polly・越雲龍馬 × cinema staff・
飯田瑞規 4年ぶりのSPICE対談で語り
合う、変化と不変

pollyの越雲龍馬とcinema staffの飯田瑞規。両バンドのフロントマンによる対談を初めて行なったのは、2016年のこと。生来のナイーヴさが周りへの攻撃性(といってもバイオレンスな方向ではないが)へと変換された“問題児”と、その良き理解者であり兄貴分、といった関係の2人によるトークはとても興味深く楽しいものだった。

あれから4年。pollyの最新アルバム『Four For Fourteen』で、飯田がボーカルのディレクションを務める形で、私生活でも親交の深い2人の作品上でのタッグが実現した。越雲は何を求めて飯田に声をかけたのか。飯田は越雲の歌に対してどう思い、何を求めたのか。互いのバンドの現在地は──。イレギュラーだらけのこの2020年に、音楽家として、バンドマンとして、ボーカリストとして、友人として、再び2人が語り合う。
──この2人の対談、4年ぶりですね。当時、龍馬くんはいくつでしたっけ。
越雲:23です。でも23にしては、もうちょっと落ち着いてても良かったですよね、あのとき(笑)。
飯田:よく若いときはトゲがあったり、誰彼構わず強く当たったりすることあるけど、その典型だったからさ(笑)。あのエネルギーはすごかったよな、負のエネルギー。
越雲:はははは! いや、本当に。だからあのときが一番楽だった気はしますよね、今考えると。
飯田:ああ、どうなんだろうな。周りを無駄に敵視してて、常に抱えてるものがあって、全てに不満がある感じだったから。結局自分に返ってきて苦しそうにも見えたけどね。
越雲:傷つけるだけ傷つけたし、傷つくだけ傷ついたので、もうそういうのはしたくないなと。今でも自分で背負い込んでしまう瞬間はあるんですけど、人に対して無駄な傷つけ方はしたくないというか。自分のためにもそれはしたくないなと思います。だから……昔に比べて人としゃべらなくなって、外にも出なくなりましたね。
──それは良いのか悪いのか(笑)。あれからも、2人はプライベートでも会ったりしてますよね?
飯田:そうですね、ちょこちょこ会って。「龍馬、大丈夫かな」って定期的に思うんですよ。連絡ないし、こっちもしてないまま数ヶ月たって、ふとあいつちゃんと生きてるのか?って、結構本気の心配をしちゃうことがあって、その度に2人で飲んだり。でも去年の……そういう話していいのかな。
越雲:大丈夫です。
飯田:去年の12月頃かな、俺が下北で、メンバーの辻(友貴)の“えるえふる”っていう飲み屋で飲んでたときに、龍馬から「ちょっと今時間ないですか」ってメールが来て久々に会ったんですけど、色々話してるうちに「これはやばいな」「このままじゃ色々まずいことが起きるかもしれない」と思って。酔いも醒めて、「とりあえず家に来い」って呼んで、朝方まで酒も飲まずにずっと話し込むっていうところから、その後……あの、心を開きづらいじゃないですか、龍馬は。選んだ人しかあんまりしゃべらないというか。
──ですね。
飯田:でも、近くにいる人には「こういう状態なんだ」っていうことを知ってもらわないとまずいなと思ったので、当時の龍馬が関わってるスタッフに電話して、「話し合いを設けないか」って、めちゃめちゃ大きなお世話のところまで踏み込んで。もう、後悔しないほうがいいなと思って、まさかの、俺も彼の会社まで行きましたからね(笑)。で、スタッフさんたちと4人で、龍馬は今こういう状態だしこういう気持ちを抱えてるんだ、っていう話をして。
越雲:そのときは本当に限界だったというか。だけどちょうど瑞規さんがイベントで“えるえふる”にいることを知ってたので、下北沢まで行って。すごく助けてもらいました。
飯田:ナイーヴな音楽って、それが作られたものだったりするバンドも意外といるじゃないですか。ただ、pollyってそのままの龍馬が出てるバンドだと本当に思うから、その点マジで危ういなとは思ってて。だから心配になるのはありますね。
──以前は外に向いていた負のエネルギーが、今は内に向いてしまう感じなのかな。
越雲:それは自分でも理解してますね。今まで、気に食わないと口に出してたのが、自分でどうにか解決しなきゃいけないものになった。それが生きていくってことだと思ったから。抱えきれなくなったりする瞬間は今でもありますけど、でもそうやってどんどん消化していかないといけないと思うので……まあ、難しいですよね。傷つかないことって絶対無理じゃないですか。だからそれは僕の使命だと思って生きていくしかないって。
──そういう根本の部分はともかく、23歳から27歳になるこの期間というのは、バンドメンバーも変わっていたり、今回からレーベルも変わったり、大きな変化がありましたよね。
飯田:俺は、レコーディングの現場に行ったとき、龍馬がだいぶ変わったなと思った。メンバーの意見もちゃんと聞くし、雰囲気とかも違ってましたね。pollyは龍馬がやりたいことをやるために集められたバンドで、それが顕著に現れてるバンドじゃないですか。なんですけど、バンドとして今はやってるんだなっていう。だから俺、それはすごく安心して。多分、ベースの研太が良い雰囲気を出してるんだなって思うんですけど、シネマでいうとドラムの久野(洋平)みたいな感じの、ある種ちょっと楽観的な感じの人がいることで、「なんとかなるかな」って思えることってあるんですよ。あとの2人は純粋で従順なんだよね?
