音楽とLIVEに中毒ならばジャンルなど
関係ないことの証明『APOSTLOS TOUR
2020』 TOUR FINALライブレポート

SAPICE presents 『APOSTLOS TOUR 2020』TOUR FINAL 2020.2.16 TSUTAYA O-EAST
2月16日、SPICEが主催する音楽イベント『APOSTOLOS TOUR 2020』のツアーファイナルが、TSUTAYA O-EASTで開催された。
『APOSTOLOS TOUR 2020』は、ラウドロックバンド、ヴィジュアル系バンド、アイドルと、普段は異なるフィールドで活動をしているバンド/グループが一堂に会し、東名阪を廻るパッケージツアーだ。ツアータイトルにある「APOSTOLOS」とは、ギリシャ語で「使徒(シト)」という意味。「使徒」というと、イエス・キリストの弟子である12使徒が有名ではあるが、今回は4組の「四徒(シト)」であり、あらゆるジャンルの四獣が集うというのが、このイベントツアーのコンセプトである。今回出演したのは、眩暈SIRENa crowd of rebellion、CY8ER、RAZORの4組。異なる肩書きであり、表現方法を持つ4組が、自身の持つ魅力を存分に発揮する熱演を繰り広げた。
CY8ER
CY8ER
この日のトップバッターを務めたのは、CY8ER。ステージに飛び込んできた彼女達は「コクハクワープ」でライヴスタート。バキバキのエレクトロサウンドがフロアへ放たれる。続く「恋愛リアリティー症」は、強烈なまでにブーストされた重低音が、楽曲に漂っている感傷的な空気をぐっと高めていった。
CY8ER
そのままメンバー名のコール&レスポンスを繰り広げる「MCMC DANCE」に繋ぎ、フロアを熱く盛り上げると、一転、「雨の渋谷駅、一人煙草をくわえて佇む15歳の女の子がいました」という、苺りなはむの一言から始まったのは「東京少女」。夢心地な雰囲気ながらも、どこか寂しさも感じさせるミディアムチューンで、5人はマイクスタンドを使ったパフォーマンスを披露。アッパーなだけでなく、しっとりとした雰囲気でもフロアを魅了していた。
CY8ER
そこからも、和楽器を組み込んだアップリフティングなサウンドに、5人のダンスのキレが一気にあがった「東京ラットシティ」や、オープニングでメンバーが縦一列に並んだフォーメーションでフロアから大きな歓声があがった「ごーしゅー」と、途中でオーディエンスを盛り上げる一言は挟みつつも、MCらしいMCはすることなく、一気に突き進んでいく5人。
CY8ER
CY8ER
そんな中、真っ白なライトを背負って届けられた「エンドロール」では、シンガロングが巻き起こる。壮大なサウンドも相まって、実にドラマティックなシーンを作り上げた後、フロアにサークルを発生させた「ドキドキパリラルラ」でフィニッシュ。異なるフィールドで活動している者同士の共演ということもあり、必然的に初めてその演者に触れる人が増えるわけだが、一心不乱に歌い踊る5人の姿や、立て続けに繰り出されていくダンスビートに、自然と身体を揺らすオーディエンスがどんどん増えていき、最後には大きな拍手と歓声が送られていた。
RAZOR
RAZOR
続いて登場したRAZORは、サポートドラマーにNatsu(NOCTURNAL BLOODLUST)を迎えた編成でのステージとなった。SEの「KNOT INVISIBLE」が流れる中、5人が姿を現わすと、フロアから怒号にも似た歓声があがる。各自が持ち場につき、バンド演奏に切り替えた途端、強烈な音塊がフロアを襲い、オーディエンスのヘッドバンギングが嵐のように吹き荒れた。
RAZOR
そのままギラつきまくったバンドサウンドで攻め倒す「LIQUID VAIN」を繰り出したのだが、今回のツアー開催にあたって「こういった異種格闘技的な舞台に立つとなったら絶対に負けられないなと思った」とコメントを寄せていただけあって、尋常じゃないほどの気合いの入りっぷりだ。重厚なギターリフとビートが興奮を突き上げる「嫌、嫌、嫌。」や、超重量級のサウンドを激しくドライヴさせていく「紅く散らばる華」など、メロディアスでありながら、ヘヴィミュージック好きのツボを激しく刺激する楽曲達を畳み掛けていく。
