betcover!!、toronto、The Shiawase
新鋭たちが三つ巴の競演を果たした
『HOOKED ON!』

8月31日、“一度聴くと必ずクセになる”アーティストが集結した無観客ライブ『HOOKED ON!』が渋谷CLUB QUATTROから生配信された。出演者は、7月1日に2ndアルバム『告白』をリリースし、ジワジワとファンを広げるヤナセジロウのソロプロジェクト・betcover!!、結成わずか半年で『RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 19/20』に優勝し、今年6月にはバンド初となる全国流通盤『新感覚』をリリースした3ピースバンド・toronto、『ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2020への挑戦~』や『RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2020』の優勝アーティストに選ばれた、3ピース"青春グルーヴロックンロールバンド"The Shiawaseという新鋭の3組。
なお、このライブのチケット購入者は、9月7日の23時59分までアーカイブ映像を楽しむことができる。以下のテキストはライブの内容に関わるネタバレを多分に含むため、事前情報を入れない状態でアーカイブを観たいという人は、視聴終了後にお読みいただきたい。
The Shiawase 撮影=土居政則
The Shiawase 撮影=土居政則
トップバッターは、The Shiawase。いわゆる歌モノのバンドなのだが、1曲目の「土の匂いは忘れたかい」は予想外の転調のしかたをする曲で、このイベントのテーマである“クセになる”とは、つまり“一筋縄ではいかない”ということなのでは、と気づかせられる。続く「19のマスカラ」は“好きな子が他の人とデートに行ってしまった”という悲劇を歌った疾走感ある曲。ラストのフレーズにそこはかとない拗らせ具合を感じていると、MCでは仲井陸(Vo/Gt)が視聴者に「一人で観てますか、家族と観てますか?」と確認したうえで、小学校低学年ばりの下ネタを言った挙句、「今お母さんと観てる人、気まずくなったでしょ!」と笑う。恋してフラれて泣きべそかいて、ダサくても何だって曲にする。そういうバンドのようだ。
The Shiawase 撮影=土居政則
The Shiawase 撮影=土居政則
MC明けの「頬のホクロと涙袋」は、「サンタが町にやってくる」のメロディを引用したクリスマスソング。そもそも彼らが出場した『ワン!チャン!!』や『RO JACK』は、大型イベントへの出演権を賭けたオーディションなわけで、本来出演できるはずだったイベントが残念ながら中止になってしまったこの状況、相当フラストレーションが溜まっていたのではないだろうか。そこに、クアトロという大バコで演奏しているからこその興奮も重なって、メンバーみんなすごく楽しそうに演奏していたのが印象的だった。バラードを2曲続けて演奏したあと、「平成アロハ航路」で軽快に終了。カメラに向かって歯ギターを披露するなど、視聴者へのアピールもしっかりと。
The Shiawase 撮影=土居政則
ライブとライブの間のステージ転換中は、この日のために撮影されたと思われる各バンドのコメントVTRとMVが流れた。複数組の出演者がいるイベントの場合、ライブ中に自己紹介しないバンドも案外多いため、こういう気遣いは視聴者的には嬉しい。出演者は3組だが、転換タイムは2回しかないため、ここではThe ShiawaseとtorontoのVTR&MVを放送。特にVTRの方、好きな女の子のタイプなどを話し始めるThe Shiawaseに対し、最近おすすめの日本アーティストを紹介するtorontoと、それぞれの個性が出ていたのが面白かった。
toront 撮影=土居政則
toront 撮影=土居政則
そして2組目・torontoのライブがスタート。根本快(Vo/Gt)が一言挨拶し、「新生活」から演奏を始めるもギターが鳴らないトラブルに見舞われるが、ボーカル・ベース・ドラムのみになっても物足りなさを感じさせない演奏にポテンシャルを感じさせられる。2曲目にはリズム隊のパワフルさとギターのカッティングを推進力とするアッパーチューン「コリントの信徒への手紙」を演奏。さらに「初出しがクアトロだとは思わなかった」と語られた新曲へと繋げていく。想像のなかではいくらでも自由に遊ぶことができる。そんなメッセージが込められた、この夏に宛てたミディアムナンバーだ。4曲目の「17」はバラードで、歌とバンドが一緒に呼吸をしながら、徐々に熱を高めていく。根本がギターを弾き倒すアウトロではアンサンブルがさらに白熱する。