越雲:そうなんですよ。
飯田:そうなると緊迫した空気を緩めてくれる人って、すごく大事だと思う。ずっと肩に力が入ったままだと、絶対に上手くいくわけなくて、そういうときに「なんとかなるか」と思えないと。
──龍馬くんから見た飯田さんやシネマって、ここ数年どんなものでした?
越雲:僕はもともとファンだから、一歩引いた見方はできてないと思うんですけど。cinema staffは、良い意味ですごく柔らかくなっていったと思います。尖ってないとかそういうことではなくて、今はすごく純粋に、音楽が楽しそうな集団に見える。それは僕の思い描いているバンドの在り方で、各々がクリエイティヴィティを持ってそれぞれの活動で秀でていて。それをどんどん強めていってるなとは思いますね。……でもなんだかんだ、全然共演とかできていないので。
飯田:良いタイミングで誘ってくれよ。
──シネマのモードとしては実際、いま言われたような自覚はあるんですか。
飯田:まさにその通りで、どんどん年をとって音楽をやっていく中ですごく……これは良いことじゃないかもしれないと思いながらやっているんですけど、ライブに来てくれてる人や生活の糧にしてくれてる人に対して、下手なことを言えないようになってきた。そのぶん、かなり熱い音になってる気はするんですよ。……ちゃんと大事にしたいというか、普段から生活していても、ライブでこういう気持ちを絶対に伝えなきゃダメだとか、感謝を返していかなきゃいけないとか、そういう気持ちは前よりもめちゃくちゃあります。
──瞬発力で何か言ったりやったりするより、普段から熟成させた気持ちをライブで形にするようになった。
飯田:そうですね。それこそ23歳の頃の龍馬みたいに無駄なことを言ってしまうことを、すごく後悔するようになって苦しい時期だったのが多分、27歳以降くらいで。今は、言うことはもちろん演奏とかも、真面目なヤツになってきてるのかなと思う瞬間もあるんですけど、責任は強くなってますね。4人だけでやってたものが色んな人が関わってくれるようになって、メンバーはずっと一緒にやってるから話さずとも分かることがあるけど、スタッフとか、周りの本気でやってくれてる人たちとのチームで考えると、「こんだけ準備してくれて下手なことはマジでできない」という気持ちは相当大きいです。
──音楽面では最近どんなモードですか。
飯田:2020年で言うとちょっと難しいですけどね。完全に準備期間で、次のアルバムに対して動いているわけでもないから。ただ、3月28日に人見記念講堂でワンマンライブがあったんですけど、そのライブの日に12、3時間くらい生でレコーディング風景を流す、公開レコーディングをやって。レコーディング風景っていう、マジでリアルなものでバンドマンはあまり見せたくないところまで見てもらいました。シネマは今まで良い曲しか出してないと思うんですけど、お客さんが「良い曲だ」って思えるのはやっぱり思い入れなんだろうから、曲の作られる過程を見れば、ライブで聴いたときに聴こえ方が全然違うだろうなっていう話からそうなったんです。
──オリジナルアルバムでいうとかなり空いていますが、意図的にインターバルを空けた感覚ですか。
飯田:意識的に空けてました。ただ、今年には出すつもりだったんですけど、こういうことになってしまったから。それをライブやツアーでちゃんとやりたい気持ちが大きいバンドだから、いま出してもその気持ちがちゃんと維持できるかわからないなってことで。だから制作とかに関してはこの先ですかね。
越雲:僕らはシネマとは逆に、今だからこそ出さなきゃいけない作品だと思っているし、あとは今作を出してからもコンスタントに作品を作っていこうっていうのをチームでも話し合っていて。
飯田:おお!
