Nothing’s Carved In Stone セルフ
カバーのベスト盤『Futures』を生形
&大喜多が紐解く

Nothing’s Carved In Stone(以下ナッシングス)が8月26日、10作目のアルバムという節目に新たな始まりを印象づけた『By Your Side』からほぼ1年ぶりにセルフカバー・ベストアルバム『Futures』をリリースする。普通、ベスト・アルバムには、それ以前のキャリアを集大成するという役割があるわけだけれど、『Futures』はベストと銘打ってナッシングスの代表曲の数々を網羅しながら、タイトルが物語るとおり、ナッシングスの今を伝え、新たな試みが彼らの未来を確信させるものになっているところが重要だ。ベスト・アルバムをセルフカバーでリリースしようという話は前々からあったそうだが、偶然とは言え、ロック・バンドが活動しづらいこの状況で、そういう作品を世に問うことには大きな意味がある。

『Futures』にはこれまで発表してきた100曲以上の中から厳選した18曲のセルフカバーに3月と6月に配信リリースした「NEW HORIZON」「Dream in the Dark」という新曲を加えた全20曲を収録。バンドを代表して、生形真一(Gt)と大喜多崇規(Dr)がセルフカバー・ベスト・アルバムにどんなふうに取り組んだのかを語ってくれた。2人の言葉からナッシングスの今と未来を感じ取っていただきたい。
――このタイミングでセルフカバーによるベスト・アルバムをリリースすることになったいきさつから、まず教えていただけますか?
生形:1年半前に、それまで所属していた事務所から独立したことを機に新しいことがいろいろ始まって、最初の1年はすごくバタバタしていたんですけど、昨年9月に10作目のアルバム『By Your Side』を出して、今年3月と6月には「NEW HORIZON」と「Dream in the Dark」という配信シングルも出して、ようやく落ち着いたところで。俺ら11年で10枚、アルバムを出していて。しかも、その合間にはシングルもかなりの枚数を出している。まわりのバンドと比較しても、かなり多いほうだと思うんですけど、100曲以上作ってきたことになるんですよ。だったら、ここらでその100曲の中からベストってどう?って話になったんですけど、せっかく出すんだったら、新たに録り直したほうが前向きなんじゃないかということになりました。これまで毎年1枚、オリジナル・アルバムを出してきましたけど、10年間、決めごとのようにやっていたんです。でも、それも10年やったし、独立もしたし、1年に1枚って考えなくてもいいんじゃないかって話になって、そのときに、とはいえ何も出さないのも、ねえ(笑)。楽しみに待ってくれているファンもいるんだから、配信シングルとベストって話になったんです。
大喜多:ほんとは、もっとゆっくりというか、対バン・ツアー『Nothing's Carved In Stone presents "Hand In Hand Tour 2020”』の合間に作業しようって思っていたんですけど、新型コロナウイルスの影響もあって、ツアーができなくなっちゃったんで、前倒しでスタジオに入ったんです。
生形:セルフカバーだから、曲作りする時間やプリプロの時間は要らないじゃないですか。お陰でぱっとスタジオに入って、レコーディングできたんで、そこはすごく運が良かった。
――え、じゃあ、いきなり?
生形:ぶっつけの曲もあります。そもそもライブでずっとやってきた曲なので。でも、アレンジもおのおの変わってきてはいるので、そういうところはもちろん細かく詰めてはいきましたけど。
――100曲以上作った中から18曲を選ぶのは大変だったのかなと思ったり、意外に大変じゃなかったのかなと思ったり……。
生形・大喜多:はははは。
――実際にはどうだったんですか?
生形:まずは代表曲をね。
大喜多:半分ぐらいは代表曲をぱっと選んで、最後のほうは……
生形:みんなでちょっと考えたね。最初に、ばーっと出していったらアップテンポの曲ばかりになっちゃって、ベストとはいえ、アルバムとしてもう少し変化をつけたいってことになって。ファンだったらちょっとびっくりするだろうなと思うのが、「BLUE SHADOW」とか、「Midnight Train」とかそのへんの曲を、ね。
大喜多:そうだね。
生形:ミドルテンポで、ライブでもそんなにやらない……けど、すごくいい曲だなと思っている曲を加えました。
――じゃあ、そんなに意見が食い違うこともなく?
