INTERVIEW / BBHF 異なるコンセプト
を持つ2枚のEPを発表したBBHF。フロ
ントマン・尾崎雄貴へのインタビュー
を通して、バンドの核となる部分を紐
解く

Galileo Galileiの元メンバー・尾崎雄貴(Vo. / Gt.)、尾崎和樹(Dr.)、佐孝仁司(Ba.)に加え、Galileo Galileiのサポート・メンバーも務めていたDaiki(Gt.)が正式加入し結成されたバンド、Bear Hare and Fish。
2018年にデビュー・アルバム『Moon Boots』をリリースしたかと思えば、2019年の夏にBBHFへとバンド名を改名。新たなスタートとして『Mirror Mirror』、『Family』という対になる2作品をリリースした。
この2枚の作品に収録された全13曲を順に聴いていくと、モダンなR&BやヒップヒップからThe 1975Coldplayといったスタジアム・バンドまで、多種多様なサウンドが頭を過る。しかしながら、軸にあるメロディーや尾崎雄貴の歌声といったフィルターを通すことで、どんな楽曲でもBBHFの音楽だと一発でわかる説得力が彼らの音楽にはある。
『Mirror Mirror』と『Family』。1つのバンドとして2つの音楽的なコンセプトを両立させていくという試みは、これからの日本の音楽シーンにとってひとつつの道標になりえるかもしれない。今回はそんな様々な音楽性が混ざって完成したBBHFというバンドの魅力を紐解くため、バンドの中心人物、尾崎雄貴にメール・インタビューを決行した。
また本インタビューに合わせて、TOKYO SOUNDSのMusic Bar SessionシリーズにてBBHFによる「Mirror Mirror」が公開された。ぜひともこちらも合わせてチェックを。
Interview & Text by Kento Mizushima
――Galileo Galileiの活動を終え、新しくBBHFとしてバンド活動をスタートさせたのは、Galileo Galileiとしてではできない音楽性や表現が具体的にあったからなのでしょうか?
尾崎:音楽性と言うよりは、Galileo Galileiというバンド自体に限界を感じていたので、BBHFをスタートした理由は、説明することの難しい、もっと自然なものでした。再出発ではなく、新しいバンドを始めるというところが大事だったのです。気持ち、気分の問題だったのかもしれません。
――Bird Bear Hare and Fishとして初めてのリリースとなった前作『Moon Boots』は、Noel GallagherやColdplayといったUK・USのスタジアム・ロックを感じさせるスケールのあるサウンドに、Two Door Cinema ClubBombay Bicycle Clubなどといった00年代のインディ・ロックの要素を散りばめた作品に仕上がっていたと思います。一方、今作『Mirror Mirror』ではエレクトロ・ポップを軸としつつ、R&BやThe 1975辺りのサウンドからの影響を強く感じさせる、モダンでダンサンブルな作品に仕上がり、前作とは方向性がガラリと変わったと思います。このような方向性に至った経緯を教えてください。
尾崎:00年代のインディ・ミュージックは僕たちにとって、一緒に青春を過ごし、音楽面でも心の面でも成長を促された大事な存在なので、いつだってその影響は強く出ていると思います。一方で僕たちはスタジアムのように巨大な場所での演奏に耐えうる楽曲を書くことにも強く惹かれるので、ColdplayやImagine DragonsKaty Perryも同じように愛しています! 『Mirror Mirror』でもそれは軸にあるのですが、このEPはもっと鋭く小さな纏まりのあるものにしたいと思っていました。ふたつの異なるコンセプトのEPをリリースするというアイディアからのスタートだったので、1つの方向性にフォーカスできた気がします。
――『Mirror Mirror』はバンドとしても新しいことに挑戦した1枚だと思います。Galileo GalileiからBBHFに至るまで、作品ごとにサウンドもカラーも変化させ、常に新しいことに挑戦し続けてきたと思うのですが、「ここだけはどんな作品でも曲げないように意識している」といった核のような要素はありますか?
尾崎:僕たちを取り囲む、国内でパワーを持っている音楽に、作品が引っ張られないようにしています。日本の音楽を聴かない/嫌いという意味ではなく、表現が難しいのですが、制作期間はテレビも観ないようにしていますし、そういった音楽が流れる場所にもなるべく行かないようにしています。これはGalileo Galilei時代から一貫していますし、これからもそうすると思います。
