ロッド・テイラー唯一の作品
『ロッド・テイラー』は、
数多あるSSW系アルバムの中でも
最上級の傑作

『Rod Taylor』(’73)/Rod Taylor

『Rod Taylor』(’73)/Rod Taylor

この連載ではロックやソウルを中心に多くの重要作品を取り上げてきたが、本作『ロッド・テイラー』は中でも最も知られていないアルバムだろう。しかし、これほど完成度の高い作品もないのである。日本でアメリカ産のシンガーソングライター作品に注目が集まっていた70年代はじめ、高校生の僕はいくつかの輸入盤専門店に入り浸って掘り出し物を毎日のように漁っていた。そこで出会ったのがジャクソン・ブラウンであり、ジェシ・コリン・ヤング、ボビー・チャールズ、ドニー・フリッツ、ネッド・ドヒニー、エミルー・ハリスたちである。どの作品も素晴らしい仕上がりで、リリース後50年近く経った今でも聴き続けており、その想いは未だに変わってはいない。中でも、ジャクソン・ブラウンやイーグルスのデビュー作をリリースしたアサイラムレコードは良作をたくさんリリースしていたから、アサイラム所属のアーティストについては、知らないアーティストでもなけなしのお金をはたいて買ったものである。今回取り上げる『ロッド・テイラー』も“アサイラムからリリースされた”というだけで購入した作品である。SSWファンにとってこのアルバムは名作の多いSSW系作品の中でも抜きん出た存在であり、ヴォーカル、楽曲、演奏、どれをとっても文句のつけようがない傑作である。

稀有の名作『ロッド・テイラー』

本作は最初に聴いた時から鳥肌が立つほど素晴らしく、また聴けば聴くほど良さが増していく作品である。それは丁度、ザ・バンドの諸作を聴いた時の“持続する味わい”みたいなものと似ているかもしれない。名盤は売れる・売れないという尺度ではなく、アーティストの才を引き出すことのできるプロデューサー、良い楽曲と歌唱力(上手い下手というよりは、自分の言いたいことが表現できるだけの力量)、そしてヴォーカルと楽曲のツボを押さえたバックの演奏…と、これだけのモノが適切に揃うことで生まれる。しかし、これだけのものが揃うことは滅多にない。

音楽ファンだからといって、長い間聴き続けられる作品はそう多くない。むしろ、自分の経験した“名盤”の味わいを再び経験したくて、次々にいろんなアルバムに手を出すというのがリスナーの性だと言えるのではないか。そして、本作『ロッド・テイラー』に出会ったリスナーは、その素晴らしさに感動し、ますますSSW道を極めようと突き進むことになるのである。

70年代初期はSSW系作品の宝庫である

60年代終わりから70年代中頃までというのは、SSWの名盤と言われる作品が少なからず生まれた良き時代である。僕が名盤と呼べる作品(ここではSSW系に限定する)は、ニール・ヤング『After The Gold Rush』(‘70)、カレン・ドルトン『In My Own Time』(’71)、マッドエイカーズの『Music Among Friends』(‘72)、エリック・ジャスティン・カズ『If You’re Lonely』ノーマン・グリーンバウム『Petaluma』(’72)、エリック・アンダーソン『Blue River』(‘72)、ジョン・プライン『John Prine』(‘72)、ボビー・チャールズ『Bobby Charles』(’72)、ジム・パルト『Out The Window』(‘72)、ジェシ・コリン・ヤング『Song For Juli』(‘73)、ロッド・テイラー『Rod Taylor』(’73)、ジェフリー・コマナー『Jeffrey Comanor』(’74)、ガイ・クラーク『Old No.1』(‘75)、ジェリー・ジェフ・ウォーカー『Ridin’ High』(’75)、ロブ・ストランドランド『Robb Strandlund』(’76)など、キリがないのでこれぐらいにしておくが、SSW系の絶対的な名盤というのは70年代半ばになると、ほとんどなくなってしまう。


レコード会社の巨大化に伴いSSW系作品の傑作が激減

70年中頃になるとレコード会社の巨大化が進み、“売れる”レコードを作るために業界全体がシステム化するようになる。多くの人が好むようなアレンジに長けた人材を雇い、流行のサウンドが工場のような生産ラインに乗って作られるようになっていくのである。分業が進み、アーティストの個性は削られ、そして音楽は消費物として世間に流通していくのだ。ポピュラー音楽は商業音楽という位置付けなのでそれは当然のことなのだが、70年代半ばまでのポピュラー音楽はもう少し芸術作品的な部分があった(商業的ではないという意味)。ある意味で、おおらかな時代だったのかもしれない。しかし、今でも“売れなかったが良い音楽”はちゃんとCDになって生き残っているのだから、リスナーがその気になれば必ずそういったアルバムは聴けるので、興味のある人はぜひ冒険してもらいたいと思う。

OKMusic編集部

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