大喜多:これはどう? これはどう?ってアイデアを出しながら、1曲1曲、入るか入らないかって判断はしましたけど、それは絶対イヤだみたいなことはなかったですね。
――どれも自分たちの曲ですしね。
大喜多:独立のタイミングでバンドがぐっと塊になっていたので、選曲に関しても意思の統一は思っていた以上にあったから決めやすかったですね。ファンがすごく好きな曲ばかりが入るわけじゃないですか。選曲ももちろんですけど、圧倒的に音が良くないと、再録ってあまり意味がないと思ったので、そこを追求しなきゃって、じっくりと音作りしてからレコーディングに臨みました。
Nothing's Carved In Stone・大喜多崇規 / 生形真一 撮影=高田梓
――音の良さというのは、どんな意味で?
大喜多:やっぱり10年前に録った曲になると、自分の技量も追いついてなかったりして、もっとこうすればよかったって欲求が、中にはあるんですよ。そういう曲を、まさしく武道館以降の俺たちのノリでレコーディングしたかったんです。
生形:最初はね、全曲、思いっきりアレンジを変えちゃおうとかも考えたんですけど、やってる俺らはおもしろいけど、その曲を好きな人、特別な思い入れのある人はどう思うかなって。俺がもし自分の好きなバンドのセルフカバーを聴いた時に全曲、めちゃくちゃアレンジされていたら、ちょっと悲しいな。元の曲のほうが良かったなって少なからずなると思うから、そこのバランスは考えました。
――配信シングルの「NEW HORIZON」と「Dream in the Dark」も収録されていますが、その2曲を配信でリリースしたのは、こういう状況だからと思いきや、前々から考えていたことだったそうですね。
生形:そうなんですよ。今の状況とは全然関係なくて、配信のみのリリースってやったことがなかったから、1回やってみようかって話は去年からしていて。だから、3月と6月にっていうのも最初から決まっていたんです。
――配信をやってみようというのは、どんな理由から?
生形:メリットとしてはわかりやすくて、1曲で出せるってことと、パッケージがない分、その手間と時間が省ける。つまりマスタリングが終わったらすぐに出せるっていうのが便利だと思って。要は、普段は曲を作って、その曲をレコーディングしてから、リリースするまで3か月とかかかるんですよ。そうすると、リリースされる頃には自分たちの中では割と古いものになっていて……というタイムラグがないのがおもしろいと思ってやってみました。レディオヘッドとかも突然、リリースしたりするじゃないですか。ああいうのおもしろいと思っていたんです。
――2曲とも『By Your Side』以降に作ったわけですね?
大喜多:レコーディングは2曲とも3月でしたね。
生形:だから、「NEW HORIZON」はできて、すぐリリースしました。「Dream in the Dark」はレコーディングからリリースまでに3か月空いているから、さっきの話とちょっと矛盾しちゃうかもしれないけど(笑)。
――対極にあると言ったら言い過ぎかもしれないけど、それぞれに全然違うタイプの曲で、ナッシングスの振り幅を改めて物語っているような2曲になりましたね。
大喜多:対極っていうのはけっこう鋭いですよ(笑)。元の作曲者が違うんです。「NEW HORIZON」は、ひなっち(日向秀和/Ba)が持ってきたものを形にして、「Dream in the Dark」は真一が持ってきたんですよ。
――「NEW HORIZON」はブルージーなリフを持ったクラシックなロックっぽいところもありつつ、最近のUKロック――たとえばミューズに通じるモダンさも混ぜた曲ですね。
生形:『By Your Side』の頃から、ひなっちがデモを作ってくるようになったんですけど、今回も3曲ぐらい聴かせてくれて、その中で一番、あっと思ったのが「NEW HORIZON」だったんです。たぶん、みんな、同じだったと思うんですけど、「自分たちでアレンジできそうだ」「すごくいい曲になりそうだ」っていう感覚は全員が似ているんで、その曲に反応して、俺がイントロをつけてってところから形にしていきました。デモの段階で骨となるものはあったから、そこに肉付けしながら、サビで開ける感じっていうのを意識して。確かにUKロックっぽさは、特にギターで出したいと思ったかもしれないです。言われてみれば。