――BBHFはメンバーそれぞれ北海道と東京で離れて生活をしていると聞きました。バンド活動をしていく上で距離感が生み出す難しさもあると思うのですが、具体的にはどうでしょう? 普段の制作などはどうやって行っているのでしょうか?
尾崎:2週間ほど時間をとって、札幌に集まってレコーディングしたり、それができない時はメールでのやり取りで作品を完成させていきました。個人的には、みんな北海道に住んで欲しいですね(笑)。
東京は賑やかでクリエイティヴな街だと思いますが、北海道は雪以外は何にも邪魔されず自分自身に集中できる場所なので……。
――今作はバンドが所有する北海道のガレージで録音し、自分たちでミックス、マスタリングまでを行ったそうですね。こういったDIYな制作方法を選んだ理由を教えてください。
尾崎:時間の使い方が自由なことと、よりおもしろい挑戦へ方向転換がしやすいというのが理由です。メンバーや近しいスタッフ以外の誰にも気を使わなくていいというのも魅力ですね。
――セルフですべてを行ったのは初めてですよね。実際にやってみてどうでした?
尾崎:いえ、Galileo Galileiの頃のアルバム『Portal』はほぼセルフだったので、初めてではないです! 今後も機会があれば誰かの力をどんどん借りていきたいと思っていますが、最終的には僕たちにとって、セルフが一番ピッタリな制作スタイルになるんだと思います。
――「だいすき」ではヒップホップを彷彿とさせるビートが使われていたり、先日公開されていたDaikiさん選曲のプレイリストでもVince StaplesやYoung ThugといったUSの人気ラッパーからSlowthai、Tobi Louといった注目の新人ラッパーまで、ヒップホップ系の楽曲が多数選曲されていました。BBHFとしてヒップホップから影響を受けた部分はありますか?
尾崎:ヒップホップそのものが好きというよりは、ポップスやロックと垣根がなくなってきた現在のヒップホップに、独特で魅力的な歌心を感じています。808サウンドや、サンプリングを楽曲に取り入れていますが、ヒップホップへの愛ではなく、そのサウンドのおもしろさ自体に魅力を感じて取り入れています!
――『Mirror Mirror』の楽曲の中で一番リリックに思い入れがある曲はどれでしょうか? そのリリックがどう生まれたのか教えてください。
尾崎:「リビドー」の歌詞は、思い入れがあります。惹かれている相手との駆け引きについての歌で、それにうんざりしつつも性の引力には敵わないという、パーソナルな体験からの歌です。
――先程セルフ・プロデュースの話を聞きましたが、BBHFの皆さんといえば、POP ETCとの交流が深く、前作『Moon Boots』もフロントマンであるChris Chuとの共同プロデュース作となっています。これまではPOP ETCを日本に迎えて彼らとレコーディングやライブなどを共にすることが多かったと思いますが、逆にBBHFとして海外に進出したいという気持ちはありますか?
尾崎:できることならしたいですが、海外の水準はとてつもなく高いので、自分たちとしてはまだまだ難しいと思っています。でも、いつかできたらいいですね。
――『Family』ではPOP ETCのChrisが5曲目の「水面を叩け」のミックスを手がけています。この曲をChrisにお願いした理由というのは?
尾崎:前からPOP ETCで新しい曲ができると、デモを送って聴かせてくれりしていて。そのデモのサウンドにパンチがあって良かったので、今回ミックスをお願いしてみました。
――ちなみにPOP ETC以外で一緒に仕事をしてみたい海外のプロデューサーや、共演してみたいアーティストがいれば教えてください。
尾崎:Rostam Batmanglij、Francis and the Lightsですね。
―― 『Mirror Mirror』と『Family』、それぞれ趣の異なる2作品を作るにあたって、レコーディングで特に工夫した部分があれば教えて下さい。
尾崎:敢えて2作品のサウンドを切り分けて考えないようにしていました。対になるコンセプトを実現することに捉われて、肝心の楽曲の風通しを制限したくなかったので、1曲1曲それぞれの持つカラーを大事にしていきました。
――『Family』はインドやタイといったアジアのポップスの要素もあるとのことですが、冒頭を飾る「花のように」はリズムやシンセの音作りなど含めアジアのテイストが濃く出ています。この曲ができ上がった背景を教えて下さい。
尾崎:ボリウッド(インド映画産業全般につけられた俗称)の動画を観ながら曲を書いていて、偶然生まれたテイストです。いくつものインド楽器やパーカッションをサンプリングしていて。躍りながら作りました。
