フレデリックの最新作『ASOVIVA』が
示す、音楽と時代と"遊ぶ"姿勢

フレデリックは次のステージに進みます!」という言葉ともに大成功を収めた2月24日の横浜アリーナワンマン公演から7か月、いよいよフレデリックが『ASOVIVA』と題した最新EPをリリースする。

その間、新型コロナウイルスの影響で日本の、いや、世界中のミュージック・シーンの在り方が変わってしまったわけだが、“音楽で遊ぶこと”を掲げているフレデリックはそんな状況を逆手に取って、新たなことに挑戦しながら自らのモットーを実践してきた。その成果の1つが、配信ライブの『FREDERHYTHM ONLINE「FABO!!(Frederic Acoustic Band Online)」』であり、3密を避けるためリモートで制作した『ASOVIVA』だ。
『ASOVIVA』には7月8日に配信リリースした「されどBGM」をはじめ、ダンス・ミュージックを軸に曲ごとに趣向を凝らしながら、80’ s風のファンク・ロックだったり、ニュー・ウェーブ調のロック・ナンバーだったりと、それぞれに違う魅力を打ち出した新曲4曲と『FABO!!』からの3曲(通常盤は2曲)が収められ、コロナ禍のさなかで彼らが残した足跡を記録した貴重な作品となっている。
充実感があるのだろう。横アリ以来7か月ぶりに会ったメンバーたちに話を聞いたところ、まだまだどうなるかわからない状況をシビアに受け止めながら、悲観するどころか、そこに希望を見出していることが伝わってきた。彼らがそう言うのだから、僕らも希望をもって、音楽をとことん楽しめばいい。そんな意味でも、僕らは音楽に救われている。
――7月18日の『FREDERHYTHM ONLINE「FABO!!(Frederic Acoustic Band Online)」』、7月31日の『ビバラ!オンライン2020』ともに、配信ライブを家でじっくり見てもらうなら、アコースティック編成でいつもとは違うアレンジを楽しんでほしいという発想だったんですよね?
三原健司(Vo/Gt):そうですね。オンライン・ライブがこのコロナ禍でより注目されることになって、いろいろなミュージシャンがオンライン・ライブで何ができるか挑戦していると思うんですけど、その中で「フレデリックならこうする」っていうことをやってみたんです。オンライン・ライブが注目されているからこそ、そのままいつもどおりにライブをやっちゃったら、自分たちらしくない。「何をやったらおもしろい?」と考えたとき、アイディアはいろいろあったんですけど、一番初めに見せたいと思ったのがアコースティックだったんです。
――じゃあ、今後、オンライン・ライブをやる機会があったら、アコースティック以外のことも試してみたい、と?
健司:もちろん、他にもやりたいことはいろいろあるので、別の形でやると思います。
――そこが音楽で遊んでいこうというフレデリックの本質ですよね。
三原康司(Ba/Cho):アコースティックになると、アレンジも普段のダンス・ミュージックを軸にしている感じではなくて、歌に寄せたメロウなものになるので、まったく別ものという意識でやったんですけど、そういうアレンジを考えるところから楽しくやれましたね。毎回、アコースティック・ライブはアコースティック・ライブで、どう見せようか、みんなで話し合うんですけど、普段やっていることとはまた違って、自分たちの趣味を出せるという意味でも、すごくおもしろくやれたと思います。
――赤頭さんはアコースティック・ギターに加え、ガット・ギターもプレイしていましたね。
赤頭隆児(Gt):ワンマン・ライブでたまにアコースティック・アレンジで何曲かやることもあったので、だいぶ慣れてきましたけど、弦の太さが違ったり、鳴らし方が全然違ったりして、最初は大変でした。でも、せっかく慣れてきたので、ガット・ギターとか、エレキとか、アコギとかを使い分ける場面を、もっと増やしたいですね。
――そんなふうに配信ライブもやりながら、これまでのようにライブができない日々を過ごしているわけなのですが、その中で改めて音楽と向き合ったところもあるんじゃないか、と思います。ただ、向き合った結果、音楽に取り組むみなさんの気持ちは変わることなく、むしろさらに強いものになったという印象を、配信ライブや今回のEPから受けたのですが、実際にはいかがでしたか?
