2.5Dのオトナたち その1〜2.5次元舞
台“第一世代”の活躍を追う/ホーム
・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲ
キ1-2-3[Vol.7] <2.5次元舞台編>

雨の日の自宅で、毎日の移動時間で、あるいは予定が変わり時間がぽっかり空いたとき。そんなすきま時間に手に取れる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品を、エンタメ界隈で働く人たちが「3選」としてジャンル・テーマ別に語り尽くします!(SPICE編集部)

2.5Dのオトナたち その1〜2.5次元舞台“第一世代”の活躍を追う
ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3 [Vol.7]<2.5次元舞台編>
by 横澤由香
【1】郷本直也 舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The WINNER
【2】荒木宏文 舞台『文豪ストレイドッグス 黒の時代』
【3】河合龍之介 MANKAI STAGE『A3!』AUTUMN&WINTER
 「舞台は敷居が高くて…」という決まり文句をモノともせず、今や新作が上演されるたびに新たな原作ファンを呼び込み、役者ファンを増やし、多くの観客を産み育てている2.5次元舞台。その歴史の記念すべき第一歩はやはり2003年の4月に初演の幕を開けたミュージカル『テニスの王子様』=テニミュと言えますが、当時、偶然の巡り合わせから作品取材に関わり、気づけば2020年の4月に至るまで2.5次元舞台というジャンルの成長と発展を見守り続けてきた身にとっては、ここまでのビッグバンは本当に想像もつかない出来事! 「凄い」とか「嬉しい」といった類の言葉では到底言い尽くせない感慨があります。
 そして今、改めて注目して欲しいのが“2.5D第一世代”の役者さん。かつては若手俳優の登竜門的役割が大きく、オトナのキャラクターは割愛されがちだったり、「2.5次元舞台で板の上に立つ経験をしたら次は(便宜上この言い方…)普通の舞台や映像作品へとステップアップを」という認識が強かったこのジャンルも年月を重ねるごとにズンズンと深化を遂げ、オトナを配すことでその表現力や説得力を増していく作品も多数出現するようになりました。そんなときに作品を支える強力な存在として居てくれたのが、2.5D第一世代のオトナたち。彼らはこのジャンルがまだまだ演劇界のキワモノとみられていた黎明期から2.5次元作品の持つ素晴らしいエンタメ力を体現、数々の語り継がれるべき作品を残し、自身の成長と共にそのスピリッツを後輩たちへと繋いでくれている頼れる兄貴分です。
 今回はそうした素敵な2.5Dのオトナの中から「テニミュ1stシーズン出身」縛りで3名の役者さんをレコメンド(ピックアップした作品はこの先劇場で新作公演を観劇できるタイトルにしました)。テニミュ時代の印象を交えつつ、今も輝き続けるオトナの魅力をお伝えしたいと思います。ベテラン2.5Dファンのみなさんには「そうそう!」と共感していただき、新規の層の方々には「今の活躍は知っているけれど…なるほど!」と新たな知見にしていただけたらしあわせ。さらにはこれを機に過去作を遡って一気観してもらえたなら、本望です!
【1】郷本直也 舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The WINNER
(c)渡辺航(週刊少年チャンピオン)2008/弱虫ペダルGR製作委員会(c)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/マーベラス、東宝、ディー・バイ・エル・クリエイション
 1980年4月25日生まれの郷本さんは、テニミュ1stシーズンの初代青学メンバー・海堂薫を熱演し、最初の原作モノ舞台ブームのきっかけに携わった功労者のひとりです。当時、青学キャストにインタビューをした際に強く印象に残っていたのが「芝居への情熱」と「原作へのリスペクトの高さ」。今では当たり前になっているキャラクターの再現度(立ち姿や決めポーズの角度、周囲のキャラクターとの絡み方、アニメの場合はその“声”、その他いろいろ)の重要性をいち早く察し、原作をバイブルとしながら生身の役者にその生き様を落とし込む所謂“テニミュメソッド”“2.5Dメソッド”を自発的に実行していた姿です。連載中の最新話はもちろん、「テニスの王子様10.5 公式ファンブック」なども隅々までチェックし常に情報をアップデート。不意の質問やアドリブにもキャラクターとして完璧に対応するんだという準備と実際の公演中での応用はまさに2.5次元のプロフェッショナル! コアな原作ファンの心に響く見事な表現は口コミでみるみる伝播し、空席が目立っていた劇場が千秋楽に向けて日に日に一杯になっていった──というエピソードも、もはや伝説ですね。
 郷本さんの海堂は泥臭くて誰よりもタフで…いじられキャラ(笑)。私たちに「キャラクターの個性と役者の個性を融合させて仕上げられた“舞台版のキャラ”って素敵だな」という新たな愉しみを教えてくれたのも、郷本さんたち初代青学でした。
 テニミュ卒業後も舞台を中心に活躍してきた郷本さんが舞台『弱虫ペダル』に出演したのは2012年。年齢的にコーチや周りのオトナ役かなと思いきや…主人公・小野田坂道が所属する総北高校自転車競技部のキャプテン、金城真護役! これがまたピタリとハマったのです。鍛え上げた肉体と積み重ねてきた舞台経験を生かし、途方もない運動量と気迫と後輩たちを惹きつける統率力を持つ存在として郷本金城がウラにオモテにとカンパニー全体の精神的支柱の役割を担っていたのは確か。金城が坂道に語る「ひとりで頑張る必要はない。お前が倒れたら俺が支える。だがもしほかのヤツが倒れたらお前が支えろ」は、共にペダルを回す若き役者たちの“素”にも大いに響きまくっていたことでしょう。そして、そんな金城の熱を通じて役者バカともいうべき郷本さんの内に燃える炎を舞台上に窺知し、私自身の胸にも改めて2.5D第一世代の役者さんたちへの大いなる愛情とリスペクトの気持ちが湧き上がってきたのでした。
『The WINNER』の金城はレース最終日の最大の勝負どころで足をやられ、断腸の思いでゴールを後輩に託しコースから去ります。そこでの独白には金城キャプテンの、そして初演からペダステを支えてきた郷本さんの“思い”が集約されています。ぜひ受け取ってください。
★セルソフトあり/dアニメストアなどで配信中

