世界中にその名を知らしめた名曲
「ラウンドアバウト」を含む
イエスの傑作『こわれもの』

『Fragile』(’71)/Yes

『Fragile』(’71)/Yes

イエスの最高傑作は『危機(原題:Close to the Edge)』(‘72)だと言う人は多いだろう。でも、僕にとってイエスの最高傑作は『こわれもの(原題:Fragile)』(’71)である。中学生の時、本作に収録された「ラウンドアバウト」のシングル盤をリアルタイムで聴いた衝撃は大きかった。キング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿(‘69)』やピンク・フロイドの『原子心母』(’70)はすでに聴いていて、もちろん大きな事件だったけれど、「ラウンドアバウト」のパワーはもっとすごかったのである。シングル「ラウンドアバウト」にハマった人は、誰もが「もっと長く聴いていたい」と思ったはずだ。お金を貯めて『こわれもの』を買い、家に帰って聴いてみると、1曲目の「ラウンドアバウト」はシングル盤の2倍以上の長さ(シングル盤=3分27秒、アルバムバージョン=8分36秒)があり、2度目の感動を得たのだった…。そんなわけで、今回はイエスの4作目となる『こわれもの』を紹介する。

多くのサウンドを盛り込んだ
初期のイエス

イエスはクリス・スクワイア(ベース)とジョン・アンダーソン(ヴォーカル)が中心となって、69年に『イエス・ファースト・アルバム(原題:Yes)』でデビューしている。この時のメンバーは上記ふたりの他、ピーター・バンクス(ギター)、ビル・ブルフォード(ドラム)、トニー・ケイ(キーボード)が在籍していた。イエスはアメリカのレーベル『アトランティックレコード』がイギリスのアーティストとして初めて契約したグループである(2番目がレッド・ツェッペリン)。

2ndアルバムの『時間と言葉(原題:Time And A Word)』(‘70)までのイエスは、サイモン&ガーファンクルに似た美しいコーラスワークを売りに(まだ発展途上ではあるものの)、ジャズ寄りのサイケデリックロック(ビートルズの影響はかなり多いが)を聴かせる技術力の高いグループだった。この時期の特徴はピーター・バンクスのジャズっぽいギターワークで、『イエス・ファースト・アルバム』はロックの中で、ギターのオクターブ奏法を使った最初期のアルバムだと思う。2ndアルバムではオーケストラと共演するなど、1stよりも多彩なサウンドを聴かせてはいるのだが、詰め込みすぎというかポイントが絞りきれていなかった。何より、アルバムの核となる決定的な1曲を生み出せていないのが、リスナーに散漫な印象を与えたと思う。

スティーブ・ハウの加入

グループをもう少しジャズ寄りにと考えていたピーター・バンクスは、2ndでのストリングスとの共演に不満感を表し、『時間と言葉』のリリース前にグループを脱退する。その後、オーディションを経て加入するのがスティーブ・ハウである。彼の加入で、以前と比べてグループの表現力は大幅にアップする。クラシック、ジャズ、フォーク、カントリー、ブルース、スパニッシュなど、どんなスタイルのギターでも弾きこなす彼の力量は、多くのスタープレーヤーを擁した当時のブリティッシュロック界の中でもトップクラスに位置するものだ。

ハウの加入後にリリースされた『イエス・サード・アルバム(原題:The Yes Album)』(‘71)は、それまでの2枚のアルバムと比べると、コーラスの重厚さをはじめ(ハウの影響だろうが、この頃からCSN&Yの影響が感じられる)、楽曲の深みや構成の巧みさなど、演奏力は格段にスケールアップしており、メンバーが鼓舞されたことがわかる。ただ、マール・トラヴィスやチェット・アトキンスに影響されたギャロッピング・スタイルのカントリーギターはイエスにはそぐわないと僕は思う。この頃のハウは英カントリーロックグループのヘッズ・ハンズ&フィートに在籍していたアルバート・リーに影響されていたようで、リー風のフレージングが随所に見られる。また、当時としては珍しく、ペダルスティールを模したギター奏法を披露していて、成否は別として彼の先進的かつ実験的な取り組みは、後進のギター奏者への大きな刺激となったことは間違いないだろう。

OKMusic編集部

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