リーガルリリー 1stフルアルバム『b
edtime story』今までも自分の好きな
事を信じて、周りを見ずにやってきた
ーー目指すとこは3年後

2016年からリーガルリリーの音源は聴いていて、翌年ライブを初めて観た時に自分たちの衝動を信じて音を鳴らしているバンドだなと、他のバンドにも観客にも変に合せようとしないバンドだなと感動したのを覚えている。今までライブレポートはあったものの、インタビューは今回の1stフルアルバム『bedtime story』のタイミングが初めてとなった。最初に初めてライブを観た時の話をしたら、ライブの時の観客との向き合い方といった話になり、実際この原稿でも文字数をかなり割いている。でも、そのはみ出した話からリーガルリリーというバンドの本質が知れたと思う。そして、『bedtime story』という1stフルアルバムに関しては、「1997」(3曲目収録)という、ボーカルギターたかはしほのかの生まれ年がタイトルに付けられた楽曲が肝だと感じていたので、そこを重点的に聴いている。たかはしから3年後というキーワードも出たが、決して時間的に焦らず、ゆっくりじっくりとリーガルリリーの音楽が広まりながら、最終的には多くの人に届くという意味での売れるという現象に繋がればいいなと心から祈っている。
ーー昨年の『RUSH BALL』オープニングアクトでのライブが3人の佇まいも含めて、本当に良かったんですよ。最初に、その時の話からお伺いしたいなと思います。
海:めっちゃ雨降ってましたよね。
たかはし:トイレの事は覚えてる。
ーーあっ、楽屋の近くにあるトイレですね。
ゆきやま:(ライブの時は)雨は止んでましたっけ?
ーーライブの時は止んでましたね。
たかはし:脳みその一番上の方で覚えてもらえたら良いなとは思っていました。
ーー朝イチのライブだったので、観客も来たばかりでしたけど、ちゃんと脳みそに衝撃は受けたと思います。それにほぼMCが無かったのも、とても良くて。
たかはし:言葉に信憑性は無いですから。それに言いたい事も無いですし、何も言わなかったです。
ゆきやま:朝イチのライブも中々無いしね。
海:ステージも大きい方のステージだったし、朝イチだったのもあって、元々待ってくれていた人たちというより、音を聴いて寄ってきてくれた人たちでしたね。
たかはし:フェスというより路上ライブみたいな感じでした。まだ、音楽が鳴っていない状況というか。だから、凄く楽しかったです。
ゆきやま:ライブをやっている感触は大きいステージという感じではなくて、ライブハウスでやってる感じでしたね。楽しかったですよ。
海:早朝ではないのですが、みんなで朝を共有している感じはありましたね。
たかはし:みんな夜を終えて来たんだなみたいな。朝11時とかでしたけど、朝7時くらいの感じというか。
ゆきやま:めっちゃ腿上げしました(笑)。
ーー朝だと体も起きてないですもんね。
ゆきやま:頭と体が繋がっていない感じでライブをするのは良かったですね。
海:中々ないです。
たかはし:ライブは、そんなに準備できないし、準備すると力みますしね。
ーーじっと観客が聴いているのも、とても良かったんですよ。
たかはし:結構もっとモッシュとか起きてもいいのにとは思ってます。難しいですね。
海:こないだの中国のライブは凄かったよね。
ゆきやま:ミドルテンポの曲でもモッシュが起きるんですよね。
たかはし:外国は先入観が無いんです。日本では形を作り上げてしまってるというか……。
リーガルリリー
ーーフェスだと特に観客は賑やかに聴いてますから。そんな中で、あの真剣にじっと動かずリーガルリリーを聴いている感じは、とても良かったですけどね。
たかはし:高校の時、周りのバンドで観客の人たちが手を挙げているのが意味わからなくて。(演者は)ステージに上がっているだけなのに、それで(演者に)「何々をしなさい」と言われて、(観客が)行動しているのがつまらなくて。もっと自由でいいのにと思っていて。だから、こちらから何かアクションを起こすのは止めようと。何も言わないままやっていたら、こうなりました。これが自然体ですね。
ゆきやま:今、自然体で出来ているので、それでモッシュが起きたら良いですね。
海:それが自然体だよね。
ーー演者から観客に何かアクションを起こす様に言って、その通りになるのも別にいいのですが、リーガルリリーは無言のままでも観客とコミュニケーション出来ているのが素敵なんです。
たかはし:たまに「ほのかちゃん!』と(観客に)言われても、「何ですか?」とも言えないので、どうしたらよいのかなと思いますね。