<郷本さんの2.5D出演作>
『ROCK MUSICAL BLEACH』 檜佐木修兵
ミュージカル『薄桜鬼』 天霧九寿
ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』 高崎線
ミュージカル『刀剣乱舞』〜幕末天狼傳〜 近藤勇
​舞台『幽☆遊☆白書』桑原和真  ほか

※舞台『弱虫ペダル』最新作 SPARE BIKE篇~Heroes~は7月上演に公演の予定
【2】荒木宏文 舞台『文豪ストレイドッグス 黒の時代』
舞台「文豪ストレイドッグス 黒の時代」Blu-ray&DVD発売告知ロングPV
 テニミュ1stシーズン2代目青学メンバー・乾貞治役で舞台デビューを飾った荒木宏文さん。2004年の『in winter 2004-2005 side 山吹 feat. 聖ルドルフ学院』からの出演ですね。ちょっと硬めに背筋を伸ばした長身のシルエットはまさに乾。彼の自信に満ちた表情と台詞回しもモノにして、“青学のデータマン”を楽しんで演じている様子が舞台上からしっかりと伝わってきました。『The Imperial Match 氷帝学園』でのソロナンバー、「ちょっと上へ登ってみたくなってね」の台詞からの ♪データは嘘をつかないよ〜 は名曲。イモジャージを身に纏い、コートの中で手塚部長(城田優さん)をじわじわと追い詰める快感を滲ませたキモカッコいい(褒め言葉です!)乾の魅力を惜しみなく披露してくれています。
 そんな荒木さんの1本として舞台『文豪ストレイドッグス 黒の時代』を選んだのは、荒木さんの“抑えの美学”が感じられる作品だから。派手な異能力バトルも見どころの『文ステ』シリーズの中、『黒の時代』は本編の前日譚である“エピソードゼロ”。ポートマフィア・最下級構成員の織田作之助(谷口賢志さん)、最年少幹部の太宰治(多和田任益さん)、荒木さん演じる秘密情報員の坂口安吾という立場を超えた3人が紡ぐ、アダルトな男の友情物語です。
 安吾は一歩引いたところからオダサクと太宰を見つめる、微妙な押し引きが必要なキャラクター。ともすると控え目になりがちなこの存在に荒木さんは湿度と優しさをスルリと潜ませ、3人を繋ぐクサビのごとく観客に強く深くその爪痕を残してくれるのです。また、アンサンブルのコンテンポラリーな動きで表現される“セット”、戻せない時間を象徴する時計の文字盤のようにも見える盆の使いどころ、バー・ルパンのカウンターでウイスキーグラスを交わす3人をあくまでも後ろ姿で見せるこだわりなど、抑制と驚きと渋さで固めた演劇的アイデアも秀逸。作品全体に漂うオトナのムードと、オシャレでストイック、周りに流されない自分を持った荒木さん自身の“隠しても漏れ出る色気”が絶妙にマッチしたのが安吾だと言えるでしょう。
 荒木さんの煌めきを語るなら、荒木さんを知らなかった世代やキャラクターファンのハートを登場した瞬間にガッツリ掴んでしまった、ミュージカル『刀剣乱舞』のにっかり青江もお忘れなく。もともと漫画やアニメやゲームが好きで、自身がそのキャラクターを演じる際には細心の注意とリスペクトを以って実体化することに定評のある荒木さん。にっかり青江の強烈な愛されようにはそんな荒木さんの手練れぶり、第一世代の底力を改めて見せつけられたようで心が踊ります。アリーナクラスの会場での『歌合 乱舞狂乱 2019』にてただ一振りで「篝火講談〜夏虫の戯れ〜」を披露したにっかり青江も素晴らしかった。これもまた荒木さんの“柄”が成し遂げた偉業です。
★セルソフトあり/期間限定配信終了(今後どこかでまた配信があるのでは…)