――ハンドクラップも印象的で。
生形:みんなで叩いたよね。
大喜多:叩いたねぇ。
生形:珍しくね。いつもは素材を使うのに(笑)。
大喜多:10年ぶりぐらいに一緒にハンドクラップしました。
――なぜ、今回は実際に叩こうと?(笑)
生形:なんでだろ? なんか、「やろうか」ってやりましたね(笑)。
大喜多:「やろう」っていう押しがあったよね。で、「えぇ、ほんとにやるの?」みたいな(笑)。でも、自分たちでやってみると、曲の表情はUKなんですけど、ハンドクラップを入れたことで、なんかLAっぽいと言うか。
生形:ああ、明るくなったよね。
大喜多:一瞬、輩感が出て、これはちょっとワルいハンドクラップだよねって、そのまま採用になりました(笑)。あんまり明るくなりすぎるのはどうかなと思ったんですけど、ちょっとワルい感じが出てよかったです。
――2番のAメロが歌とアコースティック・ギターだけになるところも意表を突く感じで。
生形:そうですね。ナッシングスのアレンジとしては、1番と2番ががらっと変わるっていうのはけっこう多いんですけど、昔はアコギを使うことに抵抗があったんですよ。ライブで再現できるのかって考えて。でも、ピエゾ・ピックアップがついたアコギもあるし、ライブはアコギにこだわらなくてもいいという気持ちにもなっているんで、そのへんは普通に。やっぱり世界観ががらっと変わるじゃないですか。だから、思いついたときはアコギも使うようにしていますね。
――そして、途中でギター・リフにベース・リフが重なって。
生形:ああ、曲の中盤で。
――大喜多さんがドラムをドカドカと打ち鳴らすという、まさにライブがイメージできるアレンジになっていて。
生形:4人で考えたよね、スタジオで。あそこだけだいぶハードになりましたけど、「思いっきり世界観を変えようか」って言ってたのは覚えていますね。
――おっしゃったように2曲を同時にレコーディングして、「NEW HORIZON」を先にリリースしたほうがいいと考えたわけですね?
生形:そうですね。バランスを考えて……って言うほど考えてないですけど(笑)。実は6月に野外ライブをやろうと考えていて、その直前に「Dream in the Dark」を出すつもりだったんです。「Dream in the Dark」のほうが外に合いそうな雰囲気じゃないですか。
――そうだったんですね。まさに「Dream in the Dark」は野外に合うと言うか、Hoo Wooというコーラスがビーチ・ボーイズっぽいと言うか、サーフっぽいと言うか、海が似合う曲だと思いました。
生形:ひなっちが持ってきた「NEW HORIZON」がもうあったから、真逆のものを形にしたんです。ナッシングスの明るい部分とか、ポップな部分とか。ちょうど「NEW HORIZON」がゴリッとしたロックだったから、気にせずポップにできると思いました。
――そういう曲調に、こういう歌詞を乗せたセンスが意表を突いていておもしろいと思いました。歌詞は村松(拓/Vo,Gt)さんが?
生形:そうです。
大喜多:けっこうトライしていたよね。
生形:拓ちゃんが持ってきたとき、いい歌詞だと思いましたね。歌詞は拓ちゃんか俺が書くことが多くて、7、8割が拓ちゃんなんですけど、10年以上にやっていると、不思議と、お互いの言葉をいつの間にか使うようになるんですよ。拓ちゃんが歌詞でよく使っている言葉を、なぜか俺が知らないうちに使っちゃっていたり、その逆もあったりして。だから、違和感がない。そういうのがバンドの歌詞って言うんじゃないかな。
――今の、こういう状況にぴったりと言うか、最初に聴いたとき、この状況だからこそのメッセージに思えたんですけど、そこは意識していないんですよね?
