SPICEアニメ・ゲーム班オススメ!今
だからこそ観たい!家で楽しめるアニ
メ三選 Vol.9

4月7日に発令された「緊急事態宣言」に伴い外出の自粛、自宅待機が続いていますが、そんな時こそお家で楽しめるアニメ作品を見るチャンスに変えていこう!ということで、SPICEアニメ・ゲームジャンルのライター・編集陣が総力を決して「今お家で楽しめるアニメ三選」をお届けします!(配信状況は執筆時のものです)

Vol.9選者:草野 虹
福島、いわき、ロックの育ち。『Real Sound』『Belong Media』『MEETIA』や音楽ブログなど、様々な音楽サイトに書き手/投稿者として参加、現在はインディーミュージックサイトのindiegrabにインタビュアーとして参画。00年代中ごろから音楽・ネット・アニメといったサブカル文化に傾倒してきたウォッチャーであり、各国の歴史や文化史にも最近興味を持ち始めている。SPICEでは、ORESAMA小松未可子・輝夜月・D4DJのライブレポを執筆。
オススメ作品(1)
『サカサマのパテマ』
(Amazon Prime Video、Netflix)
映画『サカサマのパテマ』予告編
『水のコトバ』『ペイル・コクーン』では個人制作作品として大きく評価され、スタジオ・リッカを設立後、初めて制作された『イヴの時間』は、現在にいたるまで名作の一つとして名高いタイトルである。そのすべてを生み出した吉浦康裕による、現在までに唯一制作された長編アニメ作品が『サカサマのパテマ』である。
2013年11月9日に日本公開され、第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞、スコットランド・ラブズ・アニメ2013観客賞・審査員賞を受賞。また、第7回アジア太平洋映画賞最優秀アニメーション映画賞にノミネートされるなど、吉浦氏にとって本作は一番に大きなヒット作といえようものなのだが、質・量ともに日本のアニメ映画黄金期だったといえよう2010年代においては、今作をもってしてもすこし影が薄くなってしまうかもしれない。
「空想科学漫画映画」と称し、「ヒロインだけ重力の方向がサカサマ」というコンセプトで制作された本作。地面が上、空が下、男の子と女の子は上半身と下半身が逆になって、支え合うように抱き合っているイメージ絵、これをパっと見ただけでは、ファンタジー世界の話かな?と思う人もいるだろう。
だが『ペイル・コクーン』や『イヴの時間』をとおし、ポストアポカリプス・宇宙・アンドロイドロボットなどのSF設定を大胆に組みこんできた吉浦さんらしく、古典SF的な世界観が『サカサマのパテマ』にも通じている。
人類が重力実験に失敗し、再建された未来の地上文明、取り残された人間は地下に集落をつくり、それぞれに忌み嫌いながら生きていた。地下集落で村長の娘として育てられてきたヒロインのパテマは、「サカサマに立っている人間」に襲われ、穴の奥深くへと落ちてしまい、テクノロジーによって統制された地上世界で学生として生活していたエイジと、偶然にも出会う。フェンスに捕まり、空に向かって逆さ吊りになった彼女は、こう叫ぶのだ、「助けてよ!」と。本作の導入はこんな感じだ。
それまでの吉浦氏の作風というと、3D空間を創り込み、手書きアニメと組み合わせ、カメラワークで見せ方を工夫するものであった。だが本作では、キャラクターも背景美術も全部アナログに手描きで統一されているのがわかるだろうか。
静的にシーンを切り取り、テンポ良くコンテをきって、セリフを語るなかにドラマを見出してくような部分があったわけだが、本作では真逆に、カメラは180℃にグルンと回したり、時にはカメラがブレるように表現され、喜怒哀楽をハッキリと顔に出してみせる各キャラクターたち、非常に動的なのだ。それまでの作品を知る人なら、この変化には驚くと思う。
今作において、主人公2人は、様々な場所に現れる。地上世界・地下世界のなかで、土、空、雲、光と、実は自然にまつわる様々なものが画面に登場する。多岐に渡る場面背景や美術を担当したのは、『魔法少女まどかマギカ』『キルラキル』『ブレードランナー ブラックアウト 2022』なども務める金子雄司だ。
活き活きと走り回り、さまざまな感情をあらわにするキャラクターたちが、リアリティのある背景美術に囲まれることで、グっとリアリティを持ったフィクションがたちあらわれる。まさにアニメーション作品の醍醐味だとも言えよう。
SFの趣向を凝らした本編は、実は1時間30分ほどで終える、この短さも僕が推したい理由の一つだ。これまでの吉浦作品に比べ、ストーリーの起承転結やプロットがかなりハッキリ区切られていることで、最後まで見るものを驚かせ続けてくれる。短いあいだにも、非常に満足させてくれるのだ。
サイエンス(科学)であり、間違いなくフィクション(寓話)でもある。足場のない宙吊りになった不安定な気持ちと感覚は、本作を見た後に、どこかファンタジー(空想)世界へといざなってくれるだろう。
オススメ作品(2)
『花とアリス殺人事件』
(AmazonPrime Video、Netflix、Hulu)

