朝夏まなと、ミュージカル『ローマの
休日』インタビュー アン王女の魅力
や帝国劇場初主演への思いをきく 

銀幕に永遠に残したその輝きで、没した今も世界中を虜にし続けてやまないオードリー・ヘプバーン。グレゴリー・ペックとタッグを組んだ『ローマの休日』でも、一日だけのつかの間の休日、そして恋を楽しむプリンセスの生き生きとした姿を描き出した。1998年、世界で初めて実現したそのミュージカル版が久々に上演される。オードリー・ヘプバーン、そして初演では大地真央が演じたヒロイン・アン王女に挑む、朝夏まなとに話を聞いた。
ーー今回、帝国劇場公演初主演となりますが、8月の『The Musical Concert at Imperial Theatre』で初めて帝国劇場の舞台に立たれていかがでしたか。
帝国劇場の舞台に立つことが、宝塚を退団してからの目標の一つだったんです。観に行く劇場という印象が自分の中では強かったので、舞台から客席がこんな風に見えるんだということがわかりましたが、最初のうちは不思議な感覚でした。帝劇の舞台って、客席に包まれているような感じがするんです。コンサートでは計16公演立たせていただきましたが、いい意味で劇場空間に慣れてきて、充実した公演期間を過ごせました。
朝夏まなと
ーー『ローマの休日』の映画はもともとお好きな作品だとか。
そうなんです。ずっと前から観てきました。宝塚時代はグレゴリー・ペックの方を中心に観ていたんですが(笑)。ひたすらかっこいいなと思って、男役として研究していました。大人の男性の余裕とか、力が入っていないのにさりげなくかっこいい、それでいて包容力があるところが素敵だなと。そして、オードリー・ヘプバーンはひたすらかわいいなと。まさかその役を自分がやることになるとは思ってもいなくて。初めて聞いたとき、びっくりしたんですが、アン王女を演じられる機会なんてそうないことですので、うれしくて。王女と新聞記者、身分違いの恋というところがロマンチックで、みんな惹かれるのかなと思うんです。韓流ドラマでも多いと思うんですけれど、現実にはありえないんじゃないの? というところがありえているという。それと、一日という短い時間の中であれだけ濃い時間を過ごして二人の関係性が変わっていくこと、そんな中でアンが一人の女性として非常に成長していく、自我、自覚が芽生えていくところが、今観ても不変の魅力だなと思います。オードリーの愛らしさ、二人の関係の素敵さ、そんなところにみんな憧れるんじゃないかと。ファッションも憧れる要素の一つですよね。スチール撮影のとき、カットした後の髪型をしてみると、やっぱりアン王女といえばこれね、みたいな感覚になって。今観てもおしゃれですし。フレアスカートとブラウスの衣裳を着ると、その色だけでうっとりしますから。オードリーについては、『マイ・フェア・レディ』を演じたときもすごく研究しましたが、本当にチャーミングなんです。表情一つひとつがかわいくて引きつけられます。それはやっぱり、心から、内面から来ているものなんだと思います。素直なんだろうなという感じがあふれ出ていて。
ーーミュージカル版の魅力についてはいかがですか。
話の流れとしては映画と同じなんですが、その合間に音楽、歌が非常に自然に入っていて。楽曲は大島ミチルさんと斉藤由貴さんが手がけられているのですが、日本人が作ったミュージカルならではの良さがあるなと感じています。お芝居の流れにぴったりですし、バラードからアップテンポまで、いろいろな種類の曲が入っていて、それもすごくわくわくする楽しいものばかりで。ここに音楽が欲しい! というところにぴったりと入って盛り上がる感じです。そして、メロディラインがとてもきれいで。アン王女と新聞記者のジョーのデュエットにしても、耳にずっと残って離れないくらい印象的な曲なんです。
朝夏まなと
ーーお好きなシーンはどこですか。
いっぱいあります。アン王女が髪を切るところも好きだし、船の上のダンス・パーティの場面も好きだし、真実の口のシーンも好きだし……。心情的にとても好きなのは、祈りの壁の場面ですね。二人がそれまでわいわいしていたのが、あのシーンで一回すっと静かになって、そして心を通わせるというか、そういう考えをする人なんだなということがお互いわかる感じで。舞台版ではそこでアンが一人で歌うところがあるのですが、それもすごくいい曲なんです。キュンキュンするところがいっぱいです。
ーー台本を拝見してうっかり泣いてしまいました(笑)。
わかります(笑)。すごく素敵な作品ですよね。乗り越えていくところ、あの愛を胸に生きていくというところが。最後のジョーの記者としての選択もぐっときますよね。
ーーアン王女の魅力をどうとらえていますか。
チャーミングですよね。自分に正直で、賢い人で。自分のことをすごくわかっているというか。ちょうど大人になるときの年齢の物語だと思うので、人生経験も決して多くはないのですが、あの天真爛漫さが人を引きつけるんだと思います。そのあたりを出していきたいです。最初の場面と最後の場面では、アンの表情もたたずまいも全然違ったものになっていなくてはいけないと思いますし。​
