[Alexandros]川上洋平の映画連載スタ
ート!初回は『mid90s』について語り
ます【新連載:ポップコーン、バター
多めで PART2】

大の映画好きとして知られるロックバンド[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画新連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。毎回おすすめの映画について語っていきます。初回は『マネーボール』と『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた名優、ジョナ・ヒルの監督デビュー作『mid90s ミッドナインティーズ』について。

本連載は川上洋平の誕生日6月22日にちなんで、毎月22日に記事を公開していく予定です。どうぞお楽しみに!
『mid90s ミッドナインティーズ』
この『mid90s』が監督デビュー作になるジョナ・ヒルって、83年生まれで僕の一個下なんですよね。彼が過ごした90年代当時のLAを描いた作品なんですけど、同世代ってこともあって出てくるアイテムと音楽がどんぴしゃでした。まず、主人公の13歳のスティーヴィーの部屋のベッドのシーツや枕が『(Teenage Mutant)Ninja Turtles』で、僕は9歳から14歳まで中東の国に住んでてスティーヴィーと同じ歳の頃に一番ハマってたマンガが『Ninja Turtles』だったんです。その後オアシスが好きになってから、そういうマンガとかは全部卒業して音楽にハマったんですけど。
序盤でかかる曲がシールの「Kiss from a Rose」で、95年に公開されてヒットした『バットマン フォーエバー』の主題歌のバラード。あと、ニルヴァーナとかサイプレス・ヒルとかファーサイドとか、USの僕の好きなアーティストの曲もたくさんかかる。その後僕はオアシスだったりUKロックに傾倒していったから枝分かれはしていくんですけど、全部わかるものばかりだったんで共感でしかなかったですね(笑)。少年たちが着てる服のブランドもショーティーズだったり、僕も当時めちゃめちゃ着てたからすごく懐かしかったです。

『mid90s ミッドナインティーズ』より

■僕も主人公とお兄ちゃんと全く一緒のことやってました(笑)

スティーヴィーのお兄ちゃん役がルーカス・ヘッジズで。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』にも出てて大好きなんですけど、若手ではトップクラスの注目株と言っていい俳優さんだと思います。スティーヴィーよりお兄ちゃんに共感するシーンが多かったですね。弟には強気でいけるんだけど、抱えてるものは弟と変わらなかったりして。その感じにぐっときましたね。弟は逆に勇ましいというか、まっすぐ向かっていく。
あと、スティーヴィーがイケてるグループに入って行くんだけど、スティーヴィーが仲間たちと距離を縮めていくのに嫉妬する坊主頭のルーベンにもすごく共感しました。でも割とどのキャラクターに対しても「わかるなあ」って思いましたね。レイ役のナケル・スミスはOdd Futureの創立メンバーでプロのスケートボーダーってこともあってかっこよかったですね。
僕は13歳の時はアメリカンスクールに通ってたんですけど、同学年にイケてる子がいるわけじゃなくて、結局先輩なんですよね。そこもスティーヴィーと一緒で。このくらいの世代って学年が2つ違うだけで、身長が20センチくらい違ったりしてビックリするくらい。尊敬と恐怖を感じながら接するわけですけど、同学年がおままごとみたいな遊びをしてる時に、先輩がちょっとギターを弾いたり、バスケしたり、なんならちょっとタバコ吸ってたりするのを見て憧れを感じたり。それがスティーヴィーはスケボーだったけど、僕はギターであり音楽でしたね。
僕にも兄がいるので、スティーヴィーがお兄ちゃんの部屋に勝手に入って、飾ってあるスニーカーやCDを眺めるシーンはリアルでしたね。お兄ちゃんが持ってるギターに憧れて勝手に触って怒られたこともあったし。でもその後一緒にゲームやったりもしてたから、スティーヴィーとお兄ちゃんと全く一緒のことやってましたね(笑)。ケンカするけど仲良いみたいな。
『mid90s ミッドナインティーズ』より

