座談会 | それぞれのサタデー 7イン
チ限定リリースで注目集めた「それぞ
れのサタデー」。世代を超えたコラボ
の裏側を探るリモート座談会の様子を
お届け

RIP SLYMEのRYO-Z、DJ/プロデューサーのAKAKAGE(伊藤陽一郎)、3MCによるラップ・クルーMGFによるコラボ・プロジェクト、ARMが4月末にリリースしたシングル「それぞれのサタデー」は、クンビアのリズムとラテン・フレーバーな陽性のトラックに、De La Soulの名曲から引用したフロウも印象的なパーティ・チューン。ポップスとしての高い求心力を擁しながらも、7インチのみでのリリースというのが何ともニクい作品だ。
本稿では4月にリモートで行ったRYO-Z、AKAKAGE、そしてMGFからKSK、1010による座談会の模様をお届けする。まだまだ暗いニュースが続く中、飛び切りのポップネスを放つ本作のコラボーレーションの裏側。そして、3組の間で起きた世代を超えた化学反応を紐解くことに。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
「家で土曜日に踊ってね」
――今回のコラボ・プロジェクト、ARMはどのようにしてスタートしたのでしょうか?
RYO-Z:かなり前から、僕と陽一郎さん(AKAKAGE)で一緒に「こういう曲作りたいんだよね」「いいっすね、やりましょう!」っていう話があったんですけど、自分の忙しさにかまけて、中々実現に至らなかったんです。その話を貰ってから1年以上経ってから、再度陽一郎さんからお声がけ頂いた時に、すでに僕はMGFと出会っていたので、「陽一郎さん、良い奴らを見つけちゃったんで、呼んじゃっていいですか」とお伝えして。僕からしたら陽一郎さんを1年以上もお待たせしてしまい本当に申し訳ないという気持ちで……。
AKAKAGE:まぁ、急ぐ案件では全くなかったからね(笑)。
RYO-Z:それで、一度お酒飲みながらみんなで打ち合わせしてみたんですけど、やっぱり僕たちはラッパーで、ヒップホップ畑の人間なので、「一度セッション的にスタジオに入ってみようよ」っていう話になり。後日、陽一郎さんの先輩のスタジオに入ってみたら本当にみんなの相性が良くて。サクッと数時間でプリプロ段階くらいまで完成してしまったという。ARMというのも半ばノリで決まったプロジェクトというかユニットっていう感じですね。フィーチャリングにしちゃうと長ったらしくなっちゃうし(笑)。
RYO-Z
――AKAKAGEさんのトラックはMGFの参加が決まる前からある程度形になっていたと。
AKAKAGE:そうですね。言ってしまえばもっと前、数年前からAKAKAGEとしてのアルバム用にいくつか用意していたトラックのひとつで。基本的に僕はサンプリングありきなので、最初にできたワンループを聴いてるうちに、De La Soulの「Saturdays」が聴こえてきて。ちょっと乗っけてみるかって思いついて、それに合わせて構成も色々とイジってみたりして。昔からラテンとかボサノバっぽいトラックも作っていたし、サンプリング・ネタとの出会いで生まれてきたっていう感じですね。
RYO-Z:最初の段階で「サタデー」っていうラインは決まってましたよね。いわゆるDe La Soulの「A Roller Skating Jam Named Saturdays」にオマージュを捧げながらも、ラテン・フレーバーなトラックでラップする。この感じだったらめっちゃ得意なんで、全然やりますよ! って安請け合いしておきながらも、寝かせてしまったと(笑)。
RYO-Z:とはいえ、僕ひとりでやってもこういったパーティの雰囲気はなかなか出せないなと思ったので、ちょと良いタイミングでMGFと出会ったので、彼らも呼んで。大まかなラインと「サタデー」っていうフックが決まってる状態で、「どうしようかね」「そのまんまサタデーっていう感じもねぇ」って話し合ってるうちに、「まぁ各々のサタデーがあるからねぇ」っていう言葉が出てきて、「それだ!」みたいな(笑)。これも結構勢いで決まった感じですね。そんなに気負わずにできた……と思ってるんだけどみんなはどうかな?(笑)