越雲:新作に向けてデモも作り始めたりしているので。ライブができなかったり直接コミュニケーションが取れないことがあるけど、逆に僕らは今の時代のデジタルとかも利用して、エンターテインメントの集団として音源を出すことがアイデンティティなので。それをこの期間が終わるまでコンスタントに続けていくこと、それでそのときに今よりも多くの人が観てくれる環境になったら、僕らにとってもリスナーにとっても意味を持つような気がするんですけどね。「何をしたいか」をじっくり考えられる年でもあると思うので。
──「ライブしたい」とは思いますよね?
越雲:思いますよ、もちろん。思うんですけど、人が危険を冒してまでする行為じゃないんですよね。1月に決まってるライブもちゃんとガイドラインに沿ったやり方をするし、でも今でもライブをやることが正しいのかはわかっていないので……
──まあ、必ずしも正しくある必要はないし。ライブをすることに対しては、昔以上にプラスに捉えられるようになった?
越雲:そうですね。昔は、自分や自分がやっている音楽に対して自信がなかったんでしょうね。ちょっと後ろめたい気持ちというか、きっと羞恥心みたいなものがあったと思うんですよ。だからライブも嫌いだったんですけど、今は自分たちの音楽に対してすごく自信があるというか、やりたい音楽に忠実にできているので、誇りに思っているくらいです。カッコつけてるわけじゃないんですけど、カッコいいことをやっているという自負もあるし、ライブをしていてもそう思える瞬間もあって。
──なるほど。で、本題とも言えるのが、今作『Four For Fourteen』で飯田さんがボーカル・ディレクションをしている件なんですけど。これはどういう経緯で?
越雲:僕は自分の癖を殺すタイプなんですよ。歌も、どんだけ楽器的に歌うか、なんなら自分が歌わなくても良かったんです。だけど、自分がいつか死んでしまうときに、僕らの曲を聴いた人がいたとして、自分の歌ってる声とかがちゃんと鳴ってなかったら、すごく後悔するような気がして。あとは、“その人の歌であること”が感動の一番のポイントだと気付いたというか。本当は僕は歌で感動する人間なのに、そこを避け続けてきたから、ちゃんと向き合うようにして、こういうリリックをちゃんと自分の声で歌いたいと思えたんですよね。それで瑞規さんに身を委ねたんです(笑)。
──懇意にしてる先輩ミュージシャンは他にもいる中で、飯田さんに頼んだ要因でいうと。
越雲:まずは僕のことを誰よりも理解しようとしてくれてるし、もうひとつは「お前、歌下手だからな」って前から言われてて。下手って言ってもらえるということは、ちゃんと聴いてくれてることでもあると思ったから。
飯田:……ええと、誤解を招かないように話すと、好き嫌いは置いておいて「歌が上手い」っていうのは、自分の中では「空気を読めてるかどうか」だと思ってるんですね。そのサウンドや曲調に合った歌を選ばないとダメなのに、その空気を読めてない人に声のボリュームや歌の表情ができるわけがない。天然でできる人もいますけど、俺はできない人だから、たくさんたくさん歌った中から選択していく。で、(pollyと)対バンしたのはだいぶ前なんですけど、すごく陶酔して気持ち良く聴ける音楽の中で、歌は「なんか違くね?」「それ集中してなくね?」って思う瞬間が結構あって。もっと歌えるはずなのに、結構な間違いじゃないか?って、気になっちゃったんですよね。それはこの関係性だから言うことなんですけど。
──なるほど。
飯田:結果的には、レコーディングをしてみて「こんなに歌えるんだ!」って思ってるくらいなんですけど。後からわかったのが、そのテイクをディレクションのときに選んでなかったんだと。サウンドを作って歌詞を書いてレコーディングをしますというとき、自分の場合、歌レコーディングではブースにディレクターやコンポーザーの三島(想平)がいて、「今良かったよ」とか「こういう風に歌ったら?」って言ってもらうことで、だいたい自分がどういう風に歌っているのかを理解しやすいんですけど。それを龍馬は一人でやってきたんだなと思ったら、本当に大変だっただろうなとゾッとしたんです。
──セルフジャッジしかしてこなかったという。
飯田:そう。良い響きであるものをチョイスできなかったり、自分の良い感じの癖が出ていても、それを選んでこなかったんだなって、一緒にやってみてすごく思ったんですよ。最初、「狂おしい」を録り終わったときに「これで大丈夫ですかね?」って言われたんですけど、俺の中ではそのテイクがめちゃくちゃ良かったし、今までずっとpollyの音を作ってくれたエンジニアの人も「むしろ良い」と話してくれて。
越雲:今までの自分だったら絶対に選ばなかったです。
──それはどういうポイントで?
