城田優、ミュージカル『NINE』で色男
の映画監督に挑戦「30代半ばでどこま
で色っぽさを出せるか。”人間くささ
”と”大人の魅力”を」

映画史に輝く名匠フェデリコ・フェリーニの自伝的作品『8 1/2(はっかにぶんのいち)』を原作としたブロードウェイ・ミュージカル『NINE』が、主演に城田優を得て上演される。スランプ中の映画監督グイドが、人生で出逢ったさまざまな女性たちと繰り広げる物語で、『ファントム』も手がけているアーサー・コピット(脚本)&モーリー・イェストン(作詞・作曲)のコンビによる作品だ。イタリアの色男を演じる城田優に意気込みを訊いた。
――演出と主演を兼ねられた昨年の『ファントム』に続き、アーサー・コピット(脚本)&モーリー・イェストン(作詞・作曲)コンビの作品となりますが、楽曲の魅力についてはいかがですか。
難しいですね。まだ曲が深く入っている段階ではないですが、あまり気持ちよく感じる曲が今のところなくて。「Unusual Way」はすごく入ってくる曲ですけれども、他は、とても一回や二回聞いたくらいじゃ入ってこない曲です。人間の芯の部分、きれいな部分や塗りたくられた表面的な部分ではなくて根底にある感情の部分、そういった揺れるものが描かれているのかなあと想像してしまう感じで、非常に人間らしいというか。パッションがすごくこめられているとか、そういうことだけではない、複雑な作りの曲が多い印象ですね。いわゆるキャッチーな感じではないんですが、それがそもそも作りたかったものなんだろうと思います。『ファントム』だと、キメの曲、キメのフレーズ、覚えやすいきれいなメロディみたいなのがありますけれども、今の段階ではマイ・フェイバリット・ソングがまだ見つけられていません。歌えるようになったらすっと心に入ってくると思うんですけれども。

城田優

――演出の経験は今回の役作りにも生かせそうですか。
役者として役を演じるとき、自分の経験や、役柄と似たような境遇を生かせることはもちろんあるんですけれども、ただ、毎回、自分とはまったく違う人間を演じるわけです。今回はカサノヴァ、色男、気が多い男性という役どころで、映画監督で。ものを作り上げるというところで言えば、僕自身、舞台の演出やショートフィルム、ドラマの監督といった経験をしてきた中で、ものを生み出す苦しさ、行き詰まったときそこからどう脱するかみたいなことはもちろん経験しているんですけれども、それは城田優自身としての感情であって、グイドの感情とまったく一緒かと言ったらそこはわからない。生かそうとか、あまりそこまで考えていないかもしれないですね。理解や共感できるところはたくさんありますが、根本的に城田優とグイドはあまりに人間として違うので。スランプになったときにグイドが取る行動と、僕が取る行動ではやっぱり違ったりするので、そこは想像の域で、グイドになったつもりで考えていく感じです。
――ちなみに、ご自身がスランプになったときはどう乗り越えますか。
『アップル・ツリー』のときも、『ファントム』のときも、演出していてスランプというスランプはなかったですね。あっても一日とか。『ファントム』でいうと、「You Are Music」のシーンをどうしようか、一日だけ非常に悩みましたけど、他のところに関しては、スルスルスルスルと、もともとできていたかのように、バンバンアイディアが出てくる感じで。だから、僕が今グイドだとしたら、全盛期なんでしょうね(笑)。それで、ここから先いろいろと重ねていくうちに、グイドみたいにあれ? ってなるんでしょうね。今は絶好調で、スランプはないです(笑)。