一同:(笑)
KSK:まさにその通りです(笑)。さっきRYO-Zさんがおっしゃった通り、最初のセッションの段階でそれぞれ持ち寄ってきたアイディアがバチッとハマって。ほぼほぼ初日で形は完成しました。
RYO-Z:セッションの次が本番RECだったもんね。完全にセッションでできた曲だと言えると思います。RECの時にコーラスで参加してくれたASCA(ASCA HIRAYABU a.k.a Milligram)も、元々僕たちの知り合いで。
AKAKAGE:デモをRECしてたスタジオ(URBAN VOLCANO SOUNDS)のhacchiさんも、元々僕と一緒に曲を作っている間柄で。全部元からの繋がりで完結しています。
RYO-Z:大体みんな飲み仲間だしね。作業もスムーズに進行したよね。
――なるほど。
RYO-Z:ただ、東京都に緊急事態宣言が発令されたこの状況を考えると、少し心苦しくなります(笑)。
KSK:確かに。結構な不謹慎ソングですよね(笑)。
RYO-Z:なので、「※家で踊ってね」っていう注釈を付けたいです。家で土曜日に踊ってね、っていう(笑)。
AKAKAGE
「時空を超えるというか、僕らと交わる感じ」
――本日はJappsyさんが不在ですが、ラップを乗せたRYO-Zさん、KSKさん、1010さんそれぞれが気に入っているヴァース、ラインなどを教えてもらえますか。
RYO-Z:まさにJappくんがいないところで恐縮ですけど、僕は彼の「君は仕事がやべえの? 俺は / 365連休だぜ」っていうラインに喰らいましたね。かなりのパンチ・ラインですよね。僕は2番手なんですけど、Jappくんのヴァースを聞いてその場ですぐにリリックを書きました。完全にJappくんに勢いを付けてもらったという感覚があります。
AKAKAGE:僕もJappsyくんのヴァースには喰らったな。最初だからっていうのもあるけど、すごく印象深く残ってる。いきなりユーモアぶちこんできたなって(笑)。
RYO-Z:最初はブースとか入らないでハンド・マイク回してお互い練ってたんだけど、Jappくんがこのラインをパッとラップした時、しげまるくんがすごい笑って。その笑い声も入っちゃったんだけど、それも含めてめちゃくちゃ良かった。あと、最初に聴いた時、The PharcydeのBootie Brownみたいなラップだなって思ったんですよね。The PharcydeはRIP SLYMEがずっと憧れてたグループだから、そこでも親和性あるなって思いましたね。
KSK:リリックっていうわけではないんですけど、インタールードでRYO-Zさんが僕らのことを紹介するところですかね。TMCでやっていたこと(※1)に対するオマージュというか、小さい頃からRIP SLYMEを、RYO-Zさんを観てきた人間からすると、あそこはめちゃくちゃ意味のあるラインなんです。
RYO-Z:ありがとうございます。ああいうのはもうこの曲か、もしくは『ENGEIグランドスラム』(※2)でしかやってないと思います(笑)。
※1:TMC ALLSTARS:Dragon Ash主催イベントに参加したアーティストが集結したスーパー・グループ。2000年に総勢12人のMCによるマイク・リレー曲「TMC Graffiti」を発表。同シングルでRYO-Zは最後にメンバー紹介含む最後のヴァースを担当している。
※2:フジテレビ系列にて2015年から不定期放送されているお笑い演芸特別番組。RYO-Zは芸人登場ナレーションを担当。
一同:(笑)
KSK:ハハハ(笑)。時空を超えるというか、僕らと交わる感じが感動しましたね。
1010:僕はこういうパーティ・チューンには結構苦手意識があって。それでも上手く書けたと思うので、自分のヴァースを褒めてあげたいです(笑)。最初にバーっと書いたらめちゃくちゃつまらない内容になってしまい、そこから色々な楽曲を参考に聴き直しました。それこそMeisoさんだったりBOSSさん(ILL-BOSSTINO)などの作品を聴いて、どうやったらパーティ・チューンの雰囲気を壊さずに自分を出せるのか、みたいな部分を研究しました。
――では、そもそもRYO-ZさんとMGFとの出会いというのは?