■いろんな考えがごっちゃになってる90年代の雰囲気がうまく出てる
90年代の世代感が出ているところもすごく良かったですね。あまり好きな言葉じゃないけど僕たちの後がゆとり世代で、その前の80年代は『ビー・バップ・ハイスクール』が流行ったりして、ヤンキー系が多かったりする。僕らはどちらでもないというか、ふわっとした世代だと思っていて。あえて言うなら「キレる17歳世代」って言われてた世代。そういう存在はいながらも、全体的には割と平穏ではありつつ、刺激が足りない世代でもあったのかなって僕としては思っていて。その中で音楽も色々枝分かれしていって、日本だとHi-STANDARDに代表されるメロディックパンクがすごく流行ったり、僕が好きだったUKロック系のWINOとかも盛り上がってたし、いろんなジャンルが混在してた。どういう気持ちでカルチャーに対して愛を育めばいいのかとか、どういうのがかっこいいのかっていうところがぼんやりしてた時代な気がする。「とりあえずつっぱってればいいよ」って感じでもない。そういういろんな考えや思想がごっちゃになってる雰囲気も『mid90s』にはうまく出てるなって思いました。
『mid90s ミッドナインティーズ』より

■監督がコンプレックスと向き合った感じに共感する
ジョナ・ヒルのことは最初は『40歳の童貞男』でコメディ俳優として知ったんですけど、その後『マネーボール』でアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされて、やっぱりこの人すごいなって。それで、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で共演したレオナルド・ディカプリオに可愛がられてて仲良いんですけど、ディカプリオって僕らの世代からすると『タイタニック』があれだけ大ヒットした超プリンスなんですよ。そんな存在と共演するって、「俺、あのレオナルド・ディカプリオと仕事してる。すげえ!」ってなるんでしょうけど、自分のコンプレックスと向き合うことにもなると思うんですよね。
最近ジョナ・ヒルは、「日本食を食べて痩せてシリアスな雰囲気にしてみたんだ」みたいなこと言ってたり、こうやって映画監督デビューしたり。僕は勝手に、彼は色々コンプレックスを抱えてて、そこと向き合った結果、コメディ俳優というところからどんどん変化してきてるんじゃないかって思ってて。前から脚本家ではあったんですけど、色々感じるものがあって自分ができることを広げてきたのかなあって。そういう面では監督にも共感しますね。
『mid90s』はジョナ・ヒルの13歳当時の自伝的要素も入ってるんだけど、スティーヴィーがイケてるグループに入ろうとする勇気だったり、入ってからも努力するところから、おそらくジョナ・ヒルは映画業界に入ってからもそういう努力をしてきたんだろうなって。ハリウッドなんてもうイケてるオブ・ザ・イケてるグループなわけで(笑)。だから、90年代当時の気持ちだけなくて、ハリウッドで感じた気持ちも入ってるのかもしれない。
まあでも、すごい上から目線かもしれないですけど、まだまだこれからだなとも思いました(笑)。去年観たポール・ダノの初監督作品の『ワイルドライフ』が僕は2019年のトップ3に入るくらい好きなんですね。雰囲気はすごく地味なんですけど素晴らしくて。それに比べると『mid90s』はメッセージ性が前に出てるわけではなくて、ひとりの男の子の成長物語っていうのと90年代に対しての愛っていうのはすごく伝わってきたんですけど、僕としては「ここまできたら泣かせてほしかった」って思うところもあった。そこまでベタにいかないのが良いっちゃ良いんですけど、僕の好みとしてはもっとやっちゃって欲しかったなって。でも、LAの雰囲気とかが全くわざとらしくなくて古臭くないし、懐古映画だとも思わないのが素敵だなって。単純に、映画撮ってみたいなって思っちゃいましたね(笑)。
取材・文=小松香里
撮影=河本悠貴 ヘア&メイク=坂手マキ(vicca)

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