健司:2月24日に横浜アリーナのワンマンを終えて、しばらくしてから大型のライブは自粛要請が出たじゃないですか。そこからライブハウスはどうなっていくのか、まだわからないけど、今、自分たちにできることをやろうということで、スタジオに入ったり、その時点で決まっていたライブのセットリストを早めに決めたりしていたんです。でも、3月の対バン・ツアーが中止になった段階で、今やれることを考えているだけではダメだ。もうちょっと先を見なきゃとなったんです。正直、3月のライブがなくなったときに、たぶん4月、5月、いや、6月、7月って続くぞと思って。
――そうだったんですか。
健司:だったら、丸一年ライブができなかったとしても自分たちが何かしら発信できるものを作りたい、という話し合いをして、SNSで発信するところから、いろいろ先を見て動き出したときに、宅録でレコーディングしようって話が出たんですよ。それで各々機材を揃えて、リモートでレコーディングして、今回の『ASOVIVA』を作ったり、そのときにできた新曲をSNSで流したりして。そんなふうに自分たちの裏の……裏と言うか(笑)、表に出ていない活動の中ではリモートで制作しながら、表ではSNSでちゃんと音楽をやっているってところを見せたり、YouTubeで『ASOVISON』っていう自分たちの音楽映像コンテンツを作ったりしながら、表現は絶対止めずにいようと思いながら活動してきました。このコロナ禍で、状況が変わっても自分たちは音楽を世に送り出すことを止めないでおこうというのは、この4人の中でずっとありましたね。
――じゃあ、むしろ忙しかったわけですね。中には最初の1、2か月、何をやったらいいんだろうと途方に暮れたバンドもいたようですが、フレデリックは早々に先のことまで考えて、どんどんやれることをやっていった、と。
健司:この状況下でも自分たちにできることはないかって行動は早かったという実感はあります。そもそも、この10年、バンドをやってきて、1、2か月ライブがないっていう経験がなかったから、1、2か月何もしないのはもったいなかった……と言うか、何をもって終息とするかはわからないですけど、コロナ禍が何かしら終わりを迎えたとき、その期間に何を残せたか大事にしたいという考えが4人ともあったと思います。普段から何もしていないことがないメンバーなんですよ。そこに関しては、みんな、意識が高かったですね。
高橋武(Dr):何も残せないのは、どう考えても良くないと思っていました。普段のレコーディングとか、ライブとか、リハーサルとか、何でもそうですけど、時間なんて使おうと思えば、いくらでも使えるじゃないですか。だったら、そのときにできる自分たちのベストを尽くすっていうのは、僕はミュージシャンとしてあるべき姿だと思うし、今までどおりフレデリックはその姿勢を取ったっていうのがすべてだと思います。新しいことにチャレンジしたりとか、新しい機材を揃えたりとかってこともあるんですけど、根底にあるのは、何も変わっていないとも言えるのかな。たぶん、どういう状況だったとしてもフレデリックは、そのときできることを精一杯やっていたと思います。
康司:そうだね。
フレデリック 撮影=菊池貴裕
赤頭:それにライブがないときにしかできんこともあって。僕はライブ用の(エフェクターの)システムをずっと変えたかったんですよ。でも、毎週ライブがあったから、なかなか変えることができなかったんですけど、全部のライブがキャンセルになったタイミングで僕の楽器スタッフさんもスケジュールが空いて、やっと変えることができました。しかも、楽器スタッフさんが付きっきりでやってくれたので、僕はそういう意味でも充実していましたね。ただ、システムを変えたものの、いつ使えるんやろっていうのはありましたけど(笑)、今度のツアーでやっと使えるのかと思うと楽しみです。