映画『花とアリス殺人事件』予告編

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 』『リリイ・シュシュのすべて』『リップヴァンウィンクルの花嫁 』などで著名なドラマ・映画監督である岩井俊二。氏がアニメ映画を作るという話を知った時は、個人的には非常に驚いたのを覚えている。
企画の構想自体は、2004年に公開された実写映画『花とアリス』の制作後、その頃から前日譚となる脚本作りが進んでいたというのだ。その10年後に制作が開始し、2015年2月20日公開されたのが今作である。
まず先に言うと、この作品の元になった『花とアリス』を僕は観たことはない。ヒロインである花とアリスが、どのような人柄かを全く知らない状態で触れた。そういった前情報が一切なくても、この作品は一つの作品として十二分に見る人を惹き付ける。
理由としては、今作におけるアニメーションだ。ロトスコープと3DCGが組み合わさったアニメーションは非常に驚かされた、端的に言って、いままでに観たことがなかったのだ。モデラーとなる役者の動きを撮影した映像を素材に、そのままなぞり描きしていくロトスコープの手法に、セル画で制作されたアニメ(セルアニメ)のようなセルルック3DCGの手法が加わることで、実際の人の動きとも、アニメーション的な動きとも、どれにも似つかない独特なアニメーション表現が本作のキモになっている。
もう一つ特徴的なのは、影を極力つけず、肌や髪の毛も単色にし、簡素化された人物キャラクターデザインと、水彩画のように淡い色合いの背景画、両者が生み出すコントラスト感であろう。背景を担当したのは、新海誠監督の『言の葉の庭』や『天気の子』で美術監督を務めた滝口比呂志と、コミックス・ウェーブ・フィルムのスタッフ陣だ。この2作品での背景を見ればわかるように、非常に微細かつ色彩感に溢れたものを描かれるわけだが、今作においては、実写映像をモチーフにしているという面をあるにせよ、リアリティさからは離れた、少しおぼろげなタッチで描かれている。
線が多く重ならず単色にこだわったキャラクターが、少しおぼろげな色彩の空間なかで動けば、それだけでも些細な動きがより独特に見えてくる、もはや浮いて見えてくるレベルだ。
場面カットも、例えばTVアニメでよくあるようなカメラワークやカット割ではない。花が新居の部屋の中でダンスを踊る最初の1分間、全てのトラブルを乗り越えたあとに、花とアリスがそれぞれの家でセーラー服に着替え、ともに登校するラスト1分間は、声として出演している鈴木杏と蒼井優による実際のシーンが見えてきそうなほど。このような感覚は、日本のアニメ作品ではほとんど味わえないものだ。
最後に、ちょっとした紹介をしたい。今作の独特なCGアニメーションをまとめ上げたCGディレクターは櫻木優平、ロトスコープアニメーションのディレクターは久野遥子がそれぞれ務めている。
前者は2019年に公開された『あした世界が終わるとしても』で初監督を務め、 アヌシー国際アニメーション映画祭2019長編コンペティション部門にノミネートされることになる。後者は劇場版『クレヨンしんちゃん』作品に多数参加し、TVアニメ『宝石の国』のEDで演出チームに、そして2018年の『ペンギン・ハイウェイ』には設定画やコンセプトデザインに携わっている。映像制作という観点を強くもったクリエイターである2人が、岩井俊二のもとでこのような作風を生み出していたというのは、2020年代のアニメーション作品の未来を想像する時、大きなヒントにもなりえそうだ。
オススメ作品(3)
『ペンギン・ハイウェイ』
(AmazonPrime Video、Netflix、dアニメストア )
『ペンギン・ハイウェイ』 スペシャルトレーラー
マンガや小説などを原作にしてアニメ作品が制作される、このサイクルがアニメシーンの中心になって10数年以上になっただろうか。アニメ作品になった原作を複数以上生みだした著作者は、大きな影響力をもったクリエイターであろう。
そういったクリエイターのなかに、小説家の森見登美彦が入るのは間違いない。『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』につづき、今作『ペンギン・ハイウェイ』でアニメ化作品は4本目である。東野圭吾、有川浩、貴志祐介、辻村深月、宮部みゆき、池井戸潤、筒井康隆など、映像化された作品を抱える小説家は数多いが、著作がこれだけ少ないのに、その4割近くが映像化されているということで、今後はよりその数も増えていきそうなのだ。
注目すべきなのは、現在のところ氏の作品が、実写作品としてでなく、アニメ作品としてのみ映像化されている部分だ。これには様々な事情があるとは思うのだが、森見登美彦の書くファンタジー世界は、やはりアニメーション作品だからこそ映えるのだろうと感じさせてくれる、本作はそれを感じさせてくれるのだ。
小学4年生の男子であるアオヤマくんの住む街に、ペンギンの群れがある日突然出現する怪事が起こり始める。ペンギンの正体について「ペンギン・ハイウェイ研究」を始めたアオヤマくんは、淡い恋心を寄せていた歯科医院のお姉さんがペンギンを出現させる瞬間を目撃する。お姉さん自身も気づいていなかったこの現象、ペンギンの出現法則を解明しようと、アオヤマくんとお姉さんは実験を繰り返し、謎を解き明かそうとしていく・・・というのが本作の導入である。
この導入部分を読むと、「なんだこの変な話は」と思う人も多いだろう。どっこいこの話は、かなりファンタジー寄りでやさしいSF作品でもあり、瑞々しくも幼気な人間性がいかに成長していくかのジュブナイル的な作品でもあるし、少年からお姉さんに向けられた甘酸っぱい恋物語でもあるのが本作なのだ。著名なSF作品の設定やワンシーンを踏襲している部分も、個人的にはニヤつく部分だ。今作のラストシーン、シュワちゃんのあの名作と同じように見えませんか?
多くの者にわかりやすいファンタジー性と幼少期の成長やしくじりを描いてみせる今作に、ジブリ映画にも通じる作風を感じることができよう。もしも小学生や中学生のお子さんがいらしゃって、ジブリアニメもおおかた見てしまったというのなら、ぼくは迷わずこの作品を薦めたい。主題歌「Good Night」を提供した宇多田ヒカルは、このように歌い上げます。「謎解きは終わらない」と。
今作は幼きアオヤマくんが秘めている子供らしいポジティブな視線で描かれている、未来へ生きていこうとするアオヤマくんの「謎解き」もまた、同じように僕らの胸に刺さるメッセージになっていくのです。
短編アニメ『台風のノルダ』『陽なたのアオシグレ』などを手がけたスタジオコロリドが、長編映画を本格スタートする処女作として制作された今作は、カナダ・モントリオールの第22回ファンタジア国際映画祭にて、最優秀アニメーション賞にあたる今敏賞(長編部門)を獲得。日本アカデミー賞では優秀アニメーション作品賞受賞するなど、原作小説に負けず劣らずの評価を得ることになった。
キャラクターの表情や柔和な動きはもちろんのこと、地方都市の水や緑を多く含んだ都市空間や背景に、豊富な彩りをもって描いているし、何より遠近感を巧みに利用したコンテ切りのインパクトさが印象的だ。作品途中から、途中でキュビリズムとシュルレアリスムを持ち込んだ作画をしていて、ほんの少しの絵画性を残しているのもかなり心ニクい。少人数のうら若きアニメ制作会社であるスタジオコロリドが、今後どのような作品を手掛けるのかに注目していきたい。