城田優

――今年初めに作品の舞台であるイタリアに行かれたとか。
とにかくグイドのように女を抱きまくることしか考えませんでした(笑)。というのは半分冗談半分本気で、イタリアだし、そういう経験をしたらちょっとはプラスにはなるかなと思ったんですが、結果としては何もなかったという。現地の女性との会話がいっさいなかったですね。店員さんとのやりとりくらい。もちろん連絡先の交換もないし、自分が想像していたイタリアの旅とはちょっと違うというか、男とずっと一緒にいるような感じでした(笑)。グイドはカサノヴァと呼ばれる男で、色男、プレイボーイ、遊び人、いろいろな人に気をもたせて、いろいろなところに気をもつようなタイプ。自分自身はなかなかそういうタイプではないので、ちょっとそういう風になってみようかなというノリではあったんですが、残念ながらイタリアではあまり収穫は得られませんでしたね(笑)。
ただ、イタリアの雰囲気、空気感、そして現地のおしゃれでダンディな男性たちを見て、なるほどという思いはありました。自信に満ちあふれているんですよね、おしゃれしている人たちって。洋服で着飾ることで、鎧と剣を身に着けているように強くかっこよく見せるんだなという印象を受けました。グイドもきっと、自分の功績やプライドで飾って、寄ってくる女性、自分がいいなと思う女性にはバンバン声をかけていったのかなと。そのあたり、役作りの参考にできそうな人間観察はしてきました。
城田優
――その上で、グイドをいかに演じていきたいですか。
それは、台本の中にしか答えはないというか、台本の中にすら答えはなくて。稽古場で台本を用いて実際に芝居をしたときに生まれるものや、そこで演出家の方が感じること、相手役が感じること、そこを議論していきながら、自然と深まっていくものだと思っています。こういう人だとか、こうあるべきだとか、あまり自分の中で固め過ぎずに、一回流れに身を任せてみる。グイド自体そんな人じゃないかなと思うんですよね。こっちから引っ張られたらこっちへ、あっちから引っ張られたらあっちへ、だめとわかっていても行ってしまうし、後ろからいい匂いがしてきたら振り返っちゃう。意思がすごく固くあるようで、流れに身を任せたこともあとあと自分の意思にしてしまうというか、美化する、ごまかす、そんな印象を台本からも受けます。ずる賢くて、でもどこか憎めない、人間らしい人だと思うんです。そういう部分をまずは稽古場で出していって、実際に舞台の上に立ったときに、グイドのチャーミングな部分と、人から憎まれるけれども好かれる、そういう人を演じていく上では、まずは魅力的に見えないといけないと思うので。魅力的な人間の、本当の欲の部分を見せていけば、嫌いだけど好きという感じに見せられるかなと思っています。
――この作品の話が来たときのお気持ちは?
僕は今34歳ですけれど、お話をいただいた当時はまだ30代のはじめで、自分の中でのネクスト・ステップのように感じました。ミュージカルのお仕事を年に1、2本やらせていただく中で、自分の中での目標というものがあって。再演だったら新しい何かをもって取り組みますし、新しい作品に挑む場合も、ここはこうしてみようという思いがある。この作品に関して言えば、大人の魅力を出したいなと。
城田優​
これまで、割とピュアな役や、「死」という象徴だったりを演じてきた中で、今回のグイドは、嫌われるけれども女性が放っておかない、プレイボーイなんだけどどこか憎めない、才能はあるけど燃料切れなのかスランプに陥っている、魅力的に見えるけどだらしない、そういう、非常に人間らしい役です。ただただかっこいいとか美しいとかそういうものじゃなくて、表裏の部分や感情を両方兼ね備えているんですよね。魅力的というところが勝っているから、女性たちに見放されないという。長い歳月、どれだけ追い込まれても、女性たちが彼のもとを離れない、そんな魅力をもった人の、汗くささ、泥くささ、人間くささを、今のこの年齢で演じるのは少しチャレンジングなんですけれども、僕としてはそこにすごく興味があります。もしかしたら、5年後、10年後に演じるんだとしたら割と簡単かもしれないですよね。グイドは40代の男性だから、大人の魅力がなくちゃいけない。僕は普段はめちゃめちゃクソガキで、ただただはしゃいでいる子供みたいなヤツなんで(笑)、大人の魅力を演じるのはなかなか難しいなと思うんですけれども、30代半ばでどこまで色っぽさを出せるか。
おそらく作品を観に来る方の大半が女性客だと思うんですが、目標としては、その方たちが帰りに、「むかつくけど好き」とか「何か腹立つけど抱かれたい」とか、そう思ってもらえたらいいなと。リアル・グイドとして皆様の心、記憶に残ってもらえればいいなと。そういう、役者としての新しい一面を見せたいですね。城田優を前から観ている方も、観ていない方も、みんながちょっとエロティックな感覚、感情になってもらえたらいいなというのが今回のテーマです。色気というか魅力というか、日本語でいうと「エロい」が一番近いと思うんですけれども、そういうところを目指してやっていきたいですし、かわいいとかだらしないとか、ほめ言葉やけなし言葉が混在する人間になれればいいなと思います。

城田優

――グイドは「創る」ために女性たちの存在を必要とするところもあるのかなと思うんですが、そのあたり、演じる立場と演出・監督の立場で違いを感じたりすることはありますか。
自分が演出をしているとき、インスピレーションをもらいたいから、相手役の子を呼んでちょっと話を聞いたりということもありました。演出家、監督として全体像を作り上げる上でインスピレーションが欲しいということはもちろんありましたし、そこがグイドの場合、女性からもらうということが圧倒的に多いのかなと思うんですけれども。そこは理解できますね。ただ、僕自身と彼の感覚とでは違うので。
――演出の藤田俊太郎さんとはどんなお話をされていますか。
構想されているセットやキャラクターの作り方など、こう進めていきたいという構成の確認はしています。台本だけ読むと非常に難解で、抽象的に描かれている部分、時空が混ざる瞬間なんかがけっこうあるんですね。最初から最後まで、これは妄想なのか現実なのか、今実際に起こっていることなのか脳内での出来事なのか、一回読んだだけではわからないところがたくさんあるんです。藤田さんとお話をして、そのあたり道が見えたというか、なるほどと。不安だったのが楽しみが増えました。セットの作りも斬新で、2020年に上演する意味も感じますし。グイドが映画監督ということで、映画の醍醐味も感じられるというか。今まであまり観られなかった新しい演劇の形が、コロナ禍だからこそできそうな気もしています。
なかなか観劇しづらい世の中になってしまい、スタッフ、キャスト、そして観に来る皆さんも非常に複雑な思いを抱えながらの公演になるとは思うんですが、この作品の数時間だけは心おきなく楽しんでいただけるよう、よりよいものをお届けしたいですね。演劇の可能性、エンターテインメントの力で心が救われて、身体も健康になるところがあると思いますので、その可能性を信じながら全うするしかないかなと。本番の空間だけは、前向きになれるような時間をお届けできたらと思っています。

城田優

取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=池上夢貢
ヘアメイク=Emiy スタイリスト=横田勝広(YKP)
衣裳クレジット=コート ¥65,000 パンツ ¥116,000 シャツ ¥52,000(以上、ヨウジヤマモト)
【問い合わせ先】ヨウジヤマモトプレスルーム tel 03-5463-1540

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