――そんな中で今回のEPにも入っている「されどBGM」を、7月8日に配信リリースしたわけですが、この曲は明らかにコロナ禍を含む現在の状況に対するフレデリックのステートメントと言うか、フレデリックの音楽観を改めて歌っているんじゃないかと思うのですが。
康司:今回、<たかがBGM されどBGM>という言葉を使ったんですけど、この状況下で音楽っていうものが本当に必要なのか?という議題がネット上はもちろん、いろいろなところに上がっていたじゃないですか。でも、自分にとって音楽はフレデリックを始めてから常にそばにあるもので、ステージに立って、音楽を通してお客さんとコミュニケーションを取ってきたことを考えると、音楽が不必要と言われることに、どうしても疑問を持ってしまうんですよ。自分の中では、“衣食住音”ぐらいに思っているし、その音楽に背中を押されるって光景も見てきたし、逆に自分たちが背中を押されている気持ちにもなれたし、それが不必要と言われるのは絶対に違う。だから、僕らは<たかが>ではなく、<されど>と思いたい。ちゃんとそういう目線で、自分たちは現在のこの状況下で音楽を伝えていかなきゃいけないんじゃないかと思いながら、この曲を作りました。
――今のお話を聞きながら思い出したんですけど、横アリのワンマンの時に健司さんは「音楽は大好きですか?」と何回かお客さんに問いかけていたじゃないですか。また、この間の配信ライブでも、「音楽をより大好きになってもらう方法を、フレデリックは考えていきたい」とMCで言っていましたよね。「フレデリックは好きですか?」ではなく、「音楽が大好きですか?」というところが興味深いのですが、それはどんな思いから出てきた言葉なんですか?
健司:フレデリックってバンドがすごく大事にしているものって、根本は音楽だと思っているんです。ただ、今、一般的に世に出ているアーティストって、その音楽の良さだけを評価されて、たとえばメジャー・デビューできたわけじゃないと思うんですよ。たとえばそのアーティストの世界観が好きとか、顔が好きとか、人柄が好きとか、いろいろな魅力が詰まっているからこそアーティストなんだと思うんですけど、根本にあるのは何だろうって探っていったとき、フレデリックはやっぱりミュージシャンだし、音楽を一番大事にしている。そういう俺らの思いを伝えたいから、「音楽は大好きですか?」って問いかけているんです。
でも、それは「好きですか?」「はい。好きです」という対話だけで終わるものではないと言うか、俺は入口みたいなものだと思っていて、そこから入ってきた人を、もっと音楽を大好きにさせるものを、フレデリックは持っていて、それをずっと用意しつづけることができると思っているからこそ、そういう問いかけをしているところもあります。当たり前のことではあると思うんですよ。ミュージシャンとして一番音楽を大事にしているって。でも、それをちゃんと伝えたいんです。
なんとなく、なあなあになっているような気もするんですよ。もちろん、そういうことを言うべきじゃないと思っているアーティストが断然多いと思うんですけど、でも、それを言い続けても俺はいいと思っているし、それが俺の伝えたいことだし、伝えたいから伝えているところもある。でも、それはバンド全員の意思ではなく、俺だけの意思ではあるんですけど、結果的にみんながそれをいいと思ってくれるから、バンドの意思になっているところはあると思います。
――なるほど。さっき康司さんは衣食住音ぐらいに思っているとおっしゃっていましたが、ファンにもそう思ってほしい?
健司:いや、そこを大事にしているバンドなんだと思ってもらえれば。そこだけわかってもらえればいいです。「じゃあ、君も!」とまでは思わないです。そこは康司が言っているように、音楽の捉え方は自由なんで。
フレデリック 撮影=菊池貴裕
――ところで、「されどBGM」は他の曲に比べてタイトなドラムが――
高橋:お、そうなんですね。
――あれ、違いますか?
高橋:個人的には一番タイトじゃないと思います。
――そうなんだ。
高橋:音色ですか?
