『RENT』2020年版のマーク役・平間壮
一&ロジャー役・甲斐翔真にインタビ
ュー 「ロジャーのように死ぬ前に世
に何を遺したい?」の回答は……?

世界中で多くの人から愛され、なかでも熱心なファンは「レントヘッズ」と呼ばれるくらいの名作ミュージカル『RENT』が2020年、新たなキャストを迎えて上演される。中心人物であるマーク役を務める平間壮一は前回の公演でエンジェル役を演じて高い評価を得た。そしてロジャー役・甲斐翔真は初『RENT』となる。

『RENT』の過去を知る男・平間と、平間と共にこれからの『RENT』を創る男・甲斐に話を伺ってきた。
ーーまず、初めにおふたりにとっての初『RENT』はいつのどの作品でしたか?
平間:賀来賢人くんが出演したときの舞台(2012年)です。自分がのちに『RENT』にかかわることとは無関係に事務所の仲間である賢人が出演するから「観に来て!」って言われて。ただ一観客として観劇しました。
甲斐:壮一さんが『RENT』をやられたのは2015年と2017年ですよね? その時『RENT』をやっているという意識が僕にはなくって、壮一さんや堂珍(嘉邦)さんが何か舞台に出ているということを聞いて、後日、映画版の『RENT』を見たのが最初です。その後、2018年に来日版を観たのが生での初めてです。
平間:『RENT』って日本人キャストでもめちゃくちゃいっぱい上演しているんだよね。1998年から今回で8回目ですよね。
(左から)甲斐翔真、平間壮一 
ーーご覧になった時の感想はいかがでしたか?
平間:海外作品を日本人キャストでやった舞台を観たのも初めてだったんです。賢人は踊りは得意じゃないけど身体が利くので、音に合わせて身体の動きを切り返す動きとか、台に登る&降りる時の素早さとかがすごくかっこよく見えて「わあ! 僕もやりたいな!」と単純に思いました。
甲斐:僕の場合、翻訳はついているけれど、言語が英語だったので。『RENT』って大事なことはすべて歌の歌詞に描かれているので、いろいろなことがあっという間に終わって初めて見たときは一度に全部を理解することができなかったんです。後々調べてみると「ここでこうなったんだ」「だからあの人が怒ったのか」などがちゃんと見えてきたんです。だから僕個人的な感想としては『RENT』 は「事前に調べておくと、100倍、200倍面白く楽しめる作品」だと思っています。
平間:一番わかりづらいのって、ベニーの存在じゃないかな? 一緒に住んでいるのに、ある日から突然態度が変わって家賃を取り立てに来ているので、どういうこと? って思う。でもそこがすっきりするとわかりやすくなると思うね。
ーーオーディションではどんなことを実演したんですか?
平間:(甲斐に向かって)何した?
甲斐:僕はひたすら歌いまくりました。一次審査の時は10数人が一列に座っていて一人ずつ前に出て歌うというめちゃくちゃプレッシャーがかかる状態でした。そこから2次審査になったときに(演出の)アンディが見てくださったんですが、その時は歌より気持ちの部分を見られていた気がします。同じ曲を2、3回歌ったり、相手を変えてまた歌ってみたり、「もっとこういう風に気持ちを出してみて」と言われたり。そういうことをしていた記憶があります。
平間:エンジェルの時は正直そこまで歌った記憶がないんです。でも『RENT』って歌でしょ? って想いがあるんですが、「歌う必要はない。歌っている思いを伝えてみて」っていうオーディションだったんです。アンディがここまで来てって自分の机の前を指さしてそこに行くと「ここから僕に思いを伝えてみて」っていうんです。今回マークとしてオーディションを受けたときは「僕が言いたいことは君はもう分かるよね? 冒頭のセリフから僕に伝えてみて」って言われ「1992年のクリスマスイブに始める……」のセリフをバーっと言って。もうわかるよねって言葉に特別感を感じました(笑)。
ーー実は今回受かった役以外にやってみたい役はありますか?
平間:僕、コリンズがかっこいいなあって思ってた! コリンズの歌も含めて好きなんです。やれるならやりたいっていう憧れがありますね。
甲斐:僕はエンジェルに興味がありますが、エンジェルって器ではないと思うんです。
平間:やったらきっときれいだよ~。
甲斐:僕が演じたら(『Kinky Boots』の)ローラになっちゃう! でかすぎて! コリンズが抱えきれなくなるかも!
