海宝直人&木村達成「エンターテイン
メントは続いていく」 新プロジェク
ト「TOHO MUSICAL LAB.」で新たな挑

3月から休業を余儀なくされていた日比谷のシアタークリエが、新プロジェクト「TOHO MUSICAL LAB.」でいよいよ始動する。劇場を「LAB.」(実験室)に見立て、無観客で行なう舞台をライブ映像配信するというもの。上演時間30分程度の新作短編オリジナル・ミュージカル2本立ての公演となり、根本宗子が『Happily Ever After』の、三浦直之が『CALL』の作・演出を手がける。シアタークリエで行なわれた製作発表に引き続いての取材の場で、『Happily Ever After』出演の海宝直人と『CALL』出演の木村達成がプロジェクトへの想いを語った。
――製作発表を終えてのお気持ちは?
海宝:つい数週間ほど前まで、こういうことが実現するとは思っていなかったんですね。根本さんが一カ月ほど前から台本を書かれて、その後、初日まで2週間というところで稽古が始まって、ここまで怒涛の日々で。こうしていられることが不思議な感じもしますし、幸せですね。今回、「LAB.」(実験室)ということで、前例のない新しい試みですし、いったいどんな舞台に仕上がっていくのかなかなか想像がつかない、そういう意味でも非常に刺激的な毎日を送っています。オファーを受けてからここまで、ちょっとでも立ち止まると流されそうで、駆け抜けながら作品を一つ形にしてきているという感じですね。
木村:僕は、舞台に立って、目の前に人がいるという状態が久しぶりだったので、緊張しました。
――木村さんは製作発表で、拍手の音が恋しい、無観客ライブ映像配信であっても、ご覧になったお客様が拍手をしてくだされば、その想いはきっと届くと思うと語っていらっしゃいました。
木村:舞台に立てない間に、拍手ってなんでするんだろうと考えたんですよ。それは、お客様が、演者に伝える感情、感謝の表現だったのかなと考えると…、とてもせつなくなるし、恋しくなってしまって、あの音が聞きたいなと。今、劇場ではその拍手がないということを考えると…。拍手のためにやっているというところがあるので。
木村達成
――人がいない劇場で物語が繰り広げられる『CALL』は、作・演出・作詞の三浦直之さんの劇場論が展開される作品です。
木村:拍手であったり、静寂であったり、そういった音をかなり意識した作品だと思います。僕が演じるのは羽根が壊れたドローンなんですが、お客様の気持ちになって話を進めていくところがかなりあって。そういう役を演じているからこそ、拍手についても、さっき話したような心境になれたのかなと。お客様がいないと成立しない舞台、エンターテインメントというものについて、また改めて考えるきっかけとなるような作品ですね。
――おとぎ話のエンディングの決まり文句、「いつまでも幸せに暮らしました」をタイトルとした『Happily Ever After』は、夢に迷い込んだような世界が印象的な作品です。
海宝:いわゆる「めでたしめでたし」ですね。このコロナ禍で、特に自粛期間中は、人と会ったり、食事をしたりといった、同じ場や想いや環境を共有するということができなかったじゃないですか。この作品の登場人物は、自分の居場所に悩んでいたり、周りの人物と何かをシェアすることがなかなかできなかったりというところがあって。だからこそ、ご覧になった方にも、共感できるところがあるというか、今の自分の感覚と同じであるところとか、そういった部分を見つけていただける作品になるんじゃないかなと思っています。観ていて、登場人物二人を応援してもらえるような作品になればいいなと思っていますし、世界ってすごくいろいろつらいこと、苦しいこともあるけれども、明日はちょっといい日になるかもしれないと、明日を信じる気持ち、ポジティブな気持ちになれる、あたたかな作品になったらいいなと。
今は、一緒にいられない方たちもいれば、一緒にいるからこそぶつかってしまう方たちもいると思うのですが、この作品ではそういった距離感の問題も扱われているので、共感して観ていただけるのではないかと。共感することで癒される部分もあるというか、同じ想いを他の人ももっているんだと感じることで癒される部分ってあるじゃないですか。今はなかなかそういった共有をしにくい時だと思うのですが、演劇は、同じ空間で、同じものを観て、同じ想いを共有できるスペースなので、今回も、少しでも何か共有できるような作品になったらと思っています。
――楽曲についてはいかがですか。
海宝:清竜人さんが作詞・作曲を手がけられているんですが、竜人さんがいつも作る楽曲ともまた違う、まさに根本さんの作品から立ち上がったんだなと感じるメロディラインだったりするんですね。繊細だったり、楽しい感じだったり、そのときそのときのキャラクターの気持ちを感じるような楽曲で、いわゆるミュージカル的な楽曲とはまた違った新しい感覚、寄り添う感覚を、歌いながら、聴きながら、新鮮に感じています。