ゆきやま:突然言われても困るよね(笑)。
たかはし:「ほのかちゃん!」と叫んでくるという事はエネルギーがあるわけなので、それを適当には出来ないし、あしらえないんです。ちゃんと人間として会話したいと思ってしまう。特に(観客を)煽らないできたので、逆に来られてしまうと人間として向かい合って話をしてしまうんです。他のお客さんに申し訳ないなと思いながら、『何ですか?』と答えてしまった事もありましたね。
海:その時は、あたふたして、「あっあっ……」となってる内に終わりましたね(笑)。
たかはし:最近は無いんですが、でも、悩みですね。何かあった時に、周りが言っても意味なくて、私が言う事に意味あるので。
ーー個人的にはスタッフであったり、周りの人が観客への対処をするべきと思っているので、たかはしさんがここまで誠実に真摯に考えるのは、本当に誠実で真摯だなと思います。
たかはし:同じ人間なんで「はい、さよなら」とは割り切れない。他人でも人同士と思っているので、お客さんに対しても、そう思ってます。だから、割り切って動かすような事が私は出来ないんです。「みんな手を挙げて!」とかは、私は簡単には言えない。
海:人の心を無視できないよね。
ーー別にリーダーになって全員を導く事が偉いとは思わないですし、わかりやすい言葉やアクションで導かないけど、適度の緊張感があって真剣に観客がライブを観ているというリーガルリリーのライブは好きなんですよね。
たかはし:あ~、フジロックの感じとか好きですね。
ーーその感じに近いと思います。
たかはし:カッコ良い音楽を聴くと羞恥心を忘れて快感を覚えられるんです。そういうライブをできるようになって、お客さんを湧かせることができたら良いな。目標です。
リーガルリリー
ーー冒頭に『RUSH BALL』話をしたんですが、色々と深く濃く聞けて良かったです。そして、ようやく本題にいきたいのですが、何よりも今回の1stフルアルバム『bedtime story』が凄く良かったんです。2016年から毎年ミニアルバムをリリースして、去年はシングルのみで、遂に今年フルアルバムがきたと嬉しかったです。
たかはし:アルバムって長くて飽きちゃうアルバムが多くて、そういうのは嫌だなと思っていたので、飽きないようなアルバムを作りたくて。曲数短いと飽きようないですけど、(フルアルバムは)曲数が多いので。あまりフルとミニのこだわりはないんですが、ミニ3部作を作って試行錯誤をたくさんして……。肩の力を抜こうと色々と考えて、ようやく1周したというか。初期衝動で作るのはすんなりいけるのですが、2枚目(2ndミニアルバム『the Radio』)と3枚目(3rdミニアルバム『the Telephone』)は、1枚目(1stミニアルバム『the Post』)の初期衝動では作れなくて。だから、初期衝動の感じを広げるか、発見発明を入れるかになりました。3枚目以降1年くらい作品を作らなかったから初期衝動がまたこみあげて来て、苛々、不安、焦りという最初のような気持ちになりましたね。自分のモヤモヤしたものを出さなくていい時に作る曲は普通の曲というか。自分で音を楽しんだだけの曲なんで世に出さなくてもいいですし。でも、世に自分のモヤモヤしたものを出したい気持ちが強いと、最後までエネルギーがある曲になるんです。
海:結構その節があったよね、アルバムを作る時から。
ゆきやま:アルバムを作る時から、原点回帰がトレンドワードになっていて、ほのかは昔の事をよく思い出したりしていたし、原点回帰や初期衝動の話はしてましたね。
たかはし:2作目からが大事と言ったりしますけど、その気持ちがわかりましたね。
ーー2作目のジンクスなんていう言葉もありますしね。
たかはし:1枚目は1歳から18歳までの想いを入れるだけで良かったんですが、2枚目は一番難しくて、3枚目も難しかった。1枚目あたりで作ってた曲を2枚目、3枚目にも入れたので、(1枚目から3枚目は)ひとつのフルアルバムですね。「ハナヒカリ」(2019年リリース1stシングル)から作曲モードに再びなりました。1枚目って、一番上に簡単に出てくる言葉を入れれば良いですからね。18歳の時とかなら、生と死とかですけど。
ーー1枚目は良い意味で全てを出しきりますから、その後が大変ですよね。でも、それを乗り越えての1stフルアルバムだし、初期衝動が詰まりまくってるから嬉しかったんですよね。特に御自身の生まれ年をタイトルにした「1997」は素晴らしい楽曲だと思います。
たかはし:「1997」はファーストっぽいですよね。でも、1997年の記憶って無いじゃないですか?
