主演の金子扶生が語る、ロイヤル・バ
レエ『眠れる森の美女』でつかんだビ
ッグチャンス!~英国ロイヤル・オペ
ラ・ハウス シネマシーズンにて再上

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2019/2020」の一環として、ロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』が2020年9月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかで1週間全国公開される。これは今年1月に収録された舞台の模様を収録しており、去る6月~7月に日本公開され好評を博したばかり。主役のオーロラ姫を金子扶生(かねこ・ふみ)が公演当日になって踊ることになったが無事大成功を収め喝采を浴びた。「SPICE」では7月上旬、金子に単独で電話取材を行い、『眠れる森の美女』本番時の心境やコロナ禍のロンドンでの近況を聞いた。

■久々に劇場の舞台に立って
――6月27日、ロイヤル・オペラ・ハウスにて行われた無観客配信のコンサート「Live from Covent Garden」でリース・クラークさんと『コンチェルト』第2楽章を踊りました。コロナ禍において久しぶりの舞台、しかも生演奏でしたが、そのときの印象をお聞かせください。
劇場に入り、舞台に立って生のオーケストラを聴いているだけで涙が出てきそうなくらい感動しました。空っぽの観客席を見るのは辛い気持ちでしたが、やっぱり何らかの形で客席とつながることができてうれしかったです。凄くいい経験になりました。
2週間前に決まり、リハーサルをする時間があまりありませんでした。ケネス・マクミランのマスターピースなので、もう少し指導を受けて練習してから出たかったというのが正直なところです。でも、3か月のキッチン・バレエ(ロックダウン中の家でのトレーニング)の後に1週間でできるだけのことをして舞台に出たので楽しむことはできました。
バレエを2つ上演し、どちらもカップルが踊りました。一緒に住んでいないと踊ることができませんでした。リースとは3か月間パートナーリングの練習もしていました。
(c)HM2019-SleepingBeauty
■体と向き合って過ごした「おうち時間」
――3月からのステイ・ホーム期間をどう過ごしましたか? 
ロイヤル・バレエにいると毎日本当に忙しく踊りっぱなしですが、家にいる期間に自分の体と凄く向き合えました。毎日オンライン・クラスを受け、ピラティスとかもいっぱいしました。あまりちゃんと使っていなかった小さな筋肉とかも含め、自分の体と向き合って過ごせたのはよかったと思います。家には動くスペースがあまりないので、縄跳びやジョギングをしたり自転車に乗ったりしてスタミナをつけました。他のことに挑戦することができました。
――その頃、ロイヤル・バレエのダンサーたちが街角などで踊る映像「Ghost Light - "Acting for Others" - Music by The Rolling Stones」に出られました。そこで何を感じましたか?
生の舞台がキャンセル・延期になることをいっぱい聞いて心が痛くなり、自分に何かできないかとうずうずしていました。「Ghost Light」を自分たちで撮影しましたが、後で見てみると皆で踊っている気分になって感動しました。ひとりずつで撮っているけれど、皆で力を合わせて一つのことをしたという感覚になりましたね。
(c)HM2019-SleepingBeauty
■楽しんで踊ることができた大一番
――今年1月に『眠れる森の美女』(全3幕プロローグ付き)の主役オーロラ姫を踊った際の模様が世界各地で上映されました。当日怪我で降板したローレン・カスバートソンに代わっての登板です。急に踊ることになり、どのような心境でしたか?
普段は1か月以上リハーサルをして舞台に臨みます。オーロラ姫を踊ったのは昨年の12月初めが最後だったので、まさかもうやることはないと思い、(当日配役されていた)リラの精の練習をしていました。当日午後2時くらいに、芸術監督のケヴィン(・オヘア)から伝えられたときはびっくりして不安でした。泣いたりもしましたが、楽屋にいた友達とかに励まされ気持ちを切り替えました。リハーサルが私の自信になるので、それがなかったらどうしたらいいのだろうと一度気持ちは下がったのですが、大きなチャンスをいただいたのでやるしかないと思って臨みました。
(第1幕のローズ・アダージョで組む)4人の王子やフロリムント王子のフェデリコ(・ボネッリ)さんと振りを確認をしたのですが、そこから本番までは直ぐという感じでした。チャイコフスキーの素晴らしい音楽を聴いて舞台に出た瞬間、楽しむことができました。オーロラ姫は第1幕の幕開けが凄くチャレンジングというか、体力的にもきついんです。普段主役をやると、だんだん慣れてきて緊張もしなくなるのですが、オーロラ姫にはいきなりローズ・アダージョがあります。でもカンパニーのみんなからも応援をもらって楽しむことができました。
(c)HM2019-SleepingBeauty
――第3幕では王子役のボネッリさんとゴージャスで幸福感が伝わるグラン・パ・ド・ドゥを披露しました。パートナーシップをどのように築きましたか?
フェデリコさんは組みやすいパートナーで、支えてもらえるという信頼があります。「大丈夫、落ち着いて」と言ってくださるので、「楽しもう!」と考えて一緒に舞台に出ていきました。信頼できたから、本当に楽しむことができましたね。最後の幕は音楽を聴いていたら「終わりたくない」と思いました。フェデリコさんは本当に素晴らしい方です。
――「ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」は幕間にトークも入ります。芸術監督のオヘアさんも登場しますし、オーロラ姫を踊るためにコーチを受けたダーシー・バッセルさんが司会をしていました。お二方の反応はいかがでしたか?
「私を指名して大丈夫なのかな?」とも思ったのですが、ケヴィンからは私を信頼してくれていることが伝わってきました。その応援を受けてやるしかないという感じでした。バッセルさんには昨年の11月にコーチをしていただきました。それ以後オーロラ姫を踊っていなかったので、お会いすることもなかったのですが、収録日に私が出ることになってびっくりされ、凄く応援してくださいました。
(c)HM2019-SleepingBeauty
■ロイヤル・バレエで踊る、誇りと喜び
――ロイヤル・バレエの『眠れる森の美女』は、ロイヤル・オペラ・ハウスが第二次世界大戦後いち早く上演し評判をとった歴史的舞台に基づくプロダクションです。先生方から指導を受けたり本番で踊ったりするなかで、歴史・伝統を受け継いでいると感じたところはありますか?
『眠れる森の美女』と共に『白鳥の湖』も大きな古典ですが、この2つは全く違う踊り方です。オーロラ姫の方はロイヤル・バレエの『眠れる森の美女』の踊り方があります。特徴は腕を丸く使い、腕の形を整えることで凄く大事です。そこを丁寧に教えていただきました。厳しく決まっているので極めるには時間がかかるのですが、それも楽しい部分です。
(c)HM2019-SleepingBeauty
――コロナ禍で世界中が苦難に陥っています。ロイヤル・バレエの一員として、どのように向き合っていこうと思われますか?
ロイヤルのみんなは力を合わせていち早く劇場に戻り、満員の客席に踊りを見せたいと思っています。劇場に足を運べない状況でも『眠れる森の美女』を日本の映画館で見ていただけていると思うと本当にうれしいです。
取材・文=高橋森彦

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