製作発表にて披露された楽曲/生田絵梨花&海宝直人『Around The World』~TOHO MUSICAL LAB.『Happily Ever After』より
木村:『CALL』の方は夏目知幸さん作曲なのですが、すてきな楽曲なんです。僕は作品の中ではあまり歌わないのですが、最後にみんなで一緒に歌う曲は、人に何かを伝えるということについて思いながら歌っていますね。
――お稽古はいかが進行中ですか。
海宝:生田絵梨花さんとは『レ・ミゼラブル』で共演して長い時間を一緒に過ごしてきたということがあったので、今回のように稽古時間の短い作品でも、お互い何も気を遣わずにいろいろなことを話し合うところから始まって、そこはとても心強いなと思っています。稽古しながらも、休憩中も、お互いに、こうなんじゃない? とか話し合ったりして、すごくキャッチボールができていて、稽古していてとても楽しいですね。すごく自由に演じて投げてきてくれるので、そこに刺激をもらいながら、コミュニケーションをとりながら作っていけることがすごく楽しいです。根本さんの演出もそうですし、演劇の醍醐味がぎゅっとつまった時間を過ごせていて、とても楽しいですね。
木村:僕は三浦さんの演出を受けるのは再演を含めると四回目になります。出演できてすごくうれしいですね。空間、距離感を使った演出がとてもすてきだなと思っていて。しびれるというか、やっていて楽しいんです。僕は劇中掛け合いをするのが主に田村芽実さんなんですが、田村さん、すごくすてきな人なんです。すごくピュアで、僕があまり作っていかなくても、相手のパスを受けていけばいいというか、気持ちが動いたなと思うと自分の演技も変わるみたいなところがあって、やっていて楽しくて。コロナ禍で自粛期間があって、それを超えたからこそ、改めてまた芝居をする喜びを深く感じられているというか。
僕が演じるのは、劇場で記録をしていたドローンで、劇場の記憶とは、それを観ているお客様とセットであるという話になって。僕自身、舞台に立っていて、…この人いつも最前列で観てるな、すごいな…と思うお客様もいたりするので、その感覚と少し似ているところもあるというか。僕のグランドミュージカルデビューは日生劇場で上演された『ラ・カージュ・オ・フォール』なんですが、千秋楽の日に、関係者入り口の受付の女性が「また日生劇場に戻ってきてね」と言ってくださったんですね。その後も、日生劇場に観劇しに行くと、お姉さんが「お帰りなさい」と言ってくれる。その感覚に似ているなと、演じながら思っていて。当時の記憶が懐かしいし、歓迎されるという気持ちもすごくある。だからこそ、拍手を送りたいということだと思うんです。そんな感覚が描かれている作品ですね。
海宝:『Happily Ever After』の二人は、現実社会においては人とのコミュニケーションをとることをどこかあきらめていて、それで夢の中に逃避しているところがあって。それが、わかり合える人、理解し合える人、自分の言語がわかる人、同じ言語をもつ人に、一晩だけかもしれないけれども、出会えて。そのことが癒しにも、希望にもなりますよね。コミュニケーションがあまり上手ではないけれども、いろいろなことを考えて、いろいろな想いをもっている、僕が演じるのはそんな男ですね。
海宝直人
――お二人は初対面とのことですが、これまでの互いの印象はいかがですか。
海宝:今日、ホントに初めて会ったんだよね。今回、顔合わせもなかったですし、稽古も別々なので。そちらがどんな作品なのか、興味があるな。
木村:あるある。
海宝:台本も読んでいないので。歌唱指導の方は同じなので、「全然違う感じだよ」と聞いて、どんな感じなんだろう、と。
木村:こっちはけっこう笑いがある感じかな。シリアスな中に笑いがあるというか、盛り上がった一瞬の後に崩れ落ちるみたいなところが書かれている台本かなと。
海宝:まったく違う感じの2本立てになりそうだよね。
木村:めちゃくちゃ楽しみですよね。…って、観られるのか?
海宝:昨年の『ファントム』でフィリップ・シャンドン伯爵を演じていたけれども、僕も以前同じ役を演じたことがあって。
木村:存じ上げております。フィリップ先輩ですね。
海宝:美しくて、魅力的で、自分も本当に同じ役をやったのかなと思っちゃった。すてきだなと思って観ていました。クリスティーヌがひかれる気持ちがわかるなと。
木村:いやいや(照)。『四月は君の嘘』組で「FNS歌謡祭」に出させていただいたとき、『ミス・サイゴン』組も出ていたじゃないですか。そのときに、画面越しですが観させていただいて。
海宝:こちらはライブだったんだけど、そちらは収録だったんだよね。
木村:そうなんですよ。それで、生放送で観ていて、すごいなと思いました。もちろん舞台は生でやっていますけれども、ああいう場で生で歌うのって、また違うじゃないですか。
海宝:違う違う。
木村:稽古に入っていない時期、まだまだ作品に深く入っているわけではない時期に、ああして生で歌うって、今日の製作発表での歌唱披露もそうなんですけど、すごいよなって、ホント尊敬してます。

