go!go!vanillasが選んだ“特別なライ
ブ”、ジャズマナーに倣ったBlue No
te Tokyo公演をレポート

go!go!vanillas special live “MAKE UP CITY” at Blue Note Tokyo

2020.9.26 [1st set] Blue Note Tokyo
go!go!vanillasが9月26日、有観客&YouTube生配信ライブ『go!go!vanillas special live “MAKE UP CITY” at Blue Note Tokyo』を開催した。5月5日の大分凱旋ワンマン、および6月のライブハウスツアーが延期になったバニラズ。自身主催による有観客ライブはかなり久しぶりだった。
今回のライブは、開催にあたり、二つの情報が事前にアナウンスされていた。一つは、くるりのファンファン(Tp)、Gliderの栗田祐輔(Pf)をゲストに迎えた特別編成でライブを行うこと。もう一つは、ジャズマナーに倣い、ライブは一晩に2回行い、演奏曲目は変えないこと。現状、これまでと同じやり方で有観客ライブを開催することはできない。このライブももちろん感染防止ガイドラインに則った上での実施となり、バニラズは、勝手の違う状況を利用し、特別なライブを届ける選択をしたということだ。
go!go!vanillas/牧 達弥
定刻になると、まず、ジェットセイヤ(Dr)がフロア後方から登場し、客席間の通路を通ってステージへ。同じように、長谷川プリティ敬祐(Ba)、柳沢 進太郎(Gt)、牧 達弥(Vo/Gt)の順で入場すると、既に楽器を鳴らしているセイヤに合流する形でステージに着いたメンバーから音を出していく。今日は特別に4人ともスーツ姿。プリティが短パンじゃないのはレアだが、セイヤはサングラスも込みで正装という認識か。
4人で音を合わせながら、牧が目の前の観客に「Blue Note TOKYO! みなさん、元気ですか!」と呼びかける。そのまま少し喋ったあと、「さあ行こうぜ、東京! 俺たちの音楽を楽しんでくれー!」と締めた。そうして始まったのは、牧・柳沢・プリティによる3声のハーモニーで、1曲目が「マジック」だと分かったのは少し後になってからのこと。テンポを半分程度まで落としつつ、シンコペーションによるノリを打ち出した、ブルーノート仕様のアレンジだ。2番終了後には栗田が呼び込まれ、5人編成に。それによってサウンドがワントーン明るくなった。2曲目は、メジャー2ndアルバム『Kameleon Lights』より「ビートクラブ」。「マジック」に引き続き、“音楽の鳴る場所”について唄った曲をセットリスト序盤に配置した点にメッセージ性を感じる。
go!go!vanillas/長谷川プリティ敬祐
久々の有観客ライブ、しかもブルーノートということで、ここまではバンドも若干緊張気味で、ガイドライン上声を出せない観客もまだ心と身体をほぐしきれていない様子。しかし序盤特有のこの緊張感もライブの醍醐味の一つ。最初のMCで牧は「いや~、いいね! やっぱ人の前でライブするのって最高ですね!」と素直な感想を口にした。「みなさん思う存分、生の音を浴びてってください。よろしくお願いします!」と切り出してから始めた「パラノーマルワンダーワールド」は、栗田とともに完成させた曲でありながらも、この5人でライブで鳴らすのはこれが初。1番はテンポを落としてバラード調(イントロはギター+鍵盤、その先はボーカル+コーラス+鍵盤)。メロディの美しさ、歌詞に記した言葉を改めて真正面から伝える演奏にグッときた。
続く「Penetration」は柳沢ボーカル曲だが、普段より音圧抑えめの演奏だからなのか、牧との歌声の違いが際立っている。特に低音域の響きのふくよかさは柳沢ならではの持ち味といえるだろう。「Do You Wanna」はスライドギターによって特有のムードが演出されているし、ドラムの鳴らし方も音源とは全く違っている。原曲と都会的な雰囲気から一転。砂埃舞う大地を彷彿とさせるような、でっかくて、ロマンのある演奏だった。
栗田祐輔(Glider)
栗田のことを「何でも弾いてくれる」「リハでは60年代ヒット曲のオンパレードだった」と紹介するメンバーは嬉しそうで誇らしげ。既存曲のリアレンジ版を収録した自宅リモートセッション集『ドントストップザミュージック』や、これまでの活動からも読み取れたように、元々、“一定のアレンジ”みたいなものに囚われない性格のバンドだ。もっと言うと、その性格は、感情の高鳴り、音楽にワクワクする気持ちに素直でい続けた結果として表出するものだ。プリティのバイオリンベースをはじめ、メンバーが手にしている楽器にはこの日初めて見たものも多く、伝統あるステージに立つにあたり、準備と企みを重ねていたことが想像できる。つまり、この期間中でもバンドは止まることなく、むしろ、音楽に対する好奇心・探究心を深めていたということ。
