『フロム・ザ・リーチ』は
豪華なゲストを迎えた
サニー・ランドレスの会心作

素晴らしいタイミングで
来日したジョン・ハイアット

シンセポップや打ち込みの目新しさが落ち着きを見せ、人力演奏が見直されるようになった1988年、グッドタイミングで来日公演を行なったのがジョン・ハイアット。彼は70年代前半から活躍するカントリーロック系のシンガーソングライターで、実力派のシンガーとして知られるだけでなく、ライ・クーダーのグループにセカンドギタリスト兼ヴォーカリストとして加入するなど、ギタリストとしての力量も高い。

中でも、来日の少し前にリリースされたライ・クーダー、ジム・ケルトナー、ニック・ロウをバックに従えた『ブリング・ザ・ファミリー』('87)は、風格すら感じさせる仕上がりで、これまで陽の目が当たらなかったハイアットであったが、このアルバムの曲が多くのアーティストにカバーされ、一躍ルーツロックの申し子として認められることになる。そのアルバムがまだ話題となっていた時期だけに、彼の日本公演にライ・クーダーが来るのではないかと多くのファンは期待していた。しかし、来日メンバーが発表されると、知らないメンバーばかりでがっかりすることになるのである。この時、ハイアットのバックメンバー「ザ・ゴナーズ」の一員として参加していたのが、まだ無名のサニー・ランドレスだ。

手品のようなランドレスの
スライドプレイ

ファンの期待と失望の中で、ハイアットのライヴを観た者はその演奏に度肝を抜かれるのである。サニー・ランドレスのスライドプレイはデュアン・オールマンでもライ・クーダーでもローウェル・ジョージでもない、それまでに体験したことがないまったく新しいスライドギターのスタイルで、じっくり見ても、どうやって弾いているのか見当もつかなかった。この時、世界中のスライドギターファンを差し置いて、日本のリスナーが最初にランドレスを発見したと言っても過言ではない。彼のスライドプレイは単にスライドバーを弦に当てるだけでなく、他の指で押弦したり右手もフルに使うなど、微妙なコントロールを自在にこなしていた。彼の天性の才能はもちろんだが、気の遠くなるような実験と練習を日々行なっていたのだと思われる。

このコンサートのあと、彼のアルバムを探すリスナーは増え、中古専門店に彼のコーナーができるほどであった。かく言う僕も彼の1stソロ作『ブルース・アタック』('81)と2nd『ウェイ・ダウン・イン・ルイジアナ』('85)を入手し、特に『ウェイ・ダウン〜』は聴きまくった。このアルバムは、彼のルーツであるルイジアナのケイジャンやザディコ臭が強く、ランドレスならではのサウンドに満ちている。生音に近いスライドプレイは、すでに彼のスタイルが完成しつつあり、指弾き・スライドともにハイレベルのテクニックが聴ける作品だ。

ランドレスのトレードマークとも言える重厚なスライドギターが聴けるようになったのは、ソロ3作目(メジャー移籍1作目)の『アウトワード・バウンド』('93)からで、この作品以降、そのプレイには磨きがかかり超絶技巧の連続である。ソロ4作目の『サウス・オブ・1-10』('95)ではアラン・トゥーサンやマーク・ノップラーをゲストに迎え、ランドレスのケイジャン・スワンプ・ロックと呼ぶべき独自のアメリカーナ・サウンドを確立する。この頃から多くのセッションに参加し、スライドギタリストとしてデュアン・オールマンやライ・クーダーと並び称される存在となる。

OKMusic編集部

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