RAZOR
RAZOR
そんな壮絶なサウンドを背負い、ときに獰猛に叫び、ときに伸びやかに歌い上げ、「気持ち的には僕らもアイドル」とキャッチーなMCもする猟牙のパフォーマンスも求心力抜群で、フロアを巧みに扇動していく。ウォールオブデスを巻き起した「埋葬」では、フロアにダイブしたり、CY8ERのファンから借りたサイリウムを振り回したりと、自由にその空間を楽しんでいた。そんな彼の立ち居振る舞いが伝播したのだろう。

RAZOR
ラストナンバーとなった「千年ノ色彩」のフロアは、ヘッドバンギングと、ツーステップと、サイリウムが乱れ舞う圧巻の光景になっていた。去り際に「これからもRAZORとヴィジュアルロックをよろしくお願いします!」と叫んだ猟牙。そんな自分達の出自に胸を張る姿勢は清々しいものがあった。

a crowd of rebelion
a crowd of rebellion
3番手はa crowd of rebellion。「Alone//Dite」の静と動を効かせた楽曲構成であり、宮田大作のスクリームと、小林亮輔のハイトーンというツインボーカルの妙を見せると、瞬く間にフロアにモッシュが巻き起こる。その勢いを加速させるように投下された「Racoon Dead」では、フロアにサークルが発生。強烈な勢いで突き進んでいく。
a crowd of rebellion
ちなみに、この日の宮田はメイクをしていて、登場するなりオーディエンスを驚かせていたが、「今日はクロスオーバーの日だから、ヴィジュアル系バンドの気持ちになってみようと思って」と、RAZORのヘアメイクにお願いしたそうだ。そんな交流もあってか、「M1917」では、ゲストとしてRAZORの衍龍が登場。イントロのギターフレーズで大歓声があがる中、丸山漠がフロアへダイブを敢行。さらにはRAZORの猟牙も登場し、7人編成でフロアを沸かせまくっていた。そんな狂乱状態から、「リビルド」の光に手伸ばすようなエモーショナルなサウンドで、フロアの空気をグっと引き締めたところも美しかった。
a crowd of rebellion
a crowd of rebellion
圧倒的なまでにダンサブルでありながらも、トリッキーなリフや曲展開を繰り広げる「Mechanical Parade」で再びフロアに火をつけた後、「危ない、怖いと思う人は離れていてください。愛のあるカオスを、愛のある頭イカれ具合を見せてください!」と始まったのは「O.B.M.A」。極悪でエクストリームなサウンドを放てば、ウォールオブデスにサークルモッシュにクラウドサーフに、さらにはどこまでも落ちまくるブレイクダウンにと、フロアをカオス状態に叩き込んだ。
a crowd of rebellion
そんなハイライトから「愛ありきで、好きなように生きろ! また会いましょう、〈サヨナラ〉」と、ラストナンバーの「Ill」に繋ぐ流れは鳥肌モノ。最後にこの日何度目かの強烈な熱狂の渦を巻き起こし、ステージを終えたのだった。
眩暈SIREN
眩暈SIREN
イベントもいよいよ大トリなのだが、その前にひとつだけ。このツアーの出演者達は、異なるシーンで活動しているため、普段は交わることのない者同士だったわけだが、その中でも、ひとつ共通項があったと思う。それは、“孤独”や“闇”といったものを感じられる楽曲が多い、ということだ。トレンドを加味したEDMで沸かせたCY8ERも、「恋愛リアリティー症」や「東京少女」などで聴かせる感傷的なサウンドや、「マイライフ」で描かれている景色は、かなり強烈なものがある。巧みなアジテーションでフロアを掌握していたRAZORも、「DAYBREAK」や「ハイビスカス」のように、狂気的な表現を交えながら、救われない感情や、報われない思いを歌っているものが多い。意表をつく曲展開を繰り広げつつ、ダークな曲調も多いa crowd of rebellionも、「O.B.M.A」のブレイクダウンで宮田が放った「お前らのヘイト、日頃の鬱憤、全部俺達にぶつけろよ」という言葉は、心の奥底で渦巻くドス黒いものをぶちまけさせるものだった。
