マキタスポーツ、地上波では企画書も
通らない 配信ライブ『マキタスポー
ツのオトネタTV ~中老~』への想い
を語る

芸人・ミュージシャン・俳優と、業界を超え、ジャンルを横断しながら活躍してきたマキタスポーツが、中止となった今年3月末に予定されていた「オトネタ5」の代替公演となる配信ライブ『マキタスポーツのオトネタTV ~中老~』を、9月1日(火)にStreaming+にて開催する。配信へのジレンマや葛藤を乗り越えて動き出したマキタスポーツに、表面的な面白さの裏にある、実は何層にもなった色んなレイヤーを噛ませて出来上がっているというネタへの想いを存分に語っていただいた。
――今年3月末に予定されていた、「オトネタ5」がコロナの影響で中止。9月1日(火)に代替公演となる配信ライブ『マキタスポーツのオトネタTV ~中老~』の開催を決定したマキタスポーツさん。ライブが中止となり、配信ライブの開催を決定するまでたくさんのジレンマや葛藤もあったと思いますが?
やっぱり中止になった直後は気持ちも切り替えられなくて。「半年後くらいなんとかなればな」くらいの気持ちで会場を押さえにかかって、振替公演をやるつもりでいたんですけど。一ヶ月くらい頭を冷やしてというか家族で過ごす日々があって、家庭人間という感じで過ごしている中で冷静になれて、「あ、これは出来ねぇや」と思いました。で、そうなった時、その後に何をすれば良いか?というのが重要で。配信に振り切るミュージシャンも多かったし、俺もやるならすぐにやりたいなと思っただけど、乗り遅れちゃったし。色んな配信ライブを観てもあまりピンと来なかったというか、観れば観るほど「やっぱり生でやりたいな」と思うばかりだったんです。
――特にお笑いのライブなんて、笑ってもらってなんぼですから。なんの反応もない中でおどけてみせるのって、すごく難しいですよね。
ホントそう。音楽だけなら間が持つけど、お笑いは客がいないとやっぱり寂しい。あとはシステムのこととか料金設定とか、環境の問題もあって、遅ればせながらにはなっちゃったけど。いまの状況を見る限り、しばらくはこっちでやっていかなきゃいけないと思うし。「恥ずかしながら、私もやらせていただきます」って感じですね。
――今後、生のライブが再開しても、生+配信という形で配信は残っていくでしょうしね。
そう思うし、これは演者だけの問題じゃなくて、業界全体の問題というか。これで商売やってる限りはやらざるを得ないと思うし。何より観たいと言ってくれる人たちが少なからずいる限りは、その人たちに向けてやっておかなきゃという気持ちがモチベーションになってますね。ただ、サザンとかビッグネームならともかく、俺らみたいな中途半端な存在は、配信だけじゃ食っていけないんですよね。小さいライブハウスに少しずつお客さんを集めて、スキルを上げてという仕組みが崩壊しちゃったから、この方向で行くのが正しいと思うし。今後、生と並列していくということも分かるんだけど。「そんな甘かねぇぞ!」ってことも含めて、実際に配信ライブをやった後に分かることが多々あると思います。あとは自分がやってる「オトネタ」というものの芸質が、果たして配信に向いてるのか?ってことも試金石的なことになってしまうんで、怖い部分もあります。まぁ、やらないことにはどうにもならないからやりますし。一度やって、これくらいの規模とレベルでやれるというのが見えればいいなと思って。今回はそれを実験的にやるという感じです。
――開催直前に中止になってしまった「オトネタ5」は、会場売りのCDもパンフレットも出来上がっていて、ライブの内容もほぼほぼ固まっていたんですよね?
ライブの骨組みは出来てました。ただ、用意してた内容そのままでは出来ないから、配信ライブでは内容も大きく変えます。これまでは俺、クローズドな空間で、お客さんからそれなりの金額を取って見せるってところで、双方の想い入れもガッツリある、甘えた空間でやってて(笑)。その中で進化して研ぎ澄まされたというか、妙にトガったネタをやってた部分もあったと思って、それは配信でやっても向かないと思うし。配信だと家族で観たり、色んな観方をする人がいるだろうから、生とは観る時の集中力も全然違って。いつもライブは2時間くらいやってたけど、ひどい時は3時間くらいやってたし。一人で20分、ミュージカルやったりしてたから。それを配信でやられたらたまんないでしょ?(笑)
――あはは。家だと誘惑も多いし、劇場のように集中しては観れないですよね。
そうでしょ? 特にお笑いはひとつの言葉を逃しちゃったら、伝わるものが半減しちゃうから。同じものであって、同じものでないという考えでやろうと思ってます。あとは双方向性というかね。どうやってお客さんとのリアルな繋がりを作っていくのか?ってところで、俺のやりたいことや面白みを目一杯伝えるには1時間半を超えちゃいけないだろうと思って。その中でネタ選びや構成を考えてる感じです。
――あと、配信というところの手軽さで、マキタさんのライブを初めて観る人も多いと思うので、そういった人に向けての配慮も必要になってきますよね?