木村達成

――製作発表で、木村さんが、自粛期間中、さまざまな配信を観たけれども、自分はプレイヤーだと実感したとおっしゃっていたのが印象的でした。
木村:観ているより、やる方が好きだなと改めて感じたということなんです。それが、エンターテインメントというもののもつ力なのかもしれないなと改めて思ったというか。もちろん、観る時間も、人として成長できる時間として必要なものだと思うんですけれども、僕は「観て」より「やって」成長していきたい、何かを得ていきたいタイプだなと。そんなに多くは得られないかもしれない、でも、やることで得ていきたい。そして、観るときは、勉強として観るんじゃなくて、素直に楽しんで観たいですね。おもしろいかおもしろくないかで判断したいなって。だから、プレイヤーだなって。
――舞台に立たない、観ている側の人間としては、そんなにも立ちたいと思える舞台の楽しさを知りたいところです。
木村:つらい瞬間の方が多いんじゃないですか。
海宝:そうだよね…。
木村:うわべだけ見ているとキラキラした世界かもしれないけれども、実際には泥臭いというか。毎日同じ曲を聞いたり、台本に目を通したり…。じゃあ、どこが楽しいんだろうかと言えば、…一瞬一瞬がつながっていく瞬間、それが、やっていて楽しいのかな。具体的に楽しさがわかっちゃったら、自分はできなくなっちゃうタイプかもしれないですね。
――自粛期間中、舞台に立つことについて改めて考えたこととは?
海宝:『アナスタシア』に出演していましたが、公演が中止になって、三日間しか出られなくて、すごく悔しかったです。改めて、こういう感情になるんだなと思いました。一つのものをみんなで作り上げていくときに、本当にいろいろな想いを積み上げて作ってきているから、こういう気持ちになるんだなと、改めて客観的に感じて。それは、悔しい想いとか、何かもう、言葉にするのは難しいですけれども、行き場のない感覚というか…。
海宝直人
『ミス・サイゴン』については、できるかできないかわからなかったという意味では、少し覚悟ができていたというか。結局中止になってしまいましたけれども…。やっぱり、舞台に立つことがすごく好きなんだなと思いましたね。今、こうして作る場に戻って来ることができて、稽古場で、本当に交流ができた瞬間、生きたやりとりができた瞬間、それは、人生そのものでもあると思うんですけれども、書かれたセリフを話しているんだけれども、そうやって生きたやりとりができた瞬間、そのとき、高揚感があるんですね。それは、目指しているけれども必ずしも毎回あるものではない。でも、そういう瞬間がある、そういう瞬間が積み上がっていく感覚、それが、お芝居をする楽しさ、幸せなんだなと思いますね。
木村:『ウエスト・サイド・ストーリー Season3』は、結局劇場では一回しか通し稽古ができなかったんです。プロデューサーからは、幕を開けたいから、この期間までは中止と言われて、結局はすべて中止になりましたけれども。それはもう本当にしょうがないですし。もちろん、やりたい気持ちもありますし、そこまでやってきたという気持ちもありますし、悔しいし、行き場のない気持ちもありますけれども、そんなことより人の命の方が大切だなと思って、だから覚悟を決めましたね。
――改めて、どんな想いで今回の舞台に臨まれますか。
海宝:改めて、エンターテインメントは、どんな形であれ続いていくんだろうなと、今回のことを通じて思いました。もしかしたら、コロナ前のような状況に戻るには時間がかかるかもしれない。ブロードウェイにしても年内再開はないわけですし。でも、どんな形であれ、何かしらの条件付きで発展していくんだろうなと。今回の「TOHO MUSICAL LAB.」は、新プロジェクト第一弾として、こんなチャレンジをしてくれるというのはすごいことだなと思うんです。一か月という期間の中で、脚本、音楽を一から作って、二週間弱の稽古で作品を作り上げていく、そこに参加させていただけるというのは本当に光栄だなと思っています。これが第一歩、何かのきっかけとなって、例えば、映像を使うならこういう形がいいとか、新しい発見があるかもしれない。役者としても新しいチャレンジになると思いますし、いいも悪いも、さまざまな意見を聞きたい、そうして、お客様とも新しいものを作っていきたい、ぜひそこに参加していただければという気持ちがありますね。
木村:最高の舞台、最高の作品を作り上げたいですし、何より、お客様に届けたい。この作品をどういう気持ちで届ければいいのか、毎日考えながら、今、稽古に取り組んでいるところです。

左から 海宝直人、木村達成
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=池上夢貢
★2020年7月9日(木)めざましテレビ(5:25~8:00/フジテレビ)で『Happily Ever After』密着特集が放送予定!生田絵梨花&海宝直人が登場します↓
「TOHO MUSICAL LAB.」Twitterより

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