生形:2月とか、3月とかだったから、若干、そういうことにはなりつつあったのか。
大喜多:そうだね。
生形:でも、まさかこんなことになるとは思ってなかったですよ。そのときは、2月のライブの振替公演を5月にやろうと決めていて、そこで100%やれると思っていましたからね。結局、それもトンで、来年の2月にやることになったんですけど、3月の時点では、誰もそんなことは思ってなかったですよね。
――たまたまとは言え、おもしろいなと思いつつ、今回のセルフカバー・ベストを、歌詞カードを見ながら聴いていたんですけど、よくよく考えたら、ナッシングスって昔から、自分たちも含め、困難な状況に直面した人を鼓舞するような歌をたくさん歌ってきていたんですよね。
生形:割と自然といえば、自然というか。
――こういう状況に、そういうナッシングスならではと言える歌詞がたまたまハマったんだなと思いながら、こういう状況でこういうことを歌うロック・バンドがナッシングスを含めているっていうのが、ロック・ファンとしてはうれしかったです。どうですか? こういう状況になって、改めて思ったこととか、感じたこととかあったんじゃないかと思うのですが。
大喜多:配信ライブを1回、6月にやったとき、いざ4人で音を出してみて、スマートに、うまく演奏するバンドじゃないんだと改めて思いました(笑)。もうガッチガチに気持ちを込めて、力を込めて、叩いたり、弾いたり、歌ったりするバンドだな、俺たちはと思いました。結局、その配信ライブは、誰かが多少間違ったとしても気にせず、とにかく熱量を高めた演奏ができて、やったな!俺たちって思いました。
生形:はははは。かなり熱かったよね。
――生形さんはどうですか?
生形:ナッシングスは、こういう状況になってもナッシングスっていうか、みんな、今、大変な状況で、もちろんバンドも大変だし、ライブハウスも大変だしって思うけど、もっと言うと、飲食業の人はめちゃめちゃ大変だし、潰れている店もたくさんあるし、そういうことを考えると、さっき言ってもらったようにナッシングスって、すごく前向きなんですよ。いつでも。そんなナッシングスとかバンドとかの役目って何だろうって考えると、やっぱりそういう人を勇気づけるとか、前向きな気持ちになれるような曲を作るとか、そういうライブをやるとかってことだろうと思いました。だから、配信ライブもやりましたしね。配信ライブってやっぱり、俺らはいろいろな理由があってスタジオでやったんだけど、どのバンドもすごい考えると思うんですよ。果たしてそれをやっていいのかも含め。でも、俺たちはやってよかったと思いました。だって、それで元気が出る人がいればいいし、実際、たくさんの人から「ありがとう」って言われたし。だから、ナッシングスのスタンスとしては、コロナがあろうが、何があろうが、今までと変わらずやっていこうと思っています。
Nothing's Carved In Stone・生形真一 撮影=高田梓
――そんな中、普段よりは時間があるので、音楽に限らず、いろいろインプットもされているんじゃないかと思うのですが。
生形:音楽は常にいろいろ聴いているから。何したかな? 映画を見たりとか、普段、絶対見ないようなドラマを見てみたりとか(笑)。
――絶対見ないような?(笑)
生形:こういう言い方は良くないけど、そんなに興味ないから、ドラマって普段は見ないんですよ。それを見てみたりしましたね。あとは、事務所と自宅が近かったので、毎日通っていました。作業部屋があるので、そこでそれこそいろいろな音楽を聴いていましたね。グリーン・デイのビリー・ジョーがいろいろな曲のカバーを上げていて、それはよく聴いていました。
――ドラマは何を見たんですか?
生形:この間、オニィ(大喜多)にも薦めたんですけどね。韓国ドラマの『梨泰院クラス』。めちゃくちゃおもしろいですよ。やる気が出る。飲食業界の話なんだけど、なんかね、バンドと似ていて。若者のグループががんばって、どんどん上に上がっていくんですよ。
大喜多:韓国ドラマのドロドロが苦手なんですけど、これは底辺から明るいほうを見ているドラマだったからすげえよかった(笑)。
生形:すごい前向きだよね。気持ちいいぐらいに。
――大喜多さんはこの期間、どうでしたか?