toront 撮影=土居政則
ここで根本が「普段と照明の数が段違いだからめちゃくちゃ暑い……」と呟いたことで、なるほど、そういう違いもあるのか、と思わせられる。MCでは、ライブの機会をもらえたことに対する感謝を言葉にし、次の曲=「戦争はおわり」のことを“映画『白い暴動』を吉祥寺で観て、音楽の持つ力、人の持つ力のすごさを実感したことから書いた曲”として紹介した。『白い暴動』は、1970年代のイギリスで人種差別と戦った若者を描いた作品。剥き出しのロックサウンドは画面を破ってきそうな勢いだ。その後、「大舞台でやるのがめっちゃ気持ちいい曲なので楽しんでやりたいと思います」(根本)と「ララバイ」を放って、終了。
toront 撮影=土居政則
betcover!! 撮影=土居政則
トリのbetcover!!は、5人編成(ギターボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード)で演奏する初めてのライブとのこと。転換中のコメントVTRは、メンバー紹介+最近聴いてよかった曲ランキングトップ3の紹介という内容だった。因みに、最近聴いてよかった曲は全部稲川淳二というオチ。「Spotifyにあるらしい」と言っていたので実際に検索してみたら確かにあって驚いたのだが、このように、アーティストが話題に上げた曲(今回は曲ではなく怪談だったが)をその場ですぐ調べることができるのも配信ライブならではだ。
betcover!! 撮影=土居政則
betcover!! 撮影=土居政則
そして「さよこ」でライブがスタート。フォーク/ソウル色を感じる音像も、<君は80年代の女/名無しの女><僕は40年先の未来から君を見つけたあよ>という歌詞も、非常にロマンティックな曲だ。そのムードはヤナセの低い歌声にも似合っている。一転、ギターがギュイーンと鳴いてから始まる「失踪」ではガレージロックが牙をむく。音源と雰囲気が全然違うのも驚くべき要素だ。曽我部恵一クリープハイプなどのリミックス音源を手がけ、“鬼才”として話題を呼んでいるbetcover!!。ヤナセの脳内で鳴る宇宙を体現するかのように、次々と様相を変えていく(カメレオン俳優ならぬ)カメレオンバンド。ドラムとベースから始まり、途中にはギターの2人が向き合って楽器を鳴らす場面もあった「さみしがりな星」では、誰かが演奏しているときにそれ以外の人がノリノリになっている様子もカメラがしっかり捉えていて、バンドのいい空気感が伝わってきた。
betcover!! 撮影=土居政則
betcover!! 撮影=土居政則
4曲目の「東京」は、一曲のなかでテンポも曲調も変わる劇的な曲で、このバンドの底知れない感じが存分に炸裂している手応えがあった。ラストにある、ヤナセの振り絞るような弾き語りもグッとくる。そこから間を空けず、「回転」、さらに「家庭のひかり」を演奏し、熱量を放出しきって終了。30分間MCなし。音楽ですべてを語る、ストイックな構成で魅せた。
betcover!! 撮影=土居政則
職業柄、気になるアーティストをチェックしようと、対バンイベントを観にライブハウスへ行く機会がこれまで多かった。そのたびに個人的にネックだと思っていたのが転換時間の長さ。ライブハウスは大抵オールスタンディングのため、そこで疲れてしまうことも少なくなかったのだが、そう考えると、座りながら転換時間を過ごすことのできる無観客配信ライブはメリットも大きいかもしれない。現在は出演者はもちろん、ライブハウス、イベンター側も配信ライブのやり方を試行錯誤している段階だろう。そのトライに感謝しつつ、気になるアーティストをチェックする手段として、“配信で対バンライブを観る”という選択を採り入れてみることをおすすめしたい。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=土居政則

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