TENDREがニューアルバム『LIFE LESS
LONELY』の全10曲を語るーー「現状
を経たことで強まったもの、向き合っ
たものが色濃く出ている」

9月23日(水)に待望の2ndフルアルバム『LIFE LESS LONELY』をリリースしたTENDRE。コロナ禍の下、完成したこの作品には、社会の変化にも揺るぐことなく貫かれる彼の美学も、こんな時代だからこそ形になった音楽も収められている。そこで今回はそれら全10曲すべてについてインタビュー。一曲一曲に込めた思いや隠れたエピソードを丁寧に語ってくれた。
TENDRE
●今の時代だから生まれたクリエイティビティはちゃんと残しておきたい●
――今作『LIFE LESS LONELY』の制作時期は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きかった時期とかぶっていますか?
そうですね。ただ(それ以前に制作した)シングル「LIFE」など先にリリースしたものや、作りかけの曲もあって……。実は1月頃にリセットのタイミングとしていろいろ考え直すために、北海道の帯広のコテージのような施設に一人旅で行って、静かな環境で「HOPE」という曲などの種はそこで作りました。でも多くは3月入ってライブがなくなった時期を制作に充てた感じです。
――では、その時にできた種がコロナ禍で変化するようなことありましたか?
コロナ禍自体に対して抱いたものはもちろんありましたし、それの反映もありましたけど、心変わりがあったということはないです。ただこういう状況でなければもっと楽しい曲も増えていたかもしれない。でもコロナ禍を経たことで強まったものや、向き合ったものが色濃く出ているかなと思いますね。
――では1曲ずつアルバムの話へ。最初の「LIFE」ですが、ひと言目が<永遠が在る>と聴こえてきてドキッとしました。
<永遠が在る>の後に<なんて>というのが続くんですが……(笑)。この人は何を歌い出すんだろう?という、引っ掛かりにはなるのでイントロや出だしは大事だなと思っています。そしてまさに詞そのままで、永遠というものはないんですよ。永遠と思えるものはすごく価値があると思ってはいるけど、その後の曲の中でいろいろ含んでいるように何事にも終わりはあって、例えば死とか状況が変わったりとか……。それは今(のコロナ禍)もそうだと思うんですけど、そういうところに辿り着くまでのプロセスが大事だというのをスタートで提示できたかなと……。「LIFE」を書いた時点で、自分の中にあった明確な答えや、そういうことだよなという部分を、自信を持って出せたなと思います。
――続く2曲目は「WINDY」。前作のEP「IN SIGHT」にも、いい兆しをもたらす風をテーマにした「SIGN」という曲がありましたね。
今回の「WINDY」の風は、そよ風や何気ない風のイメージです。「WINDY」はある種、一番フワッとしているというか……。そのフワッとしていることが一つのテーマでもありました。作ったのがちょうど梅雨くらいで、ぬるい風、ちょっと人間味のある風というか、そこにある表情を描いていて、ドラマチックというよりは、なじむ風の表情だったり、そこの音だったり、歌詞には<渦巻く情緒はなに?>とあるんですけど、そこまで大きくはない陰と陽が混じり合っていたりして、喜びや悲しみを歌うというより、そこ以外の局面を歌うような憂う気持ちが伝わったらいいなと……。少し傍観したようなところもあって、今までしたことのないような書き方で書いた曲ですね。
TENDRE
――そしてその後にはコラボレーションナンバーが2曲続きます。まずはKANDYTOWNRyohuさんのラップが入る「FRESH feat. Ryohu」。ラップパートのリリックはRyohuさんが手掛けられたんですよね。
一切、歌詞は打ち合わせをしていないんです。連絡をして数日後にスタジオに来てもらったんですが、それまでに僕の歌詞を彼に見せていなくて、彼のも見ていなくて……。でも、おもしろかったのは、お互い書いていたのが、「この(コロナ禍の)事態を踏まえて僕らがどうやっていくか?」というような内容で……。それは普段から話していることで、言葉の切り取り方や向かっている方向も同じで、当然多少の目線の違いはあれど同じ方向に歩いている。なのでテーマにかじりつくというより、セッションで成り立つ旧知の仲、気が知れている仲だからこそできた曲の一つですね。コーラスもいつもライブで歌ってくれるAAAMYYYがスタジオに来てくれて、その場で「こういうコーラスを入れたいんだよね!」と言って作ったり。こういう形は新鮮だなと思って、それで(タイトルも)「FRESH」。彼(Ryohu)も<脳はフレッシュ>って言っているし「FRESH」でいいなと(笑)。
――TENDREさんのボーカルからもそんな現場の楽しさが感じられました。そして次の「DUO」もKing Gnuのベーシスト・新井和輝さんと息ぴったり。この曲はもともとフェンダーの企画『Ultra Test Drive Sessions』でセッション動画として公開されたものですね。当初からアルバムに収録する予定だったんですか?