――いや、手数の話です。
高橋:キックとベースラインの絡みという意味では一番タイトかもしれないです。でも、ビート的な揺れ方という意味ではタイトではないです。この曲と「SENTIMENTAL SUMMER」は一番人間味があると思います。
――なるほど。何を言いたかったかと言うと、「されどBGM」はタイトなドラムで、これだけ曲の熱度を上げるのはすごいな、と。
高橋:今回、自宅だったので、電子ドラムでのレコーディグだったんですよ。
――あ、そうか。
高橋:生ドラムじゃないんです。だから、そういう面で、今までにないタイトさを感じたのかもしれないですね。電子ドラムを演奏するっていうのは、打ち込みとはまた違って、僕が叩いたノリと僕が叩いたダイナミクスにはなるので、どこで人肌を感じて、どこで今までなかったような音作り――たとえば無機質な感じとか、最近のダンス・ミュージックにマッチした音作りをするかみたいなところも考えたんですけど、そのバランスは良く取れたと思います。それはどの曲にも言えることなんですけど。
――「されどBGM」のドラムは一番、人間味があるとおっしゃったじゃないですか。間奏の後のドラムのフィルを聴くと、ライブで叩いている光景が目に浮かぶんですよ。
高橋:めっちゃうれしいです。そういう感想はちょくちょく言ってもらえるんですけど、そういう印象を持ってもらえてるのはうれしいですね。
――リモート・レコーディングとは言え、決してライブ感を無視しているわけではないということが伝わってきました。
高橋:そういう意味では、電子ドラムでも思っていた以上に人間味って出るんだなって勉強になりましたね。
――リモートでのレコーディングは、具体的にはどんな作業だったんですか?
康司:レコーディング・スタジオに入れないってことになったとき、機材を買い込んで、自分たちの家で録れる環境をまず整えました。それから、Zoomをはじめ、いろいろな手段を使って、連絡を取り合いながら、制作していったんです。みんなで話し合いながら「ここはこうしよう」というやり方ではなくて、それぞれが思う形を1回提案しあった上で、話し合いを繰り返してというやり方でした。普段のレコーディングとは違うやり方だから、離れながらでも、それぞれに思っていることの擦り合わせについては、いつも以上に話し合わなきゃいけないのかなと思っていたんですけど、話し合わなくても気持ちが通じ合っているんだってところがけっこうあって、そういうことに気づけたのがおもしろくて、どんなやり方でも楽しめるんだなって改めて思いました(笑)。新鮮だったということもあるんですけど、意欲的に取り組めましたね。
――じゃあ4人で集まって、合わせるということを1回もせずにレコーディングしたわけですね?
康司:そうなりますね。そういう意味で、さっきちょっと話した、離れていても気持ちは通じ合っているんだなっていうのが感じられたんですよ。
フレデリック 撮影=菊池貴裕
――やりづらかったことはなかったですか?
康司:なかったですね。もちろん、みんなに会いたいとか、スタジオに入りたいとか、そういうのはありましたけど(笑)。
健司:レコーディング・スタジオでやる良さには、めっちゃ話し合えるってことに加えて、自分が弾いたテイクに対する判断を、人の意見をもらいながらできるとか、スタジオの時間が決まっているからその中で終わらせるっていう目標になることもあるんですけど、リモートの場合、そこがフリーになっちゃうから。自分で判断するって難しいだろうなと思っていたんですけど、みんな、判断するのがうまかった。そういう意味でも、リモートだから難しいっていうのはなかったですね。
康司:電波の状態が悪くなって、たまに喋っている内容がわからなくなったことぐらいですね(笑)。
健司:ミックスも劣化した音ではなくて、エンジニアさんがミックスしたそのままの音で届くような環境を整えたんですよ。これはレコーディング・スタジオじゃないとダメだよねっていうのはなかったし、むしろレコーディング方法の選択肢が増えたと思いました。今後はレコーディング・スタジオでまたやれるようになると思うし、もうやっている人もいるけど、リモートのほうが合っているってときはデータのやり取りをしながら、1人で宅録っていうやり方もやっていこうかという話もしているんですよ。
――「みんな判断がうまかった」と健司さんはおっしゃっていましたが、時間がフリーに使える中でOKテイクを決めるのは難しくなかったですか?
