chelmico、子供時代の自分をビビらす
『maze』

先日アナウンスされた先行リリース4曲(「Eazy Breezy」、「Limit」、「Terminal 着、即 Dance」、「milk」)から予想できるように、chelmicoの新作『maze』はとにかくカラフルなアルバムである。

1曲ごとに音楽性を変え、リリックもこれまで以上に表情が豊か。喜んだり悲しんだり、恋しかったり切なかったり、まるで我々の人生そのもののような音楽である。何より素晴らしいのは、Rachel自身「希望の歌」になったという「Premium・夏mansion」、「Disco (Bad dance doesn’t matter) 」、「エネルギー」の3曲や、スウィートなミッドバラード「milk」が後半に固まっていること。本作は最終的に、あなたにスマイルを投げかける音楽なのである。作品のテーマは「子供」。一層奔放になった最強のふたりに、新作について語ってもらった。

Photography_Kiruke
Text_Ryutaro Kuroda
Edit:Miwo Tsuji

ステイホームしながら『maze』

――3rdアルバム『maze』の制作はステイホーム期間中だったそうですが、それぞれどのように過ごされていましたか?

Rachel : ふたりでラジオを毎週録ってました。あと、インスタライブもやったかな。

Mamiko : 2回で終わったやつね(笑)。

Rachel : ステイホーム期間も、制作は止まることなく続けていたよね。

Mamiko : プライベートの話でいうと、Rachelはゲーム配信をやったり、私はコーヒーを飲んでました。

Rachel : いい生活してたよね(笑)。

Mamiko : 家での過ごし方を強化したからね。ピアノ弾いたり、ラジオを聞いたり、本買って読んだり。あとはエスプレッソマシーンで淹れるコーヒーが、マジで美味しかったですね。ロッキングチェアも買ったし、低温調理器も買ったし……。

――引きこもるのは得意な方ですか?

Mamiko : めっちゃ得意ですね。

Rachel : 私達ってよく「陽キャ」とか言われるけどさ。

Mamiko : 本当に何を勘違いしてるんだろうね?

Rachel : 陽キャではないよね?

Mamiko : 陽キャをナメんなよって感じで(笑)。私達はインドアで性格的にもオタク気質だと思うから、家でも全然楽しめましたね。

Rachel : 私もギターを買って、読めてなかった本を読んだりしてた。

Mamiko : 楽しそう。
Rachel

――お2人とも本は読んでいたんですね。何読んでたんですか?

Mamiko : いしいしんじ。あとは穂村弘。

Rachel : 川上未映子も読んだよね。『maze』に収録されている「ごはんだよ」の<なつのひかりに現れたやどかり>って歌詞は、『なつのひかり』(江國香織)がモチーフなんです。

――ギターを買ったということは、これからはライブで弾くんですか?

Rachel&Mamiko : 全っっっ然。そのつもりはないです。

Mamiko : 色々持ち運べて楽しいなーって感じ。元々ギターに憧れがあったんですけど、手がぷにぷに過ぎてギターの弦を押さえられなくて。それでミニギターをゲットしたんです。それが楽しいんですよね。

――でも「どうやら、私は」とか「milk」は弾き語りができそうな曲ですよね。

Mamiko : いやいや!

Rachel : めちゃくちゃムズいから!!!

――(笑)

Rachel : ピアノだったら弾けると思うけど、ギターで押さえるのは難しい。オシャレなコードを使っているんですよ。

子供の時の自分をビビらしたい

――では新作について。1曲ごとに表情が変わる非常にカラフルな作品になってますが、『maze』っておふたりにとってどんな作品ですか?

Mamiko : 簡単に言うと「ちっちゃい時の自分らへ」って感じです。

――というのは?

Mamiko : chelmicoがちっちゃい子達に知られる機会が多くなってくるうちに、子供をテーマにしようっていう気持ちが自分の中で出てきて。私達が小さい時に影響を受けたのがRIP SLYMEなんですけど、自分達も誰かにそういうことをしたかった。
Mamiko

――影響を与えたいと。

Mamiko : そうですね。例えば『クレヨンしんちゃん』の「ダメダメのうた」とか、変な歌だと思ってずっと印象に残ってるんですよ。他にも夢だったのか現実だったのかわからないような、昔見た変なCMも大人になってふと思い出したり、子供の時の記憶ってふとした時に蘇るじゃないですか。そういうのが自分の中で繋がっていって、子供の自分を振り返るみたいな、そんなテーマが出てきたんですよね。で、いい意味の“トラウマ”を与えたいっていう感情になったんですよ。

――なるほど。

Mamiko : そう思ったら、全部の曲で1個1個フックになるものを作ろうと思って。歌詞でもいいし、音でもいいし、もしくは変なところで音抜いてみるとか、アレンジの面でもいいんですけど。そういうフックを必ず作るっていうのを一番最初に決めて。でも、そうやって作っていったら結構怖い曲ができてきて(笑)。自粛期間だったし明るい曲を作っといたほうが自分達のためにもなるぞと思って「Disco」を作って。最終的にごちゃ混ぜなアルバムになったので、『maze』ってタイトルをつけました。
――子供向けっていうのは、もう少し具体的に言うと?

Rachel : 「子供の時の自分をビビらしたい」みたいな感じだね。

Mamiko : そう。「ラップって早口で変なの!」って思ってくれてもいいし、「叫び声あるの怖!」くらいでいいんですよね。それは絶対大人になって思い出すから。私が「ダメダメのうた」を思い出すみたいに、大人になった時に「あの気持ち悪い歌聞いてた?」って周りの人と話すような、そういう体験を与えたかった。

Rachel : なので大人になって聴いた時に、解釈が変わるアルバムかもね。

――それ、めちゃくちゃいいですね。ちなみに、長谷川白紙さんとの曲「ごはんだよ」は本当の意味でのトラウマ感がありますよね。

Mamiko : これヤバいすよね。

Rachel : さっき言っていた「トラウマ」って、私達がRIP SLYMEを聴いた時の気持ちも重ねて、ポジティブな意味で使ってるんですけど。長谷川白紙さんの「ごはんだよ」は直球でトラウマですよね(笑)。でも、全部いい曲だからバレないかなって思ってます。

――まさに。曲調や音楽性が1曲ごとに変わるし、本当に華やかだと思います。特に「milk」と「GREEN」はめちゃめちゃ好きです。
chelmico「milk」【Official Music Video】

Rachel : 私も「milk」好き!

Mamiko : 嬉しい!!

――しかも、こんなに直球な歌詞は今までのchelmicoになかったような気がします。「milk」はスウィートで、「GREEN」はラブリーですよね。

Rachel : 確かに「GREEN」は恥ずかしいくらいラブリー。でも、それが恥ずかしくなくなったんです。

Mamiko : そうだね、恥ずかしいとかなくなったよね。

Rachel : なんかもっとクールに「ういっす」って感じでやってたんですけど、かわいい曲作りたいなって。

――恥ずかしくなくなったのは、自信が出てきたから?

Mamiko : んー、だって失うものないからねぇ。「等身大」ってよく言われるようになって、そこで初めて「あ、私達って等身大なんだ」って気づけて。じゃあもう隠すものなくない? って感じですね。緊張はしても、恥ずかしいって思うことはないかもしれないな。

chelmico、子供時代の自分をビビらす『maze』はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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