そのつもりはなかったですね。フェンダーチームからベーシストとやるんだったら誰がいいですか?と聞いていただいた時、前々から仲が良かった和輝がいいってことになって、こういう(コロナ禍の)事態だったので、いわゆるリモートセッションになりました。セッション動画ってたくさんあるので、せっかく作るのだったら、おもしろいものがいいよねと言って。ベース2本って偏りがちなんですよね。バキバキッといくか、ブラックミュージックの濃い部分を抽出したような曲になりがちなんですけど、今回はそこでもっとクリエイティビティをいかして、キーやBPMを決め、お互いイメージしたものをあげ合ってから、それを分割して作ったような感じでした。本当に「DUO」、まさに2人で作りました。彼は素晴らしいべーシストだし、僕ももともとベースをやっているので、本業のものを持つとやっぱりたぎるものがあって、そういう意味ではリモートながら熱のあるものが作れた気がします。
――新井さんの浮遊感ある音色とTENDREさんの支えるメロディが一つになって聴き心地が良かったです。
音像を組み立てるにあたり、お互いが何を大事にするかとか、トラックメイクにおける美意識があると思うので、そこは自然と音を交わすなかで汲み取り合ってうまくやれるタイプ……なのか、わかんないですけど(笑)、そういう面で言えばすごくスムーズに作れました。今の時代だから生まれたクリエイティビティはちゃんとアルバムに残しておきたいなと。これもこういう事態でなければ、動画は撮るかもしれないけど、トラックに乗っかるということはなかったかもしれないです。
●祈りをコンパクトにまとめる必要はない。だって祈りなんだから●
TENDRE
――そんなインストの「DUO」の次は「JOKE」。個人的には、この曲のお経っぽくて攻めた感じが好きです(笑)。
遊びと言ったら良くないかもしれないですが、ちょっと念仏を唱えたかったというか、宗教的なことではなく一つの音の朗読をしてみたいなというのがあったんです。この曲もそんなに張り上げて歌うみたいなところはなくて、メロディラインでというよりは音像で持っていくような……例えばこれが一つの舞台だとしたら、登場人物はまっすぐ立っているんですよ。で、その背景がすごく劇的に変わっていく。そこによって描かれる衝撃みたいなものがあるといいなというので作ったんです。
――さらに詞は最後に<取り戻せ煩悩>と小気味いいです。
そうですよ、本当に(笑)。最近、条件反射的にある誹謗中傷的なことがすごく多かったなと思って、それへの抗いとしての歌という言い方はあまりしっくりこないですけど、最後の2行では決定的なことを言っているかな。今はトレンドワードとかに左右されたり、価値が文字世界の中でとらわれやすくて(そこから起こる)いろんなことがあるじゃないですか。でもそこで、ふざけんな! というようなことを僕はあまり言いたくないから、そういうふうに言う前に、そうならないような道を作っておきたいという。
――そういうTENDREさんの哲学は、次の曲「NOT EASY」にある<悲しみを燃やすのはなし>の言葉にも感じられる気がしました。
極々シンプルにまんま歌詞に考えを込めた曲ですね。最初は肯定的なものとして作ろうとしたんです。大丈夫ですよ。ちょっと考え方を変えたら簡単ですよというのを言おうと思ったんですけど、自分の中で簡単ではないことは多いじゃないですか。だからそういうことでもないという。でも、簡単ではないことを悲観した言葉では全くなくて、まあ呼吸と一緒ですよ。ひと言言って少し気が楽になることがあるような、そういう意味でとりあえず先に僕が言ってしまったというくらいのテンションですね。
――そうだったんですね。怒りの下には悲しみがあると聞くので、何か怒れることがあったのかと。
