高泉淳子が手がける「ア・ラ・カルト
」の番外編! クリスマスのディナー
は予約必至「俺× 僕のフレンチ」で
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短編の芝居と生演奏の楽曲でクリスマスシーズンの夜を演出する「ア・ラ・カルト」は、高泉淳子の“音楽愛”を全身で感じられる恒例の人気企画だ。1989年から青山円形劇場で上演してきた本シリーズは、劇場の閉館以降あらゆる場所で上演され、昨年の東京芸術劇場シアターイーストでは、30周年のアニバーサリー上演で客席を大いに沸かせた。今年はそのスピンオフとして「俺✕ 僕のフレンチ」の上演が控えてる。「ア・ラ・カルト」でおなじみのワイン好きなキャラクター・高橋が期間限定でフレンチレストランを開業するという。それはいったい、どんなお店になるのだろうか? 高泉に話を聞いた。
■演劇と音楽的が混ぜ合ったものを
――移動レストラン「ア・ラ・カルト」は、昨年末の30周年アニバーサリー公演も大好評でした。
「ア・ラ・カルト」でやっていることは、私が東京に出てきた意味というか、そもそも私がやりたかったこととつながっています。もともと、演劇少女ではなかったんです。どちらかというと、音楽や映画、テレビの『エド・サリヴァン・ショー』『ザ・ルーシー・ショー』に憧れる子どもでしたから。地元(宮城県古川市)は小学校から演劇、音楽が割と盛んなところでしたが、私は中学でも高校でも演劇部には入りませんでした。どうすれば、音楽や映画の世界に触れられるだろうかと考えていて、行きついた先が、上京して進学した早稲田大学でした。
大学に入っても、すぐに芝居を始めたわけではないんです。大学では有名なビックバンド早稲田ハイソサエティや、映画のシナリオ研究会など、早稲田のなかにあるサークルを見て回りました。ハイソはプロ級の管を演奏する人ばかりで、歌いたいなんて言えるような雰囲気ではありませんでした。なので、かつてタモリさんが所属していたジャズ研究会に行くんですけど、ほとんどジャズを研究していませんでしたね(笑)。
当時は小劇場ブームで、ライブに行く傍、芝居も観て回りました。黒テント、紅テント、早稲田小劇場、天井桟敷、転形劇場…、どこも個性的で活気があって。だけど自分は演劇をやっている人とは志向が違うんじゃないかと思っていました。小学校からの同級生が立教でやっていたブルースバンドに加わりながら、早大演劇研究会(劇研)に顔を出すようになると、意外にも肌が合ったんです。劇研には映画好き、ジャズ好きの人や、ちょっとアンチ演劇っぽい人もたくさんいましたから。
――本格的に演劇活動を始めるきっかけはなんだったのですか?
劇研の演出家に「バンドか芝居かどちらかにしないと、君はどっちつかずになるぞ」と指摘されて、それで演劇を選んだんです。ブルースバンドは男性陣が片づけをしないんです。一方で劇研は男性たちが働き者なんですよ。そこでどちらかを選ぶことになったとき、働く男性の多い劇研一本に絞ることにしました(笑)。
でも、ずっと私は演劇的なものと音楽的なものが混ぜ合ったものをつくりたかったんですね。大学のときはそれは言えなかった。「それってミュージカル?」って言われちゃうでしょ。音楽劇でもないし、うまい言葉が見つかりませんでした。ずっと心の中にありました。スゥイングジャズが好きで、ウディ・アレンのような世界観も好きで、劇団を結成してからも、そういう思いを持ち続けながらやっていました。89年に「ア・ラ・カルト」を始めることができたのは、劇団のほうがようやく落ち着いてきて、さて!というタイミングだったからです。
(撮影:船橋陽馬)
■欠落した部分のある人が愛おしい
――青山円形劇場の閉館で、様々な場所で「ア・ラ・カルト」が上演されました。今回は番外編であり、会場はeplus LIVINGROOM CAFE & DININGですね。
今年は劇場が取れなくて、場所を探していて。友人とこのお店を見に来ました。「ア・ラ・カルト」は地方のお客様も多くて、ここなら移動しやすいと思いました。駅から近いし。何より渋谷という立地も。クリスマスは青山界隈がいいと思って、青山円形劇場で26年やってきたので、惹かれましたね。