康司:難しくなかったですね。それはやっぱり、こういう楽曲を作りたい、こういうことをやりたいという意味で、全員の目線ががっちり合っていたからだと思うんですけど。
高橋:僕は普段、スタジオでやるときはテイク数が少ないんですけど、それに比べると、今回、めちゃめちゃテイクを重ねました。もちろん、ミスしたから録り直したわけではなくて、何を意識するかでノリや音作りが変わるんで、いろいろなニュアンスを試すという意味でテイクを重ねたんですけど、結果、1テイク目がいいということが多かったです(笑)。
康司:時間を気にせず、無限でやれるからね。
高橋:そこはリモートのメリットでもあり、デメリットでもあると思うんですけど、回数を重ねても、結局、最初のテイクになるんだってことが改めて自覚できたという意味では、メリットだったのかな(笑)。
――赤頭さんはいかがでしたか?
赤頭:僕は弾きながら、やっぱこっちでしょっていうのが変わっていくので、逆に普段はテイクを重ねる派です。
――じゃあ、今回も?
赤頭:スタジオだったら、これにしようかなと思っているテイクが、ちょっと「うーん」と思っている部分があっても、誰かに「それ、いいんちゃう」って言われたら、それで行っちゃうことがあるんですよ。それが悪いわけではないと思うんですけど、家でやるとそれがまったくないから、ちょっとでも「うーん」と思ったら、考える時間も試す時間もあるじゃないですか。しかも、「それ、いいんじゃない」って誰も言ってくれないから、全部、自分で決めるしかない。それはそれでよかった気がします。健司君が言っている、判断がうまいっていうのはそういうことだと思う。100%俺の意見っていう。4人でいると、性格的に「どう?」とか、「どっちがいい?」とか聞いちゃうこともあるんですけど、今回、それがないから新鮮だったかもしれないです。
フレデリック 撮影=菊池貴裕
――なるほど。今回は、いつも以上に自分らしいフレーズ、プレイになっている、と。健司さんはこの間の配信ライブで、「音楽で進化していきたい。進化していくところを見せていきたい」とおっしゃっていましたが、今回のEPにおけるフレデリックの進化を言葉にするとしたら、どんなところでしょうか?
健司:初めてやったアコースティック・オンライン・ライブからの3曲(通常盤は2曲)も含め、フレデリックが活動する上で大事にしている“遊び”を改めて提示できたところだと思います。新曲について言うと、いつも自分たちでレコーディングしたあと、デビューしたときからシンセ・サウンドを一緒に作るチームがいるんですけど、今回、「Wake Me Up」と「正偽」はそのシンセ・サウンドを、これまでと違う人にやってもらったんです。僕らの「対価」や「LIGHT」のミックスをやってくれたデイビーってカナダ人なんですけど、そのデイビーにいったん丸投げしたんですよ。もちろん、ある程度はこういう曲ですよって説明はしましたけど、敢えて、こっちの録り音だけ投げて、おもしろいシンセを作ってくださいって頼んだら、めっちゃおもしろい音を入れてくれた。それも含め、音色もだいぶ変わって、自分たちが思う遊びに提案をまた加えてくれた感じもして、フレデリックは自分たちだけじゃなくて、そういう人の協力もあって、遊べているっていうところも見せられたと思います。今までなかった部分を、自分たちでも提案できたし、提案ももらえたし、そういう意味で、また1つ自分がいつも言葉にしている進化はちゃんとクリアできたし、ここでまた新境地を開拓したっていう手応えはあります。
――敢えて丸投げしたのは、自分たちじゃ思いつかないおもしろいアイディアを加えてくれるに違いないと期待したからですよね?