RYO-Z:僕がよく行くバーの店員さんが、MGFの曲をかけていて。「カッコいいね、この人たち」って言ったら「僕の友達なんですよ」っていう会話があった後、その店員の子がDJをやるイベントに遊びに行ったらしげまる君(1010)が来てて。そこで挨拶して、後日みんなを紹介してもらいました。
RYO-Z:……でも、実はその前にもHARLEMでライブを観ていたんですけど、その時は何も挨拶せずに帰っちゃたんです。というのも、他のアーティストさんのライブを観た後って、関係者や箱の人たちへの挨拶だったり乾杯だったりで忙しいだろうなと思うので、基本的に挨拶せずにそそくさと帰宅することが多くて。後日、「あの時のライブ、めちゃくちゃ良かったね」とか伝えるようにしてるんです。でも、帰った後気づいたけど、その時はまだ誰とも知り合ってないから、ただただ黙って帰った感じの悪いオジサンになってしまった(笑)。
一同:(笑)
KSK:実は僕らもその日、ステージ上からRYO-Zさんのことを拝見していて。「RIP SLYMEのRYO-Zさん、いたよね!?」「いたいた! ヤバくない?」ってライブ後に盛り上がってました(笑)。
RYO-Z:ちょっとあれかな、レジェンド感出ちゃってたかな?(笑) でも、僕からしたら陽一郎さんの方がレジェンドですよ? 音楽も作るしDJもやるし、絵も描いて料理まで作っちゃうんだから。
AKAKAGE:いやいやいや。もう、次の話題いってください(笑)。
――ハハハ(笑)。では、MGFのお2人に、RYO-Zさんというレジェンド的な存在から声を掛けられた時の感想をお聞きしたいです。
1010:おっしゃる通りレジェンドなお方なので、すごい光栄なことだし、緊張もしました。ただ、それを感じさせないような気さくさもあって。昔の自分からしたら夢のような出来事なのに、その感覚が段々麻痺してくるというか。そのおかげで、スタジオとかでも気負わずに制作することができたと思います。
KSK:最初にしげまるがRYO-Zさんとお近づきになったっていうことを聞いた時、「ウソでしょ? お前、マジで言ってんの?」って言っちゃうくらい半信半疑で。その後実際に紹介してもらった後も「マジじゃん。ヤバいな」っていう感じだったんですけど、しげまると同じでスタジオに一緒に入らせてもらったらすぐに打ち解けることができて。僕も調子に乗って「TMC(ALLSTARS)でやってたあのフレーズやってくださいよ」って言ったら気軽にやってくれるくらいフレンドリーで。本当に僕らにとっては夢のようなコラボになったと思いますね。
――RYO-Zさんが感じる、MGFの魅力というのは?
RYO-Z:う〜ん。今の時代に、僕ら(RIP SLYME)が彼らくらいの年齢でまだデビューもしてなかったら、同じような音楽をやってたんじゃないかなって思うんですよね。もちろんこれは僕個人の見解ですけど。とても好きなグルーヴを持ってるグループだと思いますね。
KSK:シンプルに嬉しいですね。AKAKAGEさんは僕らのことどう思ってらしたんですか?
AKAKAGE:音源聴かせてもらった感じとか、一緒にレコーディングしてみて、僕もすごい好きなグループだなと思ってます。それぞれ多様なバックグラウンドを持ったグループなんだなっていうのも伝わってくるし。僕もDJとしてはどちらかというとオールミックスなタイプなんで、そういう部分でもシンパシーを感じるというか。この間もミックスでMGFの曲を使わせてもらいました。ありがとうございます。
KSK:ありがとうございます。嬉しいです。
MGF
鬱々とした気持ちを和らげる「それぞれのサタデー」
――今回の楽曲「それぞれのサタデー」はMGFにとってはこれまでにないくらい明るい曲調になっているのではないでしょうか。
KSK:はい。間違いなく僕らの中では一番陽気な曲だと思います。なので、最初は少しだけ不安もありました。でも、さっきお話した通り、いざスタジオに入ったら意外にも上手くいって。
AKAKAGE:リリックも初日に全て完成したもんね。本番でも一言一句直してないと思う。
――このような状況下において、これだけ明るいポジティブな曲がリリースされることは、リスナーにとってはすごく救いになると思います。
RYO-Z:もちろん完全にたまたまそうなっただけなんですけど、これから鬱々とした感情を抱いてしまう人もより一層増えると思うので、それを少しでも和らげることができたら良いなとは思います。
KSK:良い意味で、音楽が持つ力を発揮できるんじゃないかなと。僕はこの空気感の中で、この曲を出せることを誇りに思います。
RYO-Z:ただ、あくまでも家で踊ってね(笑)。
KSK:重ねてくるな〜(笑)。
――ある意味MGFにとっては新たなトライとなったであろう本作の制作は、今後のスタイルにも影響を及ぼしそうですか?
