前川清が直面したコロナ禍「歌えない
なら他の仕事も・・・」そんな中”歩
いて行こう”と決めた道とは?【特別
インタビュー】

歌手生活52年の前川清に訪れたコロナ禍という壁。今まで休むことなく歌い続けてきた彼が、この問題にどう直面し、どう感じ、どう過ごしたのか。歌手として生きていけないならば他の仕事も?というところまで考えるに至ったその状況とは。そしてネットを通じて、家族との配信など、ネットという場において、今までに見せなかった顔を見せたり、その中でオリコン演歌チャート1位を獲得した「歩いて行こう」がリリースされたりなど、立ち上がるに至った経緯と思いを直撃した。そして今後の前川清の歩みとは?
ーー2月末から続く、誰もが経験したことがないコロナウイルス感染拡大による自粛生活の中で、コンサートも中止や延期になったりしています。表現者として、また夫として親として、ひとりの人間として、大きく変わった考え方や思いや、改めて感じたことを教えて下さい。
こんなにも仕事がなくなり半年以上も歌えなくなるなんて、歌手生活52年の僕にとっても初めての体験です。毎日テレビを見て一日中過ごしていた自粛の時期は、やることがない訳で、このまま仕事がなくなったら、何で食べて行こうか、違う職探しもしないといけないのかなと、ふと考えたりもしました。知り合いと「アルバイトも考えないとね。」と冗談を言いつつも、笑えない現実でしたが、こういう仕事をしていると、簡単には口にしてはいけない事もあると思うので、そういうタレントの立場も考えていろいろ葛藤していましたね。​
ーーそこまでいっているとは思いませんでした。
8月にやっと東京丸の内のコットンクラブでライブがやれたんですが、とにかく歌えることがこんなに嬉しいと思うことはありませんでした。お客様は半分しか入れないし、それまでは、ステージ下に降りてお客様と握手をしたりしていたのが、ソーシャルディスタンスで、触れ合うこともできない。皆さんマスクをしているので表情がわかりづらく、楽しんでもらえてるのかな?と不安な気持ちになりました。でも、とにかく楽しかったです。
以前とは仕事のやり方が全く変わってしまったことは、今後、どうなっていくのかわかりませんが、一つ前に進めた気持ちがしました。世の中的には、まだまだ未来に対して不安ばかりです。お客様の安心・安全を第一に、少しずつスタートができればと思っています。
ーーインスタライブ、YouTubeチャンネルと、コロナ禍の中での家族コラボレーションが話題になっていますね。前川さんは今もガラケーを使っているそうですが、そんな前川さんがSNSと向き合うこの取り組みについて、感じていることを教えて下さい。
電話は相変わらずのガラケーですが、最近、写真撮影用にスマホも持っています。スタッフからのメールなんかも、スマホの方が早くて、指で広げるだけで写真も大きく見えるので便利だとは思っていますが、まだまだ全然使いこなせていません。​
ーー今までには触ってこなかったものですものね。
SNSの世界は、正直、まったく理解できていません。でも、受け入れることは大事だと思っているので、子供たちやスタッフに動かされているだけですが、参加することには嫌だとかは思いません。画面に向かって、一方的に話をしても、見ている人の反応がわからないからいいのか悪いのか・・・。以前、インスタライブというものをやりましたが、これは画面にコメントが出てきて、東北や北海道、沖縄や四国、ブラジルなど海外からもメッセージが届いたのには驚きましたし楽しかった。でも、コメントの文字が小さくて老眼の僕には見えないし、画面の進みが早過ぎてコメントを追えませんでした(笑)SNSはこれからの時代には必要なものだとは思っています。でも、僕はこれからも、やってくれる子供たちやスタッフに動かされるだけですね。​
今の若い人たちのリズムやテンポとはズレがあってノリが違うから
MV「歩いて行こう」前川清
ーー9月16日に発売され、オリコンの演歌チャートで1位を獲得した「歩いて行こう」は、九州地区の人気番組『前川清の笑顔まんてん タビ好キ』(KBC九州朝日放送)のオープニング曲ですが、長男の紘毅さんが作詞・作曲を手がけ、コーラスに紘毅さんと長女の侑那さんも参加し、シングルでは初の親子共演になりました。これまでの前川さんの曲にはないタイプの明るい曲になっていますが、歌ってみてどんな感覚だったでしょうか?
ムード歌謡とか演歌などからは、かなりかけ離れた曲で、今までにない感覚です。歌っていても、自分の曲なんだろうか・・・とどこかピンとこない感じもしています。明るい歌なので、今の時代には合ってるのかなとは思っています。「タビ好キ」が放送されている地域は、番組の度に歌が流れるので馴染んでいるようですが、番組が放送されていない地域の人に伝わるのかな?という不安はあります。多分、ガラケーからスマホに変わった時の気分と似ている気がします(笑)​
ーー「歩いて行こう」のレコーディングの時、紘毅さんから前川さんへの“ディレクション”はどのような感じだったのでしょうか?
最初は、紘毅なりの思い入れもあったと思いますが、今の若い人たちのリズムやテンポとはズレがあってノリが違うから、僕の方が「これはできない」とか「これを変えてほしい」とかって注文を出した感じです。途中で紘毅が諦めたようですね(笑)​
ーー前川さんはこれまで、坂本龍一さんから「雪列車」(作曲・坂本龍一/作詞・糸井重里)、福山雅治さんから「ひまわり」(作詞作曲・福山雅治)など、アーティストから楽曲を受けていますが、前川さんから見て、作家としての紘毅さん書く曲は、どのような評価でしょうか?