go!go!vanillas/柳沢 進太郎
ここで、11月18日に『鏡 e.p.』をリリースすることが発表され、新曲「鏡」がお披露目された。結果的に観客は、原曲を知る前にライブバージョンに触れることになったが、それもある意味バニラズらしいかもしれない。「鏡」はアップテンポで軽快な曲調だが、新曲ゆえ、できるだけ聴き逃さないよう、多くの観客が体を強張らせ、真剣な表情をしている。すると、途中、プリティが手拍子をし始め、観客も一緒に手拍子するようになり、それを見たプリティがさらに笑顔になった。こういうコミュニケーションはバンドと観客が対面していないと起こり得ないもので、思えばかなり久しぶりに目にした気がする。この頃にはバンドも観客もすっかり緊張が解れていて、温かな時間が流れていた。
go!go!vanillas/ジェットセイヤ
ギターとベースがユニゾンで聞き覚えのあるフレーズを奏で始める。おそらくこの時点で、多くの人があの曲の登場を予感していたことであろう。期待が高まるなか、ここでファンファンが合流し、6人編成に。さらに「この6人が如何に素晴らしいかをプレゼンさせてください」と、自己紹介を兼ねてのソロ回しタイムが始まった。柳沢→プリティ→栗田→ファンファン→セイヤの順に数小節ずつソロを披露するなか、牧は自らカメラを持って演奏者を撮影する。カメラの外側では演奏していないメンバーもノリノリで身を揺らしている。
ファンファン(くるり)
「さあ、ここからはこの6人で、ファンキーでロックで最高な音楽奏でるぞ! よろしくー!」と始まったのはやはりあの曲=「エマ」であり、普段は柳沢が弾いているイントロのメロディが、トランペットの華やかな音色で奏でられた。声が出せない分、ハンドサインで「1・2・3!」とやる観客たち。こうして生まれた幸福感は、「ミスタースウィンドル」のグルーヴによってさらに押し上げられた。「どんなに暗くたって生まれたときから暗かったんだから!」「笑顔でいれば絶対にまた楽しいときが来るから! 今日はみんな思いっきり楽しんでってちょうだい」という言葉に続いた「平成ペイン」はライブで何度も演奏されてきた曲だが、それでもこんなに温かい「平成ペイン」は初めて聴いた。年月を重ね、様々な経験を経たことによって大きくなったバンドとしての器。それを実感させられた瞬間だった。
「次の曲でラストになります」と告げても、客席から「え~!」という声が返ってくることはないが、牧は「声出せないもんなあ。でも慣れたから」と前を向き、観客は代わりに拍手をする。「世知辛い部分もありますけど、こうして生で音楽を届けられるだけ、まだ幸せなのかなと思います。また新しい形で楽しめる場所を僕らも考えていきたいし、みんなにも元気でいてほしいと思います」と、「ラッキースター」が幸福の象徴として掲げられた。《♪砕けそーーーーうさ》といった具合に、いつもより音を長めに伸ばす牧はめちゃくちゃ気持ちよさそうに唄っているし、ときには視線を交わしながら、6人で鳴らす音はきらきらしている。一夜限りではもったいない。ステージ上のメンバーも、目撃者となった観客も、心からそう感じていたのではないだろうか。
配信はここまでだったが、会場では、アンコールを求める客席からの手拍子に応えて、メンバーが再登場。束の間のMCでは、「会場内で販売されていた限定カクテルは、バーテンさんがバンド名の由来を踏まえて作ってくれたもの」「そのため、『ジョジョの奇妙な冒険』のエッセンスがちょいちょい入っている」という話題のあとに、そのままジョジョトークに発展。最終的に観客を置いてけぼりにして笑い合うなど、トークもある意味絶好調だった。
「楽しかった? 俺も楽しかったよ!」(牧)という飾らない言葉がこの日の要であったように思う。改めて確かめた大事な感覚を引き連れて、11月にはホール3会場をまわるツアーが、そして11月23日には初の武道館ワンマンが行われる。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=西槇 太一

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