――アジアの音楽に興味を持つ具体的なきっかけや出来事があったのでしょうか?
尾崎:出来事というよりは、直感のような感じで、急にアジアで生きていることに自分たちのアイデンティティを見出したことがきっかけです。
――『Family』のCDとは別に、7インチ・シングルとして『なにもしらない』、『涙の階段』もリリースされました。こちらのB面に収録されている「黄金」と「わかっていた」はどのような立ち位置の楽曲になるのでしょうか?
尾崎:「黄金」はVan Morrisonから影響を受けて書いたラブ・ソングで、自分でもとても気に入っています。「わかっていた」は『Mirror Mirror』に収録するか迷ったのですが、最終的に今作のカップリングになりました。
――『Mirror Mirror』と『Family』では具体的に「デジタル」と「フィジカル」というテーマがあり、一方は配信のみ、そしてもう一方はCDに加え7インチもリリースしました。今日ではストリーミングからYouTube、アナログ・レコードなど様々な音楽の聴き方がありますが、BBHFの皆さんは普段どのような音楽の聴き方をしますか?
尾崎:Apple Music、Spotify、YouTube、レコード、カセットの順でよく聴きます。そういえばMacからCDドライブが消えてから、CDは聴かなくなってしまいました。スタジオの棚にはたくさんありますけど。
――最近のライブではGalileo Galilei時代の元メンバーでもある岩井郁人さんがライブに参加していると聞きました。今改めて岩井さんと音を鳴らしてみて、昔と変わった部分やBBHFのライブに彼が加わって与えた変化ってありますか?
尾崎:彼はとてつもなく器用なんですが、Galileo Galileiを脱退した時に比べると、自分の得意分野を見出して心から音楽を楽しんでいるように感じます。どんなに難しくて面倒な要求にも、いつも全力で取り組んでくれるので、とっても心強い味方です。
――ここ最近でハマっているアーティスト、2019年で今のところベストだと思うアルバム(作品)を教えてください。
尾崎:Bon Iverの『i,i』です。
――これから楽しみなリリースはありますか?
尾崎:Haimのニュー・アルバムですね。
――最近音楽以外でインスピレーションを受けたものはありますか?
尾崎:生活にインスピレーションを感じるようになっています。朝起きて、歯磨きをしたりゴミを出しにいったり、そういう日々のルーティンに急に刺激をもらうことがあるんです。
――今作には「あこがれ」という曲が収録されていますが、現在、憧れているものはありますか?
尾崎:大きなレコーディング・コンソールとか、ハンモックとかに憧れています。
――Galileo GalileiがBird Bear Hare and Fishになり、さらにはBBHFへとまた変化したわけですが、自分たちが思う一番変化している部分というのはどこだと思いますか?
尾崎:バンドをやる楽しさかな……(笑)。今が一番楽しいです!
――最後に、『Mirror Mirror』と『Family』という別々の軸を持つ2枚の作品を発表したわけですが、バンドとしてBBHFの今後の展望を教えて下さい。
尾崎:2つのコンセプトを両立させていくというバンドの試みは成功したように感じるので、今後もこの表現方法で、おもしろい作品を作っていけると思います!
【リリース情報】

BBHF 『Mirror Mirror』

Release Date:2019.07.01 (Wed.)
Label:Beacon LABEL
Tracklist:
1. Torch
2. だいすき
3. 友達へ
4. Mirror Mirror
5. バック
6. リビドー
==

BBHF 『Family』

Release Date:2019.11.13 (Wed.)
Label:Beacon LABEL
Tracklist:
1. 花のように
2. なにもしらない
3. 真夜中のダンス
4. シンプル
5. 水面を叩け
6. あこがれ
7. 涙の階段

【ツアー情報】

2020年6月9日(火)
名古屋 Electric Lady Land
OPEN 19:00 / START 19:30

2020年6月10日(水)

大阪 BIGCAT
OPEN 18:45 / START 19:30

2020年6月12日(金)

東京 新木場STUDIO COAST
OPEN 18:00 / START 19:00
ALL STANDING
前売り4200円(D代別)
■ BBHF オフィシャル・サイト(http://birdbearhareandfish.com/)

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