そういうつもりは全然なかったです。でもそうとらえてもらえるとしたら、人にとっての鏡みたいな曲なのかもしれません。簡単じゃないことは人の捉え方次第で、いろんな意味を持つわけで、「できないよ。この野郎!」という怒りだったり、「できない……」という悲しみだったり、さらに「簡単じゃないけどいいよね」という人もいる。聴き手によってとらえ方が変わってくる、おもしろい曲になったと思います。
――聴く人それぞれに気になる言葉が潜んでいて、考えを巡らせられるのはTENDREさんの曲の醍醐味ですね。その点では、次の「HOPE」は<どちらにせよ愛か>の詞が印象的でした。またそこからアップする曲のスケール感にも心を掴まれます。
個人的にはちょっと長くなっちゃたかなと……(笑)。でも、あまり曲の長さに左右されてもよくないのでね。例えば何秒以内じゃないと人に聴かれないとか、業界にはそういうセオリーみたいなのがあったりするんですけど、それは別に意識したい時にすればいい。この曲は祈りに近くて、祈りをコンパクトにまとめる必要はないですよね。だって祈りなんだから。なので、とても素直に書けた歌詞ですし、これも登場人物みたいなのを作って書けたので、そこもすごく楽しかったですね。
――そんな世界観にMVのアニメーションがマッチしていますね。
そうですね。作って見せてもらった時に、的を射ているなと思いました。アニメーションのMVはこれまであるようで実はなくて……。今回はサユリ ニシクボさんというイラストレーターの方とコラボレーションできて、良い縁に恵まれました。
●こういうものがもっとちゃんと日本に広がっていくようにという意気込みも込めました●
TENDRE
――さて、アルバムは残すところ3曲ですが、続く2つの曲は前作EP「IN SIGHT」の時のインタビューを思い出しました。まずやりきれない想いが伝わる「LADY」は、恋愛の曲を書いてみたいとおっしゃっていたことが頭に浮かびました。
その時に思っていたのはスイートな曲を書きたいという願望だったかなと……。恋愛的な曲でもいいんですけど、俗に言うなら、君といる時間が最高だよ!みたいな(笑)。そういうものを書いてみたいなと思っていたんです。ただ、自分のリアリティを踏まえて書くつもりはなくて……。それで、実際に書いてみようとなった時に、今年はコロナ禍で出掛けられなくて刺激がなかったので、登場人物の物語を盛り上げるための僕の外的刺激や、いろいろなものを見て得るものが少なくて、それでちょっと悲しい感じになっちゃったんです。
――ちなみに「LADY」は過去のことを振り返りつづっていますよね。
実は「hanashi」という曲の続編を書こうと思ったんです。それはすごく深くというよりは、妄想みたいな部分で……。「hanashi」は、話したいのと連呼するような曲だったんですが、話したいと散々言ってたけど、それが何かを経て隔たりができて(話が)できなくなってしまって、どうしようもなくなってしまったんだなという妄想で書いた部分があるんですよね。基本的に歌の世界ならば、うまくいったらいいじゃないですか。でもうまくいかない。だからこれはしみったれた曲でもあるんです。でもそれはそれでおもしろいかなと……。あ~どうしようもない!みたいなことはあるわけで、なので曲名を日本語タイトルで「どうしようもない」にしたかったんです、本当は(笑)。
――そして次の「TAKE」はカチカチというフィルムが回るような音がして、前回インタビュー時の映画的に音楽を作れたらという話がよみがえりました。