健司:そうです。でも、それって康司が普段、俺らに投げてくれるやり方と同じというか、康司ってある程度、自分でデモは作ってきますけど、その中で曲の芯さえブレなければ、どういうアレンジでもおもしろがってくれるんです。それを外にいる人ともできた。デイビーとは長いつきあいだから、もちろん信頼はしていましたけど、正直、丸投げって怖いと言えば怖いというところもちょっとあったんですけど。
康司:そうだね。
健司:でも、デイビーは俺らの信頼の150%ぐらいで返してくれたんですよ。だから、自分たちも作っていて、楽しかったんだなと思います。
――全曲の作詞・作曲を担当した康司さんは、どんな手応えがありますか?
康司:『ASOVIVA』というタイトルをつけたのは、健司がライブの中で“遊び”という言葉を使っていたからなんですけど、コロナ以降、遊びに対する認識が変わりましたよね。楽しむことが悪に捉えられることも若干あるなと思うんですけど、楽しむことが音楽には不可欠じゃないですか。そういう根本的なところも含め、サウンドにしても、バンドの姿勢にしても、これまでのフレデリックらしさを更新できたと思っています。自分たちがフレデリックに持っているイメージを、一番遊んでいるんじゃないかな。健司が言っていた「音楽は大好きですか?」という言葉を、今回のEPでさらに伝えられると思うし、そういう意味では本当に自信作ですね。
――ところで、配信ライブでワンコーラスだけやった「SENTIMENTAL SUMMER」を、ライブ・レポートで僕はバラードだと紹介したんですけど、今回、EPに収録されているバージョンを聴いたらバラードじゃなかったという(苦笑)。
健司:アコースティック・アレンジをリリース前にやってもいいのかなと迷ったんですけどね(笑)。
――バラードと思わせて、こう展開するんだ⁉ってびっくりでした。
高橋:びっくりでした? そこらへん気になるんですよ。普通は、本来のアレンジを聴いてもらってから、アコースティックじゃないですか。順番が逆だと、どういう印象になるのかなっていう。
健司:音源に寄せるかという話にもなったんですけど、アコースティックはアコースティックでやったほうがよくないか?ということで、あのアレンジになりました。配信ライブを見た人は、よけいに楽しめると思います。
康司:元々は、こういう感じなんだってね。
――さて、10月10日から『FREDERHYTHM TOUR 2020 ~たかがMUSIC されどMUSIC~』と題したツアーが始まります。今後、状況はどんなふうに変化していくかわかりませんが、その都度、対応しながら工夫してやっていこうということなんですよね。
健司:そうですね。10月になって、いきなり以前みたいにやってもOKですとはならないと思うので、そこはガイドラインに沿ってやっていこうと思っていますけど、コロナ禍でフレデリックがやってきたことって、いろいろ思うようにできない状況の中で、フレデリックとしてうまいこと表現できたと思っていて。だから、今度のツアーもお客さんの数が減って、椅子がある中でも、フレデリックならこういうふうにやるんだっていうライブをしたいと考えています。2020年はいろいろあったけど、フレデリックはこういうふうに遊んでいたよねっていう年にしたいし、いつもそうやってきたバンドだからこそ、こういう状況も逆手に取れるようなことは考えています。
――そして、来年2月23日は日本武道館公演が決まっています。
健司:『ASOVIVA』というEPをリリースしてから、Zeppツアーがあって、そこでいろいろ試行錯誤していった上での武道館なので、そこが逆に楽しみなんですよ。ライブでは自分たちが思っている予想以上のものをいつも返してもらっているし、お客さんが入ると、これだけ変わるんだっていうのも、いろいろな場面で見てきているし、Zeppツアーで得たものがそのまま武道館に反映されるんだろうなと考えると、楽しみでしかたないんです。

取材・文=山口智男 撮影=菊池貴裕
フレデリック 撮影=菊池貴裕

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