坂本さんや福山さんは、才能あふれる方たちで、音楽性や表現力、重さなどは素晴らしい!紘毅はまだまだ勉強が必要だとは思いますし、作家と呼んでいいのかはわかりませんが、今回の曲は、番組のテーマに沿った明るく覚えやすい曲なので、よく頑張ったと思います。​
ーー9月13日には、「歩いて行こう」の発売を記念して、人生初のネットサイン会を開催しました。人生初の経験の感想を教えて下さい。
当初、こんなことをやる意味はあるのかな?見ている人は喜ぶのかな?と思っていましたが、やってみると想像以上に楽しく終えることができました(笑) 一方的に発信しているだけですが、これも初体験の驚きです。いろいろな意味で、考えさせられました。昔はレコードショップでサイン会などのキャンペーンをやっていましたが、お客が来ないと寂しいものです。今回は、買ってください!お願いします!と呼びかけるものではなくて、すでに買ってくれている人へのサインだから、気持ちが楽でした(笑)
とにかく歌えることが嬉しくて嬉しくて。
前川清
ーー9 月 19 日(土)にモーションブルー・ヨコハマで開催された「前川清 Live 2020〜Coolest Five〜」のライブ映像を有料配信する事が決定しました。 2015 年から定期的に開催されているライブレストランでの公演ですが、コロナ禍の中、久々の生でのライヴだったと思いますが、どのような思いでステージに立ち、歌ったのでしょうか?
開催までの日々は、「本当にやるの?」「大丈夫なの?」「お客様は来てくれるのかな?」と毎日不安との闘いでした。入場者は半分に制限するので、主催者サイドは赤字だろうなと心配になったり。。。​
ーー先が見えない日々でしたから。
ただ、当日を迎えると、その気持ちはステージをやれることの喜びでいっぱいになりました。とにかく歌えることが嬉しくて嬉しくて。こんなワクワクした気持ちでステージに上がれたのはあまり記憶にないくらいです。​
ーー前川さんでも改めてそう思ったんですね。
お客様はある意味「命がけ!」で見にいらして、楽しもうをしてくださっている訳なので、少しの時間でも羽を伸ばせたらいいな、日常を忘れてもらえるといいなと心に想いながら、一生懸命に歌いました。客席はソーシャルディスタンスで半分は空席でしたが、それを見ている僕にとっても、その空間が安心な材料になりました。これも、昔のステージとは大きく違った感覚です。昔のように・・・はもう望んでも無理なのかもしれませんね。​
ーーいつものコンサートを、配信でファンの方に届けると聞き、心配や不安、逆にいいなと思った点があれば教えて下さい。
配信は初めての体験なので、ダイレクトな笑いや表情や拍手はありませんが、あとになって、いろいろな感想が聞けると思うので、それを楽しみにしています。ダメ出しが多かったら、感想は見ないようにします(笑)​
前川清
ーーいやいやそれはないですよ(笑)
ただ、一つ心配なのは、僕のような年代の人は、こういう配信なんて観れるのかな?と。僕だったらまず無理です。携帯やパソコンを操作できない。それだけが心配です。生のステージは、好きな人がチケットを買って観に来ますが、配信は、もしかしたらファンじゃない人も観るかもしれない。その場の反応がまったく計算できないので、いろいろ考えても仕方がないと思うようにしています。果たして結果はどう出るか・・・​
ーー配信ライヴを楽しみにしているみなさんに、話せる範囲で結構ですのでどんなライヴになっているのか教えて下さい。
今回はピアノとコーラス4人だけの演奏で、僕のヒット曲やアルバム曲を歌っています。皆さんが馴染みのある曲ばかりだと思いますので、是非、観てくださいね。​
ーーそれは楽しみです。
「CoolestFive(クーレストファイブ)」とサブタイトルが付いていますが、これは「Cool Five(クールファイブ)」の最上級という意味なんだそうです(笑)バックの演奏がピアノとコーラスだけなので、歌っている自分自身も、歌詞が体に入ってくるようで、それを感じながら歌っています。ちょうどライブの直前に発売された「週刊文春」でサザンの桑田佳祐さんのコラムで、僕のことを取り上げてくれたんです。​
ーーそうなんですか。
それを見てなんだか嬉しくなって、その日の朝に、「TSUNAMI」をピアノだけで歌うことを決めました。ピアノさんは突然でビックリしたと思いますが(笑) ただ、配信の中に、これを入れることはできなかったのは残念です。​
ーー「前川清ファミリーツアー」の再開を望むファンも多いですが、これからも“家族”を軸にした活動は増えて行きそうでしょうか?
「タビ好キ」の番組や九州地区のラジオ番組をやっている間は、ファミリーで登場することが増えると思います。毎回、凄い人が会場に詰め掛けてくださっていたので、一日も早く、コンサートがやれる日が来るといいのですが・・・。​
ーーコンサートもこれからどうなるか、まだまだ見えてこない日々が続いていますが、今年も残すところあと3か月になりました。これから、そして来年の前川さんの歌手活動のテーマ、そして“野望”をお聞かせ下さい。
今年は寝て暮らす!もうそれしかない気がしています(笑)エネルギーを消耗しないで、耐えるしかない時代です。ただ、今回の横浜モーションブルーやコットンクラブのように、チャンスをいただける場があるんだったら、是非やらせてもらいたい!半年以上振りに歌わせてもらいましたが、疲れは全く感じていません。危機感を感じながらのライブではありましたが、本当にやれて良かったと思っています。こんな風に、今やれることをやることが、前に進む一歩なのかもしれません。本当に寝ていたら何も始まらない(笑)新曲の「歩いて行こう」もそうですが、この配信で、また良い一歩が踏み出せたらいいなと思います。テーマは「前に」。ゆっくりでも進んでいきたいです。​
取材・文=田中久勝 

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