越雲:単純に……
飯田:めっちゃ龍馬が出てるからじゃない?
越雲:そうです。自分の音楽を愛しているんですけど、pollyの中で唯一愛せないポイントがあるとしたら、自分の歌なんですよ。もっと細かく言うと、「これ俺じゃん」っていう瞬間がどうしても嫌だったんですよね。「歌ってます、聴いてください」じゃなくて「こういうバンドに所属してます、俺」みたいなやり方だったんですよ、ずっと。
──主演というより監督、みたいな意識だったのかな。
越雲:あ、そうです。本当は主演監督の特権だと思うんですけど、「お前、監督の癖になんでこんなに目立つシーンばっかり映ってんだよ」みたいな(笑)。どうしても許せなかったんです、昔は。でもそれだとなんか感動しないなと思って。なんで俺が学生時代にcinema staffを聴いて感動したかって、まずは歌だったんですよ。なのに俺はサウンド先行にしすぎてしまった結果、自分の歌が分からなくなってしまったから、ディレクションをしてもらう中で、「本当にこれを良いと思ってるんですか!?」って、最初はギャグかと思ったくらい……
飯田:ははは!
越雲:本当、絶対に俺が選ばないところをことごとく選んでいくから、本当にびっくりしましたね。
飯田:龍馬はサウンドメイキングも歌詞も作るし、レコーディングのときに歌のことまで考える暇ないのもあると思うんですね。だから本当にすごく初歩的なことからやろうと思って、歌詞を用意してブレスの位置を一緒に考えようぜって。これ、ボーカルあるあるなんですけど、歌えてないって思った所は、そこが歌えてないんじゃなくてその前から歌えてないんですよね。
──へえ!
飯田:それから「この行はこうやって歌おう」って1行ずつ考える。いつも自分がやってることなんですけど、そういうことから始めました。一番悩んだのが「点と線」かな。Aメロがまさに龍馬の真骨頂みたいな声だと思うんですけど、サビのグルーヴがなかなか上手くいかなくて。
越雲:ああー。
飯田:けっこう話し合って。結局はリズムなんですけど、溜めだったりどう揺らすかで抑揚が決まってくるのに、そこをちゃんと考えずに歌うとこうなってしまうんだなっていう、自分も勉強させてもらう期間でした。
──龍馬くんの中には無かった着眼点だったんですか。
越雲:はい。僕はソングライターではあったけどシンガーではなかったんだなって。真ん中で歌ってるのに、今までどれだけ歌に向き合ってこなかったんだ、みたいなことばっかり思いました。あとは、「ここが聴かせどころだから何回も録って選んでいこうよ」っていう概念も僕は無かったので。単純に良いメロディだと思って書いて、そのメロディ通りに歌うことだけだったんです。自分が曲を作っていて、自分がまず最初に曲を理解しなきゃいけないはずなのに、やっぱり自分のことって理解できないんだなというか……周りが見ている自分と、自分が思っている自分にはすごく差異があって。
飯田:うんうん。
越雲:ボーカルディレクションをしてもらって、そこにも気づけたんですよ。だから人間的にもすごく勉強になった……というと軽いかもしれないですけど、心底人生観が変わる瞬間もたくさんあって。
──飯田さんは、他に印象的だった曲はあります?
飯田:二つあるんですけど、一つは「Slow Goodbye」で、これは俺には歌えないなって思った。例えば「きっと」の部分とか、龍馬の武器のフォールが落ちていくメロディの使い方が、すっごい気持ちいいんですよね。滑らかに落ちていくメロディのボーカリゼーションをできる人だから、俺はあそこを聴くだけでゾクッとしちゃうんですよ。……ゾッとしたのはですね、「残火」かな。
越雲:(笑)。
飯田:その日、3曲くらい録って、次の日も歌録りだったので「今日はもうこの辺にしよう」って言ってたんだけど、ノッてたからもう一曲録りたいってなって。「じゃあいきますか」ってその日の最後にやったんですけど。これが信じられないくらい録る所が多いんですよ!
