愛希れいか、『フラッシュダンス』で
ダンスで新たな地平を切り拓く主人公
を熱演 ゲネプロレポート

宝塚月組トップ娘役を6年7カ月にわたって務め、在任中、トップ娘役としては17年ぶりとなる宝塚バウホール公演の主演も果たした愛希れいか。退団後も、『エリザベート』タイトルロールで新たな主人公像を打ち出し、『ファントム』でヒロインを演じて確かな存在感を示すなど活躍中の彼女が、初の単独主演に挑む『フラッシュダンス』。80年代にサウンドトラック共々大ヒットしたアメリカ青春映画のミュージカル版で、ビルボードHOT100で一位を記録した「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」「マニアック」といった映画のキラーチューンも楽しめる作品だ。初日前夜に行なわれたゲネプロを観た。
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真
主人公アレックス(愛希れいか)は、昼は製鉄所で溶接工として、夜はバーでフロアダンサーとして働きながら、プロのダンサーになることを夢見ている。製鉄所の御曹司ニック(廣瀬友祐)はそんな彼女に一目惚れ。親友のグロリア(桜井玲香)に、ダンスの名門学校のオーディションを受けることを勧められるアレックス。ダンスの恩師ハンナ(春風ひとみ)もアレックスを励ますが、経験のなさから怖気づきがちなアレックス。一方、スターを夢見るグロリアには売れないコメディアンである恋人のジミー(福田悠太・ふぉ~ゆ~)がいるが、彼が夢をかなえるためニューヨークに行ってしまったこともあり、誘惑の罠に落ち……。
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真
宝塚在団中から名ダンサーとして知られ、ショー作品でも魅せてきた愛希が、80年代のヒット曲の数々に乗り、迫力のあるダンスを披露。鍛え抜かれた筋肉は、闘いに赴く女戦士の鎧のよう。アレックスは、ニックに対しても物怖じせずはっきりとした物言いをする一方で、夢に向かって踏み出せないどこか弱気なところがある。それでいて、踊り出すとその世界に入り込み、激しい情熱のありようを見せる。そんな主人公が、愛希れいかの肉体を得て、生き生きと舞台上に息づく。ラフな姿でのワークアウト風の振りから一転、マタドールをも思わせる衣装でのショーダンスで誘惑する「マニアック」は、娘役転身前は男役としても研鑽を積んでいた彼女の経験が大いに活きたナンバー。タイトル通り、ダンスに憑かれた者の踊りを見せてくれる。80年代にジャン=ポール・ゴルチエがマドンナのためにデザインしたコスチュームをも彷彿とさせる衣裳をはじめとするセクシーなスタイルから、工員服、デニム、彼のシャツといったカジュアル・ウェア、そして『フラッシュダンス』といえばのレオタードまでさらっと着こなして魅力的なのも、その鍛え抜かれた肉体あらばこそ。
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真

ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真

ニック役の廣瀬友祐は、恵まれた環境に育ち、年下のアレックスに対してもどこか甘えん坊なところのある青年を演じて甘い魅力を見せる。アレックスに出会ったことで、ニックもまた成長を見せていくのだが、彼が自分を変えなければともがく様が、殻を破ろうともがくアレックスの姿と好相似形を成す。愛希アレックスと廣瀬ニックのデュエットも聞きもの。アレックスの親友グロリア役の桜井玲香も、ちょっとコスプレ風味の80年代ファッションも似合って実にキュート。夢と恋に揺れる女性を演じて芯の強さを見せ、ガール・パワーも描かれたミュージカル版の見どころを引き出す。その恋人ジミー役の福田悠太(ふぉ~ゆ~)は、コミカルに歌い踊るソロ・ナンバー「本当の居場所」で楽しませてくれる。アレックスを励まし続けるハンナ役の春風ひとみは、ウェットには転ばない温かみが魅力。秋園美緒のあっと驚く二役の演じ分けは、ぜひ劇場でお確かめを。
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真

ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真

ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真

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ためらいながらも、自らがもつダンスの才能を信じ、夢に向かって一歩踏み出すアレックス。「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」のダンス・シーンは、そんなアレックスを演じる愛希自身、舞台人として矜持をもって確かな一歩を踏み出したことを高らかに告げるものである。不確かな日々の中で確かに歩んでいくことの強さ、その爽快感に、胸がすく想いで劇場を後にした。
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真
演出家・岸谷五朗+主要キャスト 4名 コメント
■日本版脚本・訳詞・演出:岸谷五朗
三月、四月、五月コロナによって主催する「地球ゴージャス」の大切な25周年記念公演の殆どが吹き飛ばされた! 何処にもぶつけられないエンターテイメントの浮かばれない魂の憤りは沸々と熱を帯び、その時をずっと待っている。この瞬間(とき)に初日を迎える公演は私達だけではなく演劇関係者皆の期待を背負う。他の公演の千穐楽までの完走を我々が祈るように『FLASHDANCE』は繊細に毎日の稽古を重ね周りからも愛されて来た。初日の産声をこれ程未来の可能性だと感じる公演は初めてだ。リスクを背負い劇場に足をお運び下さるお客様! 徹底した対策を講じてお待ちしております。
■アレックス・オーウェンズ…愛希れいか
今こうしてこの作品を届けられるということ、チケットを買って劇場に来て下さるお客様がいて下さるということがなによりも幸せですし、感謝の気持ちでいっぱいです。
今回、いつもより制限があるお稽古の中でも、とてもストイックに、そして本当に楽しくお稽古できたのは、思いやりに溢れた愉快な個性的なキャストの皆様のおかげです。
この状況で、みんなで作り上げたこの舞台はいつも以上にたくさんの想いが詰まっています。エンターテイメントのもつ力を少しでも感じて頂き、観終わった後には、前に向かって一歩踏み出す勇気を持ってもらえるような、明日への活力になる…誰かの背中を押せる……そんな舞台にしたいと思っています。
私が今できる全てを懸けて挑みます! どうぞ、宜しくお願い致します。
■ニック・ハーレイ…廣瀬友祐
自分の中で止まってしまったものが、また凄まじいエネルギーで動き出そうとしています。
当たり前じゃない一瞬一瞬に命を注ぎたい。
危険は常に隣合わせかもしれません。
でもだからこその興奮がこの作品には間違いなくあると思います。すでに心が震えてます。
このパワーがこの先の未来を照らせるように魂込めたいと思います。宜しくお願いします。
■グロリア…桜井玲香
無事に初日を迎えることができて、先ずはホッとしています。どこか不安を拭えないまま、それでもカンパニーみんなで初日を迎えられると信じて、日々頑張ってきました。
色々な想いが詰まったこの作品を、お客様の心にしっかりと伝えたいと思います。
■ジミー…福田悠太(ふぉ~ゆ~)
ミュージカル『フラッシュダンス』。
一流のプロの方達ばかりの舞台上に、ジャニーズの一般人の僕がどこまで馴染めるのかお楽しみ下さい。
馴染めてなかったらどうしよう。緊張するなあ。
33 歳にもなってこんなに緊張させてくれるミュージカル『フラッシュダンス』。最高です。
この大変な時期に会場に集まって下さるお客様、皆様に少しでも夢と感動を与えられるよう頑張ります。
ミュージカル『フラッシュダンス』舞台写真
文=藤本真由(舞台評論家)

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