そうですね。だから、「はじめまして」って人に向けてってところは、大いに気を使う部分だし、話の通じない人が観る可能性も無くはなくて(笑)。これまでは本当にクローズな中でやってたし、演芸番組にも出てないから、私のライブは深く応援し続けてる人が観てくれてるんです。それが一昨年くらいから「オトネタ」のライブを復活させて、「気になるから、なんとなく観てみましょう」って人もいるはずで、そういうのは大事にしたいなと思ってます。俺、テレビの演芸番組でネタやらなくなったのは、「話通じねぇな」と思ったからで(笑)。なかなか伝えたいことが伝わらない人がいたり、こんな見たくれだからビジュアルが邪魔するんですよ。おっさんがギター持って、ミスチルを茶化すようなネタやると、ネタの面白さより「なんでこんな人に私の好きなミスチルを……」と思われたり(笑)。そこでルックスの見えないラジオとか、音楽の話で共鳴してくれる部分が多い音楽好きな人の前ではやるようにしてたんだけど。配信だったらなかなか分かり会えない人が見る機会があるし、そういう人と出会う機会としてもちょうど良いかな?と思って。みんなに喜んでもらえるかは分からないけど、何か引っかかればいいなと思って色んな角度のネタは用意したいと思ってます。
――改めてですけど、マキタさんのオトネタを知らない人に説明するとすれば?
なんだろ? 音楽ネタっていっぱいあるし、例えば、漫才の優秀なネタだってリズム感があったり、メロディを感じたりして音楽的に聴こえてきて。俺の解釈で言えば、中川家とかブラックマヨネーズとか、上手い漫才も広い意味でオトネタだと思うんだけど。自分のオトネタっていうのは、演芸のための音楽ネタという意味ではないかも知れなくて。より音楽的であって、俺らしい見立てやアングルがあるネタがオトネタなんだと思います。だから大げさに言えばオトネタには、齢50歳のマキタスポーツが見ている音楽界であり芸能界であり、もっと言えば社会が音楽的に体現されてるんです。
――現在配信中の「雨ふれば」を聴かせてもらって、演芸的なただ面白いネタではなくて。「いい曲だな」と思って歌詞を聴いたら、「なに言ってんの?」ってバカバカしさがあったり、それを効果的に聴かせるための狙いや計算による構造がしっかりあって。色んな種類の笑いが何層にも複雑に入り組んだ、ひと言で説明出来ない面白さがあると思いました。
それはすごくありがたい捉え方だし、嬉しいです。「雨ふれば」を聴いて、「当たり前体操みたいなネタだね」って感想を言ってくれた人がいたんだけど、俺としてはあの曲において歌詞の意味自体はどうでも良くて。そこには音楽的な仕掛けや構造が裏打ちされていて、そっちをメインに考えて作ったわけ。で、結果的に良く聴こえてくればいいなと思ったんだけど。一番表に見える層は歌詞だから、そこに対してそういう感想があるのも仕方がない。ただ言って下さったみたいに、何層にもなった色んなレイヤーを噛ませて出来上がってるネタなんで、そこに気付いてもらえるとすごく嬉しいし。コード進行やメロディに詳しい人が聴いて「こうなってるんだ!」って感じ取ってもらったり、「アレンジはあそこから引用してるんだ」って分かってくれたら嬉しいし。「平成のパワーポップ風な曲のパロディでしょ?」っていう人もいて、そういう聴き方でも全然良くて。
――表面的なところで笑ってくれてもいいけど、深いところまで気付いてもらえたらなお嬉しいと。例えば、KingGnuとかも音楽的にすごく高度で面白いことやってるけど、大多数の人は「カッコいい」とか「オシャレ」のひと言で済まされてしまいます。
そうだね。あと、Official髭男dismもそうだけど、最近の若い子って音楽的にすごく高度なことをやってるんだけど、そうは聴かせないように分かりやすく上等なものとしてやってるのが凄いんだよね。俺の「雨ふれば」みたいなネタも、あたかもそういう風潮に大して切り込んでいってるように見えなくもないけど(笑)。俺ってつくづく性格が曲がってるなと思ったのは、グッドメロディに乗せて<やがて明日は晴れる>みたいなことを歌ってたら、作った本人も感動して変な気分に入っちゃう時があるんです。
――もともとはフザケてたはずなのに、自分に騙されちゃって(笑)。面白いです。
そこで思ったのは俺みたいに曲がってないアーティストは、「雨ふれば」的な歌詞を本気で良い歌詞だと思って、信じて書いてたりするんだってことで。メンタリティは全然違うけど、結果、到達している音楽的優越とか感動とかって同じところのような気がしたんだよね。だから、俺なんかはカノン進行をネタにして、「このアーティストはこういう商売っ気でやってるんでしょ?」みたいなことを言ってきたけど、売れるからカノン進行で曲を作ってるなんてアーティストは本当はいないんだろうなって。