<荒木さんの2.5D出演作>
ミュージカル『黒執事』 劉
歌劇『明治東亰恋伽』 森鴎外
舞台『ACCA13区監察課』 ジーン・オータス
舞台『銀牙-流れ星 銀- ~絆編~』 赤目
舞台『幽☆遊☆白書』 コエンマ  ほか
※舞台『文豪ストレイドッグス』最新作、「序 -はしがき- 探偵社設立秘話・太宰治の入社試験」は2020年内の公演を予定
【3】河合龍之介 MANKAI STAGE『A3!』AUTUMN&WINTER
(c)Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved. (c)MANKAI STAGE『A3!』製作委員会2019
 テニミュ1stシーズン初代氷帝・日吉若役が初舞台だった河合さん。2005年の『The Imperial Match 氷帝学園』で氷帝メンバーがステージ中央に全員集合した初登場シーン、今でも強烈に脳裏に焼きついています。2018年、河合さんが初代氷帝・跡部景吾役の加藤和樹さん&初代氷帝・宍戸亮役の鎌苅健太さんと立ち上げた演劇ユニットproject Kで『僕らの未来』を上演した際のインタビューでもその登場シーンは話題にのぼり、みなさん当時のドキドキとワクワクをつい昨日のことのように語り合っていました。
 日吉といえば♪下克上だぜ〜 のキラーフレーズは鉄板。主人公・越前リョーマとのシングルス戦で歌われるこのナンバー、日吉の座右の銘が「下克上」なので間違えがちなのですが、正式な曲名は「あいつこそがテニスの王子様」。リョーマの凄さをチームメイトが讃える内容で、そこに差し込まれる日吉の闘争心を歌った箇所があのパートです。日吉は次期部長と目される実力派プレーヤー。実家が古武術の道場であることから非常に独特な「演武テニス」と呼ばれるスタイルが持ち味。その演武テニスのフォームや動きの展開、原作にある決めポーズ以外の部分は演出の上島雪夫さんと河合さんが稽古場でアイデアを出し合って練り上げたモノだそう。跳躍時の滞空時間も長く、鋭い切れ味と流麗さが持ち味です。試合は事故による大きな怪我からカムバックを果たした柳浩太郎さんのリョーマを支えつつ盛り上げつつ闘争心をぶつけあう工夫がされた演出で、河合さんが自身の身体能力を存分に発揮してゲームメイクしていた姿も感動的でした。
 テニミュ後の河合さんの活躍をおさらいしてみると、舞台・映像を合わせた出演作の多さに驚かされます。もともとは筋金入りの映画青年。作品や役の大小に関わらず“表現すること”に貪欲なインディペンデント精神溢れる河合さんらしい足跡ではないでしょうか。だからこそ、2017年の舞台『黒子のバスケ OVER-DRIVE』で2.5Dど真ん中の作品に再び出演された時は驚きもありました。が、さらにその半年後には死者蘇生に取り憑かれた医者、リアン・ストーカー役でミュージカル『黒執事-Tango on the Campania-』に出演し嬉々としてマッドなキャラクターを演じ、紫がかった超ロングヘアーを揺らしながらいたいけな若者に試練を与えまくるGOD座の主宰兼演出家・神木坂レニとしてMANKAI STAGE『A3! AUTUMN&WINTER』の舞台上に現れる頃には「これこそ河合さんらしいチョイスなのだ」と得心したのです。「才能の豊かさと惜しみない情熱が紙一重でレッドゾーンを超え凶器と化していく限りなくヴィラン寄りな“こじらせ紳士”、素敵」と。
 特に神木坂は「演劇でトップを走り続けるには夢や理想、綺麗事だけではやっていけない」を実践する筋金入りの演劇人。まさに今の河合さんが演じるからこそ説得力が増す、味わい深いキャラクターとなっています。取材の合間に聞いた「今、純粋に2.5次元の世界が楽しいんだよね」の言葉を反芻しつつ、今後もそのクセモノの懐の広さを存分に見せてくれることを願っています。
★セルソフトあり/dアニメストアなどで配信中

<河合さんの2.5D出演作>
舞台『黒子のバスケ』 木吉鉄平
『家庭教師ヒットマンREBORN! the STAGE』 沢田家光 など
※MANKAI STAGE『A3!』最新作 ~WINTER 2020~は5月に公演再開の予定(新型コロナ対策の状況によって変動あり)
────2.5Dのオトナたち、次回に続きます!
文:横澤由香

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