10月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」お勧
め3作品の見どころ紹介/ホーム・シ
アトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1
-2-3 [vol.39] <宝塚編>

おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者が激オシする「My Favorite 舞台映像」の3選をお届けします。(SPICE編集部)

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10月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」​お勧め3作品の見どころ紹介​ by 藤本真由
【1】『いますみれ花咲く』(’ 01年月組・東京)​
【2】『シトラスの風』(’ 98年宙組・宝塚)​
【3】『パッサージュ-硝子の空の記憶-』(’ 01年雪組・宝塚)​

宝塚歌劇専門チャンネル「TAKARAZUKA SKY STAGE」の10月放送のラインアップより、見逃せない3作品の見どころをご紹介!

【1】『いますみれ花咲く』(’ 01年月組・東京)
『いますみれ花咲く』(’01年月組・東京)  (c)宝塚歌劇団 (c)宝塚クリエイティブアーツ
2001年1月1日に日比谷にオープンした二代目東京宝塚劇場。そのこけら落としと、新しい世紀の幕開けを祝って上演されたのが、植田紳爾作・演出による『いますみれ花咲く』である(『愛のソナタ~リヒャルト・シュトラウス/フーゴー・フォン・ホフマンスタール作:オペラ「ばらの騎士」より~』と二本立てで上演)。モダニズム建築の傑作として名高かった1934年建設の旧劇場を建て替える際、実は、日比谷以外に舞浜等、他の敷地も検討されていた。というのも、宝塚大劇場と同じ装置が使える舞台サイズと、収支を合わせるための二千席以上の席数確保という条件のクリアが設計上なかなか難しかったから。しかしながら、施工を手がけた竹中工務店の奮闘もあり、新劇場はめでたく同じ日比谷の地に誕生と相成った。しかも、旧劇場時代は宝塚以外の公演も行なわれていたのが、新劇場は宝塚歌劇専用。建て替え中に有楽町駅前に誕生した仮設の「TAKARAZUKA1000days劇場」での公演から、宝塚の創始者小林一三の悲願であった、東京での通年公演が実現することとなったわけである。
「♪いますみれ花咲く/いますみれ花咲く/いますみれ花咲く」と、力強く高らかに繰り返される歌詞に乗り、舞い踊る出演者たち。そのセンターにおわしますのは、2012年に96歳でこの世を去った春日野八千代である。“白薔薇のプリンス”“永遠の二枚目”と呼ばれ、戦前、戦中、戦後と活躍を続けてきた、その伝説のスターが見せる舞たるや、まるで扇子が身体の一部! そして、あのオーラ。――高揚のうちにクライマックスを迎える作品。祝祭ムード満点である。こうして寿がれたこけら落とし公演以来、新東京宝塚劇場は快進撃を続けてきた。それは、あのとき、春日野八千代をはじめとする多くの人々の宝塚歌劇を愛する気持ちが新劇場になみなみと注がれ、劇場を今も温かく見守り続けているからなのだと思う。
★放送:2020年10月5日(11:30)、29日(16:30)
【2】『シトラスの風』(’ 98年宙組・宝塚)
『シトラスの風』('98年宙組・宝塚)  (c)宝塚歌劇団 (c)宝塚クリエイティブアーツ
1998年1月1日、宝塚歌劇団に65年ぶりに新たな組が誕生した。宙組。東京での通年公演実現に伴い、新たな組の増設が必要となったためで、既存4組からメンバーが選抜されての創設。初代トップスターは姿月あさと、初代トップ娘役は花總まり、『シトラスの風』は、その第一回公演として上演されたレビューである(『エクスカリバー〜美しき騎士たち〜』と二本立てで上演)。
作・演出はベテランの岡田敬二。1982年の『ジュテーム』から提唱する“ロマンチック・レビュー”シリーズの一つで、「♪シトラス/シトラス/シトラスの風よ」と繰り返される歌詞も覚えやすく、新たな組の出発をさわやかに祝う作品となった。なかでも人気を博したのが、音楽を甲斐正人、振付を謝珠栄が手がけた<明日へのエナジー>の場面。姿月をはじめ、長身揃いの宙組スターたちが、黒い学ラン風の衣装に身を包み、ゴスペル調のナンバーをパワフルに歌い、踊る。「♪さあ 飛んで行け」のくだりの、音楽と振付が一体となっての飛翔感は、まさに始まりの時を告げるものがあった。この場面はその後、『サンライズ・タカラヅカ』(2000・ベルリン)や『ネオ・ダンディズム!II』(2007・博多座)にも取り入れられており、芯を務めるスターの持ち味によって印象が変わってくるのも味わい深いところ。作品自体も、『シトラスの風II』(2014・中日劇場)、『シトラスの風III』(2018・全国ツアー)と再演を重ね、2018年には、『シトラスの風-Sunrise-~Special Version for 20th Anniversary~』のタイトルで、宝塚大劇場と東京宝塚劇場に再び登場。宙組誕生20周年、トップコンビ真風涼帆&星風まどかのお披露目、そしてロマンチック・レビュー第20弾と記念が重なっての公演となった。今では宙組の代表作となった作品、その原点のパワーをお見逃しなく!
★放送:2020年10月11日(10:45)
【3】『パッサージュ-硝子の空の記憶-』(’ 01年雪組・宝塚)
『パッサージュ-硝子の空の記憶-』(’01年雪組・宝塚)  (c)宝塚歌劇団 (c)宝塚クリエイティブアーツ
パリの街のあちこちを彩る、ガラス屋根付きの小さなアーケード商店街、パッサージュ。フランス革命以降に開発され、19世紀には高級商店街として一世を風靡しながらも、百貨店の隆盛等もあって次第に衰退、今となってはレトロ感が逆に魅力となっていたりする。20世紀のドイツの文芸批評家・思想家ヴァルター・ベンヤミンの『パサージュ論』で広く認知されることとなったこの魅惑の空間がモチーフとなったレビュー作品が、『パッサージュ-硝子の空の記憶-』である。共に上演された『猛き黄金の国-士魂商才! 岩崎彌太郎の青春-』(石田昌也作・演出)は本宮ひろ志の漫画が原作、三菱財閥の創始者岩崎彌太郎を主人公に据えた、近代日本を舞台とした作品で、二作品のコントラストが際立つ公演となった。
『パッサージュ』の作・演出を手がけた荻田浩一は、独自の美意識光る作品で人気を集め、2008年の宝塚歌劇退団後もミュージカルの分野を中心に活躍を続けている演出家である。当時の雪組トップコンビである轟悠&月影瞳は共に、硬質な中にどこか繊細な魅力をたたえたスターだったが、二人のそんな持ち味も存分に引き出されたこの作品。プロローグで娘役たちが身にまとっている、シュガークラフトを思わせる美しい衣装も非常に印象的である。この作品の観劇を機に、パッサージュに大いに魅入られた筆者は写真集も入手、パリ旅行が実現した際には現存するパッサージュのいくつかへと実際に足を運んだ。古色蒼然としてどこかセピアがかったような空間、その中になおも残る蝋人形館を訪ねたりして、歴史の谷間に彷徨い込んでいくような、そんな不思議なひとときを味わった思い出は、この作品の記憶と共に今も心に残っている。ちなみに、主題歌の「♪パッサージュ/パッサージュ/パッサージュ/パッサージュ」という印象的な三拍子のリフレインに合わせて手拍子する際は、後ろの二拍で手を叩かれたし。
★放送:2020年10月4日(13:00)、18日(13:00)
文=藤本真由(舞台評論家)

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