眩暈SIREN
それもそのはず。今回の『APOSTOLOS TOUR 2020』は、肩書きの異なる“四徒”が出演することともうひとつ、「音楽を薬の様に毎日服用する方への異色イベント」というコンセプトがあるのだ。生き苦しい、パッとしない、全部やめてしまいたい──そんなことがふと頭をよぎる日常において、ツアーに参加した4組は、それぞれの形は違えども、ある種の「薬」のように作用する音楽を表現しているといえるだろう。そして、その音楽を、闇に抗うために気持ちを鼓舞させる興奮剤のように用いるのか、それとも闇に蝕まれた心を癒すための鎮痛剤として用いるのか。それはすべて、聴き手であるあなたの自由だ。
眩暈SIREN
少し長くなってしまったが、この日の大トリを務めた眩暈SIRENは、そんな「薬」という言葉がふさわしい存在だろう。私は自分が嫌いです。周りからの目線ばかり気にして。生まれてこなければよかった人間だから。多数の男女が心の内側を独白していくシリアスなSEで、それまでの会場の空気をがらりと変えた5人は、エモやポストロックをベースにした繊細かつ激情的なバンドサウンドと、京寺が歌う憂いに満ちた旋律を響かせていく。美しく重なりあうコーラスをたたえた「紫陽花」や、感傷的なメロディーと美しいピアノの音色が胸に迫る「空気よりも透明な」、ウルの切実な咆哮や焦燥感たっぷりの2ビートなど、ラウドロック的な意匠も見せる「ジェンガ」など、ステージ背面に設置されたスクリーンに、歌詞や印象的なキーワードを抜粋した映像を流しながら次々に奏でられる曲達を、オーディエンスは固唾を飲んで聴き入っていた。
眩暈SIREN
眩暈SIREN
なかでも、「偽物の宴」や「故に枯れる」などで繰り広げられた、京寺の鬼気迫るポエトリーリーディングが鮮烈だった。人間の弱さや苦悩、できれば隠しておきたい胸の内を赤裸々に綴った京寺の言葉は、冴えない日常を過ごしている者にとって、思い当たる節があるものばかりだ。それもあって、次々に飛び込んでくる鋭い言葉達に、とにかく胸が苦しくなるのだが、ライヴが進んでいくごとに、ゆっくりと優しく心が和らいでいくような感覚にさせられる。「よかったら、分かり合えればいいなと思います」と話していた京寺は、「自分の歌詞に共感してくれる人がいると、自分と同じ気持ちの人がいたと思って安心する」そうだ。そして、こう話した。「今日のイベントでここに立っている人の曲に、みなさんも共感して集まって来ているんでしょう。だから、みんな味方だ。よかった」。ラストナンバーは「思い出は笑わない」。寂寥感がありながらも美しい映像をスクリーンに映しながら音を紡いでいたが、最後には悲痛な叫び声と轟音が会場を飲み込み、圧倒的な余韻を残したまま、イベントの幕を下ろした。
眩暈SIREN
インターネットを利用していて、「これが好きな人には、これもオススメ」的なレコメンド機能にお世話になったことがある人は多いだろう。そういうときの絞り込み条件になるものは、音楽の場合で言えば、同じシーンで活動していることや、曲の雰囲気が似ているといったことが多いと思う。しかし、シーンやジャンルやサウンド感といった「外側」が異なっていても、思考やメッセージ性といった「内側」が似ているのであれば、普段は手を伸ばさないものでも好きになる可能性は、大いにある。もしくは、似ている「内側」なのであれば、異なった「外側」も楽しめる=分け隔てなく様々な音楽を楽しめるというところに繋がってくるのではないだろうか。もちろん、この日の出演者達は、楽曲もパフォーマンスも素晴らしくて、初見のオーディエンスであろうと、最終的には確実に自分達の世界に引き込むことのできる存在だったことは、かなり大きい。しかし、外側が大きく違っていても、内側は非常に近しい4組の共演を通じて感じさせられるものは非常に多く、いち音楽ファンとして、普通に生活しているだけではなかなか手の届かない音楽を味わえるイベントがもっと増えてほしいと、改めて思った。
取材・文=山口哲生 photo by かわどう

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