ジム・モリソンの遺作となった
ドアーズの『L.A. ウーマン』は、
自らのルーツを見直した秀作

本作『L.A. ウーマン』について

これまでの6枚のアルバムでプロデュースを務めたポール・ロスチャイルドはグループと意見が合わなくなり、プロデューサーを辞している。その理由についてはいろいろと言われているが、前年に担当していたジャニス・ジョプリンの急死(10月に逝去、『L.A. ウーマン』のレコーディングは12月から)で精神状態が不安定になっていたというのも理由のひとつであるらしい。ただ、ロスチャイルドはブルース・ボトニックに「グループと一緒にプロデュースをやってほしい」と依頼している。

収録曲は全部で10曲。1曲、ジョン・リー・フッカーのブルース曲のカバーの他、オリジナルでもブルース曲は4曲とこれまでになく多い。これはロスチャイルド不在のせいもあるが、彼ら自身『モリソン・ホテル』で推し進めた原点回帰をもっと掘り下げたかったからだろう。本作にはサポートメンバーとして、モリソンが尊敬するエルビス・プレスリーのバックも務めたジェリー・シェフがベースを、レオン・ラッセルとアサイラム・クワイアを組んでいたマーク・ベノがギターで参加していることもあり、これまで以上に泥臭くアーシーなサウンドにチャレンジすることが可能となった。

本作には冒頭のご機嫌なソウルロックナンバー「チェンジリング」を始め、「ラブ・ハー・マッドリー」「L.A. ウーマン」「ヒヤシンス・ハウス」「ライダーズ・オン・ザ・ストーム」など、多くの名曲が収録されている。「ラメリカ」はオルタナティブロックのような新しいテイストを持ったナンバー。また、彼らにとって新境地とも言えるソフトな「ヒヤシンス・ハウス」はレイドバックしたやさしいサウンドで、ヴォーカルにはロックスターではなく素のモリソンの存在が感じられる。

僕はドアーズの最高作として、迷いなく本作『L.A. ウーマン』を選ぶ。このアルバムのようにベーシストとリズムギターを加えたスタイルで、続けてもらいたかった。残念なことに、本作のリリースから3カ月後、モリソンはパリで帰らぬ人となった。

残されたクリーガー、デンズモア、マンザレクの3人は、ドアーズ名義で2枚のアルバムをリリースする。その後、クリーガー、デンズモアのふたりはイギリスに渡り、本格派のソウルシンガー、ジェス・ローデンを迎えてファンクグループのバッツバンドを結成する。バッツバンドでは2枚のアルバムをリリースしており、1枚目の『バッツバンド』(‘74)はクリーガーとデンズモアの全キャリアを通して最高のアルバムだと言えるが、セールス的には失敗したので残念ながら現在はLPもCDも入手困難である。マンザレクはソロやグループで活動し、80年代にはプロデューサーとしてエコー&ザ・バニーメンなどを手掛けたこともあるが、2013年に死去している。

TEXT:河崎直人

アルバム『L.A. Woman』1971年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.チェンジリング/The Changeling 
    • 2.ラブ・ハー・マッドリー/Love Her Madly
    • 3.ビーン・ダウン・ソー・ロング/Been Down So Long
    • 4.カーズ・ヒス・バイ・マイ・ウィンドウ/Cars Hiss by My Window
    • 5.L.A.ウーマン/L.A. Woman
    • 6.ラメリカ/L'America
    • 7.ヒヤシンスの家/Hyacinth House
    • 8.クローリング・キング・スネーク/Crawling King Snake
    • 9.テキサス・ラジオ/The WASP (Texas Radio and the Big Beat)
    • 10.ライダーズ・オン・ザ・ストーム/Riders on the Storm
『L.A. Woman』(‘71)/The Doors

OKMusic編集部

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