越雲:はっはっは。
飯田:まずメインボーカルと上ハモ、下ハモがあるじゃないですか。で、このサビがコラージュみたいになってて、<人は何故に群がりながら>って繋げずに、<人は何故に><群がりながら>って別々に録って被せていて。
越雲:僕は<人は何故に>と<同じ絵を>が奇数ブロックだとしたら、<群がりながら>は偶数ブロックみたいな、そうやって間隔を開けながらブロックごとに録っていけば良いなと思って、デモの段階ではそうだったんですよ。
飯田:「それ一つ一つ録っていこうよ」って俺、最初に言っちゃったから(笑)。これがすっごい時間かかったんですよ。語尾に重なって次の頭が入ってくるのって、最初はなんでやる意味があるんだろう?って思ったんですけど、出来上がったものを聴いたらめちゃくちゃ効果的で、「なんじゃこりゃ」って。歌が雪崩れ込んでくるみたいに聴こえるじゃないですか。だから結果的に良かったんですけど、そのときは「これ、マジでやるの?」と思って。
──細切れに数秒ごとで録って、それぞれにハモも付くわけだから膨大になりますよね。
飯田:そうです。しかも「Hey」っていうプラスしたコーラスも入れるし。だから「ごめん、ミスらんといて」「とんでもなく時間かかるわ」って(笑)。でもすごい発想だなと思ったし、カッコいいですよね。……これ、「残火」が押し曲になったの?
越雲:押し曲を無くしたんですよね、もはや。明らかにこれがリード曲っていう風にするとそれが顔になっちゃうから、先行配信とかもバラバラに突いていく感じにしたくて、それが今の時代にも合っていると思うし。でも何かが変わる作品ではある気がしていて、特に「残火」を作れたのはミュージシャンとして誇り高いかなと。多分、僕にしか作れないと思うんですよ、この曲。そこに対して瑞規さんたちが関わってくれたこととか、あとは歌詞も書きたいことを書けたので、2020年に出すべき曲だなって思いながら今でも気に入ってますね。
──あと、前回の対談のときにも話題に上がっていた「言葉は風船」。この曲をいまあらためてリアレンジして収録したのは?
越雲:いまの自分にすごくリンクした曲です。そのとき書いた感情と今では見え方が違っていて、今は言葉に対して敏感な時代じゃないですか。昔はそういう自分を傷つけてきたものや傷つけたものに対してのアンチテーゼみたいなイメージだったんですけど、いま聴くと、誰かを救える曲になるんじゃないかな。しかも今回のアルバムのテーマの「生きること、死ぬこと」「生きていくこと」を形づくるものとしても、すごくピッタリだったので。瑞規さんはけっこう、弾き語りで歌ってくれてるんですよ。
飯田:めちゃくちゃ好きな曲ですね。本っ当にその通りだと思うから、この歌詞。さっき言った、MCで下手なことを言えなくなってきたというのも“言葉は風船”のようなものだからで。
越雲:歌っていても昔とは感情の込め方が違うというか。昔のアレンジの音源を聴くと、けっこうパンクだったなと。曲自体はパンクではないですけど、歌い方がパンキッシュな印象に近くて、そういう歌い方だからこそ聴こえてくるものもあったと思うんですけど、僕はやっぱり今の歌い方の「言葉は風船」のほうがダイレクトだし、本来曲が持っているDNAみたいなものがそのまま形になって出てきてくれたと思います。
──作品全体としては、飯田さんはどんな印象を持ちました?
飯田:いろいろなpollyがある中で、「こっちのpolly好きだな」と思いました。龍馬らしさはずっと続いてきたものだと思うんですけど、pollyが持っている美しい部分が本当に出てる楽曲ばかりだから。この4曲を録り直したのも良いことだと思っていて、今までの曲も含めてこれからのpollyをこの一枚で見せれる。友人としてや後輩として見ちゃう部分も多いから、単純に「良かった!」って、それですね。インタビューに適した言葉じゃないけど(笑)。
──飯田さん自身が、pollyの良さを十分わかっているからこそ、それを世間にもわかるように伝えることには頭を悩ませたでしょうね。
飯田:それは本当に思ってました。サウンドとかは良いし、すごいメロディメイカーだとも思っているんですけど、歌はバンドの中で一つ前に出ているものだと思うから、そこに関係してくることをやらせてもらうのは責任重大だなと。でもすごく良いものが録れたから、ね。素晴らしいボーカリストだなと思いました。
越雲:ありがとうございます……!
──自分の歌を聴き返してみてどうですか?
越雲:もう、今はこっちのほうが好きですし、あれから家にブースも作って練習をするようになりました。ちゃんと歌と向き合うきっかけを作ってくれたので、本当に感謝です。

取材・文=風間大洋 撮影=Hideya Ishima

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