『Osaka Music DAYS!!! THE LIVE in
大阪城ホール』ライブを愛してやま
ない5000人のロックファンとともに、
踏み出した大きな一歩

2020年8月8日(土)、大阪城ホールにて開催された『Osaka Music DAYS!!! THE LIVE in大阪城ホール』の初日オフィシャルレポートが到着した。

全国の夏フェスが軒並み中止や延期を余儀なくされる中、観客を入れた大規模なコンサートを再開するために、関西のイベントプロモーター8社と、大阪のFMラジオ3局が手を組んで実現した、夢のプロジェクト。最大の目的は、感染を避けるための対策を十分に行った上で、ライブの環境をつくっていくこと。あらゆるエンタテインメントの再開に向けた第一歩とするべく、行政からの指導に従いながら、入念な準備が進められてきた。
会場に集まった音楽ファンは5000人。周囲の人との距離を保ち、声を上げることもできないという、普段とは違ったルールの数々を、各自がどこまできちんと守れるのか。今日ほど、成功が観客の良識に委ねられたイベントは過去になかったのではないだろうかか。アリーナにも座席が並べられたが、間に一席ずつの空席を挟む形。スタンド席も同様に間隔を取りながら、ステージの後方にも観客が入る全方位型になっていた。
この日、トップバッターとして出演予定だったキュウソネコカミは、メンバーの体調不良により残念ながらキャンセル。開演前、彼らの曲が「妄想鼠」と題したメドレー形式で場内に流れ、開演を待ちきれないファンが手拍子をしたり手を挙げたりして楽しむ光景も見られた。
そして、13時55分開演。最初に爆音を轟かせたのは、東京・八王子出身の4人組・ハルカミライ。この大舞台で「別に大したことねえな!」と豪語するあたりはなかなかの肝っ玉だ。いつもならファンと一緒に大合唱するような曲も、この日ばかりは橋本が一人で歌い上げる。
ハルカミライ
その歌唱力の高さに誰もが酔いしれた。「どうなるかと思ったけどさ、楽しくて安心したわ!」とポジティブなメッセージを精一杯の声で叫んでいた。
転換時間は、場内の換気も兼ねているのでたっぷり30分。本来はリハーサルにあたるその時間も、待ちきれずに曲を連発して会場を盛り上げていたのが、ヤバイTシャツ屋さん。本編が始まるといきなりキラーチューンの「あつまれ!パーティーピーポー」で早くも会場は一つに。
ヤバイTシャツ屋さん
「大きい声は出せへんけど、心の中で叫んでくれ!」ヤバTのライブなのに、この日ばかりは客席から合いの手の掛け声や笑い声が全く聞こえてこない。観客だってもちろんテンションは上がっていたはずだが、ルールに従って抑えるべきところは抑えるという、一人一人の意識の高さに感心するばかり。声は出さなくても、マスクの下ではみんなが笑顔になっていたはずだ。
続いて3組目は、「大阪でいっちゃんでかい声、出しに来たで!でっかいライブハウスやな!」という威勢のいいMCで盛り上げてくれた、地元大阪の3ピースバンド・Hump Back。秋に予定されている自身初の大阪城ホール単独公演を前に、彼女たちらしい力の込もった演奏を聴かせてくれた。
Hump Back
「卒業式がなくなったり、部活の試合がなくなったり。いつまでこんな日々が続くのかもわからへんけど、「自分の青春がなくなってしまった」なんて、絶対に思わんといてな。おまえの青春、ここにありまーす!」そんな熱い言葉とともに届けられた「拝啓、少年よ」は会場全体の涙を誘うのだった。
ROTTENGRAFFTY
次に登場したのは、京都のラウドロックバンド・ROTTENGRAFFTY。定番の「金色グラフティー」で幕を開けたそのステージ。普段の荒れ狂うフロアとはだいぶ異なる光景ではあるものの、拳やジャンプで応戦するオーディエンスの高ぶりは後ろから見ていても身震いするほどだった。NOBUYAの「本当なら、こんな形でおまえらに会いたくなかった。でもこれが、未来への第一歩になると信じて、俺らについてこい!」という力強い言葉に、20年以上もライブハウスで実績を積み上げてきた叩き上げバンドのプライドが垣間見える。「焦るな。くさるな。怠るな。音楽ライブは、絶対に死なない!」とN∀OKIが叫ぶと、客席からは大きな拍手が沸き起こり、最新の一曲「ハレルヤ」でこのバンドらしく派手に締めくくった。
