The Songbardsが導き出した、いま音
楽にできること、音楽にはできないこ
ととは?

昨年11月、1stフルアルバム『CHOOSE LIFE』をリリースし、メジャーデビューしたThe Songbardsが、新たなミニアルバム『SOLITUDE』を完成させた。5曲それぞれが全く異なる個性を持っているのも、それなのに一つの大きな物語のように聴こえるのも面白い。これまでにないタイプの曲も活き活きと鳴っていて、バンドの充実感が窺える。そして、生活を考えるきっかけとしての音楽を志向しつつ、“生活を変えることができるのは、当事者であるあなただけだ”というメッセージを発信するバンドの姿勢は健在。むしろ、さらに強まった印象さえ受ける。音楽にできること、音楽にはできないこと。その両方を見つめることが彼らなりの誠実さなのだろう。メンバー4人に話を訊いた。
――外出自粛期間中に新たにやり始めたことってありますか?
松原有志(Gt/Vo):僕は運動ですかね。ジョギング。……ん? ジョギングとランニングって違う?
上野皓平(Vo/Gt):ジョギングの方がちょっと軽いかな。
松原:じゃあランニングとジョギングと散歩ですね。
岩田栄秀(Dr/Cho):ジョギングは僕もわりとしました。走ることでリズム感が鍛えられるという説があるんですよ。それを期待して続けていたんですけど、効果があるのかどうかは結局今も分からないです(笑)。
柴田淳史(Ba/Cho):僕は、新しく始めたことはあまりなくて。好きな映画をもう一度観直したりしていました。あと、SNSをそんなに見なくなりましたね。あの時期はいろいろな情報が出ていたけど、何が正しくて何が間違っているのか、曖昧だなと思って。そういうものに惑わされるよりかは、最初から見ないようにして、自分で調べたことを信じようと思いました。
上野:僕は、元々興味があったけどできなかったことを、いろいろと試してみて。例えば、3日間断食したり。
――断食?
The Songbards/上野 皓平(Vo,Gt) 撮影=横井明彦
自分が社会の一員として今認められているのは、バンドという形態があるからで、だからこそ音楽をちゃんとやりたいと、再認識する機会になりました。
上野:はい。断食はずっと興味があったんですけど、へとへとになって唄えなくなるだろうなあと思っていたのと、精神世界の深いところまで行くと戻りたくなくなるんじゃないかっていう不安もあって、なかなかやれなかったんです。断食以外にも、ヨガを毎朝してみたり、瞑想の時間を増やしたり、溜まっていた本を読んだり、そういうことに時間を費やしました。そのなかで改めて気づかされたのは……結局自分は、バンドで曲を書いたり演奏したりすることによって、社会との関わりを持っていて、それ以外では何者でもないということ。自分が社会の一員として今認められているのは、バンドという形態があるからで、だからこそ音楽をちゃんとやりたいと、再認識する機会にはなりました。
――お三方は、音楽との向き合い方に対する変化はありました?
柴田:僕はあまりなかったですね。
岩田:僕も、直接的にはそんなに。家で作業することが増えたので、血圧の低い曲を聴くようになったぐらい。
松原:僕は、他のアーティストの音楽を聴こうという気持ちに、そこまでならなかったというか。人が生きるか死ぬかどうかを考えざるを得ないような、結構極端な環境だったとは思うんですよ。そうなったとき、僕の場合は、音楽に救いを求めなかった。“自分を支えてくれる”“助けてくれる”という気持ちが、音楽に対しては向かなかったんですよね。「音楽にはあのときに助けてもらった」「だからこういうことがあったときにも、きっと助けてもらえるんだろう」というのが自分のなかに蓄積していたんですけど、自分が思っていた「きっと助けてもらえるんだろう」は幻想だったというか。あくまで僕の中の話ですけど、そういう変化はあったかなと思います。だから今は、音楽を自分のやることとして捉えているんだなと。逆に、エネルギーをつけたいときに聴きたい音楽はまだまだあるので、(バンドが)次の活動に向けて動こうという状況になったときに、ようやく他のアーティストを聴けるようになりました。