――確かに。あいみょんがそんなこと考えて作ってるとは思えないですからね(笑)。
考えてない。そこで遠回りしないと気付けないのが私だし、「オトネタ」ってそういうことばかりやってるんです(笑)。だから、ひと言で説明出来ないのが面白いっていうのが正解で。世間ではひと言で説明出来るものが独り歩きして、流通していくということが“売れてる”ってことの証明だったりするんだけど。「オトネタ」に関しては自分でもひと言じゃ説明出来ないし。「ひと言で説明されてたまるか」って、そういう風潮に抵抗したいって気持ちもあるのかも知れない。まぁ見て、面白いと思うか思わないかで判断してもらっても良いし、「面白くない」って思われないようになんとかするのがプロだから、面白くしますけど……ま、オトネタって俺ですからね、俺のことですから。
――オトネタは俺だから、俺が面白いか面白くないかをオトネタでジャッジしてくれと。カッコいいです!(笑) 自粛期間中はネタ作り、曲作りの作業を進めることが出来ました?
「時間が無い」って言い訳が成り立たないから、思いつきでYoutubeで垂れ流すようなネタはポンポンと出来ましたね。配信が向いてる向いてないかは分からないけど、今はこれもいいんじゃないかな?とは思ってます。配信って期待値が高い状態で観ると肩透かし食らうこともあるから、期待値を下回ってるくらいの方が良いのかな?と思ったり
――そういった新しい挑戦や発見もあったから、自粛期間も悪くなかったなと思えるようになりたいですよね。
そうだね。コロナって専門家でも分からない敵なんだから、俺らなんか分かるわけないし。密を避けて、いままでとは違った距離感を取るというのがwithコロナなんだとしたら、withコロナの最中に出来るwithオトネタは配信って形だと思うし。配信でつまらなくなるようなネタでは無いという自負はあって、普通の音楽ネタよりは音楽的な部分も苦慮して作っているので。何層にも重なった面白みを感じられるネタになってるから、大丈夫だと思ってるし、家でじっくり見てもらいたいです。
――改めて内容についてお聞きすると、「オトネタ5」で用意していた内容と異なるということは、用意していたけど出来ないネタもあったり、構成自体も大きく変わるってところで。開催することの出来なかった「オトネタ5」の完全版も見たいですね。
でもそこは出し惜しみとかじゃなくて、2回目以降のことを考えるとあんまり気合い入れてやるのも良くないなと思って。磨いて磨いて長尺のライブをやっても響き方が違うと思うし、配信は年に何回かやっていきたいと思ってるんで、もう少し軽やかにやっていきたいなと思ってるんです。ライブとは言え、お客さんからダイレクトに反応が返ってくるものではないけど、チャットとかでコミュニケーションを図る方法もあると思うんで。そういったものも上手く使った内容にしていきたいなと思ってます。
――なるほど。コロナとも上手く付き合って、配信を継続的にやっていって。生で出来るような状況になったら、生と配信でやれば良いですしね。
そう。それくらいの気持ちであんまり力まず、「マキタスポーツの番組」という感じでやれればいいなと思ってます。“地上波だったら企画書も通らない、マキタスポーツによる、マキタスポーツを見せる番組”って意味で、「マキタスポーツのオトネタTV~中老~」ってタイトルも付けて。そう俺、知らない間に初老を超えて、中老だったんですよ。もう死ですよ、限りなく薄めた死(笑)。でも小さい子供もいるから、もう20年くらい頑張らなきゃいけないと思ってるし、やれることってのもシンプルに考えておきたいなと思って。その中に「オトネタ」ってものがあったし。「オトネタ」ってブランディング的に自分だけのものにするのはつまんねぇなと思って。いずれは「オトネタ」って言葉からマキタスポーツが薄れていくくらいの感じに出来ればいいなと思ってるんです。いまはSNSやTikTokもあって、使用性の高い音楽に需要があって。いまは聴く音楽ややる音楽に加えて、使う音楽が喜ばれるから。そのプラットホームを作れればと思って「オトネタ」という場の重要性も大事にしていきたいと思ってるんです。それまでには“マキタスポーツ=オトネタ”というイメージも付けていかなきゃいけないし、やることはまだまだありますね。

取材・文=フジジジュン

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