ーー自由と責任について描かれている作品だと思いますが、朝夏さんご自身も、宝塚のトップスターという責任の重い立場を務めていらっしゃいました。
王女という立場とは全然スケールが違いますが、共感できる部分もあります。スケジュール通りに動かなくてはいけない日々で、とりわけトップのときは、自分の時間というものがなかったので。そういう面ではわかるというか、常に芸名の自分がついて回るというところは一緒なのかなと。人からどう見られているか常に意識しなくてはいけないというのは、自分自身でも経験があるところなので。アン王女みたいに、遊びたい! と思うときもあるし。ダメって言われるとよけいやりたくなったりとか(笑)。それは今でもですけど。……冗談ですけど(笑)。常に芸名で生活しているので、病院なんかで、久しぶりに自分の名前言ったわ、みたいなときもありますし。本名を言うシチュエーションがないんです(笑)。アン王女が自分の責任を自覚して選択する行動が素敵だなと思います。そこで側近たちに言う言葉とかも、凛としていて、早く演じたいですね。その佇まいに至る過程を、演技でしっかり積み上げていきたいなと。やっぱり、責任感だと思うんです。​
朝夏まなと
ーーその責任はやはり、舞台に立ちたいという思いとセットであるものなのかなと思うのですが。
自粛期間中、舞台から離れて気づきましたが、そこにずっといたいと思う場所なんです。自分の人生の大半の時間をそうやって過ごしてきているから。舞台に立たないということが考えられないくらい。それだけやっぱり、舞台の上にいる方が、生きていると思える瞬間が多いんです、自分としては。達成感を味わったり、皆さんありがとう! 生きてるぜ! みたいな気持ちになれる場所なんです。コロナ禍でも、自粛期間中も、普通に日常生活は送っているんです。もちろん、そうやって当たり前の日々が送れていることに対しても、ありがたいな、生きているなと感じます。その一方で、あの舞台での感覚を一度知ってしまったら、みんな舞台に帰りたくなるというのはこういうことなんだなと、『The Musical Concert at Imperial Theatre』でも思いました。
ーー『The Musical Concert at Imperial Theatre』では、今回ジョー役をダブルキャストで演じられる加藤和樹さんとデュエットも経験されました。
それまで舞台を観に行ってご挨拶する程度だったんですが、今回、舞台で一緒に歌うという経験をして、どっしりとして頼りがいがあるなと感じました。本気スイッチが入った感じを初めて同じ舞台上で観て、ジョーが似合うだろうなと思って。楽しかったですし、加藤さんも楽しいと言ってくださったので。クールに見えて、本人曰く、けっこうふざけている方らしいです(笑)。
そのコンサートのときに、初演でアン王女を演じた大地真央さんともご一緒させていただいたんですが、大地さんは日本のオリジナル・ミュージカルの主演を何本もされていて。それを受け継いでいってほしいということを、その時に大地さんが仰っていて……そうだなと思ったんです。海外作品を翻訳して上演することは多いですが、日本でこれだけのミュージカルを20年以上前に作っていた、そしてその作品を受け継いでいくというところに今自分が立たせてもらえているということを自覚して、橋渡しというか、自分がまた次の世代につなげていかなくてはいけないなと思っていて。今回の舞台もそうなるよう無事成功させたいです。今は、ぜひ来てくださいとはなかなか言えない状況ではあるんですが、『The Musical Concert at Imperial Theatre』を上演したことで、帝劇のスタッフの中にもどうやって上演すればいいかというマニュアルができて、劇場を開けていくということに対して少しずつ経験値が上がってきていると思うので、そこは最良の方法でやってくださると思いますし。お客様も、不安な部分や、ご自身は勿論、ご家族や周りの方のために、といったご判断もきっとあるのかなと思うのですが、そんな中でも観たいと思ってもらえることは、やはり私たちの励みになります。劇場を閉めないということで、みんなが努力をして、今のこの状況を一緒に乗り越えていけたらと思いますね。そうやって少しずつでも前に進み続けて、コロナはずっとあるものだろうから、共存していけるようにみんなが努力しているところだと思うんです。コンサートで大丈夫だったからミュージカルでも大丈夫ということが証明できれば、今後につながっていくと思うので、そこは最大限の努力をして。劇場にいる間は、『ローマの休日』の世界に、いろいろなことを忘れて没頭していただけるような舞台が務められたらと思います。美しいお話ですし、舞台装置も非常に凝っているので、私も楽しみです。ベスパにも乗りますので。スクーターは乗ったことがないので、練習します! ちなみに、自転車に乗るのは上手です(笑)。
朝夏まなと
スタイリスト=加藤万紀子
ヘアメイク=根津しずえ

取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=鈴木久美子

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