――それは結構重大な変化な気がしますが……。The Songbardsとしては、昨年11月にリリースされた『CHOOSE LIFE』のレコ発ツアーとして、元々対バンツアーとワンマンツアーをやる予定で。対バンツアーは終えられたけど、ワンマンツアーは中止になってしまいました。
柴田:ワンマンツアーの準備も通常通りやっていて、「よし行くぞ!」というタイミングで、唐突にこういうことが起こってしまって。状況が状況だからしかたないし、そういう方向(納得する方向)に自分の気持ちを持って行きはしたんですけど、悔しさはどうしてもありましたね。
上野:とはいえ、悔しさやもどかしさはありつつも、(ワンマンツアーに向けて)蓄えていたエネルギーを使うべきところが、他にもあるので。“このエネルギーを何に向けられるかな?”と考えていきました。
岩田:職種によっては、今までやってきたことが全くできなくなってしまった人もいると思うんですよ。だけど僕たちは、できなくなったこともあれば、まだできることもあったので。大変な状況ではありましたけど、個人にできること/チームにできることを考えるなかで、チームに感謝するきっかけにはなりましたね。
松原:現状、ミュージシャンは「ツアーができなくなった」「じゃあ他のところにエネルギーを向けよう」ということができる職業ではあるので、そういう意味では恵まれていますよね。音楽では病気を治せないけど、音楽にできることは他にもあるし、自分がやりたいのは今のところ音楽なんだなと、改めて思いました。
The Songbards/松原 有志(Gt,Vo) 撮影=横井明彦
「窓に射す光のように」は、自粛期間を過ごしているうちに“今この曲を聴いてほしい”と思えるようになって。もう委ねようと思えました。
――実際、ワンマンツアーが中止になったあとも、The Songbardsは積極的に動いていましたね。それを外から見ていて思ったのは、リスナーと“ステージの上と下”という関わり方ではなく、“同じ高さのところにみんな集まっている”という関わり方をしたかったのかなと。
松原:もちろんライブの瞬間になれば、覚悟を決めてステージに立ちます。だけど僕らは、たまたまバンドをやって、曲を作っているだけ。音楽そのものを作ったわけではないし、いろいろな偉人たちがいるなかで、そこに乗っかっているだけの話なので。だから、僕は……これは“僕たち”はと言っていいと思うんですけど、そこ(バンドとリスナーの間)に差はないと思っています。
上野・柴田・岩田:(頷く)
松原:もちろん、世の中にたくさんある音楽から、The Songbardsの曲を選んでもらえたら嬉しいなあとは思いますし、選んでもらえるような曲を作りたいとも思っています。だけど、そうなるように無理やり誘導するのはちょっと違うんですよね。むしろ、僕たちも既にいるアーティストに憧れて、そこに近づきたくて(バンドを)始めたところがあるから、そっち(他のアーティスト)も聴いてほしいという気持ちがある。
――だから音楽を媒介とした広場のような場所を作りたかったと。
岩田:バンドからお客さんに対して繋がりを保とうとするんじゃなくて、全員が繋がれる場そのものを設けることによって、お客さん同士でのやりとり・会話が生まれたんですよ。例えば、プレイリストの企画のなかで、「この曲選んだの誰やろ?」みたいな感じで、話が始まっていたりとか。人と人との繋がりを感じづらい期間中に、自分以外の存在を、より意識できる場が作れたのはよかったと思っています。
柴田:それに、思っていたより多くリアクションをいただけたんですよ。
――プレイリストも最終的にすごい曲数になっていましたね。
柴田:はい、本当にすごい数で。ちゃんと考えて一つ(行動を)起こせば、応じてもらえるんだなあということをすごく感じましたね。
――そして6月には、今回のミニアルバムにも収録されている「窓に射す光のように」が先行配信されました。
上野:緊急事態宣言前から制作していた曲ですね。
松原:『CHOOSE LIFE』のデモを作っていた頃からありました。
――コロナ禍で制作したと言われても違和感のない曲ですけど、この符合についてはどう感じていますか?