KSK:どうなんでしょう。でも、僕たちだけだったら今後もここまで明るい曲は生まれないかもしれないですね。やっぱり新たなプロジェクトだからこそ出た一面というか。普段、僕らだけだったらこんなにテンション上がらないんですもん(笑)。RYO-Zさん、AKAKAGEさんと一緒だからここまで楽しい雰囲気を出せたっていう感じですね。
RYO-Z:僕らが引きずり込んだっていう感じだよね(笑)。
1010:ライブでやってみて、めちゃくちゃ楽しかったのも覚えています。こんなご機嫌な曲は持ってなかったので。
KSK:楽しかった。去年末くらいでしたっけ?
RYO-Z:そうだね。原宿のmontoakっていうカフェでやらせてもらったイベントで披露させてもらいました。もちろんMGFとしても出演してもらって。
――今作のリリース時に、「第1弾リリース」と謳われていたのですが、ARMとしては今後も作品の発表を予定しているのでしょうか?
AKAKAGE:自分たちで「第1弾リリース」って書いたつもりはないんですけど、タイミングあればやりたいなくらいに考えています。あまりリリースに追いかけられたくないですし。
KSK:また思いついたらやりたいですね。
RYO-Z:無理せずやっていきたいです。
――今作は今のところレコードだけでのリリースになりますよね。配信などの予定は?
AKAKAGE:リリースの形態は色々と悩んだんですけど、今回はレコードのみでいこうと思っています。
KSK:僕は今回のリリースの方法、すごい好きです。RIP SLYMEっていう大きい存在があって、AKAKAGEさんっていう重鎮がいらしゃって、そこにMGFが乗っかる。それで普通に配信もしちゃうと何かインパクトないなと。7インチだけっていう少し捻くれたスタイルでのリリースなのに、曲はすごく聴きやすくてポップ。そういうところが良いなと思っています。
AKAKAGE:あと、MVなどの映像制作も考えていたんですけど、ちょっとこの状況になってしまったので、厳しいかもしれないですね。
KSK:ダウンロード・コードとかもないですよね?
AKAKAGE:ないですね。
RYO-Z:尖ってるな〜。
KSK:尖りまくりですね。
――最後に、それぞれ今後の展望、動きを教えてもらえますか?
KSK:難しいですよね。僕は珍しくソロでの動き(※3)を考えていて、それを経てグループにどう還元できるのか楽しみです。
※3:KSKはShimon Hoshinoとのユニット、Osteoleucoとしても作品をリリースしている。
RYO-Z:僕らもとりあえずライブを考えていたんだけど、この状態じゃ今年いっぱい厳しいかもしれない。
KSK:でも、曲作りはやっていくと思います。それこそ遠隔でもできるので。
AKAKAGE:僕も今後の展望はちょっとわからないけど、さっきRYO-Zが言ったように曲作って絵描いて飯作ってをずっと繰り返してます。1日1曲は作ろうと思っているんですけど、その中で、「あ、これは誰かと一緒にやった方がいいかも」って思えばまたコラボに発展するかもしれない。そうじゃなくても、今は色々な方向性の曲に積極的にチャレンジしようと考えています。
【リリース情報】

ARM 『それぞれのサタデー』

Release Date:2020.04.29 (Wed.)
Label:ROMANTICKERS RECORDS
Tracklist:
A1. それぞれのサタデー
B1. それぞれのサタデー (Instrumental)

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