『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の
“映画の指輪のつくり方”』
- 第四十一回 -「パプリカ」の指輪

2017年から本格的に活動を開始したシンガーソングライター〈みねこ美根〉が大好きな映画の世界から作り出す紙粘土細工と指輪の制作過程をお見せします。ミニチュア好きな方、アクセサリーづくりに興味のある方は是非見ていってください。指輪はライブ会場にて展示しております。

動画監督・撮影・編集・演奏・文:みねこ美根

「内なる小学三年生が決めた遥かなる望遠カメラ(2006年「パプリカ」)」

物凄く怖い夢を見た。小学校の校舎が宿泊所になっていて、合唱団と歌を歌ったり、小学校から大学までの同級生がごちゃ混ぜに登場し、カーチェイスをし、学校の下駄箱で肉塊の怪物になってしまった少女をなだめ、私のリュックを引っ掻き回しお守りを踏んづけた人を殺してしまい、逃げようと荷物をまとめる、そんな夢。夢でよかった。こんなに夢を見たのはたぶんこの映画を見たからかな。
2006年公開の今敏監督の「パプリカ」は、アニメーションの映画。ずっと前から見たいと思っていたものの、顔がぱかっと割れて中からまた顔が出てくる、という子どものころに見た予告が少しトラウマで、恥ずかしながらこれまで見たことがなかった。でも、この夏にYouTubeで配信されていたフジロックを見ていた時に、本作の音楽を担当していた平沢進氏の映像を見たことや、数日後の8月24日が今敏監督の命日だったことから、「パプリカに導かれている気がする…」、そんな気持ちになった。気持ちがとても落ち込んでいた夜に、もういっそのこと狂ってしまおう!とこちらを鑑賞致しました。このタイミングで見れて良かったと思う。

パプリカとして患者と夢を共有しセラピストをしている千葉敦子は、その夢を共有する装置DCミニを開発した研究所で働いている。ある時DCミニが盗まれてしまう。盗んだ何者かによって悪用されること恐れ、対策を取ろうとした矢先、その何者かに見させられた悪夢によって研究員が正気を失ってしまう事件が起き、千葉敦子たちは犯人と事件が起きた理由を探っていく、という話。
夢に入る系の映画だと、「インセプション(2010年)」や「ザ・セル(2000年)」を見たことがある。「パプリカ」と「インセプション」の類似点を挙げているサイトやSNSの投稿を見たことがあったのでその点でも気になっていたのだが、今回実際に見てみたところ、あらら、確かにそういわれても仕方ない似方だな…という印象だった。「ザ・セル」は殺人犯の夢に入って被害者を探すといった話で、かなり惨く、見終えた後、どどぉーんと落ち込んだ。「ザ・セル」くらい凄まじいと私の精神が持たないぞ!という感じだったのだが、予想していたより「パプリカ」は楽しく見れた。今回指輪を作るにあたって何度も見返しているけれど、全然飽きない。
独特な世界観や迫力もさることながら、ストーリー展開が巧妙に作られていると思った。全体として、DCミニが盗まれたことから始まる事件が一貫して流れを作っているんだけれど、パプリカの治療を受けている粉川刑事の物語も並行して展開される。私の勝手な印象だが、DCミニ事件側で夢の狂気を好き放題に描く一方、粉川刑事編で観客の共感を得る普遍的なメッセージを描くことで、誰もついていけないマニアックな世界と、共感しやすいポピュラーな世界のバランスを取り、非常に巧く構成していると感じた。そして、その両方の世界へ誘ってくれるのがパプリカなのだ。

気が狂うシーンが度々出てくる。その時に支離滅裂な言葉を登場人物たちが言うのだが、そのセリフが絶妙で素晴らしい。今回この記事のタイトルにした「内なる小学三年生が決めた遥かなる望遠カメラ」もその一つ。日本語だから、何となく聞いていると分からないのだが、あれ?あれあれ?と次第にその違和感に気が付く。それがわざとらしくなく、でもしっかりと狂っているのがすごい!皮肉がきいていて、空恐ろしい。狂気は、正気で構成されているのかもしれない。
そして音楽。作中ではインストになっているけれど、平沢進氏の「パレード」、主題歌の「白虎野の娘」をはじめとする楽曲は、本作の、現世のディストピア感と近代感と我々がいて我々はどこにもいない感を表しているというか……、精神はつまりは混沌だけれど、己の精神は秩序を持っていると信じて疑わない私たちを風刺しているというか…。なんか難しくなってきた。無知の知です。この先はやばいとはわかっているんだけど興奮せざるを得ない作用がある、本作の熱に浮かされた高揚感の大きな要素だと思う。歌詞もすごい。(本作に出てこないけど)「パレード」の「あれがリバティー ユートピアのパロディ」という一節にぶっ刺された。この曲がインストで流れるシーンも悪夢なのに悪夢じゃないようで悪夢。クセになる。

今敏監督は2010年に46歳という若さでお亡くなりになっている。本作を見た後、今敏監督の最後のブログ「さようなら」を併せて読んだ。
まだ本作以外の作品は見ていないので、今から見るのが楽しみです。お勧めあれば教えてください。

さ、私もたくさん世界を作っていこう。たくさん届けていこう。
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モチーフ:眠るパプリカ、青い蝶、日本人形とパレード、メリーゴーランドの馬、大売り出しの旗、標識、DCミニ
音楽:平沢進「パレード」 オルゴールver.cover
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みねこ美根 プロフィール

ミネコミネ:6歳の時にピアノで初めて作曲、11歳からはギターでの作曲も開始し、現在はピアノとギターを用いてライヴ活動中。2019年1月リリースの配信EP『心火を従えて愈々』で楽曲のクオリティの高さ、世界観が注目を集め始める。同年8月に下北沢GARDENで初のワンマンライヴを開催し、座席チケット、立見チケットともに完売。みねこ美根 オフィシャルHP

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