上野:それに関しては、本当に偶然やなって思うんですけど……何かのインタビューで有志が話していたことを聞いて、まさにそうだなと思ったんですよね。
松原:え? どの話やろ。
上野:何十年かけて起こるようなことが短い期間で起こった、みたいな話してたやんか。
松原:あ~。……人って、最終的に仕事をしなくてもいい状態を目指して、いろいろなことを便利にしてきたと思うんですよ。今までずっとそうだったし、徐々に変化していたんだけど、こういうことが起きたときに、それが急に試されるようになったというか。ここ数ヶ月で“移動しなくてもできること”が急に増えた気がするけど、別に日頃から、そういうことを考えてビジネスにしている人はいるんですよね。それと同じように、俺らは日頃から“生きるか死ぬか”みたいなところに興味があって。「窓に射す光のように」は、そういうことを考えているなかで、たまたまできた曲ですね。
――なるほど。
松原:歌詞はほとんど皓平なんですけど、良く言えば“タイミングが重なった”、悪く言えば“あざとさがある”みたいなことは、もちろん自分たちでも思いました。だからこそ、最初はあざとくなりたくないって思っちゃったんですよね。こういう状況のなかで「よし、今だ! この曲だ!」みたいなことはしたくなかったんですけど……。
――結果的に先行配信したということは、どこかのタイミングで考えが変わったのでしょうか。
松原:そうですね。この曲、歌以外が録り終わった状態で自粛期間に入ったんですね。で、最初はあざとくなりたくないと思ったんですけど、自粛期間を過ごしているうちに「あ、今この曲を聴いてほしい」って自然と思えるようになって。いろいろと考えが巡った結果、“あざとさとか、そんなこと、何を気にしてるんだ!”みたいな(笑)。別に自分たちの力でどうにかできる問題でもないから、あとはもう委ねようと思えました。
――演奏を録ってから歌を録るまでに時間が空いたというのが結構意外で。
上野:録ってはいたけど、やっぱり録り直したいなと思って、歌だけ自粛明けに録り直しました。
――その判断が効いたのか、このテイク、すごく良いですよね。まず歌が良いし、ボーカルと楽器隊のダイナミクスが自然に揃っているのも良い。みんなで呼吸を共にしている感じがします。
上野:この曲は特に全体の呼吸感が一番に伝わるようにしたいと思っていたので、今言っていただいたことはめちゃくちゃ嬉しいです。歌に関しては、時間が空いたことによって、単純に練習する機会ができたんですよね。
――この曲が顕著ですが、上野さん、感情を歌に落とし込むのがお上手になったというか。やっぱり、これまで以上に“歌に向き合う”という作業に取り組んだ感じですか?
上野:そうですね。もちろん“技術的に足りていなかった部分ができるようになった”というのもあるんですけど、歌は多分、いろいろな要素が重なったことによって、こうなっていて。まず、感情的な部分が増えたということに関しては、“そうしたい曲だからそうした”というのもあります。例えば「春の香りに包まれて」みたいな曲をすごく感情的に唄うのは、ちょっと違うじゃないですか。だから、曲自体が求めていたから、そういうふうに唄った、という感じですね。……ちょっとカッコつけた言い方になっちゃいましたけど。それとは別に、さっき“外出自粛期間中に精神的な部分を掘り下げた”という話をしたと思うんですけど、多分それも関係していて。あと、歌というものは、The Songbardsというバンドにとって一つ重要な要素だから、そこについてもこの期間中、改めて考えたんですよね。……というふうに、本当にいろいろな要素が重なった結果、歌はこうなったんだと思います。
The Songbards/柴田 淳史(Ba,Cho) 撮影=横井明彦
今回の作品では、僕たちがずっとやってきたことを、ちゃんと、自分たちの思う形で出せたんじゃないかと思っています。
――歌も素晴らしいけど、歌心に特化した曲だけが並んでいるわけでもないというか。“今の音、何!?”みたいな瞬間の多い、バンド・楽器の面白さが伝わってくるアルバムだとも感じました。
柴田:僕らのことを“歌モノのロックバンド”として見ている人も多いと思うんですけど、僕らとしては、別に歌モノという意識でやっているわけではなく。元々、自分たちがやりたいサウンドを作ってきたんですけど、今回の作品では、特にそれが効果的に出せたというか。僕たちがずっとやってきたことを、ちゃんと、自分たちの思う形で出せたんじゃないかと思っています。
岩田:客観的に聴いても面白いなあと思えるほどに、バンドとしての幅、面白さみたいなものを感じる作品ですよね。『CHOOSE LIFE』のときは1stアルバム然としたものを作りたかったんですけど、今回はもう少し自由にできたかなと思います。その“自由に”っていうのは、曲が元々持っているものを活かしつつ、面白さを詰めていこう、という感覚なんですけど。
――“曲が呼ぶ方へ”という感覚は先ほど上野さんの話にも出てきたので、バンドの姿勢として、今回はそういう方向性なんでしょうね。
岩田:曲が求めていないことをあえてやる、っていうのも、それはそれで、みんな好きなんですけどね。メンバー同士ぶつかり合っているような曲も今後やってみたいですけど、今回は、曲に対する解釈をそれぞれ持ち寄る感じで進めました。
――『SOLITUDE』というタイトルはどこから?