ーー何をおっしゃるのやら! 今回のビジュアル撮影の甲斐さんの写真を観て驚きましたよ! 「何この色気ダダ洩れ具合は!」って!
『RENT』チラシ画像
甲斐:いやあ、それは撮影スタッフさんやメイクさんスタイリストさんのおかげですよ。
平間:いろんな人に支えられてね!
甲斐:はい! 僕はいろいろ考えてロジャーかなと思います。
ーー平間さんが演じるマークを平間さんご自身はどうとらえていらっしゃいますか?
平間:やりたいことは明確に見えていてビデオカメラを使って何かを作りたい、などといろいろなことを思っているんだけれど、なかなか自分が作る作品に自信が持てないし、他人からああだこうだと批判されて「いや僕の作品はこうだから」と強く意見を持てればいいんですがそれを気にしてしまって。本当はやりたくないけど生活のためにテレビ番組のカメラマンをやってみたりしているうちに、そこで出会う人達がいつ死ぬか分からない人たちである事を目の前にして、ともに過ごしていくうちに「こんな生き方をしていていいのか」と気づかされる。誰しもが感じているんです。一生懸命生きたいけど、生きる場所がなくてその場しのぎの暮らしをする、また何をしたらいいのか、どうしたらいいのか、と目的が見いだせない人もいるんです。『RENT』を観終わったときに何か熱くなるものがあれば、と思いながらマークを演じたいって思っています。
ーーそして甲斐さんのロジャーを甲斐さんはどうとらえていらっしゃいますか?
甲斐:これから稽古をたくさん積んで、本番を迎えるまでいろんなことを学んで行きますが……。誰でもスランプってあるじゃないですか。何も手につかないし、何も思いつかないというすべてから鎖国したような人が、ミミという大きな存在に出会ったときに、固く閉じられたものが少しずつ広がっていくところが人間らしくていいなと思うんです。僕はロジャーほど過去にも生か死かという過酷な体験はしていないのですが、自分がロジャーの立場になったらその気持ちは分かるかもしれません。生き急ぐわけではないけれど、自分が生きた証は何か残したいという思いはわかるんです。だからちゃんとロジャーに寄り添いたいです。そうすることでロジャーだけでなく僕自身についても知る機会になると思うから。
ーー役作りについてご自身ならではのノウハウみたいなものはあるのでしょうか?
甲斐:今日の取材をする前までは作品の中で僕の役割を考えてしまうんです。でも『RENT』に関しては出演して生きることがすなわち『RENT』になるんだと。やることは難しいんですが、難しく考える必要はないのかなと今は思っています。
平間:『RENT』はほかの作品とはまったくやり方が違うんですよ、稽古の進め方が。演じなければならない役のスイッチの入れ方もちょっと違う。翔真がすでにロジャーとして合格した以上、君がロジャーなんだから役にそれ以上の何かをかぶせてくるのは僕は嫌いだってアンディが言うんです。翔真のまま、ロジャーの気持ちになればいいって。
実はエンジェルの稽古をしているときに「女の子立ち」みたいなポーズをした瞬間、「ストップ! それやめて。壮一は普段そうは立たないじゃないか」って指摘されたんです。「でもエンジェルって女子的な部分があるじゃないですか」と返したら「いや、いらないから」というようなやり取りを何度もしました。最終的に衣裳を着た時に肩パットもがっつり入っているので、両肩を後ろに引いて胸を前に出すようなしぐさをしなくてもそう見えるんです。でも稽古中はわざとそんなしぐさをしては「それ、いらないから」と突っ込まれ(笑)。やりすぎると鼻に突く、ありのままに演じてもらいたいのが『RENT』だって。だからといって他の現場に行ったときに「いや、僕は演じないですよ。だって僕が僕であればいいから」なんてことをしたら「いや、演技しろよ!」ってことになりかねない(笑)。だから『RENT』は特殊な舞台であり、だからこそやっていて熱がこもりますね。
ーーエンジェルのときはそういう感じでしたが、さて、今回のマークはどうします?
平間:マークは普通過ぎて難しいですね。ビジュアル撮影のときからその難しさにぶちあたっていて。別に(前回マーク役を演じた)村井良大くんのマークを意識しているわけではないのに、スタッフから「いいのよ、村井くんのマークを意識しなくても」って言われて……。意識してないけどそう見えたんでしょうね。平間壮一だからこそのマークを作らないと。