ーー生まれたばっかりですからね。
たかはし:周りにいる父や母や祖父や祖母には記憶があって、私の記憶が出来てからは、私にしか私の実験は出来ないと気付いて。
ーー<私は私の世界の実験台>という歌詞ですね。この歌詞にはゾクッときました……。
たかはし:曲作りも実験をしていて、この曲は他の曲を作っている時に作った曲なんです。おもしろいですよ。
ゆきやま:色々な曲を作っていて、何か足りないとなって作りました。
うみ:練りに練って作った曲では無くて、スタジオで衝動的に作った曲なんですね。つるっと生まれたというか。
たかはし:一番最後に出来た曲ですね。
ゆきやま:足りなさが形になりました。
海:だから、この曲でアルバムに満足できる要素が入りましたね。
たかはし:90年代のオルタナティブ(ロック)に影響を受けて作ったんですが、サビはポップなのが好きなので、意識して作りました。
海:難しくない曲だし、楽器(演奏)も難しくないですね。
ゆきやま:手応えはありましたね。
たかはし:2番の間奏から出来たんですけど、凄くかっこいいリフができたと思いました。
海:(たかはしが)フジファブリックをカバーしていて、「疲れた~」と言った時の音らしくて、でも、それがかっこよくて……。
ーー「疲れた~」と言いながら、ギターを鳴らしていた訳ですね?!
たかはし:はい。ひとりで「若者のすべて」を個人練習でやっていて。
海:この音を使いたいとなって。
ゆきやま:そのリフに乗ったのが<私は私の世界の実験台>という歌詞の部分ですね。
たかはし:元々『1997』という曲は作りたかったのですが、明確に見えなくて。だから、私も出来てビックリしました。この曲が無かったら、ボヤけたアルバムになっていましたし、この曲でくっきりしましたし、影がしっかりつきましたね」
海:それまで他の曲で色んな色を塗っていたけど、「1997」で影がつきましたね。
ーーそれにしても「若者のすべて」を弾いていた事から、「1997」が生まれたのは凄い話ですよね……。
たかはし:でも、その話は今まで忘れていました。
海:(笑)。かっこいいギターリフだったので、それに合わせるベースは何だろうと凄く考えましたね。
ーー凄く濃いルーツがあっても、それをそのまま出すのではなく、よりまたポップにしたいという想いは良いですよね。
たかはし:ブラー、ダイナソー・ジュニア、 ペイヴメントみたいな曲が作りたいんですけど、でも私ポップが好きで。それも日本人特有の四つ打ちとかのポップが好きだし、そういうサビを求めていたんです。日本人好きそうな感じというか、(日本人に)届けたいので。
ーー洋楽ロックの濃さと邦楽ロックのポップさを繋げたいというのは面白いですよね。
ゆきやま:でも、違和感が無いんですよ。
たかはし:海外でライブをしても違和感は無いですからね。作曲に関して、自分の胸に置いているのは、かなりグランジでもメロディーがポップなら大丈夫だろうと思っていて。日本語の歌詞を乗せるのは難しいですけど、それも楽しみつつ。
ーーニルバーナにもSEKAI NO OWARIにも影響を受けたと、過去のインタビューでも話されていましたもんね。
たかはし:そうですね。(洋楽ルーツと邦楽ルーツを)繋げるのはおもしろいです。
海:いいとこどり(笑)。
たかはし:贅沢な遊びですよね(笑)。既に人がやってる事はやりたくなかったですし、誰もやっていない新しいものを生み出したかった。そうすれば売れると思いましたね。今の音楽に合わせても意味はないと思っていましたし、アンダーグラウンドじゃないといらないと思って。
ーーメインストリームへのカウンター精神としてアンダーグランドな気持ちを持っておられるんですよね。当たり前ですが地下に埋まる気は無くて、それを地上に出して、その上、売れたいという気持ちがかっこいいし、嬉しいんですよね。
たかはし:流行は3年経てば終わると思うので、目指すとこは3年後ですね。今までも自分の好きな事を信じて、周りを見ずにやってきましたから。高校生の時も周りはみんな敵だと思ってましたし、一緒にステージに立つのも嫌だったんです。ライブハウスの人にも「才能凄いけど売れないぞ」と言われて、「わかってないな」と思ってました。自分の中では、もっとポップな要素を入れられるとも思っていたので。それと地元の近くだと立川のバンドの赤い公園が有名で、凄いなと思っていました。洋楽でも邦楽でもない赤い公園でしかないものを確立していましたので。そういうバンドになりたかったですし。洋楽も好きですけどJ-POPも好きでしたし、音楽が好きだったんです。ジャンル関係なく民族音楽みたいに聴いてるのかなと思いますね。
ーー初めてのインタビューだったんですが、全て深く濃く聴けました。ありがとうございました。
リーガルリリー
取材・文=鈴木淳史 撮影=渡邉一生

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