大喜多:しょうもないインプットはすごくしましたよ。ゲームをしたり、NETFLIXをひたすら見まくったりした1か月を経て、飽きちゃったんで、結局、ドラムに戻ってきましたね。ちょうどライブもできなかったから、ドラムの動画を撮ったり、友達から作った曲があるから叩いてほしいと言われて、リモートでレコーディングに参加したり、ひたすらエレドラを叩いていました。
――ところで、今回、セルフカバー・アルバムで録り直したのは、ライブでいまだに現役の曲ばかりなので、懐かしいという感覚はなかったと思うのですが、録り直してみて、どんな感慨がありましたか?
生形:マスタリングが終わったときに、これは拓ちゃんも言っていたんですけど、「これ、オリジナル・アルバムだったらすごいね」って。それはそうですよね。100曲以上の中から選んだ18曲だから。でも、そのくらいのアルバムを次は作りたいと思いました。もっともっとたくさん曲を作って、その中から選び抜いてね。これを作ったことで、そんなふうに次のことを考えられたっていう。それはすごい思いました。
――だから、タイトルも『Futures』なんですね。
大喜多:うまい形で更新はできたと思います。いい化学反応が起こせた曲もあって、それを改めて聴くとちょっと鳥肌が立ちますからね。
――レコーディングは一発録りではないんですよね?
生形:ではないです。一発録りにしようかという話も出たんですけど、逆にちゃんと作りこもうってなりました。一発録りもいつかやってみたいと思いますけどね。
――今のライブ・アレンジにさらにアレンジを加えているものもあるんですか?
生形:ギター・ソロはけっこう変えていますね。
大喜多:「Midnight Train」と「BLUE SHADOW」は、原曲はフェイドアウトで終わりを決めていなかったんですけど、今回、終わりをちゃんと決めました。あと、長年やってきた中で変化した部分は、ちゃんと入っています。
生形:「Rendaman」なんて後半、全然違うもんね。それはライブ・アレンジなんですけど。
――他に、この曲の、この違いを聴いて欲しいというのはありますか?
大喜多:「Isolation」は原曲を聴いたあと、今回、録り直したやつを聴いてもらうと、なんて気持ちいいんだろうってわかってもらえると思います(笑)。なんとか勢いを出そうとしていた1stアルバム(『PARALLEL LIVES』)の時と比べると、今はエッジを失わずに、いい感じで、もっと力強い鋭さになっていると思いますね。
生形:「Like a Shooting Star」は好きですね。
大喜多:あ、俺も好き!(笑)
生形:何回も聴けるんですよね。『Existence』(の収録曲)だから割と近いんですよ。作ったのは。16年だから、まだ4年前なんですけど、サビなんて、すごく広がりと勢いが出たと思います。より理想に近づけたんじゃないかな。「BLUE SHADOW」も好きですね。エンディングは、すごく気持ちよくなったと思います。
大喜多:ロックを聴いて鳥肌が立つってことはあまりないけど、「Like a Shooting Star」は聴いていると、なんかぐわーっと来るんですよね。後半に行けば行くほど。
――これまでライブで何度も演奏してきている曲たちにもかかわらず、録り直した自分たちの演奏に鳥肌が立つっていいですね。
大喜多:ね。なんなんでしょうね(笑)。
生形:録る前は不安でもあったんですけどね。アレンジもそんなにしていないし、サウンドを詰めたとして、どうなるんだろう?ってところもあったんですけど、ほんとにやってよかったと思います。それは俺たちだけじゃなくて、エンジニアさんも含めたスタッフが違うっていうのもでかいし、スタジオが違うっていうのもでかいし。エンジニアとスタジオが変わると、こんなに変わるんだって思いました。
Nothing's Carved In Stone・大喜多崇規 撮影=高田梓
――エンジニアさんとスタジオは、『By Your Side』のときの?
生形:そうです。
大喜多:初日はすごくつらかったな。音作りにこだわって、ああでもない、こうでもないってやっていたんですけど、チューニングは自分でやったり、メンバーに聴いてもらったりしながらやったので、レコーディング・ブースとコントロール・ルームを行ったり来たりして、それでへろへろになっちゃって。「これでいいかな。いや、もうちょっと」って欲を出して、「じゃあシンバルを変えてみよう」って、すげえたくさん持っていって、試したんですよ。
――音作りはいつもそれくらいやるんですか?
