武田真治が
アーティストとしての才能を
如何なく発揮した
衝撃のデビュー作『S』

『S』('95)/武田真治

『S』('95)/武田真治

9月9日、実に24年振りとなるフルアルバム『BREATH OF LIFE』がリリースされたということで、武田真治のデビュー作『S』を取り上げる。以下にもくどいほどに書いたが、今、武田真治と言うと、やはり『みんなで筋肉体操』のイメージが強いだろうし、彼もそこでのキャラクターに真摯に取り組んでいらっしゃると思うので、“筋肉イメージ”も決して間違いではなかろう。だが、彼をそれだけで語るのは実にもったいない。いちアーティスト、いちミュージシャンとしての武田真治も絶品なのである。

名うてのミュージシャンが認める才能

武田真治と言うと何を思い浮かべるであろうか。今は多くの人が“筋肉”となるのだろう。それほどに『みんなで筋肉体操』のインパクトは強かったし、その体裁で出演した『NHK紅白歌合戦』での熱演(?)も大きな話題であった。『第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』でグランプリを受賞し芸能界入りし、身体にピタッとはり付くほどのシェイプなTシャツ、いわゆる“ピチT”などファッションで、いしだ壱成と並んで“フェミ男”と称されていたデビュー時のイメージが鮮烈すぎたのかもしれない。当時を知る人は“あの中性的な子がこんなにムキムキに!?”と驚きを持って受け止めたのだろう。あとは、やっぱり俳優、タレントとしての姿。放送が終了してだいぶ経ってしまったが、『めちゃ×2イケてるッ!』でのコミカルなキャラクターのイメージを未だに抱かれている方も少なくないと思う。また、テレビドラマや映画での活躍を思い浮かべる方もいらっしゃるだろうし、出演した舞台やミュージカルでの役が印象に残っている方がいるかもしれない。

サックスプレイヤーとしてのイメージとなると、一般的には筋肉、タレント・俳優の次くらいだろうか。この度リリースされた新作『BREATH OF LIFE』はソロアルバムとして24年振りの作品だというから、もしかすると、彼がサックス奏者であることを知らない人がいても何らおかしくない。当コラムにしても、事前に“9月の第1週にニューアルバムが出るようですし、この週の邦楽名盤は武田真治でどうスかね?”とお伺いを立てたところ、“それは何か違うんじゃないですかね”と最初はダメ出しされている。だからと言って、当編集部を腐したいわけでも、担当編集者を糾弾したいわけでもなく、今回の新作にしても凡そ4半世紀振りなわけだから、それも止むなしといったところだと思う。筆者にしても決して威張れたものではない。彼をアーティスト、ミュージシャンとして認識したのは相当遅い。1stアルバム『S』(1995年)、2nd『OK!』(1996年)が発売されたのも知っていたし、それらの作品を耳にした人たちからの“武田真治、意外とすごいかも…”の賛美は耳に入っていたが、自ら聴こうとは思わなかった。“すごいのかもしれないけど、フェミ男にしては…ってことでしょ?”くらいに高を括っていたのだと思う。

個人的にサックスプレイヤーとしての武田真治のすごさを目の当たりしたのは、彼が司会を務めていたNHKのトーク番組『トップランナー』である。忘れもしない2003年9月4日、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTがゲストの回だ。まぁ、さすがに日付は完全に忘れていたからさっきググったのだけれども、その内容はよく覚えている。アベフトシが『ゴッドファーザー』のことを完璧な映画だと言っていたとか、キューちゃんが高田みづえを聴いていたとか、普段はあまり耳にしないようなエピソードも楽しく見聞きしたのだが、何よりも番組後半でのスタジオライヴが良かった。「デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ」「ブラック・ラブ・ホール」「リボルバー・ジャンキーズ」とTMGEのナンバーを演奏。オンエア日が、TMGEが解散を発表した数日後であったので、どこか感慨深くその演奏を見つめていた記憶があるが、最後に披露された武田真治を呼び込んでのセッションがこれまた良かった。TMGEのバンドアンサンブルがいかにすごかったのかはここで論じるまでもないし、特に解散間際は凄まじいまでのグルーブと息の合った様を見せつけていたのだが(「ブラック・ラブ・ホール」のイントロに見事にそれが表れていたと思う)、その熟し切ったTMGEのサウンドに武田のサックスがグイグイと食らいつき、絡んでいく。武田はやや緊張気味ではあったものの、そのプレイは実に堂々としたものであったし、チバユウスケを始めTMGEのメンバーも楽しそうで、彼らの表情からも武田をサックスプレイヤー、いちミュージシャンとして認めていることが伝わってきた。彼はその数年前には忌野清志郎の全国ツアーに参加しているのだから、その手腕に気づくのは遅すぎたのだが、そこではっきりとその才能を認識した。“武田真治、意外とすごいかも”なんて話ではない。そのサックスは完全にすごかったのである。

OKMusic編集部

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