ーー歌のほうはどう攻略するつもりですか?
甲斐:楽譜と音楽を聴きながら見ると、ほとんどしゃべっているのにそこに音符があるんです。それがすごく難しくて。初『RENT』の人たちは音源が海外版しかないので、英語を日本語にして歌うことに難しさを感じるでしょうね。
平間:そこは前回出ていたズルさで(笑)。僕は経験者ならではの音源をいっぱい持っているから。でも前回も「ここは日本語的にはむずかしい、歌いづらい」といったら「じゃあ変えようか」ってやり取りを重ねながらやってきたので今回もきっとそういうことがたくさんあるんだと思うよ。
ーー劇中の中でお好きな曲をあえて3曲選ぶとしたらどの曲をセレクトしますか?
平間:ベニーの歌から始める「You’ ll See」と「Will I?」、ジョアンナとモーリーンの「Take Me Or Leave Me」だな!
甲斐:ロジャーとしては「One Song Glory」は外せない。あと「I Should Tell You」の後半部分は特に好き! そしてミミと出会うところの曲か喧嘩するところの曲か……うわー選べない!!
(左から)甲斐翔真、平間壮一 
ーーお二人とも「Seasons Of Love」は出てこないんですね。
甲斐:いやもうその曲は殿堂入りだから!
平間:もう当たり前の一曲だから!!
甲斐:あのコーラスは難しいですよねえ……。
平間:そこはほら、上手い人に引っ張ってもらって……(笑)。
ーーお二人が皆をひっぱっていかないと!!
平間・甲斐:(笑)
甲斐:「Seasons Of Love」については『RENT』を知らない人でも「この曲は知ってる」って言いますしね。僕も『RENT』を知る前から知っていた。
平間:僕も。これまでにいろいろな人がカバーで歌っているからね、スティーヴィー・ワンダーがアルバムに入れたりしたってのも聞いた。めちゃくちゃかっこいいもん。でも『RENT』の代表曲なのに、歌われるのがオープニングの1曲目か2曲目あたりだろうと思っていたら2幕の頭ってことを知ったときはびっくりした。
甲斐:まさかのタイミングでしたね。
ーー演じながら思わず感極まる事もあるんですか?
平間:ありましたね。アンディからの指示で前回はまだ役をかぶってなくていい。ロジャーがギターを鳴らしてみんながステージに出るときはまだ自分と役が半分半分でいい、マークが出てきてから物語が始まるからって言うんです。すると『RENT』をやっていると終わってからも自分の中に役が残っているんです。(甲斐に顔を向けて)ずっとロジャーかもしれないよ(笑)!
甲斐:ずっと目の下のクマがつきっぱなしで、『デスノート』のLみたいになるのかなあ(笑)。
平間:この前ソニンちゃんと話したときに、役者はおおむね『RENT』依存症になるんだって言ってたな。だからソニンちゃんはあえて自ら『RENT』と一度距離を置きたいということでオーディション受けなかったんだって。「『RENT』に出たい出たい……で次に進めなくなっちゃうから」って。
甲斐:『RENT』に出たいという人、すごくたくさんいますしね。
平間:そんな作品に出れるなんて幸せだなぁ。
ーー最後になりますが、ロジャーのように死ぬ前にこの世に残したいものは?
甲斐:残すつもりでやってるんです、映画に舞台にドラマに。
平間:この世に名や作品を遺した人ってある意味ルールを破った人なんじゃない? なんか『RENT』でもやっちゃおうか?
甲斐:始まる前にビールをガットといっぱい浴びてから出るとか?(笑)。
平間:勝手にマークとロジャーを本番で入れ替えてやるとか!?
甲斐:それ、本当に後世に残りますよ(笑)すごい奴らがいたんだ、って(笑)。
平間:好きすぎてそういうやつらがいたんだよねーってね。で、本番なので誰も止められないと。で、終わってから僕らがスタッフに死ぬほど怒られると(笑)。でもずっと語り続けられる……なんてね(笑)。
甲斐:うーん(笑)。
平間:でも、あのキース・へリングも地下鉄の車内に勝手に絵をかいて捕まってますから。真面目に生きてるだけがすべてじゃない、っていうシーンがあったなぁ。人って面白いね。頑張るのをやめてみるとか?
甲斐:でもある意味アンディもそれを求めているかもしれないですね(笑)。

甲斐翔真(上)平間壮一(下)

取材・文・撮影=こむらさき

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