大喜多:僕は自分が持っている以外のものはあまり使いたくないから、ライブで使っているメインのセットで録ってしまうことが多いんですけど、今回は自宅から機材をフル集結して。あ、倉庫からも持っていきましたね(笑)。
――でも、それくらいこだわって、ドラムの音が変われば、他の演奏にも影響するだろうし。
生形:ドラムの音が曲を左右するぐらい重要だって、今回は特に思いましたね。やっぱり、土台になるものだから。ギターはそこに被せるだけですからね。
――とは言え、ギターの音色だって。
生形:それはもちろん。独立するまでは同じスタジオでずっとやっていたから、機材も同じ機材を使っていたし、エンジニアさんもずっと同じ人で、その人が持っているエフェクターを借ったりして使っていたんです。だから、俺もこの1年半でめちゃめちゃ機材を集めたんですよ。ビンテージもののギターとかエフェクターとかって、そこまで興味はなかったんですけど、たまたま前のエンジニアさんが持っていたエフェクターを見つけて、買ってみたらすごくよくて、こんなに変わるんだと思って、そこからめちゃめちゃ集め始めました(笑)。
――そんなふうに音作りにもこだわって、録り直した全18曲。特に思い入れのある曲を挙げるとしたら?
生形:「BLUE SHADOW」は入れてよかったと思います。最後まで悩んだのがこの曲なんですよ。「BLUE SHADOW」の他にも候補になっていたミドルの曲があったんですけど、拓ちゃんが言ったんだよね、最後に。「「BLUE SHADOW」がいいんじゃない?」って。この曲って、「Spirit Inspiration」って3rdシングルのカップリングの曲だから、知らない人は知らないと思う。そういう意味では、普通、ベストには入らないのかもしれないけど、2016年の野音でやったんです。夜、野外で演奏すると気持ちいいから。それはたぶん全員が思っていて、俺ら的には思い入れのある曲だったんです。それを最後の最後に決めて、入れられたのはよかったと思います。アルバムの最後に聴いたら、聴いてくれた人も気持ちよく終われるんじゃないかな。
大喜多:「BLUE SHADOW」もそうなんですけど、勢いだけじゃない、たとえば「Red Light」も、この表現が合っているかどうかわからないけど、正しい演奏ができたとき、拓が歌いやすいんだろうなって思って。ボーカリストの揺らぎが曲に大きく作用する部分もあるから、ちょっとミドルからゆったりめの曲を歌入れするのが楽しみでしたね。歌いやすいと言うよりは、表情がつくと言ったらいいのかな。ボーカリストがノって歌うって、けっこう大事なんだなって思いました。
――最初に曲を選んだら、アップテンポの曲ばかりになってしまったとおっしゃっていましたが、そういう意味でもミッドの曲を入れてよかった、と。
大喜多:最初は、まずライブでやっているやついいよねって選んでいきましたからね。
生形:そしたらアップテンポの曲ばかりになっちゃった。おもしろいことに最近、俺ら、「アップテンポの曲がないよね」ってよく言うんですけど、でも、けっこうあるなって(笑)、今回、改めて思いました。
――「次のことを考えることができた」とおっしゃっていましたが、最後にこれからのことも聞かせてください。具体的なことは言いづらい状況ではありますけど、これからどんな活動をしていこうと?
生形:これができあがったあと、みんなでご飯を食べながら、そういう話をして、世の中がどうなろうと、真っ直ぐ前を向いていこう、前向きにやろうと確認しあいました。だから、ライブハウスもどんどん押さえているし、それでその日が来て、ライブができなかったら、それはしょうがない。また先を押さえようっていうやり方でやっていこうと決めました。もちろん、制作もします。またアルバムを作ろうって話もしました。
――実際、新曲は作り始めているんですか?
生形:めちゃくちゃ時間があったから、個人個人は作っていますけどね。時間がかけられるから、たくさん作って、次はその中から選び抜いた曲を入れられればいいな、と思っています。でも、まずは『Futures』を出して、その先はまだはっきりとは決めてないですけど、ナッシングスはナッシングス。繰り返しになっちゃうけど、俺らは何も変わらずやっていきますよ。

取材・文=山口智男 撮影=高田梓
Nothing's Carved In Stone・大喜多崇規 / 生形真一 撮影=高田梓

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