フジファブリックが
若者の光と影を描いた
『TEENAGER』は
ゼロ年代邦楽の大傑作

名曲中の名曲「若者のすべて」

サウンドにおいてミュージシャン的な遊び心が発揮されたことで、歌詞もそれに呼応するかのように、前述したM13「TEENAGER」の他、M3「B.O.I.P.」やM5「Chocolate Panic」、M6「Strawberry Shortcakes」など、勢いで迫るものが多く見受けられる。志村が言った“はちきれんばかりのパワー”が言葉や物語にも封じ込められていて、まさに“10代”ならではの迸るものを感じるところである。しかし、アルバム『TEENAGER』がそれだけで終わっていないことはファンならば、いや、ファンならずともよくお分かりだろう。“10代”ならではの悩み、苦しみ、あるいは踏ん切りのつかなさを描いた側面があってこその『TEENAGER』である。その点、M1「ペダル」やM2「記念写真」の歌詞もいいが、何と言ってもM4「若者のすべて」に止めを刺すであろう。フジファブリックを代表する一曲であるだけでなく、ゼロ年代の日本のロックを代表する一曲、中には平成邦楽屈指のナンバーと言う人もいるほどの名曲中の名曲だ。ここで改めて歌詞を載せるまでもないかもしれないが、以下がサビのフレーズである。

《最後の花火に今年もなったな/何年経っても思い出してしまうな》《ないかな ないよな きっとね いないよな/会ったら言えるかな まぶた閉じて浮かべているよ》(M4「若者のすべて」)。

後半で《僕らは変わるかな 同じ空を見上げているよ》と言っているから、《僕》は誰か他の人物に向けて歌っているのであろうが、具体的なシチュエーションはほとんど示されないまま、《僕》の逡巡──それもどうやら想像の中で躊躇っていると思われるようなフレーズが続いていく。朴訥とした感じのAメロから、若干開放的なBメロを経て、キャッチーだが上品で流麗なサビへとつながっていく歌の旋律と併せて、どこか寄る辺ない感じがありつつも、穢れなく清廉な印象。具体性に乏しい内容故に想像の余地はかなりあって、聴き手それぞれが好きな解釈ができたり、勝手に自身と重ねたりできる。優れた芸術作品の必要条件を備えた、見事な楽曲である。M4「若者のすべて」なくしては、アルバム『TEENAGER』は成立しなかったとすら思う。

TEXT:帆苅智之

アルバム『TEENAGER』2008年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.ペダル
    • 2.記念写真
    • 3.B.O.I.P.
    • 4.若者のすべて
    • 5.Chocolate Panic
    • 6.Strawberry Shortcakes
    • 7.Surfer King
    • 8.ロマネ 
    • 9.パッション・フルーツ
    • 10.東京炎上
    • 11.まばたき
    • 12.星降る夜になったら
    • 13.TEENAGER
『TEENAGER』(’08)/フジファブリック

OKMusic編集部

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