山下久美子

山下久美子

【山下久美子 インタビュー】
愛にあふれた人たちに対する
感謝の想いを込めている

「バスルームから愛をこめて」は
大事な私の礎

久美子さん以外にも作詞家の方が歌詞を手がけられることあります。そうした場合、久美子さんの方から歌詞の内容に関してリクエストをすることは多かったんですか?

打ち合わせはしますね、かなり。デビュー当時の渡辺プロダクション時代はディレクター、プロデューサーとともに作り上げていき、ほとんどディレクションしてくれる人たちの力だったり、全体をまとめてくれるプロデューサーの力だったりして、そこに私が参加しているという感じでした。でも、どんな人にでも分け隔てなく、“このフレーズは歌えないな”というのがあったらそこは直していただくことはやってきましたね。自分の身の丈に合ってないようなフレーズだったり…そういうのは自然と拒絶しちゃってたのね。頭で考えて歌える感じではないので。そんなふうに楽曲を作っていただいてました。コンセプトを話し合って決めて、そこで“どういう人に歌詞をお願いしようか?”みたいなことも決めて…でも、基本はラブソングでしたね(笑)。

なるほど。これは今回チョイスされた楽曲がたまたまそうだっただけなのかもしれませんが、このDISC1に収録された久美子さん作詞のナンバーはロストラブソングが多いんですよ。

あぁ、そうですか。でも、実際にそういう体験をしたから書いているわけではないんですよ。どちらかと言うと、書いちゃってから、それが起こるようなことも多くて(苦笑)。

あの、それはもう…何と返答していいのか(苦笑)。

あははは。でも、言霊じゃないけど、“そういうことってあるんだな”って何度か思ったことがあるんですね。“書かなきゃ良かったのに…”みたいなね(苦笑)。でも、自分の中に“切なくても頑張って笑顔になる”っていうものが一本主体の軸として流れてる感じはあって。私、“幸せーっ!”みたいな歌詞は書けないと思います。単に“幸せーっ!”ってことはなかなかないじゃないですか。振り返ってみても “そんな幸せな時ってあったかな?”みたいなね(苦笑)。

DISC2の“LoveYou Live☆ "Sweet Rockin' Best of Live 2018"”に収録されている森雪之丞作詞の「宝石」や康珍化作詞の「いっぱいキスしよう」など、作詞家さんの手がけた歌詞はハッピーな印象ですが。

「宝石」の《大好きよ 好きよ 好きより もっと》って人をハッピーにさせる感じでしょ? でも、歌詞の物語的には離れていて──ディスタンスなんですよ(笑)。一緒にいて“大好きよ”って言っているのとは違って、空に向かって言っているみたいな。だから、自分が書いた歌詞以外でもちょっと切ないというか、人に対する想いってどこか切ないものだと思うんです。

久美子さんの中にはそういった考えがもともと備わっていらっしゃるんですかね? 思ったのは、久美子さんのデビュー曲が「バスルームから愛をこめて」で、まさに《男なんてシャボン玉》ですから、その辺も関係しているのかなと。

そうです! そこからは逃れられない呪文のようなものですよね(笑)。デビュー曲は大事な私の礎ですから。

「バスルームから愛をこめて」を始めて歌ったのは20歳くらいですか?

デビューが21歳ですから、そうですね。だから、歌詞の内容は全然深くとらえてなかったです。歌うこと、伝えることに一生懸命で。だから、「バスルームから愛をこめて」は年齢を重ねるにつれて、怖い時は怖いし、いろんな顔を見せてくれますよね。特に《男なんてシャボン玉》はね。面白いと思いますし、今すごくいい感じだと思いますね。

DISC1で言えば、「情熱」や「愛すればこそ」など、それこそ情念を綴ったような歌詞もありますけど、この辺の歌も久美子さんの中でレコーディングした当時と印象は変わってますか?

そうですね。今のほうがサラッと歌詞として自分の中で解釈して歌っているって感じかな? 書いている時は…書いている人と歌っている人が違うんですよ、私の場合ね。書いている時は書いている人になって、1日中、一生懸命に書いて、それを歌う時は書いた人のままでは歌えなくて別人格が出てくる感じ(笑)。今はさらに時間が過ぎて、サラッと受け止められるという感じがありますね。だから、歌っていて“楽曲として面白いな”って楽しんでいたりしますし。

客観的に見れるという感じでしょうか?

うん。“こういうシチュエーションもあるよね”みたいな。まぁ、書いている時からそういうところもあって…ユーミンさんのように他の人の会話を取材するみたいなことはやってないですけど(笑)、やっぱりユーミンさんみたいに情景が見えるような世界を書ける人ってすごいと思いますし、自分の中でもそれを思い浮かべながら書いたりしてましたね。

久美子さんの歌詞はシチュエーションというよりも気持ちの揺れ動きを描いたものが多い印象です。特に今回のベストに収録されている楽曲は。

そうですね。シチュエーションというよりは、気持ちや想いを歌う感じなんです。聴いた人のシチュエーションにスッとハマればいいなと。

やはり歌は聴く人のものであってほしいという想いは強いですか?

そうですね。「赤道小町ドキッ」というヒット曲に出会った時、曲は独り歩きしてくことをものすごく強く感じたので、いい曲ってそういうものなんだろうなって思ったりしたんですよね。曲は聴いた人のものでいいんじゃないかっていう。でも、そのオリジナルを歌っている人の歌を聴くと“いいな”と思えるような存在でいたいと思います。

シンガーとしてその曲の良さを一番伝えられる存在でありたいと。

その時の空気とともに…というか。特に「赤道小町ドキッ」はそうですけど、ちょっと前のCMで私じゃない人が歌ってたりしましたよね? それを聴いて“こういう感じもいいなぁ”って思っちゃったんですよ(笑)。“私には歌えない良さがあっていいなぁ”って。でも、「赤道小町ドキッ」だからそういうふうになるんだな、ひとつの楽曲が生きてるんだなって。そういうことが改めて嬉しかったりしましたね。

「赤道小町ドキッ」は特に…なんでしょうね。

うん。私の楽曲の中では特別で…他の楽曲とはまたちょっと違うんで、そんなふうにとらえていたいとは思いますけどね。“違う人が歌うとどうなんだろう?”とか。

でも、最も聴き手にその楽曲の良さを伝えるのは自分であってほしいということですよね?

それはそうですね。“あの人のほうがいい”って言われちゃったら悲しい想いをしますから(苦笑)。だから、ダメにならないように気持ちをちゃんと持っていないと。

OKMusic編集部

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