続く打首獄門同好会は、2月末にいち早く無観客の配信ライブを行って話題をさらったものの、観客の前での演奏は半年ぶり。8月8日というこの日の日付にちなんで、八十八ヶ所巡礼のお遍路さんの衣装で登場し、疫病退散を願って「88」から始めるというさすがのセンス。
打首獄門同好会
「筋肉マイフレンド」では運動不足ぎみの(と思われる)観客全員にその場でスクワットを強要するなど、特殊な状況を逆手に取ったユニークな楽しみ方を提案し、会場を大いに笑わせていた。そんな愉快なステージの締めは、自粛期間中に発表された最新曲の「明日の計画」。「いつになるかはわからないけど、必ずまたライブハウスで会いましょう」という大澤会長の言葉に、誰もが前向きな思いを抱いたはずだ。
今日のためにあるような曲「ロックンロール イズ ノットデッド」のタイトルコールから始まったサンボマスターは、代表曲を惜しみなくたたみかける豪華なセットリスト。「おまえの居場所、ライブハウスを忘れんなよ!」からの「忘れないで 忘れないで」、「コロナ禍でも、今日を最高のライブにできるか?」からの「できっこないを やらなくちゃ」といった具合に、一曲一曲に意味を持たせる山口の全身全霊の曲振りが胸を打つ。
サンボマスター
今日集まった観客やバンド仲間だけでなく、全国のライブハウスやライブ従事者、そして医療関係者にまで、「負けないでくれ!生きろ!」と力いっぱいに叫んで彼らはステージを去った。
トリを務めたのは、関西のロックシーンを牽引する10-FEET。この日の客席には、彼らの主催する『京都大作戦』のTシャツを着ている観客がひときわ多かった。「RIVER」に始まり、「その先へ」、そしてラストの「CHERRY BLOSSOM」まで、まさに太陽が丘の空を思い出さずにいられない選曲で、この夏最高の思い出をファンにプレゼントした。最後の曲ではドラムセットを180度反転させ、ステージ裏のスタンドにいる観客に向かって演奏するサービスも。「この状況でも、ライブを楽しもうとするおまえらの心意気に、俺はもうベロベロの酔っ払いや」というTAKUMAならではの表現で、ステージに立てる喜びを語っていた。
どのバンドも、不慣れなルールに多少は戸惑いつつも、久しぶりに観客の前で演奏できる喜びを全身で噛み締め、そしてすべてのバンドが「次はライブハウスで会おう」という言葉を残していったのが印象的だった。何よりも光ったのは、集まった観客5000人のマナーの良さだ。声を出さず、自分の席から離れず。10-FEETの「CHERRY BLOSSOM」でも、普段なら恒例となっているタオルの投げ上げをしている客が今日ばかりはほとんどいなかった。みんなが、我慢していたのだ。
『Osaka Music DAYS!!! THE LIVE in 大阪城ホール』
そうした演奏中の楽しみ方だけでなく、転換時間のロビーやトイレの様子、入退場時の並び方を見ていても、全員がルールを守って動いていたように思う。主催者によって定められたガイドラインを観客が遵守すれば、音楽ライブで感染拡大は起こらない。それを証明できるのは、自分たちしかいないのだという自覚を持った立派な行動だった。
今日、ロックは息を吹き返した。ようやくトンネルの出口が見えてきた。まさに関西の音楽業界全体が心を一つにして、ライブを愛してやまない5000人のロックファンとともに、踏み出した大きな一歩。これから何年か経ったとき、この一日が伝説となって語り継がれることを心から願う。
文=浅井博章(FM802 DJ) 撮影=日吉“JP”純平、Yukihide“JON...” Takimoto

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