おおよそテレビアニメ作品が選ばれることが多いだろうと予想し、今回は2010年代の日本アニメ映画に絞って選ばせていただきました。それも、TVアニメ作品からスタートしたものではなく、完全オリジナル作品にこだわりました。
2010年代の劇場版アニメは、それ以前の各ディケイドに比べても、良作が数多いと感じてます。アニメ作品が数多くなったという部分はもちろんありますが、これほどのゴールデンエイジなのに!! TVアニメ作品で満足してしまって!! あまり多くのかたにみられることなく話題から消えてしまうだなんて・・・などと常々思うところがあり、今回はちょっとワガママを通させていただきました。編集部の皆様、ありがとうございました。
もちろん、これ以外にはあげたい作品は数多くありました。タイトルをいくつか挙げましょう、『Colorful』『REDLINE』『楽園追放 -Expelled from Paradise-』『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』『プロメア』などはもちろん、サブスク系配信という枠組みを外すならチョイスしたいですし、京都アニメーション関係の作品や、細田守監督や新海誠監督はもちろん、出渕監督や長井龍雪監督や湯浅政明監督、スタジオジブリ界隈の作品だって選びたい。
でも、NetflixやAmazonプライムといったサブスク系配信サービスには、ほぼほぼないのです!ああ悲しい!! これほどのゴールデンエイジなのに・・・!
今回選んだ各作品ともに、90分から120分ほどで見れるものです。TVアニメ12話を見るよりも、映画のほうが見る時間が短く済むという部分は、リモートワークに少し飽きて、家でダラっと見ようとしたとき、あるいは休学を余儀なくされたお子さんとご一緒に見るにも適した作品を選んだつもりです。
日常や平穏さというありふれた生活のなかに、幸福というファンタジーが常に潜んでいる。それを気づかせるのは、いつだって自分と他人との繋がりがキーになっているのだと、今回選んだ3作は気づかせてくれると思います。このような状況においても、そのポジティブなマインドを忘れずに生きていきたいと思っています。
文:草野 虹

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