シネマチックというのはうっすらテーマにあるかもしれませんが、実はこの曲、自分の(シンガーである)母を描いた「GIVE」という曲の続編なんです。歌人……歌う者としてのリスペクトを踏まえ、(歌う才能を)与えられた者として「GIVE」を書いたので、ギブ アンド テイクという言葉があるし、今度はそれ(「TAKE」)をテーマに書いてみようと。でも母自体のことを書いたわけではなく、どちらかと言うと同じ舞台の次の曲みたいなイメージですね。TENDREという名の舞台があったとしたら、「GIVE」という名の曲があって次の「TAKE」は一人で歌っているんですよ。周りには誰もいないんです。
――孤独なんですね。
僕は、「母親だけではなく、家族だったり恋人だったり仲間だったり大切な人がもしいなくなってしまったらどうしよう?」と、たまに苦しくなる時があるんですよ。小さい時に「お父さんとお母さんが死んじゃったらどうしよう?」と、すごく恐怖を覚えるみたいに。もちろん今は大人になりましたし、怯えは当時と同じようにはないんですけど、それでも実際にそういう時がいつか来るわけじゃないですか。そういう(大切な人がいなくなってしまう)ことに対して歌っていて。幸いなことに僕は今年に入ってそういうことはなかったんですけど、この先はわからないし、もしそうなったらそれはそれで受け入れるつもりですけど、ただ「幸せって一人で見つけられるのかな?」と……。だってTENDREをやっていられるのもマネージャーやバンドやスタッフがいるから。全部そういうことだというのを想像しながら書いていたら、結局「TAKE」は、いつかは連れ去るという意味での「TAKE」にもなったんですよね。
――誰もが経験することですね。
もし誰か大切な人がいなくなってしまったら、その時に悲しんじゃいけないと思うかもしれないですけど、そういう行為(悲しむこと)に抗えない部分もあったり……それは曲の真ん中辺りで歌っていて、その後は<君はいないのか 君がいるならしあわせさ>と、もし君がいなくなったとしても、その現実から逃げるという道は作らずに、常に自分が行き着ける気持ちという名の帰り道をちゃんと作っておきたいという。現実逃避とまではいかないでしょうけど、受け入れられない時もありますからね。
TENDRE
――そしていよいよ最後は「LONELY」。ここまでの曲のさまざまな想いを昇華させるような、カタルシスを感じる曲ですね。
(アルバムの)集約版みたいな、これは僕なりの元気玉です(笑)。巨大なエネルギーというよりはアルバムのエネルギー感で、僕はこの「LONELY」という曲にあてたエネルギーがすごくちょうどいい。
――曲名は「LONELY」で、詞も<曖昧とした 孤独の果てに>と始まりますが、ゴスペルのような清々しさがありますね。
孤独という言葉は歌において難しくて、どうしても寂しい香り、ブルーな香りがして。それもわかるけど、「LONELY」に関してはその香りはさせたくなかったんです。最後はちょっとディズニーランドというか(笑)。ただ、楽しい乗り物って終わっちゃうじゃないですか。ディズニーランドではあるんですけど、楽しいだけで終わるというアルバムじゃなく、乗り物から降りてからまた次のところに行く。また始まりだよという……。こんなくどいことしなくてもいいかもしれないけど(笑)、また進んで行くという。
――アルバム自体も再び1曲目の「LIFE」へ、そして日々も巡り進んで行くということですね。
この作品がどれくらい日本の人たちに響くかはわからないけど、僕はこういう感じで作っていきたいし、こういうものがもっとちゃんと日本に広がっていくようにという意気込みも込められたアルバムになりました。そしてこの『LIFE LESS LONELY』を作った以降も音楽制作がめちゃくちゃ楽しくなっていますね。
――今後のリリースもライブも楽しみです。
演出のアイデアとかも出てきて、やってみたいこともいっぱいあるので、また早く全国へ行きたいですね。
TENDRE
取材・文=服田昌子 撮影=森好弘

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