1月:https://okmusic.jp/news/178540
前向きな台詞が詰まっていて、『TEENAGER』のレコーディング現場の充実ぶりをうかがうことができる。The BeatlesやQueen、そしてユニコーンがそうであったように、フジファブリックもまたロックバンドのセンス・オブ・ワンダーに辿り着いたのであろう。“レコーディングマジック”という言葉に合わせてか、志村は「曲を作ってメンバーと合わせた時に、“自分ではこれは浮かばないな”というフレーズが出てくるとうれしいですね。そういうバンドマジックを求めてやっていきたいです」も述べている。

OKMusic編集部

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