それから、クリスマスの雰囲気と内装が合っていると思いました。私が観客としてここに来たら、きっとワクワクできるだろうなと思えたのも大きいです。劇場ではないので、この会場でどうやってお芝居を見せるかは、とてもむずかしいと思うけど。

――「俺✕ 僕のフレンチ」は「ア・ラ・カルト」の人気キャラクター・高橋が期間限定でお店を開くというシチュエーションです。
いつもの「ア・ラ・カルト」だと、まずは女性客が登場してアペリティフを注文して、前菜、メイン、デセール、食後酒の順番で芝居が進行していくわけですが、今回はまた別の見せ方になると思います。ワイン好きのサラリーマン高橋がレストランの店主になったら、どう展開するか。劇場ではないので、少し違うことをやりたいなと思います。昨年で30周年アニバーサリーが終わったので、今回は思い切り味付けを変えたいと思います。遊びたいなと。お酒を飲みながら、お料理を食べながら味わうステージショーですからね。
――高橋にしても、遊◉機械/全自動シアターで登場した山田のぼる少年にしても、高泉さんは男性を演じることが多いですね。
私のなかでは、男性を演じることも女性を演じることも、少女を演じることもおばあちゃんを演じることも同じスタンスなんです。たとえば、『ザ・ルーシー・ショー』でも、ルーシーは毎週役どころが変わります。あるときは、オーケストラの指揮をやっていて、またあるときは海賊で……。「誰に語らせたら面白くなるか」という視点で考えているんですね。山田のぼるが語っていることも、小学生とは思えないことばかりでしょう(笑)。サラリーマンの衣装を着ていい加減なこと話していくと、高橋になっていく、ような。
人物を演じるとき、欠落した部分のある人を愛おしいと感じます。パーフェクトな人なんていないけど、小説でも映画でも、どこか欠落があって失敗を繰り返す人のほうが魅力があるじゃないですか。ウディ・アレンの映画の登場人物も、寅さんもそうですよね。
ちなみに、高橋は10日間の有給をもらってお店を開きます。その変わり夏休みはいっさいとらなかったみたいです(笑)。
――高橋は来年も有給をとりますか?
今回の店の評判次第ですね。まあ、中央がダメなら、高橋は地方周りを。「ア・ラ・カルト」の宣伝マンとして、高橋はみんなの踏み台になるんです(笑)。
(撮影:船橋陽馬)
■新しい観客との出会いを求めて
――遊◉機械/全自動シアターの作品でも「ア・ラ・カルト」でも、高泉さんが台本を書き、演出を託すスタイルを続けていらっしゃいます。
「ア・ラ・カルト」のときは、白井(晃)も私も、役者でしたからね。それで、もともと劇団員だった吉澤(耕一)に演出家として入ってもらいました。照明家でもある彼は人間的にとてもできた人なんです。みんなの言い分を聞いて、好きにさせてくれて、まとめていく。大変だと思います。作家と演出家と役者で明確な役割分担がないのは、劇団当時エチュードで創作していくこともしていたからだと思います。
劇団のときともっとも近い創り方でやっているのが「ア・ラ・カルト」です。みんなが好きなことをのびのびとやれること。大変でも、やりたいことはやり通す。そのためには妥協がいちばんの敵ですね。中西(俊博)さんも、最初の頃は驚いたみたいです。本番が近づいても、ギリギリまで粘ってつくるから、間に合わないと思って焦ってましたね。もちろんリハの段階で書き直すことは大いにあります。本番中でも書き直します。粘りは誰にも負けないと思います(笑)。
――篠井英介さんに、春風亭昇太師匠、ROLLYさんと、毎度のゲスト陣も登場します。
毎回ゲストごとに台本も変えています。毎回素敵なゲストが参加してくれてありがたいです。みなさん個性豊かで、刺激的です。
――毎年の恒例公演として30年も続けていくのは、驚異的なことだと思います。
ライブでお客様を集めるのって、とても大変なことなんです。毎年の積み重ねがないと、お客様も認知してくれません。それこそ粘り腰でやり続けてきて、なんとか今があると思います。昨年、初めて観に来たというお客様が増えました。それがうれしかったですね。もちろん、以前から来てくださるお客様には感謝してますし、大切にしたいです。でも「ア・ラ・カルト」というこの作品を知らない人はたくさんいるわけで。一度でいいから観てもらいたいです。新しいお客様と、もっと出会いたいですね。
取材・文/田中大介

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