ハイレベルのポップサウンドを
提示したゾンビーズの
『オデッセイ・アンド・オラクル』

『Odessey and Oracle』('68)/The Zombies

『Odessey and Oracle』('68)/The Zombies

本作『オデッセイ・アンド・オラクル』はローリングストーン誌の『史上最高の500枚のアルバム』の最新版(2012年)で100位に選ばれているのだが、この企画がポピュラー音楽全般を含んでいることを考えると、ゾンビーズの健闘ぶりはたいしたものではないか。ビートルズとビーチ・ボーイズがいなければ彼らの存在はなかったかもしれない。しかし、彼らはただのそっくりさんではない。本作に見られる高いポップ性とクールな佇まいは、この先長い時間が経っても決して古臭くならないだろう。ロック史上に残る傑作である。

ブリティッシュ・インベイジョンでの
成功

1961年、ゾンビーズはジャズやクラシックが好きなロッド・アージェントを中心に結成された。当時、アメリカではエルビス・プレスリー(56年にアルバムデビュー)をはじめ、チャック・ベリーやファッツ・ドミノといった新しいポピュラー音楽(ロックンロール)が大人気で、イギリスでも若者には大いに受けた。ビートルズは62年に「ラブ・ミー・ドゥ」でデビュー、ビーチ・ボーイズの世界的大ヒット「サーフィン・U.S.A」は63年にリリースされているという、そういう昔話である。

ゾンビーズは64年にロンドンで行なわれたロックグループのコンテストで優勝し、デッカレコードと契約を結ぶ。デッカは63年にローリング・ストーンズと契約しアメリカで成功したことで、二匹目のドジョウを探していたのである。60年代の中頃、アメリカのヒットチャートは、アニマルズ、ハーマンズ・ハーミッツ、デイブ・クラーク・ファイブ、キンクスらブリティッシュロック勢に席巻され、ブリティッシュ・インベイジョンと言われる社会現象が起こっていた。

64年にリリースしたゾンビーズの「シーズ・ノット・ゼア」もアメリカで大ヒット(全米2位、全英12位)、ロッド・アージェントの巧みなソングライティングと彼らの瀟洒なサウンドに注目が集まったのである。グループのメンバーはアージェントの他、ベースとヴォーカル、ソングライティングを担当するクリス・ホワイト、リードヴォーカリストのコリン・ブランストーン、ギタリストのポール・アトキンソン、ドラムのヒュー・グランディの5人で構成されている。

アメリカでの活動とチャート低迷

ゾンビーズの核は、さまざまな音楽に長けたアージェントと、繊細なヴォーカルが印象的なコリン・ブランストーンとソングライティング、ヴォーカルも上手いクリス・ホワイトの3名にあり、基本的にはアージェントがグループの音楽監督も務めていたと見るべきだろう。「シーズ・ノット・ゼア」のヒットを受けて、65年にデビューアルバム『ビギン・ヒア』(イギリス盤。アメリカ盤は『ザ・ゾンビーズ』というタイトルで、イギリス盤の内容を一部差し替えている)をリリースする。アルバム発売に合わせてアメリカツアーを行なうと、全米チャートでアルバムは39位になるなど、ゾンビーズにとっては前途洋々たるスタートを切った。しかし、アルバムリリース後に出したシングルはどれもパッとせず、これ以降ヒットとは無縁の苦難の生活が始まる。

ロック界の転機

65年になると、ボブ・ディランが『追憶のハイウェイ61』でフォークからフォークロックへの道筋を提示し、ビーチ・ボーイズ(というかブライアン・ウィルソン)は美しいメロディーを持つ完全無欠のアルバム『ペット・サウンズ』(‘66)を作り上げるなど、それまでのティーン向けのポップから、じっくり作品と向き合う音楽へとロックは変貌を遂げていく。そして、ビートルズは67年に『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』という大傑作をリリースし、ロック界は新たな段階を迎える時代へと突入する。

ゾンビーズのメンバーたちは、時代の切り替わりに立ち会うことで自分たちの音楽を見つめ直すことになる。この時期、彼らにヒット曲が生まれなかったこともあり、自分たちの立ち位置を見極める良いきっかけとなったかもしれない。67年にはデッカとの契約が切れ、新たにCBSレコードと契約する。しかし、しばらくヒット曲のないゾンビーズは期待されておらず、アルバムのレコーディング費用がかなり抑え込まれてしまう。そこで『サージェント・ペパーズ〜』のレコーディング機材(高価なメロトロン等)がまだ残っていたアビーロード・スタジオでメンバーのみで(経費のかかるプロデューサーも不在)のレコーディングがスタートする。

OKMusic編集部

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