上野:孤独ってすごく主観的な考えから生まれてくるもので、だからこそ、“考え方次第でどうにかなるもの”として捉えられたらいいなっていう想いがまずあったんですよ。エラ・ウィーラー・ウィルコックスというアメリカの詩人がいるんですけど、その人の「情熱の詩」という詩集の中に「Solitude」という詩があって。“あなたが笑うとき、世界は一緒に笑うけど、あなたが泣くとき、あなたは一人だ”っていう内容なんですけど。
――……ちょっと難しいですね。上野さんはどう解釈したんですか?
上野:ポジティブなエネルギーは人を集めるけど、悲しさは、たとえ寄り添ってくれる人がいたとしても、一緒に解決してくれる人はいない――ということなんじゃないかと。
――だから今回描いているのも“他者がいるからこその孤独”なんですね。部屋に一人きりでいる状態ではなく、他者比較からの劣等感というか。
松原:はい。状態としての孤独ではなくて、感情としての孤独を扱っているつもりではいます。
――で、それはあくまでも“他者には介入しようのない問題”であると。
松原:例えば、“旅に出たら孤独じゃなくなるよ”と唄うにしても、それで本当に孤独じゃなくなる人もいれば、旅に出たことによってさらに孤独になる人もいるじゃないですか。物事を解決する手段は人によって絶対違うし、だからこそ、誰かに何かを望むんじゃなくて、“自分が自分に期待している”と考えていかないといけないんじゃないかな――というのが、僕たちの今のところの結論なので。だから結構、余白はあると思います。
――そこはバンドの姿勢として大事にしているポイントですよね。曲のなかで答えを言い過ぎないというか。
松原:そうですね。やっぱり、いろいろなことに対して、“分かりやすくしたらいいってもんじゃないんじゃない?”と思うことが多いんですよ。“そのための手段が何かは分からないけど、そういうものがあるかもしれないよね”という言い方は、宙ぶらりんかもしれないけど、俺らは今のところ、そういうものを表現するだけでいいと思っているというか。
――いいと思いますよ。「絶対大丈夫!」と無責任に言ってくるよりかは。
松原:まあ、どっちが無責任かというのも、人によって違うとは思うんですけどね。歌詞でちゃんと言ってくれた方がいいんだっていう人もいるかもしれないし、“ふわふわさせて、それっぽいこと言いやがって”と思う人もいるかもしれない。それはもう好みの問題なんですけど。自分たちの歌詞だけでは抽象的な部分も多いから、補足の意味を込めて、完全限定生産盤に付属されるマテリアルブックでは、晧平が、歌詞とは別の詩を書いています。知りたい人はそちらも読んでみてください。
The Songbards/岩田 栄秀(Dr,Cho) 撮影=横井明彦
新しい曲を、僕らだけを観にくれた人たちの前でやれるのはすごく楽しみです。ライブ、できたらいいですね。楽しみにしています。
――分かりました。最後に、11月からのツアーの話を伺えればと。中止になったツアーと同じ都市をまわる=叶わなかったことを回収しにいく意味合いも含まれているとは思いますが、とはいえ、『SOLITUDE』の新曲が増えている状況で。
上野:この期間中もバンドはちゃんと活動していて、進んでいたよっていうことを、改めて感じてもらえたら嬉しいですね。
柴田:中止になったツアーの代わりではなく、一つの新しいツアーとして考えていますね。ツアーは、みんなのために(ライブを)しに行くというよりかは、自分自身としても、バンドとしても、得られるものが多い機会なので。そういう意味で、自分たちも楽しみつつ、その過程をお客さんとも楽しめたらいいなあと思っています。
松原:ライブは、世の中的に最優先事項ではなかったじゃないですか。それは分かっていたし、しかたないよなあって思っていたんですけど、日が経つにつれて、ライブがしたいっていう気持ちが強くなってきて……。今の自分たちは「させてくれよ!」と思っているので、そのエネルギーを発散できたらと。もしも開催できたら来てほしいなと思います。
岩田:あとは単純に、新しい曲を、僕らだけを観にくれた人たちの前でやれるのはすごく楽しみです。ライブ、できたらいいですね。楽しみにしています。